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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 住宅金融公庫|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

公庫貸付けを受けて購入した市街地再開発事業等に係る住宅等の第三者賃貸等の防止を図るよう改善させたもの


公庫貸付けを受けて購入した市街地再開発事業等に係る住宅等の第三者賃貸等の防止を図るよう改善させたもの

科目 (貸付金)個人住宅貸付、市街地再開発事業等貸付
部局等の名称 北海道支店ほか6支店(昭和63年6月4日以前は支所)
貸付けの根拠 住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)
貸付種別 市街地再開発等購入資金貸付、公社分譲住宅購入資金貸付、中古住宅購入資金貸付
貸付金の内容 市街地再開発事業等により新たに建設された建築物内の住宅を購入する者に対して貸し付ける資金、中古住宅を購入する者に対して貸し付ける資金
貸付件数 77件
貸付金の合計額 1,026,200,000円

 上記77件の貸付けにおいて、借入者が、貸付けを受けて購入した住宅に自ら居住するという貸付要件に違反して、当該住宅を第三者に賃貸するなどしていて、これらに係る不適切な貸付金額は合計10億2620万円となっていた。
 このような事態を生じているのは、借入者の不誠実にもよるが、住宅金融公庫及び同公庫から業務の委託を受けた金融機関が行う貸付けに当たっての審査が十分でなかったこと、貸付契約の内容が借入者の不誠実な行為を十分抑制するものになっていなかったことなどによるもので、審査体制を整備、強化するとともに、貸付契約に違約金制度を採り入れるなどして、第三者賃貸等の防止に努める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 住宅金融公庫(以下「公庫」という。)では、貸付業務の一環として、自ら居住するため住宅を必要とする者が公庫から貸付けを受けなければ住宅の購入ができない場合に、その購入資金として各種資金の貸付けを行っている。そのうち、市街地の土地の合理的な高度利用等に寄与するため市街地再開発事業等により新たに建設された建築物内の住宅を購入する者に対しては市街地再開発等購入資金(当該住宅が地方住宅供給公社等の団体により分譲されるものである場合は公社分譲住宅購入資金)の貸付け(以下「再開発住宅資金貸付け」という。)を、また、建設が所定の年月日以後であることなどの要件を満たす中古住宅を購入する者に対しては中古住宅購入資金の貸付け(以下「中古住宅資金貸付け」という。)をそれぞれ行っている。そして、借入者が自ら居住するという貸付要件に違反した場合には、貸付金を弁済期日の到来する前に償還しなければならないこととなっている。 しかして、本院が平成元年中に、北海道支店ほか9支店(注1) が昭和60年度から63年度までの間に行った再開発住宅資金貸付けのうち7,182件貸付金額964億3770万円及び中古住宅資金貸付けのうち1,425件貸付金額116億5815万円、計8,607件貸付金額1080億9585万円について、借入者における住宅の利用状況を調査したところ、借入者が自ら居住することとして資金の貸付けを受けていながら、実際は、購入した住宅を第三者に賃貸するなどしていて、貸付けが適切とは認められない事態が、北海道支店ほか6支店(注2) において再開発住宅資金貸付けで55件貸付金額8億3630万円、中古住宅資金貸付けで22件貸付金額1億8990万円、計77件貸付金額10億2620万円見受けられた。
 そして、このような借入者による住宅の第三者賃貸等の事態については、本院において59年及び62年に、他の貸付種別である団地住宅購入資金及びマンション購入資金の貸付けを対象に検査した結果多数見受けられたので指摘したところ、公庫では、この指摘を受けた資金の貸付けに当たって、その審査を十分行うこととしたり、違約金制度を採り入れたりなどして適正化を図っているが、今回、上記のように再開発住宅資金貸付け及び中古住宅資金貸付けについて、前回までに指摘した貸付種別と同様な不適切な事態が見受けられたものである。
 このような事態を生じているのは、借入者の不誠実にもよるが、これらの貸付種別について、公庫及び公庫から業務委託を受けた金融機関において、貸付けに当たっての審査の際、借入者の自ら居住する意思の確認を十分に行っていなかったこと、公庫において、貸付契約に借入者の不誠実な行為に対する違約金制度を採り入れて十分な抑制機能を持ったものにしていなかったことなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、住宅金融公庫では、前記77件の貸付けについて繰上償還等の措置を講ずるとともに、第三者賃貸等の防止を図るため、平成元年11月に各支店長あてに、「個人向融資(購入系)に係る目的外使用の防止策について」の通ちょうを発し中古住宅資金貸付けについても他の貸付種別と同様に審査等を十分行うこととし、さらに、受託金融機関向けの融資業務の手引に審査に当たっての留意事項を記載することにより受託金融機関を指導するなどして、体制を整備、強化し、また、同じく、「市街地再開発等購入資金貸付け等に係る違約金制度の導入について」の通ちょうを発し、再開発住宅資金貸付け及び中古住宅資金貸付けについて貸付要件に違反した場合は違約金を徴する旨の契約条項を設けることとするなどの処置を講じた。

(注1)  北海道支店ほか9支店 北海道(札幌)、東北(仙台)、東京、南関東、名古屋、大阪、中国(広島)、四国(高松)、福岡、南九州(熊本)各支店(昭和63年6月4日以前は支所、( )内は支所当時の名称。以下同じ。)

(注2)  北海道支店ほか6支店 北海道(札幌)、東京、南関東、名古屋、大阪、中国(広島)、福岡各支店