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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

道路築造工事における盛土構造の設計を適切に行うよう改善させたもの


(1) 道路築造工事における盛土構造の設計を適切に行うよう改善させたもの

科目 (款)高速道路建設費 (項)建設工事費
部局等の名称 名古屋、高松両建設局及び沖縄建設所
契約名 (1) 中央自動車道塩尻工事ほか9工事
(2) 土地売買契約2,335件
契約の概要 高速道路建設事業の一環として、道路用地約185万m2 の取得及び盛土約678万m3 等を施工する工事
契約金額 (1) 28,670,953,135円(当初契約額28,640,000,000円)
(2) 56,956,758,101円
契約の相手方 (1) 株式会社森本組・大日本土木株式会社中央自動車道塩尻工事共同企業体ほか9共同企業体
(2) 荒田某ほか2,334人
契約 (1) 昭和59年10月〜61年3月 指名競争契約
(2) 昭和57年3月〜61年3月 随意契約

 上記の各工事において、盛土構造の設計が適切でなかったため、建設費約4億7400万円が不経済となっていた。
 このように、建設費が不経済となっていたのは、盛土構造の設計に当たり用地費を含ため建設費全体の比較検討を行って経済的な設計をする配慮が十分払われていなかったことによるもので、工事施工箇所の実情に応じた経済的な設計を行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、名古屋、高松両建設局及び沖縄建設所が昭和60事業年度に施行している道路土工等の10工事(工事費総額286億7095万余円)及びこれらの工事に係る用地185万6657m2 の取得(用地費総額569億5675万余円)について検査したところ、次のとおり、盛土構造の設計が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記各工事は、高速道路の建設工事の一環として盛土約678万m3 等を施工するものであるが、このうち盛土構造の設計についてみると、公団本社制定の設計要領において地盤面から勾配をつけて所定の高さまで全てを盛土により築造する構造(以下「全断面盛土タイプ」という。)を標準としていることや、このタイプの工事費が割安であることなどから、盛土区間のうち、所要の用地幅の確保が困難であるなどのため用地を縮小して盛土の法尻部に擁壁を設けた構造(以下「擁壁タイプ」という。)にしている区間(延長12,791m)を除いた延長24,217mについて、全断面盛土タイプを採用している。

 しかしながら、上記のように盛土構造のタイプによって所要の用地面積が異なることから、盛土構造の設計に当たっては、単に工事費の検討だけでなく、用地費を含めた建設費全体の比較検討を行って経済的な設計を行う要があり、本件盛土区間は、〔1〕 用地費が1m2 当たり平均21,000円から45,000円程度と比較的高いこと、〔2〕 盛土築造のための大量の土砂を本線外から採取し搬入する費用を要すること、〔3〕 基礎地盤が安定しているため、擁壁の施工に際し基礎ぐいの必要がなく、経済的に施工できることなどから、全断面盛土タイプを採用していた区間のうち、法面勾配が緩くて用地幅を縮小できる度合いが大きい区間については、擁壁タイプで施工することによる工事費の増加額より用地幅の縮小による用地費等の低減額が大きいため、擁壁タイプを採用するのが経済的であると認められた。
 いま、仮に、全断面盛土タイプを採用している延長24,217mのうち擁壁タイプの施工が可能で、しかも経済的になると認められる延長16,170mについて、盛土法尻部に擁壁を施工(高さは施工及び維持管理上からみて一般的かつ効果的と認められる2mで施工)することとして設計したとすれば、建設費を約4億7400万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、61年10月に設計要領を改善し、同年11月以降適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)