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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 中小企業事業団|
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  • 貸付金

中小企業高度化資金の貸付けが不当と認められるもの


(130)−(135) 中小企業高度化資金の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 中小企業事業団(昭和55年10月1日前は「中小企業振興事業団」)
貸付けの根拠 中小企業事業団法(昭和55年法律第53号)等
貸付けの内容 中小企業者に対し中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け
貸付先 広島県ほか4県
貸付金額 2,333,279,000円
県の貸付先及び貸付金額 5中小企業者 3,139,812,000円

 上記の5中小企業者に対する3,139,812,000円の貸付けにおいて、238,033,171円の貸付けが不当と認められ、ひいては中小企業事業団の貸付金相当額176,193,398円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められるものが、別表 のとおりある。

(説明)
 中小企業事業団(以下「事業団」という。)では、中小企業者が企業規模の適正化、事業の共同化、工場・店舗等の集団化等を図るための事業の用に供する土地、建物その他の施設の取得等を行う場合に、これに必要な資金として中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源の一部を貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率を無利子から年4.1%、償還期限を16年以内とし、都道府県はこの借入金に自己資金を合わせて中小企業者に貸し付けていて、その貸付条件は、貸付利率を無利子又は年2.7%、償還期限を上記と同様16年以内としていて、極めて低利かつ長期のものとなっている。そして、事業団が都道府県に貸し付ける場合は、あらかじめ都道府県において借入申込者の事業計画に対する診断を実施し、事業団で当該事業計画の内容を審査したうえ妥当と認めたものについて貸し付けることとしている。

 しかして、上記の貸付けについて調査したところ、事業団及び広島県ほか4県において、貸付けに当たっての審査を的確に行っていなかったり、貸付け後の管理が適切を欠いたりしていたなどのため、貸付対象施設が貸付けの目的を達していなかったりしていて、238,033,171円の貸付けが不当と認められ、ひいては事業団の貸付金相当額176,193,398円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められる。

 (別表)

県名
県の貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付
昭和年月
(貸付利率)
償還期限
昭和年月
貸付金額 左のうち不当と認めた貸付金相当額 貸付けの目的に沿わない結果になった事業団の貸付金相当額 摘要
同上に対する事業団の貸付相当額

千円

千円

千円

(貨物自動車ターミナル等集団化事業)

(130) 広島県 輸送ターミナル協同組合 土地

52.3から
54.3まで
(年2.7%)

66.10から
68.10まで
1,002,981
(722,076)
116,165 86,178 貸付目的の不達成
(広島市)
共同倉庫等

53.5
(年2.7%)

67.10 533,558
(419,224)
(131)  同
(同)
土地

57.3
(年2.7%)

71.10

875,080
(687,562)

75,666 59,452

共同保管庫等

58.5
(年2.7%)

72.10

137,378
(107,939)

小計

2,548,997
(1,936,801)
191,832 145,630

 この貸付けは、土地49,169.15m2 取得、共同施設(倉庫、保管庫、組合会館等)等延べ14,770.21m2 の設置に必要な資金3,712,792,000円の一部として貸し付けたものである。
 しかし、

(1) 昭和53年5月に設置した共同倉庫1,485.35m2 及びこれに係る土地2,605.43m2 (貸付対象事業費187,956,288円、貸付金相当額116,165,867円)については、借入者は設置後1年余を経た54年6月から組合員以外の者に賃貸していた。

(2) 58年5月に設置した共同倉庫と同種の施設である共同保管庫899m2 及びこれに係る土地940.50m2 (貸付対象事業費108,096,271円、貸付金相当額75,666,916円)については、県のその必要性の検討が十分でなかったことなどのため、計画どおりの利用がなされず、借入者は設置後10箇月を経た59年3月から組合員1名に占有使用させていた。

 したがって、上記は組合員が共同で利用するための施設として貸し付けた目的を達していない。
 なお、本件の不当貸付金残高136,817,335円(事業団の貸付金相当額104,945,497円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

(小売商業商店街近代化事業)
(132) 群馬県 靴小売業者
(太田市)
店舗等

58.3
(年2.7%)

73.3

18,121
(11,708)
6,080 3,928 目的外使用
 この貸付けは、店舗、倉庫等の建物(鉄骨造り3階建て)延べ246.24m2 の建築に必要な資金40,436,000円(うち貸付対象事業費分27,880,000円)の一部として貸し付けたものであるが、借入者は、昭和60年1月に倉庫であった3階部分82.62m2 (貸付対象事業費9,354,473円、貸付金相当額6,080,071円)を居宅に改造していた。
 したがって、当該倉庫部分については、貸付けの目的外に使用していたものである。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(133) 富山県 金物小売業者
(小矢部市)
店舗等

56.7
(年2.7%)

71.6 23,700
(15,300)
6,594 4,257 目的外使用
 この貸付けは、店舗、倉庫等の建物(鉄筋コンクリート造り3階建て)延べ489.25m2 の建築に必要な資金50,822,000円(うち貸付対象事業費分36,594,000円)の一部として貸し付けたものであるが、借入者は、昭和59年11月に倉庫であった3階部分113.07m2 (貸付対象事業費10,182,560円、貸付金相当額6,594,706円)を居宅に改造していた。
 したがって、当該倉庫部分については、貸付けの目的外に使用していたものである。
 なお、本件の不当貸付金残高6,045,147円(事業団の貸付金相当額3,902,563円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(134) 沖縄県 各種食料品小売業兼喫茶店業者
(沖縄市)
店舗等

58.5
(年2.7%)

73.5 38,000
(24,550)
8,725 5,637 貸付対象外
 この貸付けは、借地権の取得並びに店舗及び倉庫(鉄筋コンリートブロック造り2階建て)延べ305.88m2 の建築に必要な資金70,300,000円(うち貸付対象事業費分66,918,000円)の一部として貸し付けたものであるが、借入者は貸付契約締結前から倉庫予定部分延べ98.28m2 (貸付対象事業費13,468,357円、貸付金相当額8,725,611円)に貸付対象とならない居宅を設置していた。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(工場共同化事業)
(135) 大分県 醤油製造業協業組合
(臼杵市)
原料処理棟等 57.2
57.3
(無利子) 
73.1
73.3
510,994
(344,920)
24,800 16,739 低額設置
 この貸付けは、醤油製造のための原料処理棟等の建物及び自動製麹装置等の機械設備等の設置に必要な資金638,743,000円の一部として貸し付けたもので、借入者は、このうち小麦調質装置ほか2装置を117,106,000円で設置したとしていたが、実際は、これら3装置については、保証書に定める性能を確保できない場合は31,000,000円を支払うとの約定に基づき同額の返還を受けて86,106,000円で設置していた。
 したがって、適切な貸付金額は486,194,000円となり、本件貸付金額510,994,000円との差額24,800,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
3,139,812
(2,333,279)
238,033 176,193