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  • 昭和58年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

テレビジョン電波受信障害改善施設の維持管理業務における保守費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの


テレビジョン電波受信障害改善施設の維持管理業務における保守費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)業務費
(款)業務管理費
(項)高速道路建設費
(項)高速道路管理費
部局等の名称 大阪第一、大阪第二、神戸各建設部及び大阪管理部
契約名 大阪府道高速大阪松原線山王地区(その3)テレビジョン電波受信障害改善施設の維持管理業務ほか68業務
業務の概要 テレビジョン電波の受信障害を解消するための補償設備のうち屋外施設部分の保守、点検及び更改等を行うもの
契約金額 1,607,048,039円
契約の相手方 財団法人京阪神ケーブルビジョン
契約 昭和58年5月〜59年3月 随意契約

 上記の各業務において、テレビジョン電波受信障害改善施設の保守費の積算(積算額5億6505万余円)が適切でなかったため、積算額が約5200万円過大となっていた。
 このように積算額が過大となっているのは、近年テレビジョン電波受信障害改善施設の維持管理を必要とする世帯の著しい増加に伴い、同施設の保守業務を行う契約相手方の保守点検業務の効率化が図られているのに、これを積算に反映していなかったことによるもので、作業の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では自動車専用道路の建設工事を毎年多数実施しているが、これに伴い、大阪第一建設部ほか2建設部及び大阪管理部が昭和58事業年度に施行しているテレビジョン電波受信障害改善施設の維持管理業務69件(新規契約(注1) 分18件5億8875万余円及び更改契約(注2) 分51件10億1829万余円、契約総額16億0704万余円)について検査したところ、次のとおり、保守費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各業務は、公団が建設した高架橋等に起因して発生した局辺民家におけるテレビジョン電波の受信障害を解消するため、その補償のための設備として、公団によって設置された共同受信アンテナ、同軸ケーブル及び増幅器等のテレビジョン電波の受信障害改善施設のうち屋外施設部分(以下「改善施設」という。)の保守、点検、更改等を行うもので、公団では、この業務を財団法人京阪神ケーブルビジョン(以下「KCV」という。)に実施させることとし、公団本社が56年に制定したテレビジョン電波受信障害処理要領に基づいて一定の地区ごとに建設部等がKCVと維持管理業務契約を締結し、新規契約分については20年間分、更改契約分については13年間から16.8年間分の業務費用を一括して支払っている。

 しかして、この維持管理業務費は、当該改善施設に係る保守費及び改善施設の機材の経年劣化に伴う部分的更改費で構成されているが、このうち保守費の積算についてみると、公団本社がKCVから徴した見積りを基に、定期点検は電工1人が1日当たり30世帯を、精密点検は機材に応じて電工1人又は技師1人が1日当たり10.84世帯をそれぞれ行うものとし、これに車両費等を加え一世帯当たり3,063円と定め、これを建設部等に通知し、建設部等ではこれに諸経費率、維持管理世帯数及び年金現価率(注3) を乗じ、69件の保守費を計5億6505万余円と算定していた。

 しかしながら、定期点検及び精密点検の積算歩掛かりは、KCVが51年当時約5,800世帯を対象に点検効率の悪い山間部に散在する1戸建住宅団地等で行った作業実績によったものである。これに対し、公団を原因者としてKCVが維持管理している世帯数は58事業年度末現在で約59,200世帯に上っており、これらの多くは自動車専用道路に沿って一定地域に多数集中している状況で、積算歩掛かりの基となった作業環境とは、相当異っていることから、作業の実態について調査したところ、維持管理世帯の急増及び集団化等に対処するため、KCVでは出張所を設けたり、作業用車両等を増備したりして点検体制を整えたことから点検作業は著しく効率的となっており、また、改善施設用機材の規格等の統一化を図ることによって幹線増幅器等の保守は全設置数について測定及び調整を行わなくても主要箇所さえ行えば機能を保証できるようになったため、点検手法が大幅に簡素化され、57事業年度の実績によると、定期点検は1人日当たり227世帯、精密点検は1人日当たり190世帯となっており、積算の際適用した歩掛かりに比べ著しく能率的になっていると認められた。その結果、出張所の新設及び作業用車両の増備等のため、点検体制費等の費用の増加があるものの保守費全体としては積算に比べ相当低減している状況となっている。

 いま、仮に一世帯当たり保守費について、定期点検及び精密点検の歩掛かりはKCVの実績を採用し、現場作業員の人件費は業務の実態を考慮して、公団における電気、通信及び交通管制設備維持補修費を算定する場合に適用している単価により、また、上記点検体制費などの費用の増加等を考慮して再計算すると2,763円となる。

 したがって、本件保守費について、上記により作業の実態を反映して積算したとすれば積算額を約5200万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、昭和59年11月にテレビジョン電波受信障害処理要領に作業の実態を反映させた保守費積算基準を新たに定め、同月以降契約を締結するものから適用することとする処置を講じた。

(注1)  新規契約 56年制定の「テレビジョン電波受信障害処理要領」に基づき維持管理業務費(改善施設の保守費及び部分的更改費)を20年間分一括して支払うもの

(注2)  更改契約 51年制定の「テレビジョン放送の受信障害処理要領」に基づき、10年間分の改善施設の保守費を一括して支払うこととしていた維持管理契約について56年制定の要領に基づき、部分的更改費を加えた維持管理業務費の対象期間が20年となるよう、各々の契約の経過年数(3.2年から7年)を考慮して13年間から16.8年間分の維持管理業務費を一括して支払うこととして、契約を更改したもの

(注3)  年金現価率 毎年必要となる費用を一定期間(本件では新規契約分については、20年間、更改契約分については、13年間から16.8年間)分を一括して現在時点で支払う場合、一定期間に生ずる利子分を割り引くための率