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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高架橋等の鋼床版の現場溶接費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


高架橋等の鋼床版の現場溶接費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)業務費 (項)高速道路建設費
(項)負担金等受入建設費
部局等の名称 首都高速道路公団
工事名

Y141工区(その2)、Y142工区(その1)高架橋上部構造及び橋脚構造新設工事ほか16工事

工事の概要 高速道路建設事業の一環として高架橋等の鋼製上部工を製作し架設するなどの工事
工事費 32,156,400,000円(当初契約額32,607,000,000円)
請負入 宮地・トピーY141(2)、Y142工区(1)上部及び橋脚建設工事共同企業体ほか16共同企業体
契約 昭和59年12月〜62年12月 指名競争契約、随意契約

 上記の各工事において、高架橋等の鋼床版の現場溶接費の積算(積算額4億4622万余円)が適切でなかったため、積算額が約6500万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、鋼床版の現場溶接作業の実態が積算基準に反映されていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、昭和62事業年度に施行している高架橋等の鋼製上部工等の新設工事17工事(工事費総額321億5640万円)について検査したところ、次のとおり、鋼床版の現場溶接費の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記各工事は、高速道路建設事業の一環として高架橋等の鋼床版箱桁等の鋼製上部工を製作し架設するなどの工事で、高架橋等の径間が長かったり、地盤条件が悪く基礎構造に制約があったりしていることなどのため、床版としては、いずれも鉄筋コンクリート床版に比較して軽量な鋼床版を採用する設計となっている。そして、この鋼床版はそのほとんどが横方向は高力ボルトを使用して接合し、また、縦方向は現場溶接により接合して組み立てることとしているものであるが、このうち鋼床版の現場溶接費の積算についてみると、公団が制定している「工事設計積算基準・土木編」(以下「積算基準」という。)に基づき、現場溶接は、1班当たり8人編成(橋梁世話役1人、橋梁鳶工3人、橋梁溶接工4人、計8人)で行うこととし、その1日当たり施工延長としては、本件各工事の溶接総延長がそれぞれ900mを超えていることから、積算基準で溶接総延長が846mを超える場合の1日当たり施工延長としている17mを採用するなどして溶接1m当たりの単価を算出し、17工事における溶接総延長28,294mの現場溶接費を総額4億4622万余円と算定していた。

  しかして、上記積算基準において、溶接総延長が846mを超える場合の1日当たり施工延長を17mとしているのは、62年に関係団体が刊行した資料において、縦方向及び横方向とも現場溶接により接合して鋼床版を施工している工事を対象とした実態調査に基づく数値が17mであったため、これをそのまま採用したものである。

  しかしながら、本件各工事においては、鋼床版の横方向の接合は高力ボルトを使用して接合することとしているなどのため、上記実態調査における縦方向及び横方向とも現場溶接により施工している場合のように、作業性の悪い箱桁内部での裏当て材取付作業等を必要としないこと、また、溶接欠陥が発生しやすいため慎重に行う必要のある溶接線交差部の溶接がないことなどから、溶接作業が能率的に実施できるものと認められる。現に本院が鋼床版現場溶接の実態を調査したところ、前記と同じ1班当たり8人編成で施工していて、その1日当たり施工延長は平均21m程度となっていて、積算基準で1日当たり施工延長としている17mに比べ能率のよい施工となっている状況であった。
 いま、仮に上記各工事の鋼床版の現場溶接費について施工の実態に即して積算したとすれば、積算額を約6500万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、首都高速道路公団では、63年10月に積算基準を改正し、鋼床版現場溶接の1日当たり施工延長を施工の実態に即したものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)