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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 日本私学振興財団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

私立大学医学部附属病院の教員のうち授業等を全く行っていない者を補助金算定の対象から外すよう改善させたもの


私立大学医学部附属病院の教員のうち授業等を全く行っていない者を補助金算定の対象から外すよう改善させたもの

科目 (補助金勘定)  (款)補助金  (項)補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
事業名 私立大学等経常費補助金に係る事業(昭和59、60年度)
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与その他教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人埼玉医科大学ほか10学校法人(注1)
上記に対する財団の補助金交付額の合計 昭和59年度 31,428,980,000円
昭和60年度 40,900,464,000円
72,329,444,000円

 上記の補助金額の算定に当たり、その基礎となる「専任教員等」に、附属病院に勤務する教員で授業等を全く担当していない者を含めていたため、昭和59年度及び60年度において約16億4330万円が適切に交付されていなかったと認められる。
 このような事態となったのは、各私立大学における医学部附属病院に勤務する教員の学生に対する教育の形態が種々であって、学生に対する授業等を全く担当しておらず、主として附属病院の診療業務に従事して、その収入に寄与している者もいるのに、これを日本私学振興財団が補助金額算定の基礎となる専任教員等の勤務に関する具体的要件に十分反映させていなかったことによるもので、この要件を改める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本私学振興財団(以下「財団」という。)は、私立学校振興助成法及び日本私学振興財団法(昭和45年法律第69号)の規定に基づき、私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「私立大学等」という。)を設置する学校法人に対し、当該私立大学等における教育又は研究に係る経常的経費について補助金を交付しており、その交付に当たっては、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年11月30日文部大臣裁定。以下「交付要綱」という。)及び私立大学等経常費補助金配分基準(昭和58年9月16日財団理事長裁定。以下「配分基準」という。)に基づき、その交付を申請しようとする各学校法人に、当該学校法人の設置する私立大学等に係る前年度の12月末日現在の専任教員等の数、専任職員数及び学生数などに関する資料を提出させ、これらの数値を基に補助金の額を算定することとしている。(前項「私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの」参照)
 そして、補助金額算定の基礎となる専任教員等の範囲については、交付要綱において、

(ア) 当該私立大学等の専任の学長、校長、副学長、教授、助教授、講師及び助手として発令されている者

(イ) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けている者

(ウ) 当該私立大学等に常時勤務している者

の3要件のすべてを満たす者と定められている。このうち、(ウ)の要件については、配分基準において、助手を除き、「1週間の割当授業時間数が6時間以上の者であること」との具体的要件が付加されているが、例外的に医歯学部附属病院に勤務する者等については、1週間の割当授業時間数が6時間未満の者であっても、この要件を満たすものとして補助金算定の基礎に含めることとされている。
 しかして、医学部を有する私立大学を設置している28学校法人のうち学校法人埼玉医科大学ほか16学校法人(注2) について、その補助金額の算定の基礎とされた専任教員等の勤務状況を調査したところ、次のような事態が見受けられた。

 すなわち、これら17学校法人の設置する私立大学の附属病院(診療所を含む。以下同じ。)についてみると、複数の附属病院を有する大学や、医学部の所在地に設置した附属病院のほか、かなり遠隔の地にも附属病院を有している大学が多数あり、これらの附属病院の中には学生に対する臨床実習指導に全く使われていないものや、その一部の診療科のみが使われているにすぎないものが相当数あった。そして、これらの附属病院に勤務する専任教員等の中には、医学部において学生に対する授業を全く担当していないばかりでなく、附属病院において学生に対する臨床実習指導をも全く行っていない者が59年度9大学22附属病院で197名、及び60年度11大学25附属病院で160名、両年度で合計357名見受けられた。

 しかしながら、本件補助金の対象となる経費は「私立大学等における教育又は研究に係る経常的経費」であって、上記のように、学生に対する教育に全く従事することなく、また、専ら研究に従事するものでもなく、主として附属病院の診療業務に従事してその収入に寄与している者についてまで補助金額算定の基礎となる専任教員等に含めていることは、適切ではないと認められた。
 いま、仮に、上記の両年度合計357名を専任教員等から除外して、上記の59年度9大学、60年度11大学をそれぞれ設置する各学校法人に対する補助金額を計算し、これを年度別に合計すると、59年度の31,428,980,000円は30,568,945,000円と、60年度の40,900,464,000円は40,117,147,000円となり、その開差額は59年度約8億6000万円、60年度約7億8330万円、計約16億4330万円となる。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本私学振興財団では61年11月、補助金算定の基礎となる上記医歯学部附属病院に勤務する者について授業及び臨床実習指導を行っている者に限定するなどの配分基準の改正を行う処置を講じた。

 (注1)  10学校法人 慈恵大学、順天堂、昭和大学、帝京第一学園、東海大学、東京医科大学、東京女子医科大学、日本大学、日本医科大学、関西医科大学(ただし、順天堂及び東海大学は60年度のみ)

 (注2)  16学校法人 杏林学園、慶應義塾、慈恵大学、順天堂、昭和大学、帝京第一学園、東海大学、東京医科大学、東京女子医科大学、日本大学、日本医科大学、自治医科大学、藤田学園、関西医科大学、兵庫医科大学、福岡大学