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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書

独立行政法人の業務運営等の状況に関する会計検査の結果について


(1)独立行政法人の情報提供制度の概要

 独立行政法人の活動については、国民に対する説明責任を尽くすことが求められており、各法人の業務は国民の明確な理解と納得の下で運営される必要があることから、独立行政法人自らが積極的に国民に情報を発信する情報提供に努めるべきであるとされている。このような趣旨から、通則法、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「公開法」という。)等において、独立行政法人は、その組織、業務、財務等に関する情報について公表することとされている。
 独立行政法人が通則法、公開法等に基づき公表することとされている主な情報は、表4−1のとおりとなっている。

表4−1 独立行政法人が公表することとされている主な情報
事項 公表の根拠
通則法 公開法
役員の任命  
業務方法書  
中期計画  
年度計画  
財務諸表
事業報告書
役員に対する報酬等の支給の基準
職員の給与の支給の基準
職員の勤務時間、休憩、休日及び休暇についての規程  
目的、業務の概要及び国の施策との関係  
組織の概要  
職員に対する退職手当の支給の基準  
事業計画、年度計画その他の業務に関する直近の計画  
年度評価  
監事又は監査役の直近の意見  
会計検査院の直近の検査報告のうち当該独立行政法人等に関する部分  
(注)
「○」は公表の根拠として該当することを示している。

 通則法において公表することとされている情報のうち、財務諸表、事業報告書等については、公表の方法又は期間が定められており、官報に公告し、又は各事務所に備え置き、5年間、一般の閲覧に供しなければならないこととされている。また、公開法に基づく情報提供の方法については、事務所に備えて一般の閲覧に供する方法及びインターネットの利用その他の情報通信の技術を利用する方法(以下「インターネットの方法」という。)により行うものとされている。

(2)情報の公表状況

ア 通則法等による公表について

 通則法、公開法等に基づき公表することとされている情報のうち主なものについて、17年3月末現在の公表状況をみると表4−2のとおりとなっている。

表4−2 公表することとされている主な情報の公表状況(17年3月末現在)

(通則法によるもの)

事項
法人名
役員の任命 業務方法書 中期計画 年度計画 役員に対する報酬等の支給の基準 職員の給与の支給の基準 職員の勤務時間、休憩、休日及び休暇についての規程
消防研究所
酒類総合研究所 ×
国立特殊教育総合研究所
大学入試センター
国立オリンピック記念青少年総合センター
国立女性教育会館
国立青年の家
国立少年自然の家
国立科学博物館
物質・材料研究機構
防災科学技術研究所
放射線医学総合研究所
国立美術館
国立博物館
文化財研究所
産業安全研究所
産業医学総合研究所
農林水産消費技術センター
種苗管理センター
家畜改良センター
肥飼料検査所
農薬検査所
農業者大学校
林木育種センター
さけ・ます資源管理センター
水産大学校
農業生物資源研究所
農業環境技術研究所
農業工学研究所
食品総合研究所
国際農林水産業研究センター
森林総合研究所
製品評価技術基盤機構
土木研究所
建築研究所
交通安全環境研究所
海上技術安全研究所
港湾空港技術研究所
電子航法研究所
北海道開発土木研究所
海技大学校
航海訓練所
海員学校
航空大学校
国立環境研究所

事項
法人名
財務諸表(官報) 財務諸表(事務所) 事業報告書(事務所)
13年度 14年度 15年度 13年度 14年度 15年度 13年度 14年度 15年度
消防研究所
酒類総合研究所
国立特殊教育総合研究所
大学入試センター
国立オリンピック記念青少年総合センター
国立女性教育会館
国立青年の家
国立少年自然の家
国立科学博物館
物質・材料研究機構
防災科学技術研究所
放射線医学総合研究所
国立美術館
国立博物館
文化財研究所
産業安全研究所
産業医学総合研究所
農林水産消費技術センター
種苗管理センター
家畜改良センター
肥飼料検査所
農薬検査所
農業者大学校
林木育種センター
さけ・ます資源管理センター
水産大学校
農業生物資源研究所
農業環境技術研究所
農業工学研究所
食品総合研究所
国際農林水産業研究センター
森林総合研究所
製品評価技術基盤機構
土木研究所
建築研究所
交通安全環境研究所
海上技術安全研究所
港湾空港技術研究所
電子航法研究所
北海道開発土木研究所
海技大学校
航海訓練所
海員学校
航空大学校
国立環境研究所

(公開法等によるもの)
事項
法人名
目的、業務の概要及び国の施策との関係 組織の概要(役員の数、氏名、役職、任期及び経歴並びに職員の数を含む) 役員に対する報酬及び退職手当の支給の基準 職員に対する給与の支給の基準 職員に対する退職手当の支給の基準
事務所 インターネット 事務所 インターネット 事務所 インターネット 事務所 インターネット 事務所 インターネット
消防研究所 ×
酒類総合研究所 × × ×
国立特殊教育総合研究所
大学入試センター
国立オリンピック記念青少年総合センター ×
国立女性教育会館 ×
国立青年の家
国立少年自然の家
国立科学博物館 ×
物質・材料研究機構 ×
防災科学技術研究所
放射線医学総合研究所
国立美術館
国立博物館
文化財研究所 ×
産業安全研究所
産業医学総合研究所 ×
農林水産消費技術センター ×
種苗管理センター
家畜改良センター
肥飼料検査所 ×
農薬検査所 ×
農業者大学校 ×
林木育種センター
さけ・ます資源管理センター
水産大学校
農業生物資源研究所
農業環境技術研究所
農業工学研究所
食品総合研究所 ×
国際農林水産業研究センター
森林総合研究所
製品評価技術基盤機構
土木研究所
建築研究所
交通安全環境研究所
海上技術安全研究所
港湾空港技術研究所
電子航法研究所
北海道開発土木研究所
海技大学校
航海訓練所 ×
海員学校 ×
航空大学校
国立環境研究所 ×

事項
法人名
事業報告書 財務諸表 年度評価 監事又は監査役の直近の意見 会計検査院の直近の検査報告のうち当該独立行政法人等に関する部分
事務所 インターネット 事務所 インターネット 事務所 インターネット 事務所 インターネット 事務所 インターネット
消防研究所 × × × ×
酒類総合研究所 × × ×
国立特殊教育総合研究所 ×
大学入試センター
国立オリンピック記念青少年総合センター ×
国立女性教育会館 ×
国立青年の家
国立少年自然の家 × ×
国立科学博物館 × ×
物質・材料研究機構 ×
防災科学技術研究所 × ×
放射線医学総合研究所 ×
国立美術館 ×
国立博物館 ×
文化財研究所 × × ×
産業安全研究所 ×
産業医学総合研究所
農林水産消費技術センター
種苗管理センター ×
家畜改良センター × × ×
肥飼料検査所
農薬検査所 × ×
農業者大学校 × ×
林木育種センター ×
さけ・ます資源管理センター × ×
水産大学校
農業生物資源研究所 × ×
農業環境技術研究所 ×
農業工学研究所 ×
食品総合研究所
国際農林水産業研究センター
森林総合研究所 ×
製品評価技術基盤機構 ×
土木研究所 ×
建築研究所 ×
交通安全環境研究所 × × × ×
海上技術安全研究所 × ×
港湾空港技術研究所 ×
電子航法研究所 ×
北海道開発土木研究所 ×
海技大学校
航海訓練所 ×
海員学校
航空大学校
国立環境研究所 × ×
注(1) 「○」は公表していることを、「×」は公表していないことを、「−」は公表の対象となる情報がないことを示している。
注(2) 「官報」は官報への公告による公表を、「事務所」は事務所に備えて一般の閲覧に供する方法による公表を、「インターネット」はインターネットの方法による公表をそれぞれ示している。以下、本項の図表において同様である。

 このように、一部の法人において情報の公表が適切に行われていない事態が見受けられるが、このうち、いくつかの態様を掲げると表4−3のとおりであり、公表することとされている情報が定められたいずれの方法によっても公表されていない事態などが見受けられた。

表4−3 公表が適切に行われていなかった情報(17年3月末現在)

(公開法等に定められたいずれの方法によっても公表が行われていないもの)

事項 公表を行っていない法人
会計検査院の直近の検査報告のうち当該独立行政法人等に関する部分 消防研究所
酒類総合研究所
さけ・ます資源管理センター
交通安全環境研究所
国立環境研究所

(公開法等に定められた方法のうちインターネットの方法による公表が行われていない主なもの)
事項 公表を行っていない法人
職員に対する退職手当の支給の基準
公表対象法人:45法人
公表を行っていない法人:14法人(31.1%)
消防研究所
国立オリンピック記念青少年総合センター
国立女性教育会館
国立科学博物館
物質・材料研究機構
文化財研究所
産業医学総合研究所
農林水産消費技術センター
肥飼料検査所
農薬検査所
農業者大学校
食品総合研究所
航海訓練所
海員学校
年度評価
公表対象法人:45法人
公表を行っていない法人:9法人(20.0%)
消防研究所
防災科学技術研究所
家畜改良センター
農薬検査所
農業者大学校
農業生物資源研究所
交通安全環境研究所
海上技術安全研究所
航海訓練所
会計検査院の直近の検査報告のうち当該独立行政法人等に関する部分
公表対象法人:32法人
公表を行っていない法人:29法人(90.6%)
消防研究所
酒類総合研究所
国立特殊教育総合研究所
国立オリンピック記念青少年総合センター
国立女性教育会館
国立科学博物館
物質・材料研究機構
防災科学技術研究所
放射線医学総合研究所
国立美術館
国立博物館
文化財研究所
種苗管理センター
家畜改良センター
農薬検査所
林木育種センター
さけ・ます資源管理センター
農業生物資源研究所
農業環境技術研究所
農業工学研究所
森林総合研究所
製品評価技術基盤機構
土木研究所
建築研究所
交通安全環境研究所
海上技術安全研究所
港湾空港技術研究所
北海道開発土木研究所
国立環境研究所

イ 通則法等によらない公表について

 国民その他の利害関係者が情報を利用する際の利便性を高め、独立行政法人の業務運営等の透明性を高めるには、通則法等において直近の情報を公表することとされている情報であっても、これに併せて過年度分の情報についても公表を行うことが望ましいと考えられる。
 こうした観点から、財務諸表、年度計画、事業報告書及び年度評価について、17年3月末現在における過年度分の公表状況をみると、図4−1のとおり、大半の独立行政法人は、自主的な判断により過年度分の情報を公表しているが、過年度分の情報を公表していない法人も見受けられる。

図4−1 財務諸表等の過年度分の公表状況(17年3月末現在)

図4−1財務諸表等の過年度分の公表状況(17年3月末現在)

財務諸表及び事業報告書を事務所に備えて一般の閲覧に供する方法による公表については、通則法において過年度分の情報も同様な方法により公表されることとなっているため除外している。

(3)情報提供におけるホームページの利便性

 情報通信技術の進展に伴い、インターネットの普及が急速に進んでいることから、一般国民に対する情報の公表に当たっても、インターネットを利用した情報提供の果たす役割が増大している。
 また、ホームページに掲載されている情報を国民にとって利用しやすいものとするためには、情報を容易に検索し、迅速に閲覧することができるように、ホームページ内に限定されたサイト内検索機能や掲載事項を一覧するサイトマップ等のツールが有用と考えられる。
 そこで、45法人が情報を掲載しているインターネット上のホームページの利便性について、サイト内検索機能とサイトマップの有無に着目してみたところ、図4−2のとおり、いずれも備えている独立行政法人は25法人、いずれかを備えている独立行政法人は10法人、いずれも備えていない独立行政法人は10法人となっており、独立行政法人の活動状況に関するホームページでの情報提供にはなお改善の余地がある状況となっている。

図4−2 各法人のホームページのサイト内検索機能とサイトマップの有無

図4−2各法人のホームページのサイト内検索機能とサイトマップの有無

 以上のように、独立行政法人における情報の公表状況については、通則法、公開法等により公表することとされている情報について公表していない独立行政法人があるほか、インターネット閲覧の利便性に工夫を要する独立行政法人が見受けられる。
 したがって、業務の透明性を一層高めるため、情報の公表を適切に行うとともに、より積極的で分かりやすい情報の公表に努めることが望まれる。