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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第16 中小企業事業団|
  • 不当事項|
  • 貸 付 金

中小企業高度化資金の貸付が不当と認められるもの


(176)−(179) 中小企業高度化資金の貸付が不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 中小企業事業団(昭和55年10月1日以前は「中小企業振興事業団」)
貸付けの根拠 中小企業事業団法(昭和55年法律第53号)等
貸付けの内容 中小企業者に対し中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け
事業団の貸付先 愛知県ほか3県
同上貸付金額 724,105,000円
県の貸付先 4中小企業者
同上貸付金額 1,120,715,000円(中小企業事業団貸付金相当額724,105,000円)

 上記の4中小企業者に対する1,120,715,000円の貸付けにおいて、313,818,343円の貸付けが不当と認められ、ひいては中小企業事業団の貸付金相当額202,762,642円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められるものが、別表 のとおりある。

(説明)

 中小企業事業団(以下「事業団」という。)では、中小企業者が企業規模の適正化、事業の共同化、工場・店舗等の集団化等を図るための事業の用に供する土地、建物その他の施設の取得等を行う場合に、これに必要な資金として中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源の一部を貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率を無利子から年4.1%、償還期限を16年以内とし、都道府県はこれに自己資金を合わせて中小企業者に貸し付けていて、その貸付条件は、貸付利率を無利子又は年2.7%、償還期限を上記と同様としていて、極めて低利かつ長期のものとなっている。そして、事業団が都道府県に貸し付ける場合は、あらかじめ都道府県において借入申込者の事業計画に対する診断を実施し、事業団で当該事業計画の内容を審査のうえ妥当と認めたものについて貸し付けることとしている。
 しかして、上記の貸付けについて調査したところ、貸付けに当たっての審査が十分に行われていなかったり、貸付け後の管理が適切を欠いていたりしていたため、貸付対象施設が貸付けの目的を達していないなどしていて、313,818,343円の貸付けが不当と認められ、ひいては事業団の貸付金相当額202,762,642円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められる。

(別表)

県名 県の貸付先 貸付対象 貸付
昭和年月
(貸付利率)
償還期限
昭和年月
貸付金額 左のうち不当と認めた貸付金相当額 貸付けの目的に沿わない結果になった事業団の貸付金相当額 摘要
(同上に対する事業団の貸し付け金相当額)

(176)

愛知県

協同組合繊維卸商業センター

土地

49.2
(年2.7%)

63.11
千円
185,860(120,094)
千円
6,608
千円
4,270

目的外使用
 この貸付けは、店舗等集団化事業の用に供する土地15,854.6m2 の取得に必要な資金285,981,000円(貸付対象事業費同額)の一部として貸し付けたものであるが、借受人は、昭和48年9月上記土地の購入契約を締結した際、その一部を組合員以外のガソリン小売業者に使用させる契約を締結しており、同業者は52年10月上記使用契約した土地のうち563.7m2 に自己所有のガソリン販売施設を設置していた。
 したがって、当該土地に係る貸付金相当額は貸付けの目的外に使用しているものを対象としていて不当な貸付けとなっている。
 なお、58年3月末現在の不当貸付金残高は3,304,333円(事業団の貸付金相当額2,134,972円)で、これについては、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(177) 岡山県 石材事業協同組合 土地、工場ほか 55.12
56.4
(年2.7%)
67.9 286,960
(185,410)
286,960 185,410 貸付目的の不達成
 この貸付けは、組合員が行う石材加工事業の合理化、製品の標準化を図るため共同施設事業の用に供する土地、工場等の取得又は設置に必要な資金441,509,000円(貸付対象事業費同額)の一部として貸し付けたものである。しかし、貸付けに当たって組合員の協力体制や事業実施に必要な熟練従業員の要員計画などの基本的な事項について十分検討しないまま貸し付け、事業実施後においても要員確保等の具体的方策を欠いており、共同施設であるのに組合員のうち半数の3名は当初からこの施設を全く利用していなかった。その結果、計画どおりの生産が上げられないことなどから、借受人は事業運営を放棄し、施設設置後わずか1年余を経た昭和57年5月から上記施設を組合員以外の者に占有使用させていた。
 したがって、本件は、組合員が共同で利用するための施設として貸し付けた目的を達しておらず不当な貸付けとなっている。
(178) 広島県 協同組合食料品卸センター 駐車場ほか 51.4
(年2.7%)
65.10 586,990
(379,261)
13,749 8,883 貸付対象施設の処分
 この貸付けは、店舗等集団化事業の用に供する協業冷凍庫、共同駐車場(6,000m2 )等の設置に必要な資金1,085,418,000円(貸付対象事業費同額)の一部として貸し付けたものであるが、借受人は、昭和55年12月、施設が狭あい化したため共同倉庫の増設等を行っており、その際上記共同駐車場のうち3,070m2 のアスファルト舗等を取り壊していた。
 したがって、当該取壊し部分に係る貸付金残高相当額は、貸付けの目的を失っていて、不当な貸付けとなっている。
 なお、58年3月末現在の不当貸付金残高は10,999,627円(事業団の貸付金相当額7,107,102円)で、これについては、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(179) 徳島県 製造業者等協同組合 電子計算機端末装置ほか 52.3
(年2.7%)
64.1 60,905
(39,340)
6,500 4,198 貸付対象施設の処分
 この貸付けは、計算事務共同化事業の用に供する電子計算機端末装置の設置等に必要な資金101,365,000円(うち貸付対象事業費93,828,000円)の一部として貸し付けたものであるが、借受人は、昭和53年8月、貸付対象装置を無断で売却し、他の機種をリース契約により導入していた。
 したがって、同装置に係る貸付金相当額は、貸付けの目的を失っていて、不当な貸付けとなっている。
 なお、58年3月末現在の不当貸付金残高は3,900,000円(事業団の貸付金相当額2,519,102円)で、これについては、本院の注意により、58年9月、繰上償還の措置が執られた。
1,120,715
(724,105)
313,818 202,762