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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第11 建設省|
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  • 補助金

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(142)-(144)  補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)道路事業費
部局等の名称 新潟県ほか2県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)
事業主体 県2、市1、計3事業主体
補助事業 上越市県道上越糸魚川自転車道線整備等3事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 71,874,250円

  上記の3補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切を欠いていて、国庫補助金32,265,263円が不当と認められる。これを県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

  建設省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、これらの事業主体に対して事業に要する費用について補助金を交付している。
  しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の3事業主体が実施した道路事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切を欠いていた。

(別表)

県名 事業 事業主体 事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(142)

新潟県

上越市県道上越糸魚川自転車道練整備

新潟県
千円
19,553
千円
9,776
千円
4,464
千円
2,232

工事の設計不適切
 この工事は、県道上越糸魚川自転車道線整備事業の一環として、上越市有間川地内の桑取川に橋長79.7mの有間川橋を新設するため、昭和61年度に橋台前面に護岸工としてコンクリートブロック積み、コンクリートブロック張り等を施工したもので、このうち右岸側のコンクリートブロック積み延長29.55m(高さ5m)の基礎は、高さ0.3mのコンクリート基礎とし、その根入れについては本件工事等で取り壊した在来の護岸の根入れに合わせるなどして設計したため、基礎の天端の位置は現況最深河床から0.3m上がりとなっていた。

 しかしながら、一般に、護岸は流水による河床の洗掘等に対して安全であるように、その基礎を現況最深河床等より深く埋め込むこととされており、新潟県が設計に当たり準拠している建設省北陸地方建設局制定の「設計要領(河川関係編)」によれば、護岸の河床への根入れは、基礎の天端を計画河床又は現況最深河床のいずれか低いものに対して1.0m埋め込むことを標準とすると定められていることから、本件基礎の天端は、現況最深河床(桑取川には計画河床が設定されていない。)に対して1.0m埋め込む設計とすべきであったと認められるのに、上記のとおり設計し、施工したため、基礎の根入れは上記設計要領の定めに比べ1.3mも不足しており、本件右岸側護岸は河床の洗掘等に対して不安定なものとなっていると認められる。
 

(143) 静岡県 富士宮市市道大宮富士線金谷橋橋りょう整備 富士宮市 87,670 45,633 49,097 27,003 工事の設計不適切
うち国庫補助対象額
 82,970
 この工事は、市道大宮富士線の金谷橋橋りょう整備事業として、昭和61、62両年度に富士官市黒田地内の潤井川に単純合成桁橋りょう(橋長25.7m、幅員12.0m)を新設するため、下部工として橋台2基の設置等を、上部工として支承の据付け、単純合成桁の製作、架設等をそれぞれ施工したもので、橋台の配筋図の作成に当たっては、桁と橋台とを一体化する固定支承を左岸側橋台に、載荷及び温度変化などによる桁の伸縮に追従できる可動支承を右岸側橋台に据え付けることとして、橋台の縦壁の主鉄筋は、左岸側橋台に径25mmの鉄筋を、右岸側橋台に径19mmの鉄筋をそれぞれ配置する設計とし、これにより施工していた。そして、橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、上記のとおり支承を据え付け、主鉄筋を配置した場合、主鉄筋に生ずる引張応力度(地震時)(注1) が許容引張応力度(注1) を下回っていること、橋台基礎底面の地盤の許容鉛直支持力(地震時)(注2) が鉛直力(注2) を上回っていることなどから安定計算上安全であるとしていたものである。

 しかし、支承部の設計に当たっては、誤って上記とは逆に左岸側橋台に可動支承を、右岸側橋台に固定支承を据え付けることとし、これにより施工していた。このため右岸側橋台に加わる水平力が設計計算書の数値より増加することにより、縦壁の主鉄筋に生ずる引張応力度が、縦壁の根元部では2,825kg/cm2 、その1m上部では3,293kg/cm2 となり、いずれも許容引張応力度2,700kg/cm2 を上回っていて、また、基礎底面の地盤の許容鉛直支持力が896tとなり、鉛直力の1,017tを下回っていて、本件右岸側橋台は地震時においてはその安定が確保できず不安定なものとなっており、したがって、同橋台に架設された単純合成桁等も不安定な状態になっていると認められる。


(注1)  引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その設計上許される限度を「許容引張応力度」という。

(注2)  地盤の許容鉛直支持力・鉛直力  「鉛直力」とは、上部工及びく体の自重等の鉛直方向に働く力をいい、鉛直力を地盤が支えることのできる設計上許される限度を「地盤の許容鉛直支持力」という。

(参考図)

(参考図)
補助事業の実施及び経理が不当と認められるものの図1

(144) 広島県 東広島市一般国道375号道路改良 広島県 29,935 16,464 5,508 3,029 工事費の積算過大
 この工事は、一般国道375号の道路改良の一環として、昭和61年度に東広島市西条町土与丸地内の中川に橋長11m、幅員16mの仮橋を架設したもので、橋台及び橋桁は、杭としてH形鋼を地中に打ち込みこれに受梁として溝形鋼を取り付け、受梁上には主桁としてH形鋼を設置し、その間を等辺山形鋼及び溝形鋼の横桁で結合して構築し、また、床版には舗装止めとして等辺山形鋼を接合することとしていた。そして、この工事費の積算に当たっては、広島県が制定した「橋梁積算基準」に基づいて、上記の杭等の各部材(総重量42.433t)の工場原価を13,208,629円と算出し、これに現場施工費等を加えて工事費を算定していた。

 しかし、上記「橋梁積算基準」は、鋼板に工場で切断、孔あけ、組立て、溶接等の加工を行って橋りょう用の桁等の部材を製作する場合に適用するものであり、これに対し本件工事の場合、設計図書等によれば、杭及び舗装止めは、既製品のH形鋼等を工場で加工することなく直接現地に搬入して切断、孔あけ等を行うものであり、また、主桁、受梁及び横桁は、既製品のH形鋼等を使用して、工場で孔あけ、補剛材の取付け等を行い、現地に搬入して組立て等を行うものであるから、前記基準を適用して工場原価を積算したのは適切とは認められず、上記の作業内容に応じて積算したとすれば、工場原価は6,108,219円となる。
 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算漏れとなっていた覆工板の輸送費等1,017,163円を考慮するなどしても総額24,426,067円となり、本件工事費はこれに比べて約5,508,000円割高になっていると認められる。
 

137,158 71,874 59,069 32,265
うち国庫補助対象額
 132,458