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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (北海道開発庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

防波堤工事等に使用する作業船の回航費の積算を回航の実態に適合するよう改善させたもの


防波堤工事等に使用する作業船の回航費の積算を回航の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定)(項)北海道港湾事業費
部局等の名称 北海道開発局小樽開発建設部ほか5開発建設部
工事名 小樽港厩町岸壁改良工事ほか16工事
工事の概要 防波堤、岸壁等の築造・改良、浚渫(しゅんせつ)等の工事

工事費

8,546,465,000円
請負人 清水・五洋・東亜共同企業体ほか13共同企業体、若築建設株式会社ほか2会社
契約 昭和63年4月〜平成元年3月 指名競争契約

  上記の各工事において、作業船の回航費の積算に当たり、ぎ装及び回航における乗組員の賃金等の積算が適切でなかったため、積算額が約5400万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、ぎ装及び回航の実態が近年変化しているのにその調査検討が十分でなかったことによるもので、積算の基準を適正なものに改める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 北海道開発局では、港湾施設の整備のため防波提、岸壁等の築造工事を毎年多数実施しているが、このうち、小樽開発建設部ほか5開発建設部(注) において昭和63年度に施行している小排泄厩町岸壁改良工事ほか16工事(工事費総額85億4646万余円)は、防波堤、岸壁等の築造・改良、浚渫等の工事を施行するものであって、このうち浚渫等の工事は浚渫船、コンクリートミキサー船等の作業船を使用して施工したものである。
 これら浚渫等の工事に使用する作業船は、本州又は北海道の停泊基地で安全に目的地まで航行できるよう船体の補強、防水等のぎ装を行った後、引船によって作業現場の港まで回航され、工事終了後には再度ぎ装を行い作業現場から停泊基地まで回航されることとなっている。

 そして、前記の各部局では、北海道開発局が47年に制定した「港湾・漁港請負工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づき回航費として作業船のぎ装及び回航に要する費用を算出することとし、前記の工事に係る回航費を545,317,173円と算定しているが、この回航費の積算について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる事態が見受けられた。
 すなわち、回航費は、ぎ装を行うための労務費と材料費等を合わせたぎ装費用とぎ装中の乗組員の賃金及びぎ装中の作業船の損料を計上するぎ装費、乗組員が停泊基地と作業現場までを陸路旅行するのに必要な往復の旅費、作業船の回航期間中の乗組員の賃金、引船及び作業船の運転費等からなるが、この回航費のうち、

(1) ぎ装中の乗組員の賃金については、全乗組員の賃金をぎ装に要する日数分計上しており、

(2) 乗組員の旅費及び回航期間中の乗組員の賃金については、保安要員として普通船員2名が作業船に乗船するため、これらの者を除く残りの乗組員が陸路旅行することとして積算要領で定めた旅行日数により交通費、日当及び宿泊費の旅費を計上しており、また、保安要員を除く乗組員に対して作業船の回航日数分の賃金を計上していた。
 そして、北海道開発局が積算要領において、上記のようにぎ装について乗組員の賃金をぎ装日数分計上することとしているのは、波浪状況の厳しい北海道への回航に係るぎ装は、乗組員の指導の下にぎ装の業者に実施させることが多かったこと、また、回航について、回航日数分の乗組員の賃金を計上しているのは、波浪予測等の技術が十分でないことから回航中の作業船に損傷を受けることがあるため乗組員が待機することが多かったなどの理由によるとのことである。

 しかしながら、近年、ぎ装については、乗組員の指導が必要でなくなったこと、回航については、引船の性能が向上したり、搭載通信機器の進歩に伴い精度の高い気象、波浪情報の入手が可能になったりして、早期に避難することができるようになったことから、全乗組員を作業船の回航期間中待機させておく必要がなくなったことなどぎ装及び回航の実態が積算要領の制定時に比べ変化している状況である。そして、旅行日数についても、交通手段の発達により、実際に要する旅行日数は積算要領で定められた旅行日数に比べ短縮されている状況である。

 なお、運輸省港湾局制定の「港湾・空港請負工事積算基準(港湾)」によると、回航費のうち、ぎ装費については、ぎ装中の乗組員の賃金は計上されておらず、旅費及び賃金については、乗組員以外の普通船員2名を別途保安要員として乗船させることとし、全乗組員について旅行の経路等を考慮した旅費及び旅行期間中の賃金を計上することとされていて、運輸省各港湾建設局等ではこの積算基準に基づいて積算している状況であった。
 したがって、回航費のぎ装費に乗組員のぎ装日数分の賃金を計上する要はなく、また、乗組員の旅費は経路等の実状に見合った交通費、日当及び宿泊費を、賃金は旅行日数分をそれぞれ計上すれば足りるものと認められる。
 いま、仮に本件各工事について上記により回航費を修正計算すると491,122,093円となり、積算額を約5400万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、北海道開発局では平成元年11月に積算要領を改訂し、作業船等の乗組員の賃金及び旅費の算定方法を適正なものに改め、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注)  小樽開発建設部ほか5開発建設部 小樽、函館、室蘭、留萌、帯広、釧路各開発建設部