ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書

独立行政法人の業務運営等の状況に関する会計検査の結果について


(2)役職員の給与

 独立行政法人への移行に伴い、法人や役職員の業績等が給与等に反映される仕組みの導入が図られたことから、その内容や運用状況等について着目して調査した。

ア 役員給与等について

 各独立行政法人では、役員に対する報酬等(以下「役員給与」という。)の支給の基準となる規程(以下「役員給与規程」という。)を定めている。役員給与規程では、役員給与を毎月支給される基本給(以下「役員報酬」という。)及びその他の手当と年2回支給される役員賞与に区分しており、役員報酬についてはその支給額を、その他の手当及び役員賞与についてはその算定方法等を定めている。このうち、役員報酬については、ほとんどの法人で国の指定職俸給表に準じた支給額としており、法人独自の支給額としているのは種苗管理センターほか6法人(注3) となっている。また、その他の手当及び役員賞与については、すべての独立行政法人において国家公務員に準拠して算定方法等を定めている。
 さらに、各独立行政法人においては、役員給与に業績等を反映させるための方法についても役員給与規程に定めており、16年度末における主な反映方法とその運用状況等を示すと、表1−3及び表1−4のとおりとなっている。役員給与に対する業績等の反映方法については、主務省により統一されていたり、他の独立行政法人や特殊法人の規程等を参考にして決定したりしていることから、法人間で大きな差はみられない。
 そして、実際の支給に当たって、その運用状況についてみると、表1−4のとおり、4箇年度で役員給与の支給額を業績等により増減したことのある法人は物質・材料研究機構ほか2法人にとどまっており、業績等の役員給与への反映は限られた状況となっている。
 なお、役員の退職時に支給される役員退職給与については、役員報酬額に役員の在職月数等を乗ずることとするなどの計算方法や業績等を反映させるための方法を役員退職給与規程等に定めている。このうち、支給額に業績等を反映させるための方法については、「独立行政法人、特殊法人及び認可法人役員の退職金について」(平成15年12月19日閣議決定)により、表1−3のとおりとなっており、15年度中からすべての法人において同一の方法を用いて実施している。

種苗管理センターほか6法人 種苗管理センター、家畜改良センター、肥飼料検査所、農薬検査所、農業者大学校、海上技術安全研究所、海員学校


表1−3 役員給与等に業績等を反映させる主な方法(16年度)
区分 主な内容
役員給与 役員報酬 役員の業績を考慮して月額支給額を定める。
役員の業績等に応じ、月額支給額を増減することができる。
役員賞与  評価委員会が行う業績評価の結果を勘案し、一定の範囲内で基本支給額を増減することができる。
役員の業績等に応じ、基本支給額を増減することができる。
役員退職給与  在職期間1箇月につき、俸給月額に100分の12.5の割合を乗じて得た額に主務省の評価委員会が0.0から2.0の範囲内で決定する業績勘案率を乗じて得た額とする。

表1−4 役員給与に業績等を反映させる方法の有無及びその運用状況
業務類型 法人名 業績等を反映させる方法の有無(16年度) 支給額の増減あり(13年度〜16年度)
役員報酬 役員賞与
試験研究法人 消防研究所    
酒類総合研究所    
国立特殊教育総合研究所    
物質・材料研究機構  
防災科学技術研究所  
放射線医学総合研究所  
文化財研究所    
産業安全研究所  
産業医学総合研究所  
農業生物資源研究所  
農業環境技術研究所  
農業工学研究所  
食品総合研究所  
国際農林水産業研究センター  
森林総合研究所  
土木研究所    
建築研究所    
交通安全環境研究所    
海上技術安全研究所    
港湾空港技術研究所    
電子航法研究所    
北海道開発土木研究所    
国立環境研究所    
小計 23法人 9 23 2
文教研修法人 大学入試センター    
国立オリンピック記念青少年総合センター    
国立女性教育会館    
国立青年の家    
国立少年自然の家    
国立科学博物館    
国立美術館    
国立博物館    
農業者大学校  
水産大学校  
海技大学校    
航海訓練所    
海員学校    
航空大学校    
小計 14法人 2 14 -
その他の法人 農林水産消費技術センター  
種苗管理センター  
家畜改良センター  
肥飼料検査所  
農薬検査所  
林木育種センター  
さけ・ます資源管理センター  
製品評価技術基盤機構
小計 8法人 8 8 1
合計 45法人 19 45 3

イ 職員給与について

 各独立行政法人では、職員に対する給与の支給基準となる規程(以下「職員給与規程」という。)を定めている。職員給与規程では、職員給与を毎月支給される基本給(以下「職員基本給」という。)及びその他の手当と年2回支給される職員の業績等を反映させる手当(以下「勤勉等手当」という。)及び期末手当に区分しており、職員基本給については月額表を、その他の手当、勤勉等手当及び期末手当についてはその算定方法等を定めている。そして、ほとんどの独立行政法人において、職員基本給の月額表は国の各俸給表に、勤勉等手当は国家公務員の場合の算定方法等にそれぞれ準拠して定めているが、表1−5のとおり、国立環境研究所においては職員基本給の月額表について、物質・材料研究機構ほか5法人においては勤勉等手当の算定方法等について、それぞれ独立行政法人独自なものとなっている。また、その他の手当及び期末手当についてはすべての法人において国家公務員の場合に準拠して算定方法等を定めている。

表1−5 職員給与の月額表、算定方法等が独自なものとなっている法人(16年度)
業務類型 法人名 主な内容
職員基本給の月額表 勤勉等手当の算定方法等
試験研究法人 物質・材料研究機構  研究職及びエンジニア職について、独自の算定方法等を用いている。
農業生物資源研究所  研究管理職については、業績評価に基づく成績率を別途加算する。
農業環境技術研究所  研究管理職については、業績評価に基づく成績率を別途加算する。
農業工学研究所  研究管理職については、業績評価に基づく成績率を別途加算する。
食品総合研究所  研究管理職については、業績評価に基づく成績率を別途加算する。
国立環境研究所  職種別の区分がない、単一の月額表を使用している。  6月1日を基準日として支給される手当にのみ、勤務成績等を反映させる。

 さらに、各独立行政法人において、職員給与に勤務成績等を反映させるための方法についても職員給与規程に定めており、その主な内容は表1−6のとおりとなっている。

表1−6 職員給与に勤務成績等を反映させる主な方法(16年度)
給与種目 主な内容
職員基本給 特別昇給  勤務成績が特に良好である場合には、上位の号俸に昇給させ若しくは昇給期間を短縮し、又は双方を合わせて行うことができる。
普通昇給  一定期間を良好な成績で勤務したときは、上位の号俸に昇給させることができる。
昇格  勤務成績が良好で、かつ一定の基準に達している場合には、その者の資格に応じて、上位の級に昇格させることができる。
勤勉等手当  勤務評定の結果や個人の業績等を踏まえ決定される支給割合や支給額に基づき支給される。

 このうち、勤勉等手当については、算定方法等が独自なものとなっている6法人を除く39法人において、13年度以降も国家公務員に準拠した制度により継続的に運用されている。これら39法人のうち12年度の実績が把握できる32法人の勤勉等手当の成績率(注4) について、標準の成績率(注5) と最高の成績率との差の状況をみると、13、14両年度については、特定幹部職員(注6) 、一般の職員とも、移行前の12年度とそれほど変化していない。
 なお、15年度以降の運用状況は14年度以前に比べ相当変化しているが、これは、15年度において国家公務員の制度が勤務成績等をより反映させやすくするよう変更されたことに伴い、各法人がこれに準拠した運用としたことなどによると思料される。

図1−8 国家公務員に準拠した制度の法人の勤勉等手当の運用状況(12年度〜16年度)

図1−8国家公務員に準拠した制度の法人の勤勉等手当の運用状況(12年度〜16年度)

注(1) 勤勉等手当は年2回支給されるが、毎年6月1日を基準日として支給される勤勉等手当について分析した。
注(2) 特定幹部職員については在籍者のいない3法人を除く29法人で分析している。

(注4) 成績率 勤務評定又は勤務成績を考慮して決定される率
(注5) 標準の成績率 懲戒処分等を受けることなく通常に勤務した職員に適用される成績率であり、各法人とも、6月1日を基準日とする分については14年度までは、一般の職員が60%、特定幹部職員が80%、15年度以降は一般の職員が70%、特定幹部職員が90%となっている。
(注6) 特定幹部職員 各独立行政法人の一般職(事務職)の給与表等を適用される職員のうち9級以上の者及び他の職種のものでこれに相当する者をいう。

 以上のように、組織運営の状況については、法人による自主的な組織運営の仕組みが導入された中で、業務の効率化等のための組織改編、常勤職員の削減に伴う非常勤職員や外部委託の活用等は適宜行われていると思料されるものの、多くの法人においては、役職員の報酬・給与の支給額等は国家公務員に準拠したものとなっていて、業績等の給与への反映も限られた状況となっている。
 組織運営については、中期計画においてあらかじめ定められた人件費総額などに留意しつつ、一層、自主的かつ機動的な組織運営に努めることが望まれる。