ページトップ
  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(41)−(47) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農蚕園芸振興費 (項)水田利用再編対策費 (項)畜産振興費
(組織)水産庁 (項)水産業振興費
部局等の名称 東北、関東、九州各農政局、水産庁、沖縄総合事務局
補助の根拠 予算補助
事業主体 漁業協同組合4、その他4、計8事業主体
補助事業 水田利用再編対策推進事業等7事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 255,606,000円

 上記の7補助事業において、補助の対象とは認められないものがあったり、補助の目的を達していないものがあったりなどしていて、国庫補助金104,597,739円が不当と認められる。これを県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)
 農林水産省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省ではこれらの事業主体に対して事業に要する費用について直接又は間接に補助金を交付している。
 しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の8事業主体が実施した沿岸漁業構造改善事業、畜産総合対策事業等の7事業において補助の対象とは認められないものがあったり、補助の目的を達していないものがあったりなどしていた。
 いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。

補助の対象とは認められないもの

4事業

不当と認めた国庫補助金

13,446,632円

補助の目的を達していないもの

1事業

不当と認めた国庫補助金

84,717,000円

補助事業で設置した施設を目的外に使用しているもの

1事業

不当と認めた国庫補助金

3,320,265円

工事の契約処置が適切でないもの

1事業

不当と認めた国庫補助金

3,113,842円

(別表)

県名
事業
事業主体
(所在地)
事業費
左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金
摘要
千円 千円 千円 千円
(41) 岩手県 水田利用再編対策推進事業(暗きょ排水施設) 三十人町転作営農組合(北上市) 3,410 1,705 3,410 1,705 補助の対象外
 この事業は、昭和59年度補助事業として、水田利用再編対策の一環として転作田を団地化し、転作作物の統一化、排水管理及び農作業の効率的実施を図り、生産性の高い転作を推進するための条件を整備するため、受益面積2.5haのほ場に暗きょ排水施設を事業費3,410,000円で施工したものである。
 しかして、上記ほ場は、受益農家数5戸により農作業の効率的実施等を図ることとして事業を施行したとしていたが、実際にこのほ場を使用しているのは当初から2戸の農家にすぎず、転作田を団地化し、農作業の効率的実施等を図ろうとする目的に沿わないため補助の対象とは認められず、これに係る国庫補助金1,705,000円は交付の要がなかったものである。
(42) 茨城県 水産物流通加工拠点総合整備事業(卸売場建物の設置) 久慈町漁業協同組合及び久慈浜丸小漁業協同組合(日立市) 142,079 45,449 9,732 3,113 契約処置不適切
 この事業は、昭和60年度補助事業として、日立久慈地域における水産物の流通機能の向上を図るため、卸売場建物2,025.3m2 (うち補助対象面積1,581.7m2 )を設置したもので、補助対象外のものを含めて契約額212,560,000円(うち補助対象事業分142,079,000円)で請け負わせ施行していた。

 しかして、この契約を指名競争に付するに当たり、予定価格は228,000,000円、最低制限価格は予定価格の93.2%に当たる212,500,000円と設定し、11業者を指名して入札を行ったところ、そのうちの6業者の入札価格は最低制限価格を下回る198,000,000円(予定価格の86.8%)から210,100,000円(同92.1%)までであったので、これらの入札者を失格として排除し、予定価格と最低制限価格の範囲内のうちの最低価格212,560,000円(予定価格の93.2%)で入札した業者を落札者と定め契約していた。

 しかし、本件契約は、上記のとおり指名競争入札によっており、事業主体では、資力、信用、能力等を審査のうえ、契約の内容に適合した履行を十分に期待できる業者を選定して入札に参加させているにもかかわらず、予定価格に対して93.2%という著しく高率の最低制限価格を設定したため、契約の適正な履行が確保できると認められる価格で入札した6業者を排除することとなり、競争契約における競争の利益を著しく阻害し、その結果、最低価格で入札した業者と契約したとした場合に比べて14,560,000円(うち補助対象事業費相当額9,732,000円、これに対する国庫補助金相当額3,133,842円)割高な契約を締結することとなったのは適切とは認められない。

(43) 千葉県 地域農業生産総合振興事業(既存の施設野菜団地の改造) 農事組合法人原園芸組合(長生郡一宮町) 61,470 30,735 6,661 3,330 補助の対象外
 この事業は、昭和60年度補助事業として、既存のガラス温室17棟の施設野菜団地のうち11棟を省エネルギー施設に改造し、石油燃料の節減を図るなどのため、これら11棟に温度、湿度等を日射量等に応じて制御する複合環境調節装置等の生産管理機械施設を事業費61,470,000円で設置したものである。
 しかし、上記生産管理機械施設のうち天窓自動開閉装置等を設置する工事の一部として、既存のガラスの取りはずし及び再度の取付けのため必要であるとして施行したパテ(注) の取替工事延長98,741mには、本件天窓自動開閉装置等の設置工事に必要がなく補助の対象とならない既存施設の維持補修のための取替工事延長31,801mが含まれており、これに係る国庫補助金3,330,937円は交付の要がなかったものである。

(注)  パテガラスを枠へ固定するために使うゴム状物質で接合剤の一種

(44) 長野県 畜産総合対策事業(牧草地・飼料畑の造成整備等) 財団法人長野県農業開発公社(長野市) 127,000 63,500 12,491 6,245 補助の対象外
 この事業は、昭和60、61両年度の補助事業として、畜産農家の飼料自給率の向上を推進し、その経営の安定、合理化を図るため、牧草地及び飼料畑の造成整備等の事業を飯田市山本地区内において、事業費127,000,000円(60年度75,000,000円、61年度52,000,000円)で実施したもので、上記公社では、牧草地40,833m2 及び飼料畑8,637m2 の造成整備並びにこれらに係る排水路2,054mの設置等を施行したとしていた。
 しかし、上記飼料畑として整備したとしていた8,637m2 のうち地権者4名に係る6,149m2 については、実際は、当初から水田として整備していて、飼料作物は栽培しておらず補助の対象とは認められないものであり、これに係る国庫補助金6,245,895円(60年度5,526,770円、61年度719,125円)は交付の要がなかったものである。
(45) 島根県 第2次沿岸漁業構造改善事業(水産物荷さばき施設の設置) 益田市漁業協同組合(益田市) 92,414 22,900 13,399 3,320 目的外使用
 この事業は、昭和50年度補助事業として、水産物の流通の改善等により漁家経営の安定を図るため、水産物荷さばき施設1棟延べ1,497.66m2 (荷さばき所550m2 、共同作業場177m2 、漁具保管倉庫224m2 、水産物保管倉庫等546.66m2 )を事業費92,414,797円で設置したものである。
 しかし、上記組合では、54年5月に同施設のうち共同作業場、漁具保管倉庫の一部等289.92m2 (取得価額16,768,859円、残存価額13,399,514円)を事務室、購買事業用倉庫等に改造して目的外に使用している。なお、この事業については、漁業近代化資金(金融機関が都道府県から利子補給を受けて低利に貸し付ける資金)40,000,000円が貸し付けられているが、上記の結果、目的外使用の部分に係る54年5月から62年6月までの利子補給に対する国庫補助金262,757円は交付する要はなかったものである。
(46) 大分県 地域農業生産総合振興事業(うんしゅうみかん園の転換) 国東町柑橘研究会(東国東郡国東町) 14,100 6,600 4,624 2,164 補助の対象外
 この事業は、昭和60年度補助事業として、過剰基調にあるうんしゅうみかんから他作物への転換を図るため、受益面積10ha(受益農家数28戸)の樹園地の伐採、抜根、整地を事業費14,100,000円で実施したとしていたものである。
 しかし、上記樹園地10haのうちには、受益農家のうちの1戸が、本件事業実施前に農林漁業金融公庫から資金を借り受けて伐採、抜根、整地を実施していた3.28haが含まれており、これについては本件補助の対象とは認められないものであり、これに係る国庫補助金2,164,800円は交付の要がなかったものである。
(47) 沖縄県 沖縄県水産業構造改善特別対策事業(削り節加工場の設置) 伊良部町漁業協同組合(宮古郡伊良部町) 136,600 84,717 136,600 84,717 補助目的の不達成
 この事業は、昭和57年度補助事業として、かつお漁業の振興を図るため、沖縄県内で生産されたかつお節(以下「原料節」という。)を二次加工して付加価値を高めるための削り節加工場(建物1棟延べ703.5m2 及び加工機械一式)を事業費136,600,000円で糸満漁港区域内に設置したものである。

 しかして、上記漁業協同組合が補助申請に当たり策定した事業実施計画によると、上記加工場は、同漁業協同組合のほか県内の八重山、池間、本部各漁業協同組合から原料節の供給を受け、年間203.1tの処理を行うことにより年間188.8tの削り節を生産すること、加工場の管理運営は同漁業協同組合が直接行うこととしていた。

 しかし、本件加工場は上記4漁業協同組合の原料節生産実績(過去5箇年間の平均194.2t)を上回る量を処理する規模の施設であることなどから、同漁業協同組合は、原料節供給についての関係漁業協同組合の十分な協力が得られ、また、生産能力に見合った製品販売先の確保ができなければ加工場を管理運営することは困難な状況であったにもかかわらず、それらの見通しもたたないうちに補助申請していた。そして、同漁業協同組合では、加工場の設置後、本件加工場を管理運営体制が十分でない任意組合に当初から貸し付けていたばかりか、原料節の供給についての関係漁業協同組合の協力が得られなかったり、製品の販路が確保できなかったりしたなどのため、加工場における生産実績は当初計画を著しく下回り、61年9月以降は生産が中止されており、事業効果が発現していない状況で、補助の目的を達していない。

577,073 255,606 186,919 104,597