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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

テレビジョン電波の受信障害を改善するための共同受信施設の維持管理に要する費用の公団負担額の積算を業務の実態に適合するよう改善させたもの


(3) テレビジョン電波の受信障害を改善するための共同受信施設の維持管理に要する費用の公団負担額の積算を業務の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)高速道路建設費 (項)建設工事費
部局等の名称 名古屋建設局
契約の概要

高速自動車国道近畿自動車道名古屋亀山線の建設に起因するテレビジョン電波の受信障害を改善するための共同受信施設の設置及び保守、点検、更改等の維持管理に要する費用を負担するもの

契約金額の総額 563,813,000円
契約の相手方 大治町地区テレビ共聴組合ほか6組合
契約 昭和62年9月〜63年2月

  上記の各契約において、テレビジョン電波受信障害を改善するための共同受信施設の維持管理に要する費用の公団負担額の算定に当たり、保守費の積算(積算額1億6306万余円)が適切でなかったため、積算額が約3300万円過大になっていた。
  このように積算額が過大になっているのは、都市部の住宅密集地におけるテレビジョン電波受信障害を改善するための共同受信施設の保守作業は、対象施設が集約化しており、また、施設用機材の性能が向上し、規格の統一化がなされていることから、能率的に行われるなどしているのに、これらを積算に反映させていなかったことによるもので、業務の実態に即した積算をする要があると認められた。
 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

  日本道路公団(以下「公団」という。)では高速自動車国道等の建設工事を毎年多数実施しているが、これに伴い名古屋建設局が昭和62事業年度に締結した大治町地区テレビ共聴組合ほか6組合(1,478戸。以下「共聴組合」という。)との間におけるテレビジョン電波受信障害を改善するための費用負担契約(契約総額5億6381万余円)について検査したところ、次のとおり、保守費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
  すなわち、上記各契約は、高速自動車国道近畿自動車道名古屋亀山線の建設に起因して発生した周辺民家におけるテレビジョン電波の受信障害を改善するため、公団本社が定めた「道路の設置に起因するテレビジョン電波受信障害により生ずる損害等に係る費用負担に関する達」(昭和55年道路公団達第6号)等に基づき、テレビジョン電波共同受信施設(以下「共聴施設」という。)を設置する費用及び共聴施設設置後20年間にわたって保守、点検、更改等の維持管理を行うのに要する費用(以下「維持管理費」という。)を渡し切りで公団が負担するものである。そして、共聴施設の設置及びその維持管理は共聴組合から委任を受けた財団法人名古屋ケーブルビジョン(以下「NCV」という。)が行うこととしている。

  しかして、上記共聴施設に係る維持管理費は、保守費及び部分的更改費で構成されており、このうち保守費の積算についてみると、本件と同様の費用負担をしている他団体の積算方法及び公団本社が上記通達に関連して積算の方法について発した事務連絡の積算例を採用するなどしで、電工1人の1日当たりの作業量を定期点検の場合は30戸、精密点検の場合は15戸、緊急点検修理の場合は0.5箇所として、これに基づく所要人員数に労務単価を乗じて点検修理に係る労務費を算出し、保守材料費、測定器具工具費、支障移転工事費、共聴組合の運営に必要な組合費徴収事務費等を加えて、1年間分の保守費を算定し、この1年間分の保守費に20年間分に相当する年金現価率(注) 及び諸経費率を乗じて、保守費を総額163,062,108円としていた。

  しかしながら、本件積算に当たって採用した上記の他団体の積算方法は、点検効率の悪い山間部等に散在する1戸建住宅を対象として行った維持管理の場合の作業実績を基に作成されたものであり、また、公団の事務連絡も対象戸数を40戸とするなど小規模の場合を前提としたものであった。これに対し、本件費用負担の対象地は都市部の住宅密集地であり、住宅の多くが高速道路に沿って一定地域に多数集中して所在しており、また、近年、同軸ケーブル等の共聴施設用機材の性能が向上し、その規格も統一化されていて、保守作業は能率的に行われていると認められたことから、本院においてNCVにおける作業の実態等を調査したところ、1人1日当たりの作業量は本件積算に比べ、定期点検及び精密点検はそれぞれ3.5倍程度、緊急点検修理は1.8倍程度となっており、いずれも能率が著しく向上していた。また、組合の業務はNCVが組合に代わって行っており、組合では組合費も徴収していなかった。これらの結果、一部の費用に増加があるものの、保守費全体としては積算に比べ相当程度低減している状況となっている。
  したがって、前記各契約における共聴施設の維持管理に要する保守費の積算については、NCVの作業実績及び業務の実態に即して行うのが適切であったと認められ、これにより積算したとすれば、積算額を約3300万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、63年10月に都市部における保守点検作業の実態に即した積算ができるよう積算方法及びその具体的な積算例を示した事務連絡を発し、同月以降契約を締結するものから適用することとする処置を講じた。

(注)  年金現価率  毎年必要となる費用を一定期間(20年間)分を一括して現在時点で支払う場合、一定期間に生ずる利子分を割り引くための率