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  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

土地改良事業における換地業務に関する国庫補助金の経理を適正に行うよう改善させたもの


(2) 土地改良事業における換地業務に関する国庫補助金の経理を適正に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業振興費 (項)農業構造改善対策費 (項)土地改良事業費 (項)農用地開発事業費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)等
事業主体 県11、市町村147、土地改良区等194、計352事業主体
補助の対象 ほ場整備事業ほか19事業の638換地工区
補助事業の概要 土地改良事業のうち土地の区画形質の変更を伴うほ場整備事業等における換地処分のための業務
上記に対する国庫補助金交付額の合計 2,528,293,000円(昭和50年度〜61年度)

 上記の事業主体において、ほ場整備事業等の土地改良事業における換地処分のための業務(以下「換地業務」という。)に要した費用に対して国庫補助金の交付を受けているが、換地業務が完了していないのに完了したこととして、換地業務費16億7037万余円に対する国庫補助金8億1175万余円全額の交付を受け精算を了していた。

 このような事態を生じているのは、事業主体において関係法令等についての理解が十分でなく、換地業務が当該年度内に完了していないのに補助事業に係る予算の繰越手続を執るなどの措置を行わなかったこと、地方農政局等において補助事業等実績報告書の審査に当たり換地業務の完了についての確認が十分でなかったことによるもので、本件補助金の経理を適正に行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 農林水産省では、土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づき、農業生産の基盤の整備及び開発を目的として、換地処分を伴うほ場整備事業、農地開発事業等の土地改良事業を実施している。この換地処分は、土地の区画形質の変更を伴うほ場整備事業等において、当該事業の施行に係る地域(その地域を数区に分けたときはそのそれぞれの区)を単位(以下「換地工区」という。)として、当該事業の工事前の区画の土地に対応するものとして定められた工事後の区画の土地を工事前の区画の土地と法律上全く同一のものとみなすことにより、その間における権利の帰属関係を一挙に確定するための制度として土地改良法に基づき行われるもので、農林水産省においては、都道府県等が事業主体となって実施する換地処分を伴う土地改良事業について、その換地業務に要した費用に対して工事費と同率の国庫補助を行っている。そして、換地業務は、土地改良事業の工事と並行して進められ、工事完了後換地計画に基づいて関係権利者に換地処分通知を行うなど一連の手続を経て換地処分登記をもって終了することになっている。

 しかして、本院において、青森県ほか24府県(注) 及び管下市町村等が実施した換地処分を伴う土地改良事業で、昭和50年度から61年度までに工事が完了した5,468事業(受益面積292,668ha、換地業務費総額620億6799万余円、国庫補助金292億3755万余円)について、特に最終の換地業務である換地処分登記を行ったとしている年度の換地業務の実施状況及び国庫補助金の経理を調査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 すなわち、上記5,468事業の7,643換地工区のうち638換地工区(受益面積20,872ha、換地業務費総額52億9551万円、国庫補助金25億2829万余円)については、実際は換地処分登記がなされておらず、このうちの452換地工区については換地処分の前提として必要な府県知事による換地計画の認可又は決定さえ行われていない状況であったのに、上記638換地工区の事業を実施した352事業主体においては、最終年度の換地業務費16億7037万余円に対する国庫補助金8億1175万余円全額の交付を受け、当該年度においてすべての換地業務が完了したとする補助事業等実績報告書を提出し、国庫補助金の額の確定を受けていた。なお、上記638換地工区の換地業務は土地改良事業団体連合会等に業務委託して実施しているものがほとんどであるが、この業務委託契約の代金の支払に係る経理処理の状況についてみると、事業主体は、換地業務が完了していないにもかかわらず受託者から完了届を提出させこれにより確認検査調書等を作成したりなどして、契約金額の全額を支払っており、受託者はその後も換地業務を引き続き実施している状況であった。

 上記のように352事業主体において、換地業務が完了していないのに、国庫補助金の全額の交付を受け精算を了しているのは著しく適正を欠いていると認められた。

 このような事態を生じているのは、事業主体において関係法令等についての理解が十分でなく、換地計画に対する一部受益者からの異議の申出等がありその調整に時日を要するなどして、換地業務が当該年度内に完了していないのに補助事業に係る予算の繰越手続を執るなどの措置を行わなかったこと、地方農政局等において補助事業等実績報告書の審査に当たり換地業務の完了についての確認が十分でなかったことによるものと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、62年11月に換地業務の適正かつ円滑な実施を図るため「換地業務指導等要領」を定めて、地方農政局長等に通知し、今後は、都道府県に対し、各年度において確実に実施できる換地業務を確認させ、これに見合う換地業務費を決定させるとともに、換地処分登記の申請が行われた旨を証する書面を換地業務が完了したとする補助事業等実績報告書に添付して地方農政局等に提出させるなど経理の適正化を図ることとする処置を講じた。

(注)  青森県ほか24府県 京都府、青森、岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、福井、山梨、長野、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、香川、愛媛、佐賀、大分各県