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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

国有林野事業の経営について


国有林野事業の経営について

会計名 国有林野事業特別会計(国有林野事業勘定)
部局等の名称 林野庁
事業の概要 製品・立木等国有林産物の生産・販売、伐採跡地への新植等の造林及び林産物の搬出等のための林道の整備等国有林野の管理経営
損益 利益2599億5079万余円、損失3385億5609万余円
収支 歳入5048億4817万余円(うち借入金2320億円)
歳出5137億8953万余円
累積欠損金 6822億0203万余円(昭和60年度末)
借入金残高 1兆3349億6148万余円(昭和60年度末)

 国有林野事業の経営は、昭和53年9月に策定し59年6月に改定した国有林野事業の改善に関する計画(以下「改善計画」という。)に即して、収入の確保、事業運営の能率化等経営改善に努めているものの、事業を取りまく環境は一段と厳しくなってきており、木材価格の下落・低迷及び資源的制約から木材販売による収入の増加を期待することには当分の間限界があるので、現状のまま推移すると、63年度を目途として自己収入と事業支出の均衡を回復するという改善計画の当の目標の達成が困難になると認められ、効率的な事業の実施に努めるとともに投資の効率化により経費の節減を図ることが緊要である。

(説明)

 林野庁では、国有林野を国民共通の財産として、〔1〕 林産物の計画的・持続的な供給、〔2〕 国土の保全、水資源のかん養等の森林の有する公益的機能の発揮、〔3〕 農山村地域振興への寄与等を目的として管理経営しており、その経営成績を明らかにするため国有林野事業特別会計に国有林野事業勘定を設け経理している。
 しかして、国有林野事業の昭和60年度における経営成績をみると次のとおりである。
 損益は、利益2599億5079万余円、損失3385億5609万余円で差引き786億0530万余円の損失金を生じている。また、収支は、歳入5048億4817万余円、歳出5137億8953万余円であるが、歳入には一般会計からの受入106億4189万余円及び資金運用部資金からの借入金2320億円、計2426億4189万余円があり、これを除いた国有林野の林産物収入及び林野売払代等の自己収入2622億0628万余円と上記歳出額とを比較すると2515億8325万余円の支出超過、また、自己収入と上記歳出額から長期借入金の償還金及び支払利息を差し引いた事業支出3832億0620万余円とを比較すると1209億9992万余円の支出超過となっている。
 これらの状況を国有林野事業改善特別措置法(昭和53年法律第88号。以下「措置法」という。)が制定された53年度と比べると、次表のとおりで、

区分 自己収入
(A)
事業支出
(B)
開差額
(A−B)
  年度末累積欠損金 年度末借入金残高

53年度
万円
2642億2120
万円
3593億5215
万円
△951億3094
万円
961億1317
万円
2227億0000
60年度 2622億0628 3832億0620 △1209億9992 6822億0203 1兆3349億6148

この間、自己収入をもって事業支出を賄えない事態が一層深まり、累積欠損金は約7倍に、主として造林等の林業生産基盤整備投資のために調達した借入金の残高は約6倍に上る状況となっている。そして、給与関係経費は要員が53年4月1日現在の54,149人から60年4月1日現在の45,035人と9,114人(16.8%)減少しているものの、給与の改定に伴う増額及び退職手当の増こう等から53年度の2149億5035万余円に対し、60年度は2693億3585万余円で543億8550万余円増加している。なお、事業費、給与及び支払利息等を含めた林業生産基盤整備投資に係る経費は53年度の 1387億4807万余円に対し、60年度は2647億1298万余円で1259億6491万余円増加しているが、このうち支払利息は53年度の105億0349万余円に対し、60年度は863億6910万余円で差引き758億6561万余円増加しており、これは同投資経費増加額の60%を占めている。

 国有林野事業の経営は企業的に運営することとされているが、50年度以降毎年損失金を生じるようになり、53年に制定された措置法に基づき農林水産大臣は、53年度以降10年間を改善期間として72年度までに事業支出のほか長期借入金の償還金及び支払利息を含めた一切の支出を自己収入のみで賄うこととして収支の均衡を回復するなど、その経営の健全性を確保することを目標とする改善計画を53年9月に策定し、これに即して、収入の確保、事業運営の能率化等に努めてきたが、55年以降の木材価格の低迷等もあって財政事情は一層悪化したため59年に新たな改善計画を定め、改善期間の終期を68年度に改め72年度までに上記の収支均衡を回復することとし、当面の目標として当該期間の前半期が終了する63年度を目途に自己収入と事業支出との均衡を図ることとして経営改善に努めている。しかし、60年度においても上記のように国有林野事業の経営は悪化し、改善の見通しがたたないでいる現状にあり、このような厳しい財政事情を踏まえ本院において、国有林野事業の主要な事業である製品生産、立木販売及び造林の各事業の実施状況について調査したところ、事業が効率的に実施されていない事態が次のとおり見受けられた。

1 製品生産事業の実施について

 製品生産事業は、立本を素材(丸太)にして販売する事業で、60年度における実績をみると475の製品生産事業所等(注1) (以下「事業所」という。)の生産量は4,617千m 、216貯木場等で販売した数量は4,608千m となっていて、その事業の成績は利益1341億4747万余円、これに直接対応する損失は経営費及び販売費等の費用(林道整備に係る維持管理費、減価償却費及び支払利息(注2) は含まれない。)1215億1798万余円で営業上の利益は差引き126億2949万余円にとどまっている。この製品生産は、国が労務、資材等を直接投じて行う方法(以下「直よう」という。)と民間事業体に請け負わせて行う方法(以下「請負」という。)によって実施しており、上記生産量のうち3,151千m (68.2%)は436事業所において直ようで、1,466千m (31.8%)は142事業所において請負で生産している。また、素材の販売は、大別して伐採地に近い林道端で販売する山元販売と、より消費地に近い場所に設けた貯木場で販売する貯木場販売によって行っているが、上記販売量のうち、山元で販売したものは3,313千m (71.9%)、貯木場で販売したものは1,279千m (27.8%)、その他15千m (0.3%)計4,608千m となっている。

 しかして、製品生産事業は素材を安定的、持続的に供給する役割を担うとともに、その運営には企業性の確保にも考慮を払うこととしている。このため、林野庁において、〔1〕 事業の実施に当たっては伐採する林木の材質等を勘案して収益性の高い林木を 選定すること、〔2〕 収益性に問題のある事業所については一定期間事業の休止を行い、これに伴う要員については他の事業等に流動化すること、〔3〕 直ようによる製品生産の収益性が悪いものは請負による製品生産又は林地で立木のまま販売する立木販売への転換を図ること、〔4〕 経済性が確保される見通しのない事業所については統廃合を図ることとしてきている。そして、56年度から60年度までの5箇年間でみても製品生産に係る事業所は506箇所から475箇所に、貯木場は243箇所から216箇所にそれぞれ縮小するなど事業の合理化・効率化に努めてきている。しかしながら、製品生産事業の現状は次のようなものとなっていて、その改善が急務となっていると認められた。

(1) 直ようによる事業の経済性                

 各営林(支)局署においては、毎年製品生産事業の実施結果を分析して製品生産事業所現況調査表を作成している。この調査表は林野庁が定めた全国共通の標準歩掛表を基に、それぞれ異なる条件下で実施された製品生産事業について標準的な作業をした場合の標準林内生産性(注3) 、標準費用価(注4) 及び標準立木価(注5) を求め、これと実績とを対応させて製品生産事業の成果を示したもので、この調査表によって製品生産事業の成果を直ようと請負に区分して示すと、次表のとおり、

区分 事業所数 1人1日当たり平均 素材(丸太)1m3 当たり平均
標準林内生産性 実績林内生産性
標準費用価
(A)
実績費用価 
(B)
標準立木価
(C)

売上価
(D)
売上価と生産原価との開差額
(D−(B+C))

直よう

436
m3
2.62
m3
2.61

13,027

17,872

12,631

29,832

△671
請負 142 2.37 3.40 13,862 10,467 12,096 30,102 7,539
全体の事業所 475 2.54 2.81 13,284 15,593 12,466 29,915 1,856

 売上価(注6) で素材1m 当たり直ようが29,832円、請負が30,102円とほぼ同価格になっていることからみて直ようと請負の扱った林木の材質についてほとんど差異がなく、また、標準林内生産性で直ようが2.62m /人日、請負が2.37m /人日と直ようがやや高くなっていること及び標準費用価で素材1m 当たり直ようが13,027円、請負が13,862円と直ようがやや低くなっていることからみて、作業条件等の事業実施条件はむしろ直ようが良い条件下にあると認められるが、売上価から生産原価を差し引いた収益は素材1m 当たり直ようが671円の損失であるのに対し請負は7,539円の利益で、その開差額は8,210円となっていて、経済性において直ようは請負に比べ劣ったものとなっている。これは、請負の実績林内生産性が高いことによる面が大きいが、そのほか、直ようにおける給与水準が請負によるものに比べ相対的に高いことなどの実態を反映して実績費用価(注7) が高くなっていることによると認められる。
 そして、これら直ようの中において立木原価を含まない実績費用価が売上価を上回っているものが、次表のとおり、

事業所数 1人1日当たり平均 素材(丸太)1m3 当たり平均
標準林内生産性 実績林内生産性

標準費用価
(A)

直接費
(B)

間接費
(C)

実績費用価
(D=B+C)

標準立木価
(E)

売上価
(F)
売上価と実績費用価との開差額
(F−D)
36 m3
2.22
m3
2.24

15,347

12,733

8,066

20,799

1,436

17,987

△2,812

 36事業所にも上っており、これらの事業所における素材1m3 当たりの売上価と実績費用価との差額に生産量を乗じて算出した損失額の総額は4億9734万余円に上っている状況である。

(2) 貯木場の運営

 各営林(支)局署においては、貯木場の運営状況を検討するため、毎年、貯木場ごとの販売実績を基に、これを山元販売によった場合との採算比較をした貯木場現況調査表を作成している。
 この調査表によって貯木場の運営状況を示すと、次表のとおり、

区分 貯木場数 販売実績 運営経費実績
数量 金額 素材1m3 当たり(平均)販売価格

(A)

金額 取扱素材1m2 当たり(平均)運営経費

(B)


貯木場販売の採算性が山元販売に比べ不利となっているもの

121
千m3
722
千円
29,365,258

40,623
千円
4,484,523

6,214
全体の貯木場 216 1,279 61,959,391 48,440 7,361,718 5,698

 

(A)から(B)を差し引いた素材1m3 当たとるり素当たり素材価格
 
(C=A−B)
貯貯木場販売によった素材を山元販売した場合の素材1m3 当たり推計の(平均)販売価格
(D)
貯木場販売について、山元販売によった場合との採算比較の利益又は不利益(△)額
(C−D)

34,409

36,967

△2,558
42,742 42,422 320

 (注) (D)欄の額は、貯木場販売実績の平均予定価格から山元から貯木場までの運材に要する標準的な運材経費を差し引いて算出した山元販売の予定価格に、実際に山元で販売された素材の平均販売価格と平均予定価格との値開率を乗じて算出した額である。

 貯木場販売の採算性が山元販売に比べ不利となっているものが、貯木場全体数の56%に当たる121貯木場ある。これは、近年、林道等の開設と相まって自動車輸送の発達などにより山元販売に対する需要が多くなってきて、樹種、品等、径級が劣っている素材については貯木場販売価格と山元販売価格との開差が接近し貯木場販売価格から運営経費(素材を山元から貯木場まで運搬して積み上げるなどの経費)を差し引いた価格が貯木場販売によった素材を山元販売するものとした場合の販売価格を下回ったものとなったことによるものである。そして、この121貯木場の貯木場ごとの素材1m3 当たりの不利益の額に販売数量を乗じて算出した不利益の総額は約18億円に上っている状況である。

 (注1)  475の製品生産事業所等 直ようのみのもの333事業所、請負のみのもの39事業所、直ようと請負の双方によるもの103事業所である。

 (注2)  林道整備に係る維持管理費、減価償却費及び支払利息 林道は林産物の搬出、造林等事業の遂行等に使用されるもので、その維持管理費11,578,464,666円、減価償却費52,754,950,750円、支払利息19,509,542,020円の合計は83,842,957,436円である。

 (注3)  標準林内生産性 全国共通の標準歩掛表に基づき伐倒から林内造材完了までの作業について標準的に行った場合の作業量

 (注4)  標準費用価 全国共通の標準歩掛表に基づき算定した積算上の製品生産に要する費用で、立木原価を含まない標準的な製品生産費

 (注5)  標準立木価 取引市場の木材価格を基準に算定した販売予定価格から標準費用価を差し引いて求めた立木価で、調査表では立木原価として位置付けられている。

 (注6)  売上価 樹種別の実績販売単価に樹種別の生産量を乗じて算出した額を総生産量で除した価格

 (注7)  実績費用価 製品生産に直接・間接的に要した給与、請負費及び減価償却費等の費用で、立木原価を含まない実績製品生産費

2 立木販売事業の実施について

 立木販売事業の60年度における実績をみると、林地94,278haの立木6、807千m3 を販売し、その立木竹売払代(売上高)は549億1037万余円、これに直接対応する損失は経営費及び販売費の費用(製品生産事業と同様に林道整備に係る維持管理費、減価償却費及び支払利息は含まない。)307億0893万余円で営業上の利益は差引き242億0144万余円にとどまっている。上記立木竹売払代のうち、林地の立木を一斉に伐採している皆伐は、面積17千ha、材積3,404千m3 、立木竹売払代292億7884万余円となっている。
 立木の伐採箇所については、伐採跡地を人工林化することによる森林生産力の増大が相当程度期待される林地においては人工林施業を行うこととしている。しかしながら、他方においては造林等の林業生産基盤整備投資資金の大部分を借入金に依存している現状を踏まえ、投資を効率的に行うため人工造林を行うこととなる伐採箇所は、当該箇所からの立木竹売払代と跡地への造林に要する経費等とを比較検討することとしている。
 しかし、天然林等を皆伐し跡地を人工造林したものの中には、立木竹売払代が低価となっていて、伐採跡地の植栽経費にさえ達していないものが見受けられたので、この状況を55年度から60年度までの間に皆伐したものについて、1ha当たりの立木竹売払代が比較的低価となっていると認められる50万円以下のものを抽出して調査したところ、次表のとおりである。

区分
営林(支)局名
年度 全営林(支)局の立木販売に係る面積及び材積 1ha当たりの販売価格50万円以下の伐採・当該跡地への埴栽状況 開差(A-B)
伐採 植栽
面積 材積 面積 材積 立木竹売払代(A) 面積 経費(B)
北海道営林局ほか13営林(支)局管内250営林署
55
ha
108,561
m3
7,471,394
ha
4,712.52
m3
548,442
千円
984,382
ha
4,433.90
(40.45)
千円
4,340,111
(53,824)
千円
△3,355,729
(△53,824)
56 89,869 7,488,963 5,721.89 727,622 1,110,412 5,071.17
(188.16)
5,816,215
(343,115)
△4,705,803
(△343,115)
57 86,140 7,559,917 4,825.40 650,562 1,007,720 4,017.56
(253.35)
4,962,076
(427,821)
△3,954,356
(△427,821)
58 84,252 6,972,635 2,637.02 382,123 601,952 1,973.63
(326.18)
2,622,270
(477,132)
△2,020,318
(△477,132)
59 82,559 6,527,056 1,134.27 170,123 260,412 522.67
(488.07)
754,236
(673,809)
△493,824
(△673,809)
60 94,278 6,807,480 340.16 44,752 88,978 5.91
(326.13)
11,859
(602,959)
77,119
(△602,959)
545,659 42,827,445 19,371.26 2,523,624 4,053,858 16,024.84
(1,622.34)
18,506,770
(2,578,663)
△14,452,912
(△2,578,663)

 (注) ( )書きは、61年度に植栽を予定しているもので外書きである。

 上記250営林署における立木竹売払代総額は40億5385万余円となっているのに対し、この立木伐採跡地への植栽経費総額は60年度末現在で185億0677万余円(1ha当たり平均植栽経費1,154,880円)となっていて、その開差額は144億5291万余円(このほかに61年度以降に植栽を予定しているものが、1,622.34haあり、この植栽経費を仮に60年度の営林署ごとの経費実績で推計すると25億7866万余円となる。)に上っている。

3 造林事業の実施について

 国有林野における造林事業は、戦後森林生産力の増大を図るため、積極的に拡大造林を進めてきたが、これによって造成された人工林のなかには、厳しい自然条件の下で気象害、病虫獣害等により当初期待したような生育を遂げていない事態が相当数生じてきていた。このため、林野庁においてはこうした経験を踏まえ、かつ、森林の有する公益的機能の一層の発揮に対する要請の高まりに対応した「国有林野における新たな森林施業について」(昭和48年3月林野庁長官通達)を定め、森林の有する多面的な機能を総合的、かつ、高度に発揮することを旨としてきめ細かな森林施業を実施することとし、伐区面積、標高等人工林施業の対象地の基準について見直しを行い、皆伐して新植する森林は、気候、地形、標高、土壌等の自然的条件、林業技術等からみて人工林の造成が確実であり、かつ、人工林化による森林生産力の増大が相当程度期待される箇所とすることとしてきている。
 しかして、49年度から60年度までの間に植栽した493,738haについて調査したところ、造林地が奥地にあるものが多かったりして寒風害などを受け易い状況であるため、当局の努力にもかかわらず植栽木のおおむね50%以上が消滅し、55年度以降に損失等の経理処理をしたものが1,761件4,731.18haあり、その損害額は40億6559万余円に上っている。

 以上のとおり、製品生産において、直ようで行った製品生産に要した費用が売上げを上回っているものや、立木販売において、伐採した立木竹売払代が低価で、伐採跡地への植栽経費すら賄えないものや、造林において、厳しい自然環境の影響を受けて植栽木の過半が消滅したものがあったりして、事業が効率的に実施されていない事態が見受けられ、経費節減の効果に乏しい状況となっている。

 国有林野事業の経営改善は改善計画に即し収入の確保、事業運営の能率化、要員規模の縮減、組織機構の簡素合理化、投資の効率化等に努めているものの、なお経営の悪化が進み、適切な事業運営が確保できなくなっているのは、収入面において、〔1〕 住宅建設の不振等のため木材価格が長期間下落・低迷傾向にあること、〔2〕 資源的制約や森林の有する公益的機能の確保の要請に対応した森林施業の実施によって伐採量が減少し収入の増加に制約が生じていること、また、支出面において、〔1〕 事業の拡張期に増大した要員が、現状の事業規模に見合った要員数への縮減に対応できず事業運営の能率化が進まないまま人件費支出が増大していること、〔2〕 国有林野における森林施業については、森林資源の維持培養と森林生産力の増進を図ることから人工林化による森林生産力の増大が相当程度期待される林地においては低収益の伐採地もその対象に含めるなどして人工林施業を行うなど造林を計画的に進めているが、これら林業生産基盤整備に要する資金の大部分を借入金により賄っているため、その償還金及び利子支払に多額を要していること、〔3〕 国有林野は比較的奥地に所在し、気候、地形、標高、土壌等の自然的条件等も厳しいものが多かったりしていて立木伐採及び造林経費が割高になっていることなどによるものと認められる。
 しかして、国有林野事業の経営は、木材価格の動向に影響されて収入面の確保に制約があること、他方、厳しい財政事情下においても、水資源のかん養等森林の公益的機能を確保し、林業生産基盤の整備を継続的に進める必要性があることなど経営改善を進める上での困難な事情を抱えており、現状のまま推移すると、国有林野事業の財政は更に悪化し、改善計画で定めた63年度を目途として自己収入と事業支出の均衡を回復するという当面の目標を達成できなくなるばかりでなく、72年度までに収支の均衡を回復し、経営の健全性を確保するという目標の実現も困難となるおそれがあると認められる。