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  • 昭和62年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第7 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

貸家経営を行おうとする土地所有者等に譲渡した民営賃貸用特定分譲住宅について、制度上定められた賃貸条件の違反の防止を図るよう改善させたもの


(2) 貸家経営を行おうとする土地所有者等に譲渡した民営賃貸用特定分譲住宅について、制度上定められた賃貸条件の違反の防止を図るよう改善させたもの

科目 (款)固定資産 (項)事業資産
部局等の名称 東京、関東、関西各支社
民営賃貸用特定分譲住宅の概要 良質で低廉な賃貸住宅の供給を目的として大都市圏及び地方中心都市において貸家経営を行おうとする土地所有者等に対して、公団が建設し長期割賦で譲渡した住宅
本院が調査した譲渡戸数 4,128戸(昭和58年5月から63年3月の間に譲渡したもの)

 上記の民営賃貸用特定分譲住宅(以下「民賃住宅」という。)について、譲渡後、制度上定められた賃貸条件に違反して賃貸されているものが499戸見受けられた。
 このような事態を生じているのは、住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)において、住宅を譲り受け賃貸している者(以下「譲受人」という。)に対し民賃住宅制度の趣旨及び賃貸条件を十分周知徹底させていなかったこと、実際の賃貸条件の把握が十分でなかったことなどによると認められ、速やかに違反の防止を図るための方策を講ずるなどの要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 公団では、民間における良質で低廉な賃貸住宅の供給を行い、住宅事情の改善を図るとともに、併せて、健全な市街地の形成に資することなどを目的として、民営賃貸用特定分譲住宅制度要綱(昭和49年総裁通達46—6、58年総裁通達64—10、60年総裁通達73—15。以下「制度要綱」という。)を定め、これに基づき、原則として大都市圏及び地方中心都市において貸家経営を行おうとする土地所有者又は借地権者に対し、昭和49年度以降、多数の民賃住宅を建設し長期の割賦で譲渡している。この民賃住宅の建設に当たっては、その住宅の仕様が公団賃貸住宅程度のものについては公団資金を充当し、公団賃貸住宅程度の仕様を超えるものについてはその超える部分について譲受人が資金を負担することとし、公団充当資金の償還に当たっては、公団資金を充てた建設費、経費及び建設利息の額を償還元金として、償還期間を35年間、償還金利を当初10年間は公団が民間から調達した資金の借入金利より低利(11年目以降は民間からの借入金利に連動した利率)とし、これによって発生する利子収支差額については国の一般会計からの補給金で補うこととなっており、62年度末において、公団が割賦金等の債権管理を行っている民賃住宅は2,365件67,856戸に上っている。

  そして、公団では、本制度の目的を実現するため、制度要綱において、民賃住宅の家賃、敷金等の賃貸条件について、譲受人が譲渡の対価の償還を完了するまでの間、〔1〕 毎月の家賃は、制度要綱に定める家賃算定基準により、償還金の月額、地代相当額等を基に算定した額以内の額とすること、〔2〕 敷金は、毎月の家賃の3箇月分に相当する額以内の額とすること(ただし、地域の特性を勘案し特に必要と公団が認めた場合は毎月の家賃の6箇月分に相当する額以内の額としている。)、〔3〕 上記敷金を除くほか、礼金、権利金、更新料その他これに類する金品を賃借人から受領できないものとすることなど、譲受人と賃借人との間の賃貸借契約に制限を付することとし、これらの制限を譲渡契約で約定することとしているところである。

  しかして、本院において、東京支社ほか2支社(注1) が58年度から62年度までに譲渡した民賃住宅のうち東京都特別区ほか6市(注2) に所在する4,128戸(償還元金433億3028万余円)に係る賃貸借契約の内容等について調査したところ、賃貸住宅として管理され、家賃も限度額内で賃貸されていておおむね制度の目的に沿って経営されてはいるものの、制度要綱に定める賃貸条件の一部に違反している事態が次のとおり見受けられた。

(1)賃借人から制度要綱に基づく家賃の3箇月分又は6箇月分に相当する額を超える敷金を受領していたもの
67戸

(2)賃借人から礼金を受領していたもの

114戸

(3)賃借人から賃貸借契約の更新時に更新料を受領することとしているもの

378戸

 

いま、上記事態の中には重複しているものがあるので、重複している分を除いて集計すると、499戸(これに係る償還元金相当額47億9095万余円)となる。

 このような事態を生じているのは、譲受人の不誠実にもよるが、公団において、

ア 譲受人等に対し、民賃住宅制度の趣旨及び賃貸条件を十分周知徹底させていなかったこと、

イ 制度要綱に定められた賃貸条件を履行させるなどのために、譲受人から提出させることとなっている報告書等を提出させていないものが相当数あり、民賃住宅の管理が十分に行われていないこと、

ウ 公団の関係規程が実際の賃貸条件を十分把握するようになっていないなど規定に不備があることなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、63年11月に各支社長に対し通達を発するなどして、譲受人等に対し制度要綱に定める賃貸条件の趣旨及び内容の周知徹底を図り、民賃住宅の賃貸借契約等の実情を十分把握して譲受人に適切な指導を行うようにするなど民賃住宅に係る賃貸条件の違反の防止を図る処置を講じた。

(注1)  東京支社ほか2支社  東京、関東、関西各支社

(注2)  東京都特別区ほか6市  東京都特別区、札幌、横浜、川崎、京都、大阪、神戸各市