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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成12年11月

「政府開発援助に関する決議」の実施状況に関する会計検査の結果について


1 検査の要請の内容

(1)政府開発援助に関する決議

 平成11年8月2日、参議院行政監視委員会において「政府開発援助に関する決議」(以下本報告書において「国会決議」という。)が行われた。この決議では、我が国の政府開発援助(以下本報告書において「ODA」という。)が国の内外から理解と信頼を得るとともに、透明性を確保しつつ、より一層効果的、効率的かつ適正な援助が実現するよう、政府が下記の事項について速やかに実施することが求められている。

〔1〕 被援助国の実情に即した国別援助計画の作成
〔2〕 事業の重点化と事業間の連携強化
〔3〕 評価制度の充実
〔4〕 情報公開・広報の積極的な推進
〔5〕 NGOとの一層の連携
〔6〕 環境問題への取組の強化
〔7〕 被援助国の人材育成に関する援助の拡充
〔8〕 開発援助の専門家の確保
〔9〕 ODAの不正防止
〔10〕 重債務貧困国に対する債務救済

(2)検査の要請

 会計検査院(以下本報告書において「本院」という。)は、12年3月、参議院から、上記決議事項のうち〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔9〕及び〔10〕に関する実施状況について、外務省、国際協力銀行及び国際協力事業団を対象として会計検査を行い、その結果を報告するよう要請を受けた。

2 検査の方法

 外務省、国際協力銀行及び国際協力事業団から各種資料の提出を受け、説明の聴取等を行った。また、本院は毎年数箇国を選定してODA事業の現地調査を実施しているが、12年中に現地調査を実施した8箇国のうち、5月以降に実施した5箇国において、ODA事業の現地調査と併せて、本件要請事項に関して相手国機関等に赴くなどして説明を聴取した。
また、本件要請事項に関する他の援助国や国際機関の取組状況についても、公開されている資料を参考にしたり、説明を聴取したりして調査を行った。

3 検査及び調査の実績

 本件要請事項に関する検査(相手国における現地調査を含む)の実施状況は以下のとおりである。

・検査等期間:12年3月〜10月
・従事した調査官等:9人
・実地検査等期間:12年4月下旬〜7月下旬
・実地検査等箇所数:27箇所

(内訳)

検査対象機関等 検査等箇所 実地検査等箇所数
外務省 本省 
在外公館
1
5
小計 6
国際協力銀行 本店 
在外事務所
1
1
小計 2
国際協力事業団 本部 
在外事務所
1
2
小計 3
相手国実施機関・事業実施現場等 16
合計 27

4 ODAの現状

 我が国のODAは、無償資金協力、技術協力、有償資金協力及び国際機関を通じた援助に大別される。このうち、無償資金協力と有償資金協力はそれぞれ外務省と国際協力銀行が主な実施機関となっており、技術協力は各省庁と国際協力事業団が実施している。
我が国の11年におけるODAの実績は1兆7523億余円に上っており、前年の1兆4046億余円から約24.7%増加している。そのうち、二国間援助の実績は1兆1956億余円、国際機関を通じた援助は5566億余円となっている。ドルベースでみた我が国のODAの実績は、次の図のとおり、7年まで増加傾向にあり、同年には147億余ドルとなったが、円安や国際開発金融機関に対する出資金や拠出金が減少したことなどにより、8年には96億余ドルに減少し、9年には94億余ドルとなった。しかし、その後アジア経済危機や円高等の影響もあり、11年には153億余ドルに増加した。

政府開発援助に関する決議の図1

 また、11年の二国間援助の実績を援助形態別に見ると、下図のとおり、無償資金協力事業が2665億余円、技術協力事業が3643億余円(うち国際協力事業団を通じた実績が1563億余円)、有償資金協力事業が5647億余円(注) となっている。

 有償資金協力事業の実績額(5647億余円)は、貸付実行額(9097億余円)から回収金(3449億余円)を除いた支出純額である。

有償資金協力事業の実績額(5647億余円)は、貸付実行額(9097億余円)から回収金(3449億余円)を除いた支出純額である。

5 検査要請事項に関する提言等

 本件要請事項については、総務庁の行政監察の結果に基づく勧告や各種審議会等の提言において言及されている。また、政府として、これらを踏まえ「政府開発援助大綱」(以下本報告書において「ODA大綱」という。)や「政府開発援助に関する中期政策」を策定するなどの措置が執られている。これらの勧告、提言及び閣議決定の内容については、必要に応じ各項目の検査結果において記述するが、検査要請事項との関係を図示すると次表のとおりである。

年月 勧告・提言等 国別援助計画の作成 事業の重点化及び事業間の連携強化 評価制度の充実 ODAの不正防止 重債務貧困国に対する債務救済
重点化 連携強化
昭和
63年7月
経済協力に関する行政監察の結果に基づく勧告(第1次)(総務庁)      
平成
元年9月
経済協力に関する行政監察の結果に基づく勧告(第2次)(総務庁)    
4年6月 政府開発援助大綱(閣議決定)  
7年4月 経済協力に関する行政監察の結果に基づく勧告(無償資金協力と技術協力)(総務庁)    
9年3月 経済協力に関する行政監察の結果に基づく勧告(有償資金協力と技術協力)(総務庁)        
10年1月 21世紀に向けてのODA改革懇談会最終報告書    
10年6月 今後の経済協力の推進方策について(対外経済協力審議会)    
10年11月 ODAの透明性・効率性の向上について(対外経済協力関係閣僚会議)  
11年8月 政府開発援助に関する中期政策(閣議報告)
12年3月 「ODA評価体制」の改善に関する報告(援助評価検討部会)          
12年8月 円借款制度に関する懇談会報告書  
  (勧告・提言等を参考に本院において作成)
<注> 「○」は勧告・提言等に該当項目が含まれていることを示す。

検査の結果

以下[検査の結果]においては、原則として次の略語を用いる。

外務省等 外務省、国際協力銀行及び国際協力事業団
銀行 国際協力銀行。なお、11年9月以前の旧海外経済協力基金の活動等についても、特に必要な場合を除き、「銀行」という。
事業団 国際協力事業団

これ以外の略語については、1〜5の各項目ごとに定義することとする。