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  • 昭和62年度|
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  • 第14 日本電信電話株式会社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

電柱へ無断で添架されている有線音楽放送線に係る添架料の徴収等について是正改善の処置を要求したもの


電柱へ無断で添架されている有線音楽放送線に係る添架料の徴収等について是正改善の処置を要求したもの

科目 営業収入
部局等の名称 日本電信電話株式会社(昭和60年3月31日以前は日本電信電話公社)
添架料の概要 有線音楽放送の業務を行っている者が有線音楽放送線を日本電信電話株式会社所有の電柱へ添架している場合に、同会社が添架契約に基づき徴収する添架料
無断で添架されている有線音楽放送線に係る添架料相当額 昭和59年度
昭和60年度
昭和61年度
昭和62年度
6996万余円
1億1125万余円
1億6467万余円
2億3564万余円

5億8154万余円

  上記のように、電柱へ無断で添架されている有線音楽放送線が毎年度増加し、これに係る添架料相当額が多額に上っているなどの事態が見受けられた。
  このような事態を生じているのは、添架料の徴収の確保等を図るためには、関係機関との間で有線音楽放送の正常化のための連絡・協議を密に行う必要があるのに、これがほとんど行われていないこともあるが、日本電信電話株式会社において、有線音楽放送業者の業界団体や有線音楽放送業者と無断添架の解消について十分折衝を行っていないこと、有線音楽放送業者が放送所単位にすべての道路管理者の道路占用許可を取得するまで添架契約を締結しない取扱いをしていること、有線音楽放送線の添架状況の調査、記録の整備等が適切に行われていないことなどによると認められる。
  したがって、日本電信電話株式会社において、有線音楽放送業者の業界団体と無断添架の解消について協議を行い、有線音楽放送業者と折衝し、添架契約を締結する際の現行の取扱いを改め、有線音楽放送線の添架状況の調査、記録の整備等を適切に行うなどの措置を講ずるとともに、関係機関との連絡・協議を密にして正常化に協力するなどして、添架料の徴収の確保等に努める要がある。

  上記に関し、昭和63年12月9日に日本電信電話株式会社代表取締役社長に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

電柱への有線音楽放送線の無断添架について

 貴会社(昭和60年3月31日以前は日本電信電話公社)では、昭和62年度末現在、電話線等を架設する電柱(以下「会社柱」という。)を約1295万本所有しており、このうち約138万本には、有線ラジオ放送の業務を行っている者(以下「音放業者」という。)が有線により音楽等を受信契約者に伝送するための有線音楽放送線(以下「音放線」という。)が約139万条添架されている。その内訳は、〔1〕音放業者が道路管理者の道路占用許可を受け占用料を支払うなどして貴会社と正規の添架契約を締結し添架料を支払っているもの(以下「契約分」という。)36,042条、〔2〕音放業者が道路占用許可を取得しておらず、これを早期に取得のうえ、正規の添架契約を締結することを条件として貴会社との間に約定書を取り交わし添架料相当額を支払っているもの(以下「約定分」という。)1,019,660条、〔3〕音放業者が貴会社に無断で添架して、添架料を支払っていないもの(以下「無断分」という。)336,640条となっている。そして、貴会社が62年度分として徴収する添架料等(1会社柱1条当たり年間700円)は、契約分2523万余円、約定分7億1444万余円、計7億3968万余円となっている。

 音放線の添架等については、一部の音放業者が無断で設備を設置して業務を行い、道路の占用料、電柱への添架料等の支払を免れていたことから、58年に有線放送業界の正常化と健全な育成を図ることを目的として、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)の改正が行われた。そして、貴会社、郵政省、建設省、電気事業連合会等は、有線音楽放送の正常化の促進を図るため、違法状態の点検と音放業者に対する指導の強化に努めることなどの申合せを行っている。

 さらに、貴会社は、関係機関との従前からの申合せに従い、正規の添架契約は、道路管理者の道路占用許可を取得したものについて行うこととし、58年に音放線の添架の実態を全国的に調査しているが、貴会社及び関係機関と音放業者との話合いが難航したため、独自に音放業者と折衝を重ねた結果、それまで会社柱へ無断で添架されていた音放線については、早期に道路占用許可を取得のうえ、正規の添架契約を締結することを条件として添架を認める約定書を59年に音放業者と取り交わし、添架料相当額を納付させるなどの措置を講じている。

 しかして、本院において、59年度以降の会社柱への音放線の添架状況等について調査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、契約分については、59年度では貴会社全体で40,584条であったものが62年度では36,042条となっていて4,542条減少している。これは、この間に一部契約分の増加はあったものの、従来、貴会社と正規の添架契約を締結していた一部の音放業者が、他の音放業者が会社柱へ音放線を無断添架して貴会社へ添架料を支払っていないことなどを理由に、契約の更新に応じなかったことなどによるものである。また、約定分については、59年度では貴会社全体で1,021,089条であったものが62年度では1,019,660条とほぼ横ばいとなっており、上記約定書の条件に従って契約分に移行しているものはほとんどない状況である。さらに、無断分については、59年度では貴会社全体で174,923条であったものが62年度では336,640条と約1.9倍になっており、全総支社(注1) において増加する傾向となっていて、なかには59年度の約8倍に上っている総支社もある。そして、この無断分に係る添架料相当額は、貴会社全体で59年度6996万余円、60年度1億1125万余円、61年度1億6467万余円、62年度2億3564万余円、計5億8154万余円に上っている。

 そして、上記のうちには、道路管理者が貴会社に対し会社柱への音放線の添架による支障の有無を文書により照会のうえ音放業者に道路占用許可を与えており、正規の添架契約の締結が可能な状態にあることを知りながら正規の添架契約を締結しないで、約定分のままにしているものが56,590条、無断分のままにしているものが3,617条、計60,207条見受けられた。
 また、道路以外の民有地等にある会社柱へ添架されている音放線については、道路占用許可の有無と関係がないことから、貴会社独自で音放業者と折衝し、音放業者に添架契約を申請させ正規の添架契約を締結すべきであると思料されるのに、貴会社では音放業者と十分折衝しておらず、本院が調査した神奈川支社ほか4支社管内川崎電報電話局ほか35電話局(注2) 等において把握している音放線68,145条(契約分510条、約定分51,894条、無断分15,741条)についてみると、民有地等にある会社柱へ添架されている音放線が、約定分で24,564条(約定分全体の47%)、無断分で8,068条(無断分全体の51%)見受けられた。

 以上のほか、63年4月から8月末までの間に、新たに発見された無断分が計47,676条見受けられたが、その内訳は、〔1〕本院からの調査依頼により貴会社が実態調査を行った結果、新たに発見されたもの41,523条、〔2〕本院が全総支社について調査した結果、道路管理者からの前記文書による照会があった際に電話局等が行った現地調査の結果を音放線の管理台帳と照合すれば、新たな無断分があることは容易に知り得たのにこれを把握していなかったことが判明したもの3,200条、〔3〕本院で関東、中国両総支社について調査した結果、電話局等では、1会社柱に2条以上の音放線が添架されていることを管理台帳に記録しているのに、総支社への添架状況の報告に当たって、会社柱の本数によっていたなどのため、無断分が報告漏れとなっていたことが判明したもの2,953条となっている。 このような事態を生じているのは、添架料の徴収の確保等を図るためには、貴会社と関係機関との間で正常化のための連絡・協議を密に行う必要があるのに、これがほとんど行われていないこともあるが、貴会社において、

(1) 59年に独自に音放業者の業界団体と協議して音放業者と約定書を取り交わしているが、その後は業界団体と無断添架の解消について十分協議を行っていないこと、

(2) 正規の添架契約は、音放業者が放送所単位にすべての道路管理者の道路占用許可を取得したうえで締結する取扱いをしていることから、音放業者が一部の道路管理者から道路占用許可を取得していたり、民有地等にある会社柱へ音放線を添架していたりしていても、他の道路管理者の道路占用許可を取得するまで、音放業者と正規の添架契約を締結するための折衝を行っていないこと、

(3) 総支社、支社等において、地方の関係する諸機関と協力して音放業者と折衝するためには、道路管理者単位及び放送所単位に約定分及び無断分の添架条数を把握すべきであるのに、これを的確に行っていないこともあって、約定分及び無断分から契約分への移行について当該諸機関と協力して音放業者と十分折衝を行っていないこと、

(4) 音放線に対する管理の必要性について電話局等における現場担当者の認識が十分でないこと、音放線の管理項目が各支社等で不統一であることなどから、音放線の添架状況の調査、記録の整備等が適切に行われていないことなどによると認められる。
 ついては、前記事態にかんがみ、貴会社において、

(1) 音放業者の業界団体と無断添架の解消について協議を行い、音放業者と折衝すること、

(2) 正規の添架契約は音放業者が放送所単位にすべての道路管理者の道路占用許可を取得したうえで締結することとしている現行の取扱いを改めること、

(3) 道路管理者単位及び放送所単位に添架条数を把握すること、

(4) 音放線の添架状況の調査、記録の整備等を適切に行うことなどの措置を講ずるとともに、関係機関との連絡・協議を密にして正常化に協力するなどして、道路管理者から道路占用許可を受けている又は民有地等にある会社柱へ添架されている約定分及び無断分については、速やかに正規の添架契約を締結することとし、また、道路占用許可を受けていない約定分及び無断分については、道路管理者の道路占用許可に合わせ、音放業者と正規の添架契約を締結することとし、もって添架料の徴収の確保等に努める要があると認められる。

 よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。

(注1) 全総支社  東京、関東、信越、東海、北陸、関西、中国、四国、九州、東北、北海道各総支社
(注2) 神奈川支社ほか4支社管内川崎電報電話局ほか35電話局等
(関東総支社) 神奈川支社 川崎電報電話局ほか4電報電話局
(関西総支社) 和歌山支社 和歌山西電報電話局ほか5電報電話局
(中国総支社) 広島支社ほか2支社 庄原電報電話局ほか24電話局等