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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地下高速鉄道建設工事で不用となった土地の補助金算定上の取扱いについて改善させたもの


(1) 地下高速鉄道建設工事で不用となった土地の補助金算定上の取扱いについて改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)運輸本省 (項)地方鉄道軌道整備助成費
部局等の名称 運輸本省
補助の根拠 予算補助
事業主体 都1、市5、計6事業主体
補助事業 地下高速鉄道の新線建設事業
国庫補助金交付額の合計 3732億4616万余円(昭和42年度〜59年度)

 上記の補助事業において、地下高速鉄道(以下「地下鉄」という。)建設工事の用に供するため取得し、工事終了後必要がなくなった土地で事業主体が引き続き保有しているものについて、その価格を後年度の補助金算定に当たり事業費から控除する取扱いにしたとすれば国庫補助金約16億4200万円を節減することができると認められた。 このような事態は、地下鉄事業を営む地方公共団体が地下鉄新線建設工事用として取得した土地で、工事終了後、事業の用に供する必要がなくなったものを多数保有しているにもかかわらず、運輸省において、その現況を把握する体制を整備していなかったり、補助金算定に当たってこれらの土地についての取扱いを明確にしていなかったりしていることなどによるもので、所要の処置を講じて国庫補助金の算定を適切なものに改める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 運輸省では、大都市圏における通勤・通学輸送需要への対応と交通の円滑化を図るため、地下鉄の新線建設を行っている帝都高速度交通営団及び東京都ほか8市(以下「地下鉄事業者」という。)に対し、毎年度多額の地下高速鉄道建設費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
 この補助金は、地下高速鉄道建設費補助金交付規則(昭和37年運輸省令第64号)及び地下高速鉄道建設費補助金に関する運用方針(昭和53年鉄財第250号。以下「運用方針」という。)に基づき交付されるもので、補助対象建設費の額については、地下鉄事業者が前年度において補助対象路線の新線建設のための工事の施行又は土地等資産の取得のために支出した費用の合計額(以下「新線建設費」という。)から総係費及び測量監督費並びに工事のために取得した土地の売却等の収入等を控除して得た額の90%に相当する額に35%(昭和41〜51建設事業年度の分については10.5%、25%又は33%)を乗じた額を限度として、建設事業年度の翌年度から10年間(41〜51建設事業年度の分については5年間、6年間又は8年間)に分割して交付されることになっている。

 しかして、上記の10地下鉄事業者のうち、東京都ほか5市(注) が41年度から58年度までの間に施行した地下鉄建設のための費用の一部として42年度以降59年度までに交付された国庫補助金は3732億4616万余円に上っているが、これら各都市において、地下鉄路線の建設工事に必要であるとして取得した土地のうち、60年3月までに開業した路線に係るものの現況について調査した結果、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 すなわち、上記の6地下鉄事業者が、地下鉄建設工事の作業用地等として取得し使用した土地のうち、工事終了後は使用目的がないまま又は学校用地、都市計画街路の拡幅用地等として使用する予定で更地のまま保有していたり、既に道路、バスターミナル、厚生施設等地下鉄事業以外の目的に使用していたりして地下鉄事業資産のまま所有しているものが合計141箇所、80,619m2 取得費相当額52億1300万円あった。このような土地については、運用方針によれば、売却等により収入が生じた場合にはその収入額を新線建設費から控除することとなっているものの、保有されたままの場合には取扱いが明確でないため、当初の取得目的が達成された後も、売却等が行われない限り新線建設費から控除すべき収入額として算定されないこととなっていた。

 上記のような土地については、当初の取得目的が達成され、地下鉄建設工事に必要でないことが明らかになった時点で、その価格を後年度の補助金算定に当たり新線建設費から控除すべきであると認められる。

 いま、仮に上記の土地の取得費相当額を新線建設費から控除したとしても、国庫補助金約16億4200万円を節減することができると認められる。

 このような事態を生じているのは、運輸省において、これら地下鉄建設工事に不用となりながら保有されたままになっている土地の現況について把握する体制が整備されていなかったり、補助金の算定に当たってのこれらの土地の取扱いに関する指針が明確になっていなかったりしていることなどによると認められる。

 上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、60年11月に運用方針の取扱指針を定め、60年度以降の補助金算定に当たっては、地下鉄建設のために保有する必要がないと認められる土地の評価額を新線建設費から控除することを明確にするとともに、このような土地の現況を把握できる体制を整備する処置を講じた。

 (注)  東京都ほか5市 東京都、札幌市、名古屋市、京都市、大阪市、福岡市