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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

水路トンネル工事における覆工コンクリート打設費の積算を適切なものに改善させたもの


(2) 水路トンネル工事における覆工コンクリート打設費の積算を適切なものに改善させたもの

会計名及び科目 国営土地改良事業特別会計 (項)土地改良事業費
(昭和60年度までは「特定土地改良工事特別会計」)
部局等の名称 東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局
工事名 会津宮川農業水利事業宮川幹線用水路宮川トンネル工事ほか24工事
工事の概要 土地改良事業の一環として、水路トンネル等を施工する工事
工事費 14,219,200,000円(当初契約額13,932,500,000円)
請負人 株式会社青木建設ほか13会社及び白石・日本起業田沢疏水農業水利事業右岸幹線用水路谷地沢トンネル工事建設共同企業体ほか7共同企業体
契約 昭和60年9月〜62年11月 指名競争契約又は随意契約

 上記の各工事において、水路トンネルの覆工コンクリート打設費の積算(積算額15億7350万余円)が適切でなかったため、積算額が約5700万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、近年、トンネルの覆工コンクリートの打設工事に覆工型枠として使用する鋼製スライディングフオームが、その構造、材質、性能等の向上などによって、さらに他のトンネル工事現場に転用することが可能となっているのに、これを積算の基準に反映していなかったことによるもので、基準を使用実態等に即した適切なものに改める要があると認められた。
 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 農林水産省では、土地改良事業の一環として、ダム、水路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、東北農政局ほか6農政局が昭和62年度に施行している水路トンネル等の工事25工事(工事費総額142億1920万円)について検査したところ、次のとおり、トンネルの覆工コンクリート打設費の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各工事では、内空の高さが1.8mから3.6mまでの小断面の水路トンネルを築造しているが、このトンネルの覆工コンクリートを打設する工事については、いずれも、覆工型枠としてトンネル内部を移動することのできる鋼製スライディングフオーム(注) (以下「スライディングフオーム」という。)を使用している。そして、上記各部局では、農林水産省が制定した土地改良事業等請負工事標準歩掛(以下「標準歩掛」という。)に基づいて、本件工事の覆工コンクリート打設費(型枠費のほか、材料費、打設労務費等を含む。)を積算しており、標準歩掛では、型枠費のうちスライディングフオームの損料については、スライディングフオームの使用をトンネル延長の長短に関係なく1工事現場限りとするとの考え方に立って、その償却費率を90%とし、また、修理費率をトンネル延長が1,000mまでの場合には10%、1,000mを超える場合にはこれに以後300mごとに5%を加算した率として、償却費率及び修理費率を合算した率(100%以上となる。)をスライディングフオームの新品価格(本件25工事においては4,850,000円から8,690,000円まで)に乗じて算定することになっており、本件25工事においてもこの方式(以下「全損計算方式」という。)により、その額を算出(1契約当たり4,850,000円から9,792,000円)している。そして、この損料にスライディングフオームの撤去、移動及び据付けに係る労務費等を加えて1m当たりのトンネル型枠費を11,446円から29,284円と算出し、これに材料費(生コンクリート)、打設労務費等を合わせて、覆工コンクリート打設費を25工事施工延長20,389mで総額15億7350万余円と算定していた。

 しかしながら、近年、トンネル工事の増加に伴いスライディングフォームを使用する機会が増加していること、及びその構造、材質、性能等が向上していることから、他契約の工事現場に転用することが可能となっていて、現に、本院が実地に調査を行ったトンネル工事において実際に転用している事例も見受けられる状況であり、また、他機関等では、既に積算基準等において転用を前提とした損料計算方式を採用していることからみて、全損計算方式で算出している本件各工事の覆工コンクリート打設費の積算は過大になっていると認められた。
 いま、仮に、本件各工事において、近年のスライディングフォームの使用実態等を反映した適切な損料算定方法でスライディングフォームの損料の額を算出することとして覆工コンクリート打設費を積算したとすれば、積算額を約5700万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、63年10月に標準歩掛に定める覆工コンクリートの打設工事に覆工型枠として使用するスライディングフォームの損料算定方法を適正なものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  鋼製スライディングフォーム  H形鋼、鋼板等からなる1枠1.5mの型枠を工場で製作し、トンネルの工事現場において8枠を一連に組み立てて、トンネル内部を移動することができる標準長さ12mの覆工型枠

(参考図)

(参考図)