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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

自動車輸送統計調査業務を適切に行うよう改善させたもの


自動車輸送統計調査業務を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)地方運輸局  (項)地方運輸局
部局等の名称 札幌陸運支局ほか19陸運支局
自動車輸送統計調査業務の概要 我が国の自動車輸送の実態を明らかにし、経済、交通に関する政策及び計画を策定するための基礎資料を作成することを目的とする統計調査業務
統計調査員手当等 86,312,030円(支給対象統計調査員562名、委員等旅費814,430円を含む。)

 上記の自動車輸送統計調査業務において、地方運輸局長が任命した統計調査員は調査対象者を訪問して自動車輸送統計調査票を配付・回収することを原則としているにもかかわらず、すべて郵送で行っている統計調査員が562名のうち226名(統計調査員の40.2%)に上っており、これに係る統計調査員手当等3904万余円が払われていた。そして、これらの統計調査員の回収実績は、訪問による統計調査員の回収率に比べて著しく低率になっていた。
 このような事態を生じているのは、運輸本省において、地方運輸局及び陸運支局に対する指導が十分でなかったこと、陸運支局において、統計調査員が現実に調査対象者を訪問することが困難な調査対象区域を設定している場合があったり、統計調査員に対する説明会を全く行っていなかったりなどしていることなどによるもので自動車輸送統計調査業務の適切な実施を図るための方策を講ずる要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 運輸省では、我が国の自動車輸送の実態を明らかにし、経済、交通に関する政策及び計画を策定するための基礎資料を作成することを目的として、昭和35年以来、統計法(昭和22年法律第18号)に基づき、指定統計として毎年、自動車輸送統計調査(以下「統計調査」という。)を実施している。この統計調査は、全国の自動車について統計手法により営業用と自家用の業態別、陸運支局単位の地域別等ごとに調査対象車両を抽出し、各自動車ごとに輸送貨物の重量、走行距離等を調査し、その結果が自動車輸送統計月報等により公表されているものである。
 そして、統計に関する調査手法として、一般に、統計調査員が調査対象者を訪問して調査する調査員調査と調査対象者に調査票を郵送して調査する郵送調査とがあるが、調査員調査については郵送調査に比べて多くの経費を要するものの、複雑な調査事項にも対応でき、正しい回答を得やすく、調査票の回収率を高めることができるといわれており、運輸省では、本件統計調査については調査員調査により実施している。「自動車輸送統計調査規則」(昭和35年運輸省令第15号)等によれば、統計調査員は、同省作成の調査対象車両名簿に記載されている各調査対象者に自動車輸送統計調査票(以下「調査票」という。)を配付し、後日、これら調査票を回収し、その記載内容を点検・確認のうえ、配付・回収の状況を記載した回収報告書とともに所定の期日までに各陸運支局に提出し、陸運支局長は、提出を受けた調査票を審査、整理し、地方運輸局長を経由して運輸本省に送付することとなっている。

 上記の統計調査員に対する統計調査員手当は、「自動車輸送統計調査員手当の支払基準等について」(昭和56年官情統第248号)により、各陸運支局ごとに統計調査員1人が1日に調査票の配付・回収を行う調査対象車両の台数を想定して基準調査車両数を設定し、この車両数で配付・回収行為を行った車両数を除して得た数値に日当単価を乗じて算出することとなっている。この基準調査車両数の設定に当たっては、各陸運支局ごとに地域面積と調査対象車両の標本数とから算出された標本車両間の総移動距離とその所要時間、面接時間等が考慮されている。そして63年度に支給された統計調査員手当は北海道運輸局ほか8地方運輸局管内の札幌陸運支局ほか51陸運支局で1億8303万余円となっており、また、訪問に要する旅費については車賃として171万余円を支給している。
 しかして、本院が上記のうち北海道運輸局ほか6地方運輸局(注1) 管内の札幌陸運支局ほか19陸運支局(注2) (以下「20支局」という。)における63年度の統計調査(これに係る統計調査員手当等8631万余円)の実施状況について調査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

 すなわち、上記20支局において、調査票の配付・回収の業務をすべて郵送で行っている統計調査員が562名(注3) のうち226名(統計調査員の40.2%、これに係る統計調査員手当等3904万余円)、また、調査票の配付・回収業務を郵送と訪問とを併用している統計調査員が207名に上っていて、配付・回収業務をすべて訪問で行っている統計調査員は、わずか105名(統計調査員の18.7%)にすぎない状況となっていた。なお、これら統計調査員による調査票の回収実績についてみると、配付・回収業務をすべて郵送で行っている統計調査員の回収率は65.0%で、これをすべて訪問で行っている統計調査員の回収率87.0%に比べて低率になっており、特に自家用車の調査の場合には、配付・回収業務をすべて郵送で行っている統計調査員の回収率は57.0%で、これをすべて訪問で行っている統計調査員の回収率87.1%に比べて著しく低率になっていた。
 このような事態を生じているのは、運輸本省において、地方運輸局及び陸運支局に対し、本件統計調査については訪問によることを原則としている旨を統計調査員に周知徹底させるよう指導していなかったこと、陸運支局において、各統計調査員の調査対象区域を訪問することが困難な県内全域としているなど適切と認められない区域割りを行っている場合があること、統計調査員に対する調査票の配付・回収の方法を指導する説明会を全く行っていなかったり、特に回収率の悪い統計調査員に対する指導を十分行っていなかったりしていることなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、平成元年11月に、「自動車輸送統計調査員の任命等の取扱いについて」の通達等を発し、地方運輸局及び陸運支局において、統計調査員に対し、訪問により統計調査を行うことを原則としている旨を周知徹底させるとともに、統計調査員ごとに適切な調査の担当区域を設定し、統計調査員に対する説明会の充実強化を図るなどして自動車輸送統計調査業務の適切な実施を図る処置を講じた。

(注1)  北海道運輸局ほか6地方運輸局 北海道、東北、新潟、関東、近畿、四国、九州各運輸局

(注2)  札幌陸運支局ほか19陸運支局 札幌、函館、室蘭、釧路、宮城、福島、岩手、新潟、秋田、東京、埼玉、群馬、千葉、茨城、栃木、大阪、兵庫、和歌山、香川、福岡各陸運支局

(注3)  統計調査員562名 死亡、転居等で配付・回収方法の確認ができなかった統計調査員24名を含む。