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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 令和3年4月

高速道路に係る料金、債務の返済等の状況に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 高速道路に係る料金設定及び利用の状況

(1) 高速道路の利用状況

ア 機構の保有延長

2年3月末における機構が保有して6会社へ貸し付けている高速道路の延長は、図表2-1-1のとおり、供用区間が10,357.1㎞、事業中の新設区間が30.5kmの計10,387.6㎞となっている。

h-2-1-1図表2-1-1 機構が保有している高速道路の延長(令和2年3月末現在)

図表2-1-1 機構が保有している高速道路の延長(令和2年3月末現在)

(単位:㎞)
区分
会社
 
東会社 中会社 西会社 本四会社 首都会社 阪神会社
保有及び貸付延長 10,387.6 3,948.3 2,127.1 3,547.1 172.9 329.6 262.6
  うち供用区間延長 10,357.1 3,941.6 2,127.1 3,530.1 172.9 327.2 258.2
うち新設区間延長 30.5 6.7 - 17.0 - 2.4 4.4
(内訳)
全国路線網に属する高速道路 9,789.8 3,948.3 2,121.5 3,547.1 172.9 - -
 高速自動車国道 8,455.0 3,433.0 1,892.0 3,130.0 -
 高速自動車国道以外 1,334.8 515.3 229.5 417.1 172.9
  うち供用区間延長 9,766.1 3,941.6 2,121.5 3,530.1 172.9 - -
  高速自動車国道 8,438.0 3,433.0 1,892.0 3,113.0 - - -
高速自動車国道以外 1,328.1 508.6 229.5 417.1 172.9 - -
うち新設区間延長 23.7 6.7 - 17.0 - - -
  高速自動車国道 17.0 - - 17.0 - - -
高速自動車国道以外 6.7 6.7 - - - - -
地域路線網に属する高速道路 592.2 - - - - 329.6 262.6
  うち供用区間延長 585.4 - - - - 327.2 258.2
うち新設区間延長 6.8 - - - - 2.4 4.4
一の路線に属する高速道路 5.6 - 5.6 - - - -
  うち供用区間延長 5.6 - 5.6 - - - -
うち新設区間延長 - - - - - - -
イ 6会社が管理している高速道路の管理延長、利用台数等

6会社が管理している高速道路の管理延長及び利用台数をみたところ、図表2-1-2のとおり、道路関係四公団が民営化した平成17年度末に計8,978㎞であった管理延長は、令和元年度末では1,403㎞増加して計10,381㎞(増加率15.6%)となっており、平成17年度に計30億8305万台(道路関係四公団時代の上半期分を含む。)であった利用台数は、令和元年度には4億9686万台増加して計35億7991万台(増加率16.1%)となっていた。そして、料金収入について1年度分が把握できる平成18年度と令和元年度を比較したところ、平成18年度に計2兆5317億余円であった料金収入は、令和元年度には4538億余円増加して計2兆9855億余円(増加率17.9%)となっていた。

図表2-1-2 6会社が管理している高速道路の管理延長、利用台数及び料金収入の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-1-2 6会社が管理している高速道路の管理延長、利用台数及び料金収入の推移(平成17年度~令和元年度)画像

また、会社別の利用台数をみたところ、NEXCO3会社及び本四会社の元年度の利用台数は、平成17年度と比較して24.2%(東会社)から33.8%(本四会社)増加しており、首都会社の令和元年度の利用台数は、距離別料金制への移行(料金圏の撤廃)に伴い現在の集計方法と同様の方法により1年度分の利用台数が把握できるようになった平成24年度と比較して5.7%増加している。一方、阪神会社の令和元年度の利用台数は、距離別料金制への移行に伴い現在の集計方法と同様の方法により1年度分の利用台数が把握できるようになった平成24年度と比較して1.7%減少していた(別図表5参照)。これは阪神会社が管理していた高速道路のうち一部の路線を30年度末に西会社等に移管したことなどによるものであり、移管分を除いて比較すると2.0%増加している。

ウ 推定交通量に対する実績交通量

特措法によれば、6会社は、事業許可を受けるに当たり、推定交通量及びその算出の基礎を記載した書類を申請書に添付することとされている。

第1の2(2)イのとおり、機構は、6会社が通行者から徴収する通行料金を基にした貸付料等により債務の返済を行っている。そして、料金の額は、推定交通量等を基に、当該道路の新設、改築、維持修繕等に要する全ての費用を料金徴収期間内で償うよう設定されている。また、6会社の収支予算の明細の計画料金収入は、推定交通量に料金の額を乗ずるなどして算定されている。

そして、推定交通量については、NEXCO3会社及び本四会社は、全国路線網に属する高速道路及び一の路線に属する高速道路共に走行台キロ(注10)単位で算出しており、首都会社及び阪神会社は、地域路線網に属する高速道路についてトリップ(注11)単位で算出している。なお、本四会社は、25年度までは換算走行台キロ(注12)単位で算出していた。

6会社の協定ごとの推定交通量と実績交通量をみたところ、図表2-1-3のとおり、令和元年度の実績交通量は、NEXCO3会社は平成18年度と比べて、首都会社、阪神会社及び本四会社はそれぞれ現在の集計方法となった24年度又は26年度と比べて、1.9%(阪神会社)から21.8%(西会社)増加していた。また、推定交通量に対する実績交通量の割合は、本四道路は100%以上、首都高速道路と阪神高速道路のうち大阪府道高速大阪池田線等に関する協定の対象となる高速道路は90%以上となっていた。また、NEXCO3会社が管理する全国路線網に属する高速道路のうち一般有料道路と一の路線に属する高速道路については、区間料金や均一料金となっていて走行台キロを単位とした実績交通量を正確には把握できないことから、推定交通量と実績交通量を正確には比較できない状況となっていた。

(注10)
走行台キロ   自動車の交通量(台)と走行距離(㎞)を乗じて、自動車の走行距離の総和を示したもの
(注11)
トリップ   走行距離にかかわらず、高速道路を利用する1台の車両の入口から出口までの走行を1トリップとするもの
(注12)
換算走行台キロ   全車種の走行台キロについて、海峡部の交通量を陸上部の交通量に料金比で換算し、更に全車種を普通車に料金比で換算したもの
h-2-1-3図表2-1-3 推定交通量と実績交通量(平成18年度~令和元年度)

図表2-1-3 推定交通量と実績交通量(平成18年度~令和元年度)



協定 区分 単位 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
平成18年度
からの
増加率(%)


①高速自動車国道北海道縦貫自動車道函館名寄線等に関する協定 推定 億台キロ 273 278 283 299 306 305 301 303 288 288 315 320 323 267  
実績 億台キロ 234 235 231 261 273 304 281 288 276 280 280 280 284 285 21.7%


②高速自動車国道中央自動車道富士吉田線等に関する協定 推定 億台キロ 245 249 251 263 265 272 267 268 264 266 283 286 294 294  
実績 億台キロ 240 241 235 254 264 260 263 271 258 264 267 271 277 278 15.8%
西

③高速自動車国道中央自動車道西宮線等に関する協定 推定 億台キロ 258 261 265 280 288 300 298 299 280 281 303 303 314 334  
実績 億台キロ 243 245 243 273 291 279 279 288 274 281 283 288 295 296 21.8%
  • 注(1) 区分欄の「推定」は推定交通量を、「実績」は実績交通量をそれぞれ示す。
  • 注(2) 本図表中の協定欄の①から③までは別図表1と対応している。
  • 注(3) 推定交通量は全国路線網に係る分が示されているが、実績交通量は高速自動車国道についてのみ集計しているため、両交通量の比率は算出していない。


協定 区分 単位 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
平成26年度
からの
増加率(%)



④一般国道
28号(本州
四国連絡道
路(神戸・
鳴門ルート))等に関
する協定
推定 百万台
キロ
2,768 2,772 2,776 2,780 2,784 3,682 3,272 3,214 1,218 1,181 1,200 1,193 1,247 1,220  
実績 百万台
キロ
2,850 2,872 2,920 3,711 3,784 3,692 3,747 3,850 1,247 1,297 1,311 1,329 1,339 1,374 10.1%
実績÷推定
×100
% 102.9 103.6 105.1 133.4 135.9 100.2 114.5 119.7 102.3 109.8 109.2 111.3 107.3 112.6  
  • 注(1) 区分欄の「推定」は推定交通量を、「実績」は実績交通量をそれぞれ示す。
  • 注(2) 本図表中の協定欄の④は別図表1と対応している。
  • 注(3) 平成25年度までは換算走行台キロにより集計している。


協定 区分 単位 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
平成24年度
からの
増加率(%)



⑤都道首都高速1号線等に関する協定 推定 百万
トリップ
363 369 372 375 383 365 352 363 365 378 360 367 373 370  
実績 百万台 419 420 407 409 407 309 - - - - - - - - -
百万
トリップ
- - - - - 85 347 347 344 354 359 365 370 366 5.4%
実績÷推定
×100
% - - - - - - 98.5 95.5 94.2 93.6 99.7 99.4 99.1 98.9  
  • 注(1) 区分欄の「推定」は推定交通量を、「実績」は実績交通量をそれぞれ示す。
  • 注(2) 本図表中の協定欄の⑤は別図表1と対応している。
  • 注(3) 平成23年12月までは旧料金圏1回の利用を1台として、24年1月以降は距離別料金制への移行に伴い1回の利用につき1トリップとして集計している。


協定 区分 単位 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
平成24年度
からの
増加率(%)



⑥大阪府道高速大阪池田線等に関する協定 推定 百万
トリップ
276 277 280 279 280 255 256 267 266 266 275 264 262 261  
実績 百万台 333 329 315 310 313 235 - - - - - - - - -
百万
トリップ
- - - - - 61 255 260 257 261 263 263 263 260 1.9%
実績÷推定
×100
% - - - - - - 99.6 97.3 96.6 98.1 95.6 99.6 100.3 99.6  
⑦京都市道高速道路1号線等に関する協定 推定 百万
トリップ
- 1 7 12 17 18 19 19 20 20 20 13 13 -  
実績 百万
トリップ
- 1 3 4 7 8 10 11 11 12 12 13 14 - -
実績÷推定
×100
% - 100.0 42.8 33.3 41.1 44.4 52.6 57.8 55.0 60.0 60.0 100.0 107.6 -  
  • 注(1) 区分欄の「推定」は推定交通量を、「実績」は実績交通量をそれぞれ示す。
  • 注(2) 本図表中の協定欄の⑥及び⑦は別図表1と対応している。
  • 注(3) 大阪府道高速大阪池田線等に関する協定に係る高速道路は、平成23年12月までは旧料金圏1回の利用を1台として、24年1月以降は距離別料金制への移行に伴い1回の利用につき1トリップとして集計している。
エ 計画料金収入に対する実績料金収入

ウのとおり、推定交通量に対応する実績交通量の割合が把握できない協定もあることから、当初協定を締結した後の18年度以降の協定ごとの計画料金収入と実績料金収入をみたところ、図表2-1-4のとおり、全国路線網に属する高速道路に係る協定については93.0%から116.4%まで、地域路線網に属する高速道路に係る協定については35.2%から117.9%まで、一の路線に属する高速道路に係る協定については78.1%から204.5%までとなっていた。

h-2-1-4図表2-1-4 協定ごとの計画料金収入と実績料金収入(平成18年度~令和元年度)

図表2-1-4 協定ごとの計画料金収入と実績料金収入(平成18年度~令和元年度)

(単位:百万円、%)




料金収入 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度






計画 709,612 722,190 719,683 613,220 621,266 607,061 604,468 607,533 700,369 710,760 778,089 800,738 811,935 822,438
実績 711,810 713,956 679,582 578,132 582,686 564,850 652,866 667,857 796,177 827,595 845,979 862,463 886,493 892,998
実績÷計画
×100
100.3 98.8 94.4 94.2 93.7 93.0 108.0 109.9 113.6 116.4 108.7 107.7 109.1 108.5


計画 589,562 599,122 585,472 477,225 475,906 474,594 476,380 480,109 579,896 599,015 641,255 656,484 666,449 668,580
実績 607,357 606,762 569,080 446,639 461,606 482,245 500,097 513,150 640,747 667,358 677,818 692,824 708,762 712,083
実績÷計画
×100
103.0 101.2 97.2 93.5 96.9 101.6 104.9 106.8 110.4 111.4 105.7 105.5 106.3 106.5
西

計画 643,757 652,624 644,959 547,669 566,717 546,542 549,281 552,462 647,514 658,713 715,852 725,342 740,067 755,303
実績 660,282 655,944 622,483 523,929 553,587 567,040 584,334 602,823 722,404 747,267 755,413 776,033 799,265 826,242
実績÷計画
×100
102.5 100.5 96.5 95.6 97.6 103.7 106.3 109.1 111.5 113.4 105.5 106.9 107.9 109.3



計画 - - - - - - - - 62,880 61,476 62,345 61,974 64,069 63,889
実績 - - - - - - - - 64,811 66,967 67,652 68,686 69,060 70,967
実績÷計画
×100
103.0 108.9 108.5 110.8 107.7 111.0







計画 75,422 75,021 72,084 54,982 54,506 53,810 56,893 55,949 - - - - - -
実績 78,335 78,320 74,240 54,268 56,375 61,954 64,828 65,990 - - - - - -
実績÷計画
×100
103.8 104.3 102.9 98.7 103.4 115.1 113.9 117.9



計画 263,101 268,946 276,377 271,335 276,337 264,036 266,780 268,770 275,435 274,146 275,706 291,089 291,606 290,185
実績 267,398 268,576 258,876 253,132 255,900 263,261 268,517 267,165 270,932 275,977 291,021 291,741 290,166 287,208
実績÷計画
×100
101.6 99.8 93.6 93.2 92.6 99.7 100.6 99.4 98.3 100.6 105.5 100.2 99.5 98.9



計画 189,911 190,640 191,065 177,337 181,344 168,254 171,685 178,428 184,388 182,758 188,628 192,290 198,808 199,141
実績 189,740 189,834 180,626 163,300 165,408 169,546 175,483 177,934 179,972 181,526 182,255 195,919 197,354 194,167
実績÷計画
×100
99.9 99.5 94.5 92.0 91.2 100.7 102.2 99.7 97.6 99.3 96.6 101.8 99.2 97.5



計画 - 204 2,642 3,697 5,423 6,664 7,090 7,237 7,521 7,626 7,650 4,863 5,022 -
実績 - 181 1,182 1,304 2,219 3,146 3,634 4,094 4,286 4,575 4,773 5,068 5,356 -
実績÷計画
×100
88.7 44.7 35.2 40.9 47.2 51.2 56.5 56.9 59.9 62.3 104.2 106.6





計画 1,682 1,409 - - - - - - - - - - - -
実績 1,736 1,486 - - - - - - - - - - - -
実績÷計画
×100
103.2 105.4


計画 763 726 684 645 470 499 471 437 658 633 608 583 744 747
実績 828 811 782 726 701 561 552 534 700 751 753 740 758 763
実績÷計画
×100
108.5 111.7 114.3 112.5 149.1 112.4 117.1 122.1 106.3 118.6 123.8 126.9 101.8 102.1


計画 682 670 758 714 669 204 - - - - - - - -
実績 825 813 774 683 775 259 - - - - - - - -
実績÷計画
×100
120.9 121.3 102.1 95.6 115.8 126.9


計画 3,251 3,235 3,197 2,333 2,925 2,637 2,255 2,207 2,097 1,284 - - - -
実績 3,265 3,276 3,113 2,236 2,902 2,268 2,165 2,172 2,451 1,363 - - - -
実績÷計画
×100
100.4 101.2 97.3 95.8 99.2 86.0 96.0 98.4 116.8 106.1


計画 1,672 1,687 1,707 1,335 1,661 1,394 - - - - - - - -
実績 1,692 1,689 1,616 1,135 1,502 1,250 - - - - - - - -
実績÷計画
×100
101.1 100.1 94.6 85.0 90.4 89.6
西

計画 3,770 3,801 3,802 3,003 3,645 3,313 3,283 3,265 3,712 3,715 3,688 3,670 4,410 1,097
実績 3,737 3,675 3,382 2,850 3,714 3,288 3,366 3,471 4,375 4,473 4,474 4,418 3,445 1,093
実績÷計画
×100
99.1 96.6 88.9 94.9 101.8 99.2 102.5 106.3 117.8 120.4 121.3 120.3 78.1 99.6
西

計画 1,668 1,600 1,588 876 859 1,138 1,135 1,144 1,845 1,790 1,749 1,722 - -
実績 2,270 2,339 2,316 1,647 1,757 1,950 1,984 2,061 2,344 2,373 2,367 2,330 - -
実績÷計画
×100
136.0 146.1 145.8 188.0 204.5 171.3 174.8 180.1 127.0 132.5 135.3 135.3
西

計画 1,744 1,689 1,624 1,364 1,442 1,451 1,438 1,432 824 - - - - -
実績 1,716 1,697 1,585 1,502 1,610 1,673 1,691 1,717 888 - - - - -
実績÷計画
×100
98.3 100.4 97.5 110.1 111.6 115.2 117.5 119.9 107.7
西

計画 676 689 740 - - - - - - - - - - -
実績 709 726 825 - - - - - - - - - - -
実績÷計画
×100
104.8 105.3 111.4
  • (注) 本図表中の協定欄の①から⑮までと⑰は別図表1と対応している。
オ 令和2年度の利用状況

令和2年4月7日に、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県に新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)に基づき緊急事態宣言が発出され、同月16日には緊急事態措置を実施すべき区域が全都道府県に変更されるなどして、全都道府県において外出の自粛の協力要請が行われるなどしたことから、高速道路の利用状況に与えた影響をみるために、2年4月から同年11月までの会社ごとの月別の1日当たりの平均利用台数を前年同期と比較したところ、図表2-1-5のとおり、4月及び5月については前年同期比41.5%から71.4%までと大きく落ち込んでいた。

h-2-1-5図表2-1-5 令和2年4月以降の月別利用状況(令和2年4月~11月)

図表2-1-5 令和2年4月以降の月別利用状況(令和2年4月~11月)

会社名 平均利用台数等 令和2年
4月
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
東会社 平均利用台数(千台/日) 2,068 1,925 2,547 2,667 2,822 2,842 2,883 2,878
前年同期比 69.0% 64.4% 87.0% 88.0% 86.5% 92.4% 99.5% 93.8%
中会社 平均利用台数(千台/日) 1,369 1,235 1,664 1,728 1,820 1,901 1,932 1,982
前年同期比 67.8% 61.8% 86.5% 86.2% 83.8% 92.6% 99.9% 94.6%
西会社 平均利用台数(千台/日) 2,066 1,905 2,482 2,585 2,712 2,776 2,855 2,926
前年同期比 67.2% 62.6% 86.1% 85.9% 83.5% 91.3% 95.7% 92.7%
本四会社 平均利用台数(千台/日) 33 27 40 44 48 49 48 51
前年同期比 54.1% 41.5% 79.6% 83.4% 68.9% 86.1% 88.2% 86.6%
首都会社 平均利用台数(千台/日) 719 670 887 917 918 969 978 982
前年同期比 70.8% 68.3% 88.2% 89.2% 90.0% 94.1% 99.9% 95.1%
阪神会社 平均利用台数(千台/日) 523 490 644 657 658 692 702 669
前年同期比 71.4% 70.1% 注(2)96.6% 88.1% 88.9% 93.8% 98.3% 91.3%

(2) 高速道路に係る料金設定

ア 6会社の料金設定
(ア) NEXCO3会社の料金設定

高速自動車国道の料金の額については、2年3月末時点におけるNEXCO3会社と機構との全国路線網に属する高速道路に関する協定において、①対距離料金制を適用する区間、②均一制を適用する区間及び③区間料金制を適用する区間の料金の額がそれぞれ定められている。

① 対距離料金制を適用する区間の料金の額は、利用距離に対して課する可変額部分と1回の利用に対して課する固定額部分から成っている。そして、利用距離に対して課する可変額部分の1㎞当たりの料金の額については、図表2-1-6のとおり普通区間の普通車が24.6円等と設定されており、利用1回に対して課する固定額部分の料金の額は150円となっている。

なお、普通区間は、大都市近郊区間(大都市近郊で多額の建設費等を要したことに加えて、その利用による受益が極めて大きいと認められる区間)及び特別区間(長大橋りょうや長大トンネル等により多額の建設費等を要したことに加えて海峡等を短時間で横断できるという特別な受益が極めて大きいと認められる区間)以外の区間である。

h-2-1-6図表2-1-6 利用距離に対して課する可変額部分の1㎞当たりの料金の額

図表2-1-6 利用距離に対して課する可変額部分の1㎞当たりの料金の額

(単位:円)
車種
区間
普通区間 大都市近郊区間 特別区間
関越等 関門
軽自動車等 19.68 23.616 31.488 51.2
普通車 24.6 29.52 39.36 64.0
中型車 29.52 35.424 47.232 76.8
大型車 40.59 48.708 64.944 105.6
特大車 67.65 81.18 108.24 176.0
  • 注(1) 関越等は、関越特別区間(東会社)並びに恵那山特別区間及び飛騨特別区間(中会社)である。
  • 注(2) 特別区間については、平成26年4月1日から令和6年3月31日までETC車の料金の額を普通区間の料金と同額としている。

そして、利用距離に対して課する可変額部分の額については、100㎞を超える区間について、100㎞を超え200㎞までの部分については25%、200㎞を超える部分については30%の割引を行うこととなっており、対距離料金制区間のインターチェンジ(以下「IC」という。)相互間の料金の額の計算方法は、図表2-1-7に示すとおりとなっている。

図表2-1-7 料金の額の計算方法

図表2-1-7 料金の額の計算方法画像

このほか、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の取扱い、料金算出方法の特例、料金の額の特例等が定められている。

② 均一制を適用する区間は、東会社が管理する北海道縦貫自動車道函館名寄線の札幌南ICから札幌ICまで及び北海道横断自動車道黒松内釧路線の札幌西ICから札幌ジャンクション(以下、ジャンクションを「JCT」という。)までの区間であり、1回の通行に係る料金の額、消費税等の取扱いなどが定められている。

③ 区間料金制を適用する区間は、東会社が管理する東北縦貫自動車道弘前線の大泉ICから川口JCTまでなどの区間(東京外環自動車道)、中会社が管理する近畿自動車道名古屋亀山線の名古屋西JCTから名古屋南JCTまでなどの区間(名古屋第二環状自動車道)、西会社が管理する近畿自動車道天理吹田線の天理ICから松原IC又は長原ICまでなどの区間(西名阪自動車道)等であり、1回の通行に係る料金の額や各IC相互間の1回の通行に係る料金の額、消費税等の取扱いなどが定められている。

また、一般有料道路の料金の額については、東会社が管理する一般国道1号及び16号(横浜新道)、中会社が管理する一般国道1号(新湘南バイパス)及び一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道)、西会社が管理する一般国道1号及び478号(京滋バイパス)等の1回の通行に係る料金の額や各IC相互間の1回の通行に係る料金の額、消費税等の取扱いなどが定められている。

(イ) 本四会社の料金設定

2年3月末時点における本四会社と機構との全国路線網に属する高速道路に関する協定では、本四道路の路線ごとの各IC相互間の1回の通行に係る料金の額、消費税等の取扱いなどが定められている。

(ウ) 首都会社の料金設定

2年3月末時点における首都会社と機構との地域路線網に属する高速道路に関する協定では、首都高速道路の基本料金の額、消費税等の取扱い、ETC専用施設のみが設置された入口等に非ETC車が進入して通行する場合における料金の額、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ロードプライシング料金上乗せなどが定められている。

首都高速道路の基本料金の額は、利用距離に対して課する可変額部分と利用1回に対して課する固定額部分から成っている。そして、利用距離に対して課する1㎞当たりの料金の額については、NEXCO3会社の大都市近郊区間と同額の普通車29.52円等と設定されており、利用1回に対して課する固定額部分の料金の額もNEXCO3会社と同額の150円となっている。ただし、非ETC車については、首都高速道路の入口等から最遠の出口等までの距離を料金距離として、その料金距離に応じた料金の額を適用することになっている。

また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ロードプライシング料金上乗せは、東京都及び公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が取りまとめた「東京2020大会における首都高速道路の料金施策に関する方針」に基づき、2年7月から同年9月までの間に予定されていた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催期間の午前6時から午後10時までの間に指定された区間を通行する自動車(指定された自動車以外の軽自動車等及び普通車)に909.09円の料金を上乗せすることとしていたものである(同大会の開催延期に伴い、同年7月8日付けの協定変更において、料金を上乗せする期間を3年7月から同年9月までの間に変更している。)。

(エ) 阪神会社の料金設定

2年3月末時点における阪神会社と機構との地域路線網に属する高速道路に関する協定では、阪神高速道路の基本料金の額、消費税等の取扱いなどが定められている。

阪神高速道路の基本料金の額は、利用距離に対して課する可変額部分と利用1回に対して課する固定額部分から成っている。そして、利用距離に対して課する1㎞当たりの料金の額については、NEXCO3会社の大都市近郊区間及び首都会社と同額の普通車29.52円等と設定されており、一方、利用1回に対して課する固定額部分の料金の額は、NEXCO3会社及び首都会社より高い250円となっている。ただし、非ETC車については、阪神高速道路の入口等から最遠の出口等までの距離を料金距離として、その料金距離に応じた料金の額を適用することになっている。

イ 高速道路の料金水準の見直しなど
(ア) 高速道路の料金水準の見直しの経緯

高速自動車国道の料金については、整備時期の違いによる料金格差の是正を目的として、昭和47年に料金プール制が導入されて全国の料金水準が共通化され、その際の料金水準は普通区間の普通車で1㎞当たり8円となっていた。その後、建設費の上昇に対応するなどのため、料金水準は順次引き上げられ、平成7年の料金改定時には、料金徴収期間をそれまでの30年間から40年間に延長した結果、料金水準は料金徴収期間の延長分低く抑えられることとなり、普通区間の普通車で1㎞当たり24.6円とされた。一方、一般有料道路においては、個別路線ごとの採算性の確保を基本として料金が設定されてきたことなどから、高速自動車国道とは料金水準が異なっており、本四道路や東京湾横断道路(以下「アクアライン」という。)については、建設費や便益を考慮して、高速自動車国道と比較して高い料金水準となっていた。

また、首都高速道路及び阪神高速道路は、当初、ネットワークが小さく利用距離に大きな差がなかったこと、大型の出口料金所を設置することが困難であることなどから料金圏ごとの均一料金制を採用していた。その後、国土交通省が23年2月に公表した「高速道路の当面の新たな料金割引について」において、地方自治体等の意見を踏まえた上で、料金圏のない対距離制(500円~900円(普通車))を24年から導入する方針が示され、同年1月から料金圏のない距離別料金制(利用距離に応じて普通車で500円から900円までなどとし、6㎞ごとに100円ずつ加算する5段階の料金)へ移行した。

国土交通省は、25年6月に社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会(以下「国幹部会」という。)が取りまとめた「中間答申(平成25年6月)」(以下「25年中間答申」という。)を受けて、同年12月に「新たな高速道路料金に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)等を公表した。基本方針に基づき、NEXCO3会社は、26年3月に機構との協定を変更し、変更の事業許可を受けて、同年4月から新たな高速道路料金を適用することとなった。また、これと同時に、本四会社も変更の事業許可を受けるなどして、本四道路は全国路線網に編入された。

基本方針によれば、ネットワーク化が進みつつある高速道路が一層有効利用されるように、①建設の経緯の違いなどによる区間ごとの料金差を是正して、普通区間、大都市近郊区間及び海峡部等特別区間の三つの料金水準に整理し、②大都市圏(首都圏及び阪神圏)の料金については、環状道路の整備に合わせてシームレスな料金体系を導入するべく検討を進めることとされ、それまでの間、首都高速道路は27年度末まで、阪神高速道路は28年度末まで、距離別料金制を維持することとされた。

これにより、図表2-1-8のとおり、関越トンネル等の特別料金(関越トンネルの普通車の料金39.36円/㎞)は普通区間並み(普通車の料金24.6円/㎞)に、アクアライン等の海峡部等特別区間の料金(アクアラインの普通車の料金179.28円/㎞)は一般国道302号(伊勢湾岸道路)並み(普通車の料金108.1円/㎞)にそれぞれ引き下げられた。ただし、引下げ対象は、通行台数に占めるETC車の割合(以下「ETC利用率」という。)が9割に達することから、料金徴収コスト等を考慮してETC車に限定された。

図表2-1-8 基本方針に基づく料金水準の見直し

図表2-1-8 基本方針に基づく料金水準の見直し画像

また、西会社が4車線化事業を行っている一般国道497号西九州自動車道(佐世保道路)の長崎県北松浦郡佐々町(佐々IC)から佐世保市大塔町(佐世保大塔IC)までの区間のうち、佐々ICから佐世保中央ICまでの区間は、全国路線網の高速道路として新規に有料道路化するものであるが、日常利用が主である同区間は無料のままとしてほしいという地域からの要望もあり、同区間内のみの利用については無料となっていて、同区間には無料走行する自動車と有料走行する自動車が混在することになっている。

(イ) 大都市圏の高速道路の料金

27年7月の国幹部会の中間答申(高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」)において、当時の首都圏の料金体系は、整備の経緯の違いなどから、料金水準や車種区分等が路線や区間によって異なるため、利用者にとって分かりにくく、使いにくいなどの課題が顕在化しているとされた。首都圏については、このようなことを踏まえて、国土交通省が同年9月に発表した「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」(以下「首都圏方針案」という。)において、会社により区々となっている料金体系の整理・統一、起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現等を行うこととなった。そして、首都圏の高速道路料金は、①料金水準を高速自動車国道の大都市近郊区間の料金水準に統一すること及び②車種区分を5車種区分 (注13)に統一して対距離制を基本とした利用重視の料金体系へ移行することが示された。また、起終点を基本とした継ぎ目のない料金を実現するために、道路交通や環境等についての都心部の政策的な課題を考慮して、一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道)の利用が料金の面において不利とならないように、経路によらず、起終点間の最短距離(当面、料金体系の整理・統一に伴う激変緩和を考慮して最安値とする。)を基本に料金を決定することが示された。

そして、東会社、中会社及び首都会社は、首都圏方針案を踏まえて、28年3月に変更の事業許可を受けて、同年4月から新たな高速道路料金を適用することとなった。これにより首都高速道路は、2車種区分(普通車及び大型車)の距離別料金制(普通車の料金の例:510円~930円)から5車種区分の対距離料金制(普通車の料金の例:300円~1,300円)に移行した。

その後、令和2年3月に首都会社が管理する横浜市道高速横浜環状北西線(以下「横浜北西線」という。)が開通することにより、横浜北西線を経由せずに第一東海自動車道(以下「東名高速道路」という。)を利用して東京や埼玉方面に向かう経路よりも、横浜北西線を経由し首都高速道路のみを利用して東京や埼玉方面に向かう距離の長い経路の方が料金が割安となることから、迂回通行する交通の増加による渋滞や環境への影響が懸念された。そこで、首都会社は、中会社が管理する東名高速道路と横浜北西線を連続通行する場合の首都高速道路の料金については、迂回通行する交通を抑制することなどを目的として、対距離料金制に移行した際に激変緩和措置として導入した上限料金1,320円(普通車)を、東名高速道路と中央環状線を連続通行する場合の料金と同水準となる1,800円(普通車)に調整した(事例として、横浜青葉ICから三郷JCTまでの料金について図表2-1-9参照)。

(注13)
5車種区分   軽自動車等、普通車、中型車、大型車及び特大車

図表2-1-9 横浜青葉ICから三郷JCTまでの料金

図表2-1-9 横浜青葉ICから三郷JCTまでの料金画像

近畿圏については、平成28年9月の国幹部会の「近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系基本方針(案)」を踏まえて、国土交通省が同年12月に発表した「近畿圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」(以下「近畿圏方針案」という。)において、料金体系の整理・統一とネットワーク整備、管理主体の統一も含めた継ぎ目のない料金の実現等を行うこととなった。そして、西会社及び阪神会社は、近畿圏方針案を踏まえて、29年3月に変更の事業許可を受けて、同年6月から新たな高速道路料金を適用することとなった。これにより阪神高速道路は、2車種区分の距離別料金制(普通車の料金例:510円~930円)から5車種区分の対距離料金制(普通車の料金例:300円~1,300円)に移行(京都市道高速道路1号線等に関する協定となる高速道路(以下「阪神京都線」という。)は31年4月1日に西会社及び京都市に移管)するなどした。

中京圏については、令和元年12月の国幹部会中京圏小委員会の「中京圏の高速道路を賢く使うための料金体系基本方針」を踏まえて、国土交通省が2年2月に発表した「中京圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」(以下「中京圏方針案」という。)において、料金体系の整理・統一とネットワーク整備、起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現等を行うこととなった。そして、中会社は、中京圏方針案を踏まえて、同年3月に変更の事業許可を受けて、近畿自動車道伊勢線(名古屋第二環状自動車道。名古屋西JCTから飛島JCTまでの間)の開通に合わせて新たな高速道路料金体系に移行することとなった。

ウ 料金の性格とその水準等

高速道路の料金の額等については、第1の2(3)イのとおり、償還主義が全国路線網に属する高速道路、地域路線網に属する高速道路及び一の路線に属する高速道路に、公正妥当主義が全国路線網に属する高速道路及び地域路線網に属する高速道路に、便益主義が一の路線に属する高速道路にそれぞれ適用されている。そして、国土交通省は、それぞれの料金の額等が、特措法に規定されたこれらの基準に適合しているかどうかについて、次のように確認を行っていた。

① 償還主義については、協定の対象となる高速道路ごとに6会社が作成した収支予算の明細及び債務返済計画において料金徴収期間内に債務の返済が完了することとなっていることをもって当該高速道路の料金の額が特措法の基準に適合するとされていた。

そこで、会計検査院が6会社の収支予算の明細をみたところ、計画料金収入や計画管理費、これらの差額としての貸付料等が記載されていて、計画料金収入は、国の作成した交通需要予測を基に会社が推定した交通量に料金の額を乗じて得た額から見込まれる割引額を減じて算定していた。そして、6会社の収支予算の明細では、計画料金収入により計画管理費及び貸付料を料金徴収期間内に賄うものとなっていた。協定ごとに計画料金収入に対する実績料金収入の割合をみたところ、(1)のとおり、全国路線網に属する高速道路に係る協定については93.0%から116.4%までなどとなっていた。

また、債務返済計画には、貸付料、占用料等、機構の管理費等が記載されていて、貸付料は6会社の収支予算の明細の貸付料と同額となっていた。そして、貸付料、占用料等により、機構の管理費や債務の返済等に係る費用を高速道路資産の貸付期間内に償うものとなっていた。

② 公正妥当主義については、平成6年8月に、内閣総理大臣の諮問機関である物価安定政策会議において、中央自動車道西宮線(名神高速道路)が開通した昭和38年度以降の消費者物価指数の推移により、高速道路の料金の額が他の公共料金等と比較して適切な料金比率となっていることをもって、当該高速道路の料金の額が特措法の基準に適合した妥当なものであると報告されていた。また、国土交通省のウェブサイトに掲載されていた高速道路料金と主な公共料金等の推移において、38年度を100とした場合の平成14年度における高速道路料金は343、電気料金は153、JR料金は641、私鉄料金は676、タクシー料金は714となるなどしていて、高速道路料金の上昇率は他の公共料金等と比べて低い割合にとどまっているとしていた。

そこで、会計検査院が上記に倣い、総務省の消費者物価指数を基に、昭和38年度以降の高速道路料金と主な公共料金等の推移をみたところ、38年度を100とした場合、令和元年度の高速道路料金は457、電気料金は188、JR料金は663、私鉄料金は709、タクシー料金は813となるなどしており、高速道路料金の上昇率は電気料金を除く他の公共料金等と比べて低い割合となっていた。

そして、6会社は、イのとおり、高速道路料金について、基本方針等を踏まえて、対距離制を基本とし、普通区間、大都市近郊区間、海峡部等特別区間の三つの料金水準に整理し、車種区分を5車種区分に統一するなどしていた。

なお、5車種区分の車種間料金比率(軽自動車等0.8:普通車1.0:中型車1.2:大型車1.65:特大車2.75)については、昭和63年10月の道路審議会の答申を踏まえて、高速道路を空間的、時間的に占有する度合いに応じて各車種が負担し合う占有者負担の考え方、建設・管理に係る費用に影響を与える度合いに応じて各車種が負担し合う原因者負担の考え方及び高速道路利用により受ける便益に応じて各車種が負担し合う受益者負担の考え方を勘案して設定していた。

③ 便益主義については、NEXCO3会社が一の路線に属する高速道路に関する事業許可を受ける際の料金算出の基礎を記載した書類において当該高速道路における車種別の便益額と料金の額とを比較して、いずれの車種も料金の額が便益額を下回っていることをもって当該高速道路の料金の額が特措法の基準に適合するとされていた。

そこで、令和2年3月末現在、通行料金を徴している一の路線に属する高速道路が一般国道158号(中部縦貫自動車道(安房峠道路))のみであったことから、会計検査院が、同路線の便益額の算定について確認したところ、その便益額は、迂回道路を通過する場合に比べた時間短縮に伴う便益の「時間便益」とそれ以外の便益の「走行便益」を合計して算定されていて、普通車の場合は1,570.9円となっていた。このうち、時間便益は、迂回道路を通過する場合に比べて短縮できる時間の30.4分に1分当たりの時間便益(注14)42円を乗じた1,276.8円となっていた。また、走行便益は、迂回道路を通過した場合の走行費(注15)396.1円から同路線を通過した場合の走行費102.0円を差し引いた294.1円となっていた。

そして、平成9年11月の事業変更許可時の普通車の料金の額750円は、上記の便益額を下回っていた。

(注14)
1分当たりの時間便益   「一般有料道路の時間便益単価について」(平成7年建設省道有発第40号建設省道路局有料道路課長通知)で定められていたものを用いていた。
(注15)
走行費   「一般有料道路の走行便益単価の改定について」(昭和58年建設省道有発第3号建設省道路局有料道路課長通知)で勾配の区分ごとに、一般道路又は有料道路の別に定められた1㎞当たりの費用に、それぞれの延長を乗ずるなどして算出されていた。
エ 料金の割引等とその影響

15年から大都市の沿道環境改善対策や地方都市の通勤混雑緩和等のための料金割引が社会実験として実施され、また、17年までの民営化の過程で、新直轄方式の導入や建設、管理コストの縮減等による債務の軽減を利用者に還元する観点から料金割引が導入されている。

当初協定では、民営化申合せにおいて実現することとされていたマイレージ割引、深夜割引、通勤割引等が行われていた。

その後、第1の2(5)イのとおり、国は、19年12月の「道路特定財源の見直しについて」において、地域の活性化、物流の効率化等の点から、高速道路の通行料金の引下げ及びスマートICの整備を行うなどの既存高速道路の有効活用及び機能強化策を推進することなどとして、20年5月に財政特措法を改正し、利便増進事業に必要な機構の財政基盤の確保を図るために、機構の債務の一部を国の一般会計において承継することとした。

令和2年3月末時点における6会社と機構との協定では、マイレージ割引(首都会社及び阪神会社を除く。)、大口・多頻度割引、企画割引、一般国道409号及び468号(東京湾横断道路・木更津東金道路)における割引(以下「アクアライン割引」という。)等、多岐にわたる料金割引が定められている(別図表6参照)。

(ア) 企画割引

6会社は、民営化申合せに基づいて、貸付料の確実な支払に支障を与えない範囲において、民間のノウハウを発揮して更なる弾力的な料金設定を行うこととされたことなどから、地元自治体等と連携し、観光支援等を目的として、特定の地域内の高速道路を定額で乗り降り自由に通行できる周遊割引等の様々な企画割引を実施している。

そして、会社別の年度ごとの企画割引の実施件数は図表2-1-10に示すとおりとなっており、首都会社を除く5会社は、ほぼ毎年、企画割引を実施していた。これに対して、首都会社については平成18年度から令和元年度までの間の企画割引の実施件数が2件にとどまっていた。首都会社は、その理由について、慢性的な混雑が生じており、企画割引は利用を誘発することになるため、その導入について慎重に検討したことによるとしている。

h-2-1-10図表2-1-10 会社別の企画割引実施件数(平成18年度~令和元年度)

図表2-1-10 会社別の企画割引実施件数(平成18年度~令和元年度)

(単位:件)
会社名 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
東会社 2 5 10 11 7 8 16 18 14 14 16 11 11 14
中会社 3 8 7 1 0 1 9 5 7 15 13 13 16 16
西会社 0 4 6 1 0 0 7 5 8 5 8 10 7 10
本四会社 6 7 10 7 4 4 5 3 2 1 1 1 1 1
首都会社 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0
阪神会社 0 1 5 3 4 2 5 3 4 3 3 4 2 2
11 25 39 23 16 15 42 34 35 38 41 39 37 43
(イ) 利便増進事業による割引

国土交通省は、第1の2(5)イのとおり、利便増進事業を実施するために必要な国の債務承継の規模を約3兆円とし、国は、平成21年3月に、機構が負う債務のうち2兆8804億余円を一般会計において承継してその総額を減らすこととした。これにより、機構は、6会社が料金割引を行うための原資となる分の貸付料を減額(総額3兆2832億円)したり、NEXCO3会社及び本四会社が行うスマートICの整備等に係る債務を引き受けたりすることが可能となった。

上記による貸付料の減額等を受けて、図表2-1-11のとおり、NEXCO3会社及び本四会社は、利便増進事業として休日特別割引(3割、5割)や平日深夜割引(3割、5割)等を行っており、また、首都会社及び阪神会社は、対距離料金制への移行に伴う上限料金の引下げに係る割引等を行っていて、令和2年3月末時点においても、上限料金の引下げに係る割引や、並行する有料道路の路線間での料金格差等により都市部や住宅地への交通流入を抑制するための環境ロードプライシング割引を利便増進事業により継続して実施している。

h-2-1-11図表2-1-11 利便増進事業により行われた主な料金割引

図表2-1-11 利便増進事業により行われた主な料金割引

NEXCO3会社及び本四会社 首都会社及び阪神会社
   
平日深夜割引(3割、5割) 曜日別時間帯別割引
平日夜間割引I(3割) 大口・多頻度割引の契約単位割引
休日昼間割引(5割) 上限料金の引下げに係る割引
休日特別割引(3割、5割) 環境ロードプライシング割引
休日終日割引(5割) 会社間乗継割引
休日深夜割引(3割、5割)
平日昼間割引I(3割)
平日夜間割引II(3割、5割)
平日昼間割引II(3割)
東水戸道路等における通勤割引(5割)
通勤割引(距離制限緩和)(5割)
アクアライン割引
大口・多頻度割引の契約単位割引
  • (注) 休日特別割引(3割、5割)には、地方部上限1,000円(平成21年3月~23年6月)を含む。
(ウ) 高速道路無料化社会実験

国土交通省は、高速道路を徹底的に活用して、物流コスト・物価を引き下げ、地域経済を活性化するために、平成22年6月28日から23年6月19日までの間に、全国の高速道路延長の約2割に当たる1,652㎞(50区間)を無料化して、地域への経済効果及び渋滞や環境への影響について把握するための高速道路無料化社会実験を実施した(別図表7参照)。この社会実験は、首都高速道路及び阪神高速道路を除く高速道路の中から、休日の地方部上限1,000円による渋滞発生頻度、他の交通機関への影響、高速道路ネットワークの状況(有料・無料の連続性等)、予算等を総合的に勘案して対象区間を選定し、主に、三大都市圏及び札幌、仙台、広島、福岡の各都市圏内の路線並びにこれを相互に連絡する路線並びにこれと各県の県庁所在地を結ぶ路線を除いて実施された。

なお、高速道路無料化社会実験は、23年3月11日に発生した東日本大震災による被災者及び原発事故による避難者に対する無料措置の実施に伴い、同年6月20日午前0時をもって一時凍結されている。

(エ) 東北地方の高速道路の無料措置

国土交通省は、東日本大震災による被災者や原発事故による避難者を支援するために、罹災証明書等の提示により、東北地方等(水戸エリアの常磐自動車道を含む。以下同じ。)を発着とする通行を23年6月から当面1年間、無料とした。令和2年3月末現在では、被災者等の支援について内容が一部見直されて、原発事故による警戒区域等からの避難者等に対して高速道路の無料措置が行われている。

また、当面の復旧復興の物資等輸送のために、東北地方等を発着する中型車以上の通行について、平成23年6月から無料としたが、この措置を悪用して、常磐自動車道水戸IC等で高速道路を降りた後に、東北地方と関係のない地域へ走行する車両が問題となったことから、同年8月末で終了した。

(オ) 料金割引の影響等

企画割引については、民営化申合せにおいて貸付料の確実な支払に支障を与えない範囲で行うこととされていることから、6会社は、企画割引により誘発利用した割合を確認した上で、誘発利用による収入増が割引による収入減を下回らないことを確認したり、他の割引率等を参考に過度な割引とならないように企画割引を設定したりしていた。そして、利用状況や利用者へのアンケート等を確認することで、利用者の行動や要望等を把握することに努めて、今後の参考としていた。

その他の割引の評価については、25年中間答申で、通勤割引、深夜割引等の種類別に行われ、また、高速道路無料化社会実験の評価については、国幹部会で行われていた。各種料金割引の目的と評価について整理すると図表2-1-12に示すとおりであり、割引内容を見直すことも必要であるなどとされている。

h-2-1-12図表2-1-12 料金割引の目的と評価

図表2-1-12 料金割引の目的と評価

種類 目的と評価
通勤割引 (目的)
 高速道路に並行する一般道路における通勤時間帯の混雑の解消のために、交通容量に余裕のある高速道路の利用を促進
(評価)
 区間により程度は異なるものの、約半数の区間で並行一般道路の渋滞解消の効果が確認されたが、通勤者を対象として想定した割引であるにもかかわらず、通勤時間帯に高速道路を通行する車両全てに適用されているため、見直すことも必要
深夜割引 (目的)
<3割引>

・高速道路に並行する一般道路の沿道環境を改善するために、環境基準の達成状況の高い高速道路の利用を促進

・昼間の高速道路の渋滞緩和のため、夜間の交通容量を有効活用

<拡充(3→4→5割引)>

・原油価格高騰対策として、安定的な物流コストの確保等を図る。

・主に夜間に行われる長距離輸送(基幹物流)を支援し、物流コストを低減

(評価)
 民営化時に導入した3割引については、並行一般道路から高速道路への交通の転換により沿道環境の改善に効果があったと考えられる一方、4割引、5割引への拡充では、並行一般道路から高速道路への交通の転換が見られていないため、拡充分については見直すことも必要
平日3割引 (目的)

・主に昼間に行われる短距離輸送(小口)を支援し、物流コストを低減

・原油価格高騰対策として、安定的な物流コストの確保等を図る。

・主に夜間に行われる長距離輸送(基幹物流)を支援し、物流コストを低減

・深夜割引(0時~4時)の適用待ちの車両による料金所での滞留の解消を図る。

(評価)
 中型車以上であっても約3割から4割の区間以外では並行一般道路から高速道路への交通の転換は見られておらず、見直すことも必要
休日5割引
(大都市部3割引)
(目的)
 観光需要を喚起し、地域活性化を図るため、高速道路の有効活用を促進
(評価)
 地域活性化に一定の効果が見られたものの、高速道路での渋滞の増加といった課題も生じた。
マイレージ割引 (目的)

・多頻度利用者(小口)の利用の定着化を図り、高速道路の経営の安定を図る。

・カードの偽造問題により廃止することとなったハイウェイカード割引を実質的に継続するための措置

(評価)
 偽造問題により廃止したハイウェイカードの代替措置であるが、他の交通 機関では、同種の割引を廃止している例もある。このため、利用状況をモニタリングした上で割引内容を見直すことも必要
大口・多頻度割引 (目的)

・多頻度利用者(大口)の利用の定着化を図り、高速道路の経営の安定を図る。

・別納割引において発生した不適切な蓄財やカードの使い回しによる登録外車両の利用等の悪質行為を防止

(評価)
 中型車以上のうち6割以上が利用するとともに、かつての別納割引において発生した悪質行為を防止する割引方法となっていることから基本的に継続すべき。
高速道路無料化社会実験 (目的)
 高速道路を徹底的に活用し、物流コスト・物価を引き下げ、地域経済を活性化するために、全国の高速道路の約2割の区間で無料化社会実験を行い、地域への経済効果、渋滞や環境への影響について把握
(評価)
 都市部の区間を中心に高速道路で渋滞が発生するといった課題が生じた一方で、地方の端末部の一部の区間では、高速道路の渋滞は発生せず、地域経済活性化や並行一般道路の渋滞解消に一定の効果が見られた。
  • (注) 25年中間答申及び第9回国幹部会(平成25年5月10日)の資料を基に会計検査院が作成した。

国土交通省は、25年中間答申や6会社の意見を踏まえて、割引制度を再編することとし、NEXCO3会社の料金割引については、実施する目的を明確にした上で、効果が高く重複や無駄のない割引とするなどの見直しを行い、物流対策として大口・多頻度割引を最大30%割引から40%割引に拡充したり、アクアライン割引について、当分の間、千葉県による費用負担を前提に、現行の終日800円(普通車)の料金を継続したりなどすることとなった。

また、「好循環実現のための経済対策」(平成25年12月5日閣議決定)に基づき、一定の期間、物流対策等の観点から激変緩和措置(大口・多頻度割引の最大割引率を40%から50%に拡充等)を講ずることとなった。

会計検査院は、平成25年度決算検査報告における特定検査対象に関する検査状況として掲記した「高速道路利便増進事業の実施状況等について」において、6会社の高速道路の交通量について分析し、高速道路の交通量は、料金割引だけでなく景気や新規路線の開通等の他の要因にも影響されるが、割引実施前後の交通量の傾向からみた料金割引全体の効果は相応に認められるとしたところである。

今回、上記の分析に倣い、社会実験等により通行料金が大幅に下がり料金割引による交通量への影響が大きいと考えられるアクアラインについて、18年度以降の通行料金の額と通行台数及び料金収入の推移をみたところ、図表2-1-13のとおり、ETC車の通行料金が800円(普通車)となった21年度以降の通行台数は大幅な増加傾向を示す一方、料金収入は割引制度導入後増加傾向を示しているものの18年度との比較では減収となっていた。

図表2-1-13 アクアラインの通行台数と料金収入の推移等(平成18年度~令和元年度)

(通行台数)

図表2-1-13-1 アクアラインの通行台数と料金収入の推移等(平成18年度~令和元年度)

(料金収入)

図表2-1-13-2 アクアラインの通行台数と料金収入の推移等(平成18年度~令和元年度)

また、同様に、利便増進事業等による料金割引により通行料金が大きく下がった本四道路について、18年度以降の通行料金の額と通行台数及び実績料金収入の推移をみたところ、図表2-1-14のとおり、利便増進事業等による割引が導入された21年度以降の通行台数は増加傾向を示す一方、実績料金収入は割引制度導入後増加傾向を示しているものの18年度との比較では減収となっていて、アクアライン割引の制度導入後の傾向と同様の傾向を示していた。

図表2-1-14 本四道路の通行台数と実績料金収入の推移等(平成18年度~令和元年度)

(通行台数)

図表2-1-14-1 本四道路の通行台数と実績料金収入の推移等(平成18年度~令和元年度)

(実績料金収入)

図表2-1-14-2 本四道路の通行台数と実績料金収入の推移等(平成18年度~令和元年度)

以上のように、料金制度の見直しや料金割引の導入は様々な形で行われてきているところではあるが、国土交通省、機構及び6会社は、引き続き、償還主義、公正妥当主義等に基づく検証を必要に応じて行うとともに、新たな路線や区間の開通等によるネットワークの整備状況、社会情勢の変化等に応じて適時適切に料金制度及び料金割引の見直しを行う必要がある。

2 各高速道路株式会社の経営状況

(1) 高速道路事業の実施状況

ア 高速道路の新設、改築等
(ア) 高速道路の整備の進捗状況等

18年度以降の高速道路の整備状況をみたところ、図表2-2-1のとおり、18年4月1日時点においては、開通済みの延長が8,976㎞、事業中の延長が1,394㎞となっていたが、令和2年3月末時点においては、開通済みの延長が10,355㎞、事業中の延長が313㎞となっており、平成18年4月1日時点で事業中となっていた延長1,394㎞のうち1,266㎞(90.8%)が開通していた。

図表2-2-1 民営化後の整備状況

図表2-2-1 民営化後の整備状況画像

18年4月1日時点で事業中となっていた区間及び当初協定締結後に追加された区間については、協定において完成予定年月日が定められていた。そこで、同日時点で事業中となっていた区間のうち令和2年3月末までに開通した96区間(暫定2車線区間の4車線化事業、付加車線(注16)設置事業等の区間を除く。)について、当初協定に定められた完成予定年月日と実際の開通日を比較したところ、図表2-2-2のとおり、当初協定で定められた完成予定年月日よりも開通を前倒しできた区間が計65区間、開通が遅れた区間が計31区間となっていて、開通が遅れた区間については協定の完成予定年月日が変更されていた。そして、開通を前倒しできた65区間については、2年以上前倒しできた区間はなく、1年以上2年未満前倒しできた区間は9区間となっていた。一方、開通が遅れた31区間については、2年以上遅れた区間が11区間となっており、最も遅れたものは、地方公共団体が合わせて施工する範囲で地下水対策が必要となったり、地元調整や用地買収が遅れたりしたことなどによる約5年であった。

(注16)
付加車線   適切な走行速度を確保し、高いサービス速度を提供するために、専ら自動車の追越しを目的として設置する付加追越車線及び速度の低下している車両を追随する車両から分離して通行させることを目的として設置するゆずり車線
h-2-2-2図表2-2-2 当初協定の完成予定年月日と開通日の状況(民営化後の開通区間)

図表2-2-2 当初協定の完成予定年月日と開通日の状況(民営化後の開通区間)

(単位:区間)
会社名
状況
東会社 中会社 西会社 本四会社 首都会社 阪神会社 合計
前倒し 2年以上前倒し 0 0 0 0 0 0 0 65
1年~2年前倒し 4 1 4 0 0 0 9
0.5年~1年前倒し 2 3 3 0 0 0 8
~0.5年前倒し 20 8 12 0 4 4 48
遅れ ~0.5年遅れ 4 3 2 0 0 2 11 31
0.5年~1年遅れ 0 4 0 0 1 0 5
1年~2年遅れ 1 3 0 0 0 0 4
2年以上遅れ 6 2 0 0 2 1 11

また、18年4月1日時点で事業中となっていた区間のうち令和2年3月末時点においても事業中となっていた10区間をみると、埋蔵文化財調査量の増加や橋りょう等の構造の見直しなどにより、当初協定に定められた完成予定年月日までの開通が困難となったことにより協定を変更した区間が8区間見受けられた。

第1の2(2)のとおり、機構が引き受けた高速道路の建設等に要した費用に係る債務は、通行料金を原資として6会社が支払う貸付料等により返済されることとなっていることから、高速道路を早期に開通させて通行料金の徴収を開始することは、貸付料の支払を通じて債務返済の促進に資することになる。また、国土交通省のウェブサイトでは、道路のストック効果として、耐震性の向上等の安全・安心効果、移動時間の短縮、貨物取扱量の増加等の様々な効果が挙げられていて、その例として一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道)が順次開通し、放射状に高速道路が連結されることにより、効率的な物流ネットワークが形成され、民間の投資を喚起し、残る区間の整備により更なるストック効果の発現が期待されるとしている。このため、高速道路の建設に当たっては、工事を早期に完成させてネットワークを形成することが肝要である。

また、平成18年4月1日時点で事業中となっていた区間であって令和2年3月末までに開通した96区間のうち、高速道路本線は開通したものの付替道路の整備等の事業を実施中の26区間を除いた70区間について、当初協定に定められた工事予算額と実績額をみたところ、図表2-2-3のとおり、当初協定の工事予算額よりも実績額を縮減できた区間が計67区間、増加した区間が計3区間となっていた。

h-2-2-3図表2-2-3 工事予算額に対する実績額の状況

図表2-2-3 工事予算額に対する実績額の状況

(単位:区間)
会社名
状況
東会社 中会社 西会社 本四会社 首都会社 阪神会社 合計
縮減 300億円以上縮減 0 2 0 0 1 0 3 67
100億円~300億円縮減 2 2 5 0 0 0 9
0~100億円縮減 27 8 10 0 4 6 55
増加 0~100億円増額 0 1 1 0 0 0 2 3
100億円~300億円増額 0 0 0 0 1 0 1
(イ) コスト縮減の取組

協定によれば、6会社は、経営努力により高速道路の新設、改築又は修繕に関する工事(修繕に関する工事はあらかじめ機構の同意を得たもの)に要する費用を縮減した場合には、機構に対して、助成金の交付申請を行うことができることとされている。

具体的には、図表2-2-4のとおり、協定で定められた工事ごとに、機構が引き受ける債務の額(実際に工事に要した費用)が助成対象基準額を下回った場合に、助成対象基準額を下回った額のうち、6会社の経営努力による費用の縮減と認められるものの5割を6会社に対し助成金として交付している。

図表2-2-4 助成金交付額の算定の概念図

図表2-2-4 助成金交付額の算定の概念図画像

機構は、「助成金交付における経営努力要件適合性の認定に関する運用指針」(平成19年3月制定。以下「運用指針」という。)に基づき、①国内の道路事業において実績のない新たな技術の採用等により、道路の計画、設計又は施工方法を変更したことによる費用の縮減、②資材又は機材の調達を工夫したことによる費用の縮減、③供用までの期間を短縮したことによる費用の縮減について、各会社の経営努力要件の適合性の認定を行っている。認定に当たっては、機構は、運用指針に基づき、「高速道路の新設等に要する費用の縮減に係る助成に関する委員会」の意見を聴取して、経営努力要件の適合性や会社の貢献度について決定している。

平成19年度から令和元年度までの間の申請件数は409件で、このうち、同委員会における経営努力要件の適合性に関する審議を経て認定された件数は394件となっていた。このうち機構において交付決定が行われた246件について、助成金の交付決定件数、交付金額及び概算のコスト縮減額をみると、全体の交付決定件数計246件のうち96.3%を占める計237件の交付決定を受けているNEXCO3会社が、交付金額については全体の計56億余円のうち97.7%に当たる計54億余円、概算のコスト縮減額(交付決定済に係るもの)については全体の計150億余円のうち98.2%に当たる計148億余円を占めていた。また、交付決定件数246件のうち新設・改築等が計208件(84.5%)となっていた。

イ 特定更新等工事
(ア) 経緯

首都会社は、平成24年3月に「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」を設立して、特定更新等工事の在り方について検討を進めて、同委員会の提言を踏まえるなどして、更新計画(概略)を策定し、公表するなどした。

また、NEXCO3会社は共同で、阪神会社及び本四会社はそれぞれ単独で委員会を設立して、特定更新等工事の在り方について検討を進めて、委員会の提言を踏まえるなどして、更新計画(概略)を策定し、公表するなどした。

その後、第1の2(2)アのとおり、26年の特措法等の改正により6会社が管理する高速道路の計画的な更新を行う枠組みが構築されて、更新財源を確保するために新たな料金徴収期間が設定された。

そして、6会社は、更新計画(概略)を精査して、更新計画を策定し、国幹部会の審議を経るなどした後、特定更新等工事に係る事業許可を受けている。

令和2年3月末現在において、会社別に開通からの経過年数別の高速道路の延長の割合をみたところ、図表2-2-5のとおり、6会社共に30年以上経過した延長の割合が高くなっていて、特に、中会社、首都会社及び阪神会社については、元年度末時点で50年以上経過した延長の割合が21.7%から28.7%までと高くなっていた

図表2-2-5 開通からの経過年数別の高速道路の延長の割合(令和元年度末時点)

図表2-2-5 開通からの経過年数別の高速道路の延長の割合(令和元年度末時点)画像

(イ) 工事の内容等

特定更新等工事には、高速道路の本体構造物のうち、主に橋りょうの上部工を再施工(桁又は床版の取替等)することにより、現在の新設構造物と同等又はそれ以上の性能を確保して性能強化を図る大規模更新と、高速道路の本体構造物を補修し又は補強することにより、建設当初と同等の機能を回復するとともに、長寿命化を図る大規模修繕とがある。

6会社は、特定更新等工事を行うに当たって定める更新計画の基本的な考え方として、構造物の点検結果及び変状分析から構造物が持つ潜在的な劣化要因を把握し、年数の経過による老朽化、大型車交通量の増加等の厳しい使用環境、地盤材料の風化等の地盤特性、古い技術基準で設計された構造物であることなどの要素を考慮して要対策箇所を選定している。

そして、特定更新等工事の内容、延長等については、更新計画を踏まえて、機構と6会社が締結する協定に定められている(別図表8参照)。

(ウ) 特定更新等工事の進捗状況

令和2年3月末時点における機構と6会社との協定によれば、首都会社は平成26年度から令和22年度までの約27年間、NEXCO3会社、本四会社及び阪神会社は平成27年度から令和11年度までの約15年間で特定更新等工事を実施することとされており、協定には、特定更新等工事に要する費用に係る債務引受限度額が定められている。

そして、元年度末までに、工事が完成することなどにより高速道路資産及び債務を機構が引き受けた実績をみると、図表2-2-6のとおり、特定更新等工事を開始してから5年(首都会社は6年)が経過した時点における債務引受限度額からみた進捗率は、2.8%から11.8%までとなっていて、協定において約15年間で行うなどと定められた特定更新等工事に係る債務引受限度額の合計額に対する割合は、経過期間に比して6会社とも低率となっていた。また、協定には特定更新等工事に係る年度ごとの債務引受限度額が定められているが、協定の変更により実績額が協定に反映されることから、特定更新等工事について最初に定めた際の協定(首都会社は平成26年11月。NEXCO3会社、本四会社及び阪神会社は27年3月)における令和元年度までの債務引受限度額の合計額を当初の計画額として、これに対する実際の引受額の割合をみたところ、15.9%から70.2%までとなっていて、当初の計画と比べて特定更新等工事の進捗が遅れていた。

さらに、橋りょう更新、橋りょう修繕等の区分ごとの延長等による進捗率をみたところ、本四会社の橋りょう修繕については、床版が7.2%、桁が22.6%となっていて桁の進捗率が高くなっていたが、NEXCO3会社の橋りょう更新及び橋りょう修繕については、床版が1.1%から8.1%まで、桁が0%から0.1%まで、首都会社及び阪神会社の該当区間の延長による進捗率については0%となっていた。

このように、延長等による進捗率がいずれも低率となっていたのは、特定更新等工事を行うためには、供用中の高速道路本線の車線規制や通行止めが長期間必要となることから、反対車線を対面通行で運用したり、迂回路を確保したりなどするための工事を行うなど、特定更新等工事により発生する可能性のある渋滞等の影響を少なくするための対策に時間を要することなどが要因と思料される。

h-2-2-6図表2-2-6 特定更新等工事の進捗状況

図表2-2-6 特定更新等工事の進捗状況

会社名 区分 項目 単位 協定における
延長等
(A)
令和元年度
までの実績値
(B)
割合(%)

(B/A)×100
東会社 橋りょう更新 床版 km 40 1.49 3.7
km 1 0 0.0
abbr="項目"橋りょう修繕 床版 km 165 13.45 8.1
km 56 0 0.0
土構造物修繕 箇所 7,759 498 6.4
トンネル修繕 km 60 0.25 0.4
債務引受限度額計・引受額計 百万円 1,318,762 47,785 3.6
中会社 橋りょう更新 床版 km 94 2.98 3.1
km 2 0 0.0
橋りょう修繕 床版 km 113 1.32 1.1
km 58 0.1 0.1
土構造物修繕 箇所 4,977 130 2.6
トンネル修繕 km 35 0.06 0.1
債務引受限度額計・引受額計 百万円 1,665,726 90,981 5.4
西会社 橋りょう更新 床版 km 88 3.13 3.5
km 6 0 0.0
橋りょう修繕 床版 km 129 4.43 3.4
km 46 0 0.0
土構造物修繕 箇所 13,820 478 3.4
トンネル修繕 km 46 0.76 1.6
債務引受限度額計・引受額計 百万円 1,499,859 42,131 2.8
本四会社 橋りょう修繕 床版 km 10 0.72 7.2
km 8 1.81 22.6
土構造物修繕 箇所 66 11 16.6
債務引受限度額計・引受額計 百万円 27,938 3,320 11.8
首都会社 都道首都高速1号線等 km 64 0 0.0
債務引受限度額計・引受額計 百万円 1,091,322 108,751 9.9
阪神会社 大阪府道高速大阪松原線等 km 91 0 0.0
債務引受限度額計・引受額計 百万円 469,355 38,802 8.2
ウ 高速道路の管理等
(ア) 高速道路の管理

機構が保有し、6会社に貸し付けた高速道路については、第1の2(2)ウのとおり、6会社が維持、修繕等の管理を行っている。

6会社が管理する高速道路の会社別の管理延長の推移をみると、図表2-2-7のとおり、平成17年度はNEXCO3会社の管理延長が計8,288.7㎞であったものが令和元年度は計9,623.7㎞と計1,335.0km増加しており、本四会社は平成17年度から令和元年度まで増減がなく、首都会社は平成17年度では283.3㎞であったものが令和元年度では327.2㎞と43.9㎞増加し、阪神会社は平成17年度では233.8㎞であったものが令和元年度では258.1㎞と24.3㎞増加していた。

h-2-2-7図表2-2-7 管理延長の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-2-7 管理延長の推移(平成17年度~令和元年度)

(単位:㎞、%)
年度 平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
東会社 管理延長 3,347.2 3,388.0 3,446.4 3,480.5 3,565.0 3,593.7 3,653.2 3,677.3 3,735.3 3,821.5 3,842.0 3,871.0 3,879.8 3,918.6 3,943.0
当該年度
開通延長
4.1 40.8 70.8 34.1 84.5 28.7 59.5 24.1 58.0 86.2 20.5 29.0 8.8 38.8 24.4
当該年度
無料開放
- - △ 12.4 - - - - - - - - - - - -
中会社 管理延長 1,687.0 1,693.2 1,721.2 1,756.5 1,761.3 1,774.0 1,762.2 1,943.7 1,948.8 2,006.9 2,057.6 2,072.7 2,077.3 2,131.6 2,150.6
当該年度開通延長 13.4 6.2 28.0 35.3 4.8 12.7 2.0 188.3 5.1 58.1 55.2 15.1 4.6 54.3 19.0
当該年度無料開放 - - - - - - △ 13.8 △ 6.8 - - △ 4.5 - - - -
西会社 管理延長 3,254.5 3,254.3 3,289.2 3,297.1 3,334.5 3,360.5 3,371.5 3,384.5 3,423.3 3,449.0 3,449.0 3,456.0 3,500.0 3,508.7 3,530.1
当該年度開通延長 - 5.0 34.9 13.0 37.4 26.0 11.0 13.0 38.8 39.0 - 7.0 44.0 8.7 21.4
当該年度無料開放 - △ 5.2 - △ 5.1 - - - - - △ 13.3 - - - - -
本四
会社
管理延長 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9
当該年度開通延長 - - - - - - - - - - - - - - -
首都
会社
管理延長 283.3 286.8 293.5 295.0 299.3 301.3 301.3 301.3 301.3 310.7 310.7 318.9 320.1 320.1 327.2
当該年度開通延長 - 3.5 6.7 1.5 4.3 2.0 - - - 9.4 - 8.2 1.2 - 7.1
阪神
会社
管理延長 233.8 233.8 239.3 242.0 242.0 245.7 245.7 254.8 259.1 259.1 259.1 260.5 260.5 260.5 258.1
当該年度開通延長 - - 5.5 2.7 - 3.7 - 9.1 4.3 - - 1.4 - - 7.7
当該年度無料開放 - - - - - - - - - - - - - - △ 10.1
6会社
合計
管理延長 8,978.7 9,029.0 9,162.5 9,244.0 9,375.0 9,448.1 9,506.8 9,734.5 9,840.7 10,020.1 10,091.3 10,152.0 10,210.6 10,312.4 10,381.9
当該年度開通延長 17.5 55.5 145.9 86.6 131.0 73.1 72.5 234.5 106.2 192.7 75.7 60.7 58.6 101.8 79.6
当該年度無料開放 - △ 5.2 △ 12.4 △ 5.1 - - △ 13.8 △ 6.8 - △ 13.3 △ 4.5 - - - △ 10.1
上記の
うち
NEX
CO
3会社
管理延長 8,288.7 8,335.5 8,456.8 8,534.1 8,660.8 8,728.2 8,786.9 9,005.5 9,107.4 9,277.4 9,348.6 9,399.7 9,457.1 9,558.9 9,623.7
6会社合計
に対する
割合
92.3 92.3 92.2 92.3 92.3 92.3 92.4 92.5 92.5 92.5 92.6 92.5 92.6 92.6 92.6
当該年度開通延長 17.5 52.0 133.7 82.4 126.7 67.4 72.5 225.4 101.9 183.3 75.7 51.1 57.4 101.8 64.8
当該年度無料開放 - △ 5.2 △ 12.4 △ 5.1 - - △ 13.8 △ 6.8 - △ 13.3 △ 4.5 - - - -
  • 注(1) 管理延長は各年度末時点の延長である。
  • 注(2) 令和元年度の阪神会社の当該年度無料開放の延長△10.1㎞は、阪神京都線の移管によるものであり、このうち2.7㎞は京都市へ移管され無料開放された。残りの7.4㎞は西会社へ移管され全国路線網に指定されたため、西会社の元年度の当該年度開通延長に含まれている。

また、会社別に元年度末時点の構造物別の延長の割合をみると、図表2-2-8のとおり、NEXCO3会社及び本四会社については、土工部の割合が高くなっており、首都会社及び阪神会社については、橋りょう部の割合が高くなっていた。

図表2-2-8 構造物別の延長の割合(令和元年度末時点)

図表2-2-8 構造物別の延長の割合(令和元年度末時点)画像

(イ) 管理費の概況

6会社が機構に支払う貸付料の額は、第1の2(2)イ(エ)のとおり、計画料金収入から計画管理費を引いた額となっており、実績管理費が計画管理費を上回った場合は、その差額は6会社の負担(損失)となり、実績管理費が計画管理費を下回った場合は、その差額は6会社の利益となることとなっている。

そこで、平成18年度以降の6会社の計画管理費と実績管理費をみたところ、18年度は6会社のいずれにおいても実績管理費が計画管理費を下回っていたが、近年は、保全点検の結果、補修しなければならない箇所が計画よりも増えたことなどから実績管理費が計画管理費を上回ることが多い状況となっていた。そして、令和元年度の実績管理費を平成18年度の実績管理費と比較すると、6会社においていずれも増加していた。

また、6会社の実績管理費を管理延長で除した1㎞当たりの実績管理費をみたところ、管理延長に占める橋りょう等の構造物延長の割合が高い首都会社及び阪神会社や海峡部の長大橋を管理している本四会社がNEXCO3会社と比べて高い状況となっていた(別図表9参照)。

(ウ) 管理費の区分別の状況

管理費は、維持修繕費、管理業務費及び一般管理費等に区分されており、それぞれ次のような状況となっていた。

a 維持修繕費

維持修繕費は、道路清掃、植栽管理、雪氷対策等の道路維持業務、資本的支出とならない土木構造物等の機能等を原状回復させる補修、取替えを行う補修取替業務、土木構造物・機械設備等の点検作業を行う保全点検業務等に係る費用であり、維持修繕費の年度別の計画額と実績額をみると、図表2-2-9のとおり、平成24年度以降は、首都会社の30年度及び令和元年度を除いて、実績額が計画額を上回る状況となっていた。また、元年度の実績額を平成18年度の実績額と比較すると、6会社においていずれも増加していた。

図表2-2-9 維持修繕費の計画額及び実績額の推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-9 維持修繕費の計画額及び実績額の推移(平成18年度~令和元年度)画像

そして、維持修繕費を管理延長で除した1㎞当たりの維持修繕費を会社別にみたところ、図表2-2-10のとおり、管理延長に占める橋りょう等の構造物延長の割合が高い首都会社及び阪神会社がNEXCO3会社及び本四会社と比べて高い状況となっていた。

また、18年度に対する令和元年度の1㎞当たりの維持修繕費の増加率を会社別にみたところ、28.9%(阪神会社)から91.6%(本四会社)までとなっていた。維持修繕に係る工事等については、NEXCO3会社が「高速道路機構・会社の業務点検検討会」に提出した資料によれば、工事費等に占める人件費の割合が、道路清掃で7割から9割程度まで、植栽管理で6割から8割程度まで、雪氷対策で8割から9割程度まで、修繕工事で2割から5割程度までとなっているとされており、国土交通省が公表している公共工事設計労務単価の全国全職種の平均額の平成18年度に対する令和元年度の増加率が47.3%となっていることなどから、維持修繕費の増加は人件費の増加による影響が大きいと思料される。

h-2-2-10図表2-2-10 1㎞当たりの維持修繕費の推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-10 1㎞当たりの維持修繕費の推移(平成18年度~令和元年度)

(単位:億円(税抜き)、km)
会社名 区分 平成
18年度
19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
平成18年度
に対する
令和元年度
の増加率
東会社 実績額
(A)
607 635 635 644 699 694 810 816 793 775 902 1022 965 962  
管理延長
(B)
3,388.0 3,446.4 3,480.5 3,565.0 3,593.7 3,653.2 3,677.3 3,735.3 3,821.5 3,842.0 3,871.0 3,879.8 3,918.6 3,943.0
1㎞当たり
(A/B)
0.179 0.184 0.182 0.180 0.194 0.189 0.220 0.218 0.207 0.201 0.233 0.263 0.246 0.243 36.1%
中会社 実績額
(A)
484 458 459 531 503 546 618 640 639 672 772 776 762 803  
管理延長
(B)
1,693.2 1,721.2 1,756.5 1,761.3 1,774.0 1,762.2 1,943.7 1,948.8 2,006.9 2,057.6 2,072.7 2,077.3 2,131.6 2,150.6
1㎞当たり
(A/B)
0.285 0.266 0.261 0.301 0.283 0.309 0.317 0.328 0.318 0.326 0.372 0.373 0.357 0.373 30.6%
西会社 実績額
(A)
549 573 517 541 642 666 702 708 692 772 814 853 817 852  
管理延長
(B)
3,254.3 3,289.2 3,297.1 3,334.5 3,360.5 3,371.5 3,384.5 3,423.3 3,449.0 3,449.0 3,456.0 3,500.0 3,508.7 3,530.1
1㎞当たり
(A/B)
0.168 0.174 0.156 0.162 0.191 0.197 0.207 0.206 0.200 0.223 0.235 0.243 0.232 0.241 43.0%
本四
会社
実績額
(A)
36 47 47 41 54 51 49 50 50 54 60 64 68 69  
管理延長
(B)
172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9 172.9
1㎞当たり
(A/B)
0.208 0.271 0.271 0.237 0.312 0.294 0.283 0.289 0.289 0.312 0.347 0.370 0.393 0.399 91.6%
首都
会社
実績額
(A)
222 263 210 261 276 243 262 283 262 306 407 429 352 359  
管理延長
(B)
286.8 293.5 295.0 299.3 301.3 301.3 301.3 301.3 310.7 310.7 318.9 320.1 320.1 327.2
1㎞当たり
(A/B)
0.774 0.896 0.711 0.872 0.916 0.806 0.869 0.939 0.843 0.984 1.276 1.340 1.099 1.097 41.7%
阪神
会社
実績額
(A)
125 127 125 138 166 153 146 160 157 179 199 188 198 178  
管理延長
(B)
233.8 239.3 242.0 242.0 245.7 245.7 254.8 259.1 259.1 259.1 260.5 260.5 260.5 258.1
1㎞当たり
(A/B)
0.534 0.530 0.516 0.570 0.675 0.622 0.572 0.617 0.605 0.690 0.763 0.721 0.760 0.689 28.9%
労務単価(円) 13,723 13,577 13,351 13,344 13,154 13,047 13,072 15,175 16,678 17,704 18,078 18,632 19,392 20,214 47.3%

b 管理業務費

管理業務費は、料金収受業務、高速道路の巡回、交通管制等を行う交通管理業務等に係る費用であり、管理業務費の年度別の計画額と実績額をみると、図表2-2-11のとおり、平成27年度以降、NEXCO3会社、本四会社及び首都会社については、28年度の東会社、30、令和元両年度の本四会社及び平成27、28両年度の首都会社を除いて、実績額が計画額を上回っていた。一方、阪神会社は、30年度まで継続して実績額が計画額を下回っていた。

また、令和元年度の実績額を平成18年度の実績額と比較すると、阪神会社は減少しており、本四会社及び首都会社は1割程度、NEXCO3会社は2割から4割程度増加している状況となっていた。阪神会社が減少しているのは、18年度から21年度までは料金徴収施設等の維持、修繕費を管理業務費に計上していたが、22年度以降は維持修繕費等に計上するなどの管理業務費の内訳を見直したことなどによるものである。そして、NEXCO3会社と本四会社及び首都会社の実績額の増加割合に違いがあるのは、管理延長の増加量に違いがあったことなどによるものである。

図表2-2-11 管理業務費の計画額及び実績額の推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-11 管理業務費の計画額及び実績額の推移(平成18年度~令和元年度)

c 一般管理費等

一般管理費等は、人件費、減価償却費等であり、一般管理費等の年度別の計画額と実績額をみると、図表2-2-12のとおり、18年度のNEXCO3会社、20年度の首都会社及び30年度の西会社を除いて、実績額が計画額を下回っていた。

また、令和元年度の実績額を平成18年度の実績額と比較すると、本四会社及び阪神会社は減少しており、NEXCO3会社及び首都会社は増加していた。本四会社及び阪神会社が減少したのは、人件費の抑制に取り組んだことなどによるものである。

図表2-2-12 一般管理費等の計画額及び実績額の推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-12 一般管理費等の計画額及び実績額の推移(平成18年度~令和元年度)

(エ) ETCの活用

民営化申合せ及び「道路関係四公団民営化に関し直ちに取り組む事項について」(平成15年3月国土交通省)によれば、6会社は、ETCの活用により、多様で弾力的な料金設定を行うことや料金収受業務等の管理業務費の人件費等を削減して管理コストを縮減することとされている。

6会社は、ETC専用であるスマートIC以外の料金所において、非ETC車のためのレーン(以下「一般レーン」という。)又はETC車と非ETC車のいずれも利用できるレーン(以下「混在レーン」という。)を、設計要領等に基づき、交通量等に応じて算出されたレーン数で設置して、一般レーン又は混在レーンに設置されたブース内に料金収受員を配置するなどして現金等による料金収受を行っている。一方、ETC車は無線通行であるため、ETC専用のレーンには料金収受のためのブースを設置する必要がない。そのため、一般レーン又は混在レーンをETC専用のレーンに切り替えれば、料金所事務室における監視や通信障害等の対応のみを行うこととなることから、料金収受業務経費の多くを占める人件費の削減に寄与すると思料される。

そして、国土交通省は、業務点検において、18年度から25年度までのETC車と非ETC車のそれぞれ1台当たりの料金収受コストを比較しており、ETC利用率が89%となっていた25年度の非ETC車の料金収受コストはETC車の約5倍となっていた。また、非ETC車に対応する必要があることから、スマートICを除くほぼ全ての料金所で最低1レーンは一般レーン又は混在レーンが設置されており、料金収受業務経費はETC導入前の約5割の削減にとどまっていたとしていた。

今回、その後のETC利用率の上昇に伴うETC車と非ETC車のそれぞれの1台当たりの料金収受コストを比較したところ、図表2-2-13のとおり、令和元年度の非ETC車の1台当たりの料金収受コストはETC車の約8倍と、開差が更に拡大していた。

図表2-2-13 ETC車と非ETC車の1台当たり料金収受コスト

図表2-2-13 ETC車と非ETC車の1台当たり料金収受コスト画像

なお、NEXCO3会社及び本四会社においては、ETC専用であるスマートICを整備して運用しており、首都会社においては、横浜市道高速横浜環状北線馬場入口についてETC専用化を図るとともに他の料金所への適用について検討を進めている。

また、国土交通省は、新型コロナウイルス感染症対策に対応した高速道路施策の検討について議論するために国幹部会を2年7月に開催して、高速道路利用者と料金収受員の身体的距離の確保等の観点から、料金所のETC専用化に向けて検討していくこととなった。そして、同年9月の国幹部会の中間取りまとめにおいて、導入手順や概成目標時期を明示したロードマップを策定し、ETC専用化等を計画的に推進すべきであるとされた。これを踏まえて、国土交通省及び6会社は、同年12月にETC専用化等に向けたロードマップを策定し、都市部は5年、地方部は10年程度での概成を目指して計画的にETC専用化等を推進することとなった。

(オ) 路線別の収支状況

道路関係四公団は、高速道路の路線別の収支状況(首都高速道路公団及び阪神高速道路公団は公団単位)を、「料金収入等(占用料収入等を含む。)」に対する「支払利息と管理費」の割合(収支率)で示していた。しかし、道路関係四公団の民営化により、支払利息の支払主体が機構になったことから、機構は、路線別の収支状況を料金収入から管理費を差し引いた営業収支で示している。そこで、「決算に合わせて開示する高速道路事業関連情報(平成31年度(令和元年度))資料」(以下「開示資料」という。)により公表されている令和元年度の路線別の営業収支をみたところ、6会社計114路線のうち営業収支が赤字となっていた路線が1路線あった(別図表10参照)。当該路線(一般国道233号(深川・留萌自動車道(深川沼田道路)))の営業収支差の推移をみたところ、図表2-2-14のとおり、平成18年度以降令和元年度まで継続して赤字となっていた。このような状況になっていたのは、他の路線と比べて延長が短く交通量が少ないことから料金収入も少なくなっていることが大きな要因であると思料された。

h-2-2-14図表2-2-14 令和元年度の営業収支が赤字となっていた1路線の営業収支差の推移

図表2-2-14 令和元年度の営業収支が赤字となっていた1路線の営業収支差の推移

一般国道233号
(深川・留萌自動車道(深川沼田道路))
年度 供用延長
(km)
開通年度 開通率
(%)
交通量
(千台/日)
料金収入
(A)
(億円)
管理費
(B)
(億円)
営業収支差
(A)-(B)
(億円)
平成18 4.4 平成10 100 2 0.8 0.9 △ 0.1
19 4.4 10 100 2 0.8 0.9 △ 0.0
20 4.4 10 100 2 0.8 1.1 △ 0.3
21 4.4 10 100 2 0.6 0.9 △ 0.2
22 4.4 10 100 4 0.1 1.0 △ 0.8
23 4.4 10 100 3 0.5 1.2 △ 0.6
24 4.4 10 100 2 0.7 1.1 △ 0.4
25 4.4 10 100 2 0.7 1.1 △ 0.4
26 4.4 10 100 2 0.9 1.6 △ 0.6
27 4.4 10 100 2 0.9 1.7 △ 0.7
28 4.4 10 100 2 0.9 2.4 △ 1.5
29 4.4 10 100 2 0.9 2.5 △ 1.6
30 4.4 10 100 2 0.9 1.1 △ 0.2
令和元 4.4 10 100 2 0.9 1.3 △ 0.3
  • 注(1) 「決算に合わせて開示する高速道路事業関連情報」等を基に会計検査院が作成した。
  • 注(2) 平成22、23両年度は無料化社会実験を実施している。
  • 注(3) 「開通率」は東会社の事業許可延長に対する供用延長の比率であり、新直轄道路の区間の延長は含まない。
  • 注(4) 「交通量」は、路線ごとの支払料金所における通行台数である。
  • 注(5) 「料金収入」は東会社の料金収入(無料化社会実験補塡金を含まない。)、「管理費」は東会社の管理費、営業収支差は料金収入から管理費を除いたものである。

また、機構は、開示資料において、路線別の営業収支とは別に、機構の支払金利を営業収支差に基づいて路線別に配賦したものと資産価額に基づいて路線別に配賦したもの(いずれも建設仮勘定に係るものを除く。以下同じ。)の2通りの試算値を公表している。そこで、会計検査院が、元年度の上記の配賦した金利も含めた路線別の収支差を、営業収支差から上記の配賦した金利を差し引くことにより試算した。その結果、営業収支が赤字となっていた上記路線のほかに東会社が管理する高速自動車国道東北中央自動車道相馬尾花沢線並びに中会社が管理する高速自動車国道中部横断自動車道及び高速自動車国道近畿自動車道敦賀線(小浜市から敦賀市まで)の3路線の営業収支差(12.1億円、1.2億円及び5.9億円)が資産価額に基づき配賦した金利(12.3億円、16.6億円及び7.8億円)を下回っていて、資産価額に基づき配賦した金利も含めた路線別収支が赤字となった(別図表11参照)。そして、これらの3路線について、平成18年度以降の金利も含めた路線別の収支差を試算したところ、18年度から令和元年度まで継続して、資産価額に基づき配賦した金利も含めた収支が赤字となっていたり、営業収支が赤字となっていたりした(別図表12参照)。なお、営業収支差に基づいて配賦した金利を含めた元年度の路線別の収支については、前記の営業収支が赤字となる1路線のほかに赤字となる路線はなかった

エ 資金調達の状況

6会社は、道路会社法に基づく高速道路事業を実施するために、長期借入金の借入れ及び債券の発行(以下、長期借入金の借入れ及び債券の発行を合わせて「長期借入金の借入れ等」という。)によって資金調達を行っている。また、機構法によれば、機構は、6会社が高速道路の新設、改築、修繕又は災害復旧に要する費用に充てるために負担した債務を引き受けて、返済を行うこととされている。このため、6会社が高速道路の新設等のために必要となる資金を長期借入金の借入れ等によって調達した場合には、機構の将来の債務返済に影響を与えることになる。

また、6会社は、自己資金を基に料金所設備等の自らの事業用設備、社用設備等(以下「会社の固定資産」という。)を取得しているが、その費用を自己資金で賄えない場合に、民間金融機関からの借入金(以下、このような借入金を「その他借入金」という。)による資金調達を行うなどしている。

6会社において行われた資金調達並びに各年度末時点における長期借入金及び債券に係る債務残高に対する各年度の支払利息の割合(以下「会社の資金調達利回り」という。)をみると、次のような状況となっていた。

(ア) 6会社における資金調達

6会社における資金調達額の推移をみると、図表2-2-15のとおり、平成17年度において13億余円から1370億余円(債券は額面金額。以下同じ。)までであった資金調達額は、増減を繰り返しつつ、特定更新等工事の実施に要する費用の影響等によりおおむね増加傾向にあり、令和元年度において120億余円から6017億余円までとなっており、元年度までの資金調達額の累計額は、1116億余円から4兆9746億余円までとなっていた。

資金調達の構成をみると、6会社は、民間金融機関からの有利子借入れを行うとともに、長期にわたる多額の資金需要が見込まれない本四会社を除く5会社は、平成17年度から21年度までの間は、償還期間が10年の政府保証のある債券(以下「政府保証債」という。)を、18年度以降は、政府保証のない償還期間が1年から10年までの社債を発行している。

6会社における政府保証債による資金調達については、第1の2(5)ア(イ)のとおり、「財政投融資改革の総点検について」によれば、各会社の経営の自主性を早期に発現させるためには、資金調達において政府保証から早期に脱却することが重要であるが、完全自主調達の達成に向けては、急激な自己調達の拡大は困難とみられるため、市場の評価が安定するまでの間の一定の経過期間も必要と考えられるとされている。これを踏まえて、上記の5会社は、17年度から21年度までの5年間に限って政府保証債による資金調達を行っており、22年度以降は政府保証債による資金調達を行っていない。

図表2-2-15 6会社における資金調達額の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-2-15 6会社における資金調達額の推移(平成17年度~令和元年度)画像

(イ) 会社の資金調達利回り

18年度から令和元年度までの間の会社の資金調達利回りの推移をみると、図表2-2-16のとおり、市場金利の上昇等により、平成18年度に対して19年度は上昇していたが、日本銀行が20年10月以降、無担保コールレート(オーバーナイト物)(以下「短期金利」という。)の誘導目標水準を段階的に引き下げたほか、25年4月に金融調節の操作目標を短期金利からマネタリーベース(注17)に変更して量的・質的金融緩和(注18)を導入し、28年1月にマイナス金利付き量的・質的金融緩和(注19)の導入を決定するなどしたことから、市場金利は低下し、6会社の資金調達利回りも20年度以降おおむね低下傾向にあった。

(注17)
マネタリーベース   日本銀行が供給する通貨の総量。日本銀行券発行高、貨幣流通高及び日本銀行当座預金(金融機関等が相互の資金決済等のために日本銀行に保有している当座預金)の合計額で構成される。
(注18)
量的・質的金融緩和   マネタリーベース及び長期国債等の保有額を2年間で2倍に拡大したり、買い入れる長期国債の平均残存期間を2倍以上に延長したりするなど、量・質共に次元の違う金融緩和を行うもの
(注19)
マイナス金利付き量的・質的金融緩和   これまでの量的・質的金融緩和を維持しつつ、日本銀行当座預金の一部にマイナス金利を適用して、量・質・金利の三つの次元で金融緩和を行うもの

図表2-2-16 会社の資金調達利回りの推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-16 会社の資金調達利回りの推移(平成18年度~令和元年度)画像

(2) 会社の財務状況

6会社の財務状況について、損益計算書を基に損益の状況を、貸借対照表を基に財務基盤の安定性を、貸借対照表等を基に利益剰余金と処分の状況をそれぞれ分析したところ、次のような状況となっていた。

ア 損益の状況

6会社は、高速道路事業を実施し、通行者から徴収した通行料金により、機構に対して貸付料の支払を行っている。また、関連事業として、休憩所等事業、駐車場事業、高架下事業のほか、国、地方公共団体等の委託に基づき行う道路の新設、改築、維持、修繕、災害復旧その他の管理並びに道路に関する調査、測量、設計、試験及び研究(以下「受託事業」という。)等を行っている。6会社の経常損益の内訳の推移は、図表2-2-17に示すとおりとなっており、近年、高速道路事業に係る損益及び関連事業に係る損益を合わせた全事業営業損益に営業外利益が計上されるようになっている。これは、営業外収益として、子会社等からの配当金収入(注20)が計上されるようになったなどのためである(特別損益等を含めた当期純損益の状況については別図表13参照)。

(注20)
子会社等からの配当金収入   西会社を除く5会社では、高速道路事業に係る配当金収入が大半を占めている。西会社では、関連事業を行う子会社等における利益率が高いことなどから、関連事業に係る配当金収入が高速道路事業に係る配当金収入より多額となる傾向にある(6会社の子会社一覧、子会社の数の推移、配当金収入の原資となる子会社の利益剰余金の推移及び子会社等からの配当金収入の内訳の推移は別図表14別図表15別図表1617参照)。

図表2-2-17 経常損益の内訳の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-2-17 経常損益の内訳の推移(平成17年度~令和元年度)画像

高速道路事業と関連事業に区分して損益の状況を示すと次のとおりである。

(ア) 高速道路事業に係る損益の状況

6会社は、特措法等によれば、事業許可を受けて、高速道路を新設し、又は改築して、料金を徴収することができるとされ、徴収した料金は、貸付料及び管理費を償うものであるとされている。これらを踏まえて、料金収入、管理費及び貸付料による損益(以下「料金収入に係る損益」(注21)という。)の状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

(注21)
高速道路事業に係る損益は、料金収入に係る損益以外に、高速道路の新設等に係る損益が発生する場合がある。6会社は料金の徴収と共に道路会社法等に基づき、高速道路の新設等を行っている。建設、購入及び贈与を受けた高速道路資産の価額等は、工事が完成するまでの間は、仕掛道路資産として6会社で資産計上されることとなっている。そして、工事完了後、高速道路資産は機構に引き渡されることになり、この時に、仕掛道路資産に集計されていた金額は、道路資産完成原価に振り替えられる。あわせて、道路資産完成原価と同額の道路資産完成高(収益)及び高速道路営業未収入金(資産)が計上される。そして、6会社が高速道路の新設等のために資金調達したことによる負債は、機構へ引き渡す債務として高速道路営業未収入金と相殺されることになっている。機構へ引き渡す債務の額は、債務引受限度額の範囲内で機構に引き渡した高速道路資産の額と同額とすることになっているため、原則として、費用として計上される道路資産完成原価と収益として計上される道路資産完成高は同額となり、高速道路の新設等により、損益は生じない仕組みになっている(高速道路の新設等により損益が生じた経緯及びその年度については、別図表18参照)。

計画貸付料は、第1の2(2)イ(エ)のとおり、計画料金収入から計画管理費を引いた額とされ、計画の上では、損益は生じない仕組みとなっている。しかし、図表1-5のとおり、実績料金収入が加算基準額を超えた場合又は減算基準額に満たない場合には、計画料金収入の1%等の変動率相当額を超えた部分の額(以下「変動貸付料」という。)を、計画貸付料に加算し、又は計画貸付料から減算することとなっている。一方、管理費については、計画と実績に差が生じても計画貸付料に加算し、又は計画貸付料から減算しないこととなっている。

これらのことから、料金収入については、実績料金収入から計画料金収入を差し引いた額(以下「料金収入差額」という。)のうち、変動率相当額以内の額(以下「1%等以内の額」という。)が会社の損益となり、また、管理費については、計画管理費から実績管理費を差し引いた額(以下「管理費差額」という。)の全額が会社の損益となる。そして、6会社の実績料金収入から実績管理費及び貸付料の実績(以下「実績貸付料」という。)を差し引いた損益(以下「実績損益」という。)は、1%等以内の額に管理費差額を加えた額と同額となる(図表2-2-18参照)。

図表2-2-18 実績貸付料と実績損益の具体例

図表2-2-18 実績貸付料と実績損益の具体例画像

そこで、6会社の料金収入差額及び実績損益の内訳の推移をみたところ、次のような状況となっていた。

6会社の料金収入差額の推移は、図表2-2-19に示すとおりとなっており、東会社、中会社、西会社及び本四会社の18年度から令和元年度までの料金収入差額の累計額は、近年、交通量が増加していたことなどから、それぞれ4342億余円、3174億余円、4616億余円及び671億余円となっていた。一方、首都会社及び阪神会社の同期間の料金収入差額の累計額は、平成20年度から22年度にかけて景気低迷により交通量が減少したことなどから、それぞれマイナス439億余円及びマイナス774億余円となっていた(各年度の料金収入差額の主要な発生要因等は別図表19参照)。

h-2-2-19図表2-2-19 6会社における料金収入差額の推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-19 6会社における料金収入差額の推移(平成18年度~令和元年度)

(単位:億円(税込み))
会社名
年度
科目名
平成18 19 20 21 22 23 24 25
東会社 実績料金収入(A) 7135 7154 6795 5781 5826 5648 6528 6678
計画料金収入(B) 7112 7235 7196 6132 6212 6070 6044 6075
料金収入差額(A-B) 22 △ 81 △ 401 △ 350 △ 385 △ 422 483 603
うち1%等以内の額 22 △ 71 △ 71 △ 61 △ 62 △ 60 60 60
うち変動貸付料 0 △ 9 △ 329 △ 289 △ 323 △ 361 423 542
中会社 実績料金収入(A) 6139 6133 5753 4514 4674 4865 5028 5158
計画料金収入(B) 5959 6054 5918 4822 4816 4793 4791 4827
料金収入差額(A-B) 180 79 △ 164 △ 308 △ 141 72 237 331
うち1%等以内の額 59 60 △ 58 △ 47 △ 47 45 47 47
うち変動貸付料 120 18 △ 105 △ 260 △ 93 26 189 283
西会社 実績料金収入(A) 6687 6643 6305 5299 5606 5739 5913 6100
計画料金収入(B) 6516 6604 6527 5529 5726 5524 5551 5583
料金収入差額(A-B) 170 39 △ 221 △ 229 △ 119 215 362 517
うち1%等以内の額 64 33 △ 65 △ 54 △ 55 55 56 56
うち変動貸付料 106 6 △ 156 △ 175 △ 64 160 306 461
本四会社 実績料金収入(A) 783 783 742 542 563 619 648 659
計画料金収入(B) 754 750 720 549 545 538 568 559
料金収入差額(A-B) 29 32 21 △ 7 18 81 79 100
うち1%等以内の額 7 7 7 △ 5 5 5 5 5
うち変動貸付料 21 25 14 △ 1 13 76 73 94
首都会社 実績料金収入(A) 2673 2685 2588 2531 2559 2632 2685 2671
計画料金収入(B) 2631 2689 2763 2713 2763 2640 2667 2687
料金収入差額(A-B) 42 △ 3 △ 175 △ 182 △ 204 △ 7 17 △ 16
うち1%等以内の額 26 △ 3 △ 27 △ 27 △ 27 △ 7 17 △ 16
うち変動貸付料 16 0 △ 147 △ 154 △ 176 0 0 0
阪神会社 実績料金収入(A) 1897 1900 1818 1646 1676 1726 1791 1820
計画料金収入(B) 1899 1908 1937 1810 1867 1749 1787 1856
料金収入差額(A-B) △ 1 △ 8 △ 118 △ 164 △ 191 △ 22 3 △ 36
うち1%等以内の額 △ 1 △ 8 △ 22 △ 21 △ 18 12 16 △ 5
うち変動貸付料 0 0 △ 96 △ 142 △ 172 △ 34 △ 13 △ 30
会社名
年度
科目名
26 27 28 29 30 令和元 累計
東会社 実績料金収入(A) 7961 8275 8459 8624 8864 8929 10兆2666
計画料金収入(B) 7003 7107 7780 8007 8119 8224 9兆8324
料金収入差額(A-B) 958 1168 678 617 745 705 4342
うち1%等以内の額 70 71 77 80 81 82 277
うち変動貸付料 888 1097 601 537 664 623 4064
中会社 実績料金収入(A) 6438 6694 6785 6935 7095 7128 8兆3347
計画料金収入(B) 5826 6009 6418 6570 6671 6693 8兆0172
料金収入差額(A-B) 612 685 367 364 423 435 3174
うち1%等以内の額 58 60 64 65 66 67 490
うち変動貸付料 554 625 302 299 356 368 2683
西会社 実績料金収入(A) 7300 7541 7622 7827 8027 8273 9兆4888
計画料金収入(B) 6538 6642 7212 7307 7444 7564 9兆0272
料金収入差額(A-B) 761 898 409 520 582 709 4616
うち1%等以内の額 66 66 72 73 73 75 518
うち変動貸付料 695 831 336 446 509 633 4098
本四会社 実績料金収入(A) 648 669 676 686 690 709 9424
計画料金収入(B) 628 614 623 619 640 638 8753
料金収入差額(A-B) 19 54 53 67 49 70 671
うち1%等以内の額 6 6 6 6 6 6 76
うち変動貸付料 13 48 46 60 43 64 594
首都会社 実績料金収入(A) 2709 2759 2910 2917 2901 2872 3兆8098
計画料金収入(B) 2754 2741 2757 2910 2916 2901 3兆8538
料金収入差額(A-B) △ 45 18 153 6 △ 14 △ 29 △439
うち1%等以内の額 △ 27 18 27 6 △ 14 △ 29 △84
うち変動貸付料 △ 17 0 125 0 0 0 △355
阪神会社 実績料金収入(A) 1842 1861 1870 2009 2027 1941 2兆5828
計画料金収入(B) 1919 1903 1962 1971 2038 1991 2兆6603
料金収入差額(A-B) △ 76 △ 42 △ 92 38 △ 11 △ 49 △774
うち1%等以内の額 △ 19 △ 13 △ 19 19 △ 14 △ 19 △116
うち変動貸付料 △ 57 △ 29 △ 72 18 2 △ 29 △658
  • 注(1) 実績料金収入には、国等からの料金補塡の額を含む。
  • 注(2) 阪神会社の料金収入差額のうち、平成23、24両年度は、大阪府道高速大阪池田線等に関する協定に係る路線における料金収入差額がプラスである一方で、阪神京都線における料金収入差額がマイナスとなったことなどから、阪神会社全体では、変動貸付料はマイナス、1%等以内の額はプラスとなっていた。30年度は、大阪府道高速大阪池田線等に関する協定に係る路線における料金収入差額がマイナスである一方で、阪神京都線における料金収入差額がプラスとなったことなどから、阪神会社全体では、変動貸付料はプラス、1%等以内の額はマイナスとなっていた。

また、6会社の実績損益並びに実績損益の内訳である1%等以内の額及び管理費差額の推移は、図表2-2-20に示すとおりとなっており、近年、交通量が増加したことにより1%等以内の額がプラスになった年度や、クレジットカード手数料の減少等による支出の減少により管理費差額がプラスになった年度があったことなどから、6会社の18年度から令和元年度までの実績損益の累計額は32億余円から253億余円までのプラスとなっていた(各年度の1%等以内の額及び管理費差額の主要な発生要因等は別図表19参照)。

図表2-2-20 6会社における実績損益の内訳の推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-2-20 6会社における実績損益の内訳の推移(平成18年度~令和元年度)画像

(イ) 関連事業に係る損益の状況

6会社の関連事業損益の推移は、図表2-2-21に示すとおりとなっており、6会社とも、18年度以降、継続して利益を計上していた。6会社の関連事業損益の内訳の推移をみると、首都会社及び阪神会社を除く4会社の関連事業損益の大半は、休憩所等事業損益によるものであり、首都会社については、17、令和元両年度を除き駐車場事業及び高架下事業が安定して利益を計上し、阪神会社については、駐車場事業が関連事業損益の大半を占めていた。

図表2-2-21 関連事業損益の内訳の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-2-21 関連事業損益の内訳の推移(平成17年度~令和元年度)画像

(ウ) 新型コロナウイルス感染症による影響

6会社の元年度の有価証券報告書、決算概要等によると、平成30年度に対する令和元年度の料金収入の増減率は、図表2-2-22のとおり、マイナス5.1%からプラス1.9%までとなっており、新型コロナウイルス感染症の影響により、料金収入の減少等が生じているとしている。また、今後の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の制限等により、料金収入や休憩所等の売上減少等、2年度以降の業績への影響が見込まれるとしている。

h-2-2-22図表2-2-22 平成30年度に対する令和元年度の料金収入の増減率等

図表2-2-22 平成30年度に対する令和元年度の料金収入の増減率等

(6会社の料金収入の増減比較)

(単位:百万円、%)
会社名 令和元年度
(A)
平成30年度
(B)
増減額
(C)=(A)-(B)
増減率
(C)/(B)
東会社 857,473 859,994 △ 2,521 △ 0.2
中会社 689,797 693,438 △ 3,641 △ 0.5
西会社 798,427 782,864 15,563 1.9
本四会社 66,641 65,486 1,155 1.7
首都会社 263,525 268,667 △ 5,142 △ 1.9
阪神会社 178,145 187,725 △ 9,580 △ 5.1
  • (注) 6会社の令和元年度の有価証券報告書等を基に会計検査院が作成した。

(料金収入の減少等の説明)

会社名 説明
東会社 料金収入については、(略)料金収入が増加する要因があったものの、台風などの災害や年度末の新型コロナウイルス感染症の影響などによる料金収入の減少がそれらを上回ったことにより、前期比25億円減の8574億円となりました。
中会社 料金収入は、6897億円(前年同期比36億円減)でした。これは、新型コロナウイルス感染拡大の影響などによるものです。
西会社 当社管内の高速道路の通行台数は、新型コロナウイルス感染症の影響により交通量の減はあったものの、前期比2.0%増の301万台/日となり、料金収入は、対前期155億円増の7982億円(略)となりました。
本四会社 当事業年度の通行台数は、新型コロナウイルス感染症による影響から3月に前年同月比11.7%減となったものの、年度前半を中心に好天や大型連休等の好条件に恵まれたことから、前事業年度比2.0%増の4420万台と過去最高となりました。その結果、料金収入は前事業年度比1.7%増の666億円となりました。
首都会社 営業収益のうち、料金収入は、首都圏ネットワーク整備の進捗に伴う利用形態の変化の影響、大型台風等の天候の影響、新型コロナウイルス感染拡大の影響等に伴う利用交通量の減少等により、前期比1.9%減の263,525百万円となりました。
阪神会社 料金収入は1781億円(前年同期比5.1%減)

※8号京都線を京都市及び西日本高速道路株式会社に移管した影響並びに新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により前年度を下回りました。

  • 注(1) 6会社の令和元年度の決算概要等から抜粋した。
  • 注(2) 西会社は、連結決算と個別決算で料金収入に差異が生じている。
イ 財務基盤の安定性

6会社は、長期借入金の借入れ等によって資金調達を行い、将来、機構に帰属することとなる高速道路の新設等を行うほか、自己資金を基に会社の固定資産の新設等を行っている。機構法によれば、機構は、高速道路資産が特措法により機構に帰属するときにおいて、6会社が高速道路の新設等に要する費用に充てるために負担した債務を引き受けなければならないこととされている。一方、その他借入金、道路関係四公団から承継した借入金及びリース債務(以下、これらを合わせて「その他借入金等」という。)については、6会社が自ら将来返済すべき債務となっている。

上記のような6会社と機構の債務負担の仕組みを踏まえて、6会社の財務基盤の安定性について確認するために、次の指標を用いて分析した。

① 6会社が自ら将来返済すべき債務である「その他借入金等の残高」

② 長期的な財務基盤の安定性を示す「その他借入金等に係る負債比率(自己資本に対する有利子債務の割合)」

③ 利益の蓄積がどの程度なのかを示す「自己資本に対する利益剰余金の割合」その結果は、次のような状況となっていた。

(ア) その他借入金等の残高

6会社のその他借入金等の残高の推移は、図表2-2-23に示すとおりとなっており、6会社の設立時の合計は1783億余円であったものが、元年度末の合計は269億余円となっていた。

なお、6会社とも、道路関係四公団から承継した借入金のうち、会社の固定資産取得のための借入金の返済は完了している。

図表2-2-23 その他借入金等の残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-2-23 その他借入金等の残高の推移(設立時~令和元年度)画像

(イ) 負債比率

6会社における自己資本に対するその他借入金等の割合を示す負債比率の推移をみると、図表2-2-24のとおり、首都会社及び阪神会社を除いた4会社は、設立時から元年度末まで減少傾向にあり、設立時では29.3%から63.7%まであったものが、その他借入金等の残高が減少して自己資本が増加した結果、元年度末では、0%から1.6%までとなっていて、負債への依存度が低下していた。一方、首都会社及び阪神会社は、会社の固定資産の新設等のための資金調達が行われたことで、平成20年度末にそれぞれ73.9%及び47.1%まで増加しており、首都会社については、27年度末まで減少した後、28年度から令和元年度まで会社の固定資産の新設等のために、更に資金調達したことにより、元年度末で38.7%まで増加している。阪神会社については、平成23年度以降、会社の固定資産の新設等のための資金調達は行われていないため、減少傾向にある。

図表2-2-24 その他借入金等に係る負債比率の推移(設立時~令和元年度)

図表2-2-24 その他借入金等に係る負債比率の推移(設立時~令和元年度)画像

(ウ) 自己資本に対する利益剰余金の割合

6会社の自己資本に対する利益剰余金の割合の推移をみると、図表2-2-25に示すとおりとなっており、6会社とも利益剰余金が大きく増加していることから、増加傾向となっている。

図表2-2-25 自己資本に対する利益剰余金の割合の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-2-25 自己資本に対する利益剰余金の割合の推移(平成17年度~令和元年度)画像

以上のように、その他借入金等の残高、負債比率及び自己資本に対する利益剰余金の割合はおおむね改善していることから、財務基盤の安定性は、令和元年度末時点でみれば、設立時に比べて向上していると考えられる。

ウ 利益剰余金と処分の状況
(ア) 6会社の利益剰余金の内訳

道路会社法によれば、会社は、その会計の整理に当たり、高速道路事業及び高速道路事業に附帯する事業とその他の事業とを区分しなければならないこととされており、これを受けて、6会社は、その年度に発生した当期純利益を高速道路事業から生じたものと関連事業から生じたものとに区分している。そして、6会社は、当期純利益を利益剰余金として内部留保している。

翌事業年度に行われた株主総会における剰余金の処分に関する決議等を反映した6会社の利益剰余金の推移をみると、図表2-2-26に示すとおりとなっており、6会社では、高速道路事業に係る利益剰余金については、将来の貸付料の確実な支払等に備えるために、中会社では高速道路事業積立金、阪神会社では高速道路事業別途積立金、中会社及び阪神会社を除く4会社では別途積立金(以下、これらを合わせて「高速道路事業積立金等」という。)として積み立てている。さらに、中会社では、平成24年12月の笹子トンネル天井板崩落事故の後、安全性を確保する対策を早期かつ確実に実施するための事業による損失に充てるために、25年度に「安全性向上積立金」を積み立てるなどしている。また、6会社は、29年度に計上された厚生年金基金代行返上益のうち、高速道路事業に係る部分については、高速道路利用者の安全性・快適性の向上に資する施策に活用することを目的として、「安全対策・サービス高度化積立金」を積み立てるなどしている。そして、NEXCO3会社では、29年6月の株主総会決議を経て、こ道橋の耐震対策に充てるための「跨道橋耐震対策積立金」を積み立てている(以下、安全性向上積立金、安全対策・サービス高度化積立金、跨道橋耐震対策積立金等の特定の目的のために積み立てられた積立金を合わせて「特定目的積立金」という。)。

一方、関連事業に係る利益剰余金については、サービスエリア等の機能強化や新事業の展開に向けた投資のために、主として繰越利益剰余金のまま繰り越していた。

これらの利益剰余金は、17年度以降、おおむね増加傾向にあり、令和元年度末において128億余円から905億余円までとなっていた。

図表2-2-26 処分後の利益剰余金の内訳の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-2-26 処分後の利益剰余金の内訳の推移(平成17年度~令和元年度)画像

(イ) 6会社の配当の状況等

株式会社の配当については、会社法等によれば、分配可能額の範囲内で実施することとされ、分配可能額は剰余金の額から自己株式の額等を控除して算定することとされている。

6会社は、(ア)のとおり、配当の原資となる多額の利益剰余金を内部留保しているが、料金収入の減少や管理費用の増大等のリスクに備えるとともに、サービスエリア等の機能強化や新事業展開に向けた投資のために財務体質の強化等に充てることとしており、株主である国等に対して、設立時から元年度末まで、利益剰余金の配当を行っていない。(注22)

(注22)
関連事業に係る利益剰余金については、6会社の株主である国は、「政府保有株式に係る株主議決権行使等の方針」(平成28年5月財務省理財局)に基づき、平成30年6月に実施された株主総会において関連事業収益における株主への還元も視野に入れることを、令和元年6月に実施された株主総会において配当の検討を開始することを期待する旨をそれぞれ発言したが、これに対して、6会社では、関連事業における収益力の強化、財務体質の強化等のために、配当等の社外流出を抑えて、自己資本の充実に努めることとしている。そして、2年6月に実施された株主総会では、国は、新型コロナウイルス感染症対策のため、関連事業の経営環境は厳しい状況にあると認識している旨の発言をするなどしており、配当を求めていない。

3 高速道路に係る債務の返済状況及び機構の財務の状況

NUM3-1

(1) 高速道路に係る債務の返済状況

ア 機構の債務の返済等の状況

第1の2(2)イ(イ)のとおり、機構法によれば、機構は、承継債務の返済を行うとともに、6会社から新規債務を引き受けて返済を行うこととされており(以下、機構が6会社から引き受けた新規債務を「引受債務」という。)、これらの債務の返済は貸付料等の収入により機構の解散の日までに完了することとされている。

また、機構は、承継出資金の総額のうち本州四国連絡橋公団からの鉄道勘定分としての承継出資金を除いた額を機構設立時の高速道路勘定の資本金の額としており、機構設立以降に国及び政令で定める地方公共団体(注23)から受けた出資金(以下、機構設立以降の機構への出資を「追加出資」といい、追加出資された出資金のことを「追加出資金」という。)により高速道路勘定の資本金の増資を行うなどしている(以下、承継出資金、追加出資及び追加出資金は高速道路事業に関するものをいう。)。そして、第1の2(2)イ(ウ)のとおり、機構法によれば、機構は、機構の解散の日において、少なくとも高速道路勘定における資本金に相当する額を残余財産としなければならないこととされており、機構が解散した場合、高速道路勘定に係る残余財産を各出資者に対してその出資額に応じて分配することとされている。また、高速道路勘定における資本金に相当する額を現預金等の残余財産とするための積立金である出資積立金の積立てに要する費用には、貸付料等を充てることとなっている。これらのことから、承継出資金及び追加出資金の総額が、貸付料等の収入により機構の解散の日までに機構が積み立てるべき出資積立金の額となる。

このように、機構は、自らの解散の日までに、貸付料等により、債務の返済を行うとともに、出資積立金の積立てを行う必要がある(以下、債務の返済と出資積立金の積立てとを合わせて「債務の返済等」という。)。

そこで、機構が返済することとなる債務及び出資積立金として積み立てる額の算定の基礎となる出資金の出資について、機構設立時から元年度末までの間における承継債務及び承継出資金、引受債務、機構の資金調達の状況、債務の返済状況、出資金の増減等を分析したところ、次のような状況となっていた。

(注23)
政令で定める地方公共団体   首都高速道路、阪神高速道路、本四道路 別に、各高速道路に係る業務に要する費用に充てる資金の一部に充てるべきものとして出資する出資金により区分されており、首都高 速道路については、東京都、埼玉、千葉、神奈川各県、横浜、川崎、 さいたま各市の7都県市、阪神高速道路については、京都、大阪両府、 兵庫県、京都、大阪、神戸、堺各市の7府県市、本四道路については、 大阪府、兵庫、岡山、広島、徳島、香川、愛媛、高知各県、大阪、 神戸両市の10府県市とされている。
(ア) 機構の債務及び出資金の状況

機構設立時点及び元年度末時点における機構の債務及び出資金をみると、図表2-3-1のとおり、債務については、機構設立時に承継債務として38兆2179億余円(うち有利子債務37兆4379億余円)であったものが元年度末時点において29兆6761億余円(うち有利子債務29兆5515億余円)と8兆5418億余円(うち有利子債務7兆8863億余円)減少していた。また、高速道路勘定に係る出資金については、機構設立時において承継出資金として4兆3711億余円であったものが、元年度末時点において5兆6164億余円と1兆2452億余円増加していた(後掲(キ)参照)。一方、機構設立から元年度末までの間において出資積立金の積立ては行われていない。

この結果、元年度末時点で機構が負っている債務計29兆6761億余円及び出資積立金として今後積み立てるべき額計5兆6164億余円の合計額は35兆2925億余円となっており、機構設立時における42兆5891億余円から7兆2965億余円減少していた。

h-2-3-1図表2-3-1 機構設立時点及び令和元年度末時点の機構の債務及び出資金

図表2-3-1 機構設立時点及び令和元年度末時点の機構の債務及び出資金

(単位:億円)
区分 承継債務及び
承継出資金
A
機構設立から令和元年度末までの間における増減 元年度
期末残高
F=A+B+C
-D-E
差額
G=F-A
引受債務
B
資金調達又は
追加出資
C
債務返済又は
減資
D
国への債務承継
E

長期借入金 12兆7275 4兆7672 3兆6200 14兆5419 2兆0536 4兆5192 △ 8兆2082
  無利子借入金 7799 1555 - 8109 - 1245 △ 6554
有利子借入金 11兆9476 4兆6117 3兆6200 13兆7310 2兆0536 4兆3947 △ 7兆5528
債券 24兆7664 8兆0215 32兆2997 39兆5726 8268 24兆6881 △ 782
長期未払金 7238 - - 2552 - 4686 △ 2552
38兆2179 12兆7888 35兆9197 54兆3698 2兆8804 29兆6761 △ 8兆5418
(うち有利子債務) (37兆4379) (12兆6333) (35兆9197) (53兆5589) (2兆8804) (29兆5515) (△ 7兆8863)
出資金 4兆3711 - 1兆2678 225 - 5兆6164 1兆2452
合計 42兆5891 12兆7888 37兆1875 54兆3924 2兆8804 35兆2925 △ 7兆2965
  • 注(1) 機構が6会社に対して無利子貸付けを行った無利子貸付金に係る債務については、機構が6会社から引き受けた際に消滅することから引受債務には計上していない。
  • 注(2) 国への債務承継は、利便増進事業のために平成20年度に国に承継された債務である。
  • 注(3) 出資金の増減については、追加出資金の額をC欄に、減資された額をD欄に計上している。
  • 注(4) 長期未払金は、東京湾横断道路建設長期未払金である。
(イ) 承継債務及び承継出資金

機構の承継債務及び承継出資金の内訳は、図表2-3-2のとおり、日本道路公団からは計29兆2935億余円、首都高速道路公団からは計5兆6103億余円、阪神高速道路公団からは計4兆3334億余円、本州四国連絡橋公団からは計3兆3518億余円となっていた。

h-2-3-2図表2-3-2 道路関係四公団別の承継債務及び承継出資金

図表2-3-2 道路関係四公団別の承継債務及び承継出資金

(単位:億円)
区分 日本道路公団 首都高速道路公団 阪神高速道路公団 本州四国連絡橋公団



長期借入金 8兆5804 2兆0236 1兆4837 6398 12兆7275
  無利子借入金 144 4439 610 2605 7799
有利子借入金 8兆5659 1兆5796 1兆4227 3792 11兆9476
債券 18兆0344 2兆8358 2兆2808 1兆6153 24兆7664
長期未払金 7238 - - - 7238

(うち有利子債務)
27兆3386
(27兆3242)
4兆8594
(4兆4154)
3兆7645
(3兆7035)
2兆2551
(1兆9946)
38兆2179
(37兆4379)
承継出資金 1兆9548 7508 5688 1兆0966 4兆3711
合計 29兆2935 5兆6103 4兆3334 3兆3518 42兆5891
  • (注) 長期未払金は、東京湾横断道路建設長期未払金である。
(ウ) 引受債務

機構は、第1の2(2)イ(イ)のとおり、承継債務に加えて、新規債務についても6会社から引き受け、機構が解散する日までに返済することとなっている。平成17年度から令和元年度までの間における引受債務の額(注24)をみると、図表2-3-3のとおり、機構は、毎年度6会社から新規債務を引き受けており、引受債務の累計額は12兆7888億余円となっていた。

(注24)
引受債務の額   各年度の引受債務の額は、高速道路の新設等に係る工事完了に伴い各年度に機構に帰属する高速道路資産の額に応じて決まることになり、機構がどの債務を引き受けるかについては、個々の債務の返済期日が到来する順序等を考慮して6会社が選定している。なお、機構は、6会社に対して無利子貸付けを行っており、工事完了に伴い6会社からこの無利子貸付けによる債務についても引き受けているものの、この無利子貸付けによる債務については、機構が当該債務を引き受けたときに債権及び債務が同一人(機構)に帰属するため消滅し、機構が返済すべき債務の額には影響を与えないことから、引受債務の額には含めていない。

図表2-3-3 引受債務の額の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-3 引受債務の額の推移(平成17年度~令和元年度)画像

上記引受債務の額を6会社別にみると、図表2-3-4のとおり、平成17年度から令和元年度までの間において、東会社から計3兆2973億余円、中会社から計4兆2037億余円、西会社から計2兆9957億余円、本四会社から計998億余円、首都会社から計1兆5724億余円、阪神会社から計6195億余円となっていた。特に、平成24年度の中会社からの引受債務が1兆1811億余円と多額となっているのは、同年度に新東名高速道路(御殿場JCT~浜松いなさJCT)が供用開始されたためであり、30年度の東会社からの引受債務が1兆0894億余円と多額となっているのは、東関東自動車道水戸線(三郷南IC~高谷JCT)等が供用開始されたためである。

また、6会社別に引受債務のうち有利子債務に係る金利及び償還期間をみると、金利は0.007%から1.725%までとなっており、償還期間はいずれも10年以内で調達されていた。道路会社法に基づいて、6会社は国土交通大臣の認可を受けて長期借入金の借入れ等を自主的に行っていることから、機構は、6会社が行う資金調達について関与はしていないとしている。

h-2-3-4図表2-3-4 6会社別の引受債務の額、有利子債務に係る金利及び償還期間の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-4 6会社別の引受債務の額、有利子債務に係る金利及び償還期間の推移(平成17年度~令和元年度)

会社名 区分 平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
東会社 引受債務額 205億円 502億円 1677億円 1277億円 1750億円 1550億円 2450億円 750億円
金利 1.305% 1.235% 1.406% 1.223% 0.899% 0.687% 0.419% 0.389%
償還期間 9.4年 6.0年 4.9年 4.5年 2.9年 2.9年 2.9年 3.0年
中会社 引受債務額 348億円 228億円 908億円 1608億円 970億円 1629億円 618億円 1兆1811億円
金利 1.358% 1.394% 1.390% 1.449% 1.386% 1.601% 1.110% 1.255%
償還期間 9.4年 7.5年 9.5年 10.0年 8.8年 9.2年 6.9年 7.6年
西会社 引受債務額 312億円 356億円 1643億円 780億円 2909億円 1487億円 1157億円 852億円
金利 1.663% 0.506% 1.428% 1.185% 0.856% 0.580% 0.493% 0.477%
償還期間 7.1年 2.5年 5.3年 2.9年 2.9年 2.9年 2.9年 2.9年
本四会社 引受債務額 17億円 10億円 44億円 43億円 53億円 57億円 41億円 36億円
金利 0.369% 0.612% 1.121% 1.131% 0.870% 0.669% 0.615% 0.560%
償還期間 1.8年 1.1年 1.8年 1.7年 1.8年 1.9年 1.9年 1.9年
首都会社 引受債務額 166億円 277億円 1601億円 382億円 2253億円 368億円 137億円 1219億円
金利 1.475% 1.585% 1.583% 1.600% 1.169% 0.936% 1.000% 0.727%
償還期間 3.9年 5.2年 9.5年 10.0年 4.9年 4.9年 4.9年 5.2年
阪神会社 引受債務額 130億円 26億円 215億円 327億円 70億円 535億円 402億円 537億円
金利 1.475% 1.725% 1.620% 1.576% 1.600% 1.217% 0.619% 0.545%
償還期間 4.7年 4.8年 9.2年 9.7年 9.9年 6.6年 5.1年 2.2年
引受債務額の計 1180億円 1402億円 6090億円 4418億円 8006億円 5628億円 4807億円 1兆5207億円
会社名 区分 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
東会社 引受債務額 1250億円 2600億円 2000億円 1300億円 1300億円 1兆0894億円 3466億円 3兆2973億円
金利 1.335% 0.989% 0.584% 0.348% 0.007% 0.128% 0.094% 0.496%
償還期間 8.0年 7.1年 6.2年 5.3年 2.0年 4.1年 5.0年 4.5年
中会社 引受債務額 659億円 2500億円 6525億円 1600億円 2585億円 7241億円 2802億円 4兆2037億円
金利 0.539% 0.619% 0.501% 0.312% 0.217% 0.084% 0.034% 0.732%
償還期間 4.2年 5.5年 5.9年 4.8年 5.0年 4.7年 3.4年 6.3年
西会社 引受債務額 2250億円 2644億円 1008億円 1385億円 8235億円 2535億円 2400億円 2兆9957億円
金利 0.793% 1.381% 0.513% 0.411% 0.198% 0.134% 0.147% 0.572%
償還期間 4.9年 9.0年 5.6年 5.7年 5.2年 3.2年 3.9年 4.7年
本四会社 引受債務額 89億円 111億円 123億円 71億円 98億円 102億円 96億円 998億円
金利 0.489% 0.438% 0.365% 0.299% 0.290% 0.209% 0.100% 0.463%
償還期間 1.9年 1.9年 1.9年 1.9年 1.9年 2.0年 2.1年 1.9年
首都会社 引受債務額 194億円 1826億円 685億円 2572億円 1250億円 916億円 1873億円 1兆5724億円
金利 0.609% 0.768% 0.432% 0.291% 0.067% 0.079% 0.083% 0.604%
償還期間 4.9年 6.5年 5.5年 5.1年 4.9年 3.9年 3.6年 5.4年
阪神会社 引受債務額 880億円 205億円 641億円 500億円 250億円 265億円 1210億円 6195億円
金利 0.622% 0.882% 0.396% 0.124% 0.010% 0.273% 0.021% 0.573%
償還期間 5.7年 7.5年 4.9年 3.8年 3.1年 4.2年 1.9年 4.7年
引受債務額の計 5323億円 9886億円 1兆0982億円 7429億円 1兆3719億円 2兆1956億円 1兆1848億円 12兆7888億円
  • (注) 「金利」及び「償還期間」は、年度ごとの有利子債務の引受額により加重平均したものを記載している。
(エ) 資金調達

a 資金調達額

機構は、6会社との協定に基づいて、毎年度の貸付料の支払を1か月ごとに分割して6会社から受けており、この貸付料収入等を得て承継債務及び引受債務の返済を行っている。一方、第1の2(2)イ(イ)のとおり、機構は、多額の債務を長期間にわたって返済することとなっており、順次返済期日が到来する個々の長期借入金や債券等の債務の返済を行うためには貸付料等の手許現金では賄いきれない分の資金調達を実施する必要があることから、機構は、機構法に基づき、国土交通大臣の認可を受けて、承継債務及び引受債務の返済に必要な費用に充てるために長期借入金の借入れ及び日本高速道路保有・債務返済機構債券(以下「機構債」という。)の発行を行っている。

そして、17年度から令和元年度までの間における機構の資金調達額の累計額は、図表2-3-5のとおり、計35兆9197億円となっている。長期借入金の借入れを行っているのは、平成22、23、26、27、30、令和元各年度であり、特に、平成30、令和元両年度については、多額の財政融資資金からの借入れ(有利子借入金)を行っている(後掲第2の4(1)イ(イ)参照)が、資金調達の大半は機構債の発行によるものとなっている。(注25)

(注25)
機構債の発行による資金調達が大半となっている理由について、機構は、資金調達の手段を検討するに当たり、支払利息や債券発行諸費等の費用を可能な限り抑えることに重点を置いており、資金調達を実施する都度、最善の手段を検討した結果であるなどとしている。

図表2-3-5 資金調達額の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-5 資金調達額の推移(平成17年度~令和元年度)画像

b 機構の資金調達利回り

平成18年度から令和元年度までの各年度末時点における長期借入金及び債券に係る債務残高に対する各年度の支払利息や債券発行諸費等の費用(以下「資金調達費用」という。)の額の割合(以下「機構の資金調達利回り」という。)をみると、図表2-3-6のとおり、平成20年度においては国への債務承継が行われて債務の期末残高が減少したことにより上昇しているが、第2の2(1)エ(イ)のとおり、20年10月以降の日本銀行の施策等によって市場金利が低下したことにより、機構の支払利息が減少するなどしたため低下傾向にあり、令和元年度は0.96%となっていて、近年はより低いコストで資金調達を行うことが可能となっている。

図表2-3-6 機構の資金調達利回りの推移(平成18年度~令和元年度)

図表2-3-6 機構の資金調達利回りの推移(平成18年度~令和元年度)画像

c 政府保証債による資金調達

機構は、資金調達の多くを機構債の発行により行っており、平成17年度から令和元年度までの間において発行された機構債の内訳をみると、図表2-3-7のとおり、元年度以外の各年度の機構債の発行額全体のうち約8割が政府保証債であり、残りが財投機関債(注26)となっていた。なお、元年度の政府保証債の占める割合が他の年度に比べて低くなっているのは、元年度に政府保証債により調達することとしていた額の一部を平成30年度の財政融資資金からの借入れにより賄ったためである。

(注26)
財投機関債   財投機関(財政投融資を活用している機関)が発行する公募の債券のうち、政府が債務の保証を行っていないもの。機構は、機構設立以降毎年度、資金調達に当たり、償還期間5年以上の機構債等に係る政府保証(財政投融資の一つの手法)を受けていることから機構設立以降継続して財投機関となっており、機構が発行する機構債のうち政府保証が付されていないものは財投機関債となる。

図表2-3-7 機構債の発行状況及び政府保証債が占める割合の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-7 機構債の発行状況及び政府保証債が占める割合の推移(平成17年度~令和元年度)

政府保証債は、機構が約定どおりに元本や利子の支払を行わなかった場合には政府が機構に代わってこれらの支払を行うことを約定した債券であり、債券の信用力が高まるため、機構が自らの信用力のみで資金調達する財投機関債に比べて低利での発行が可能となる。

そして、17年度から令和元年度までの間に機構が発行した機構債について、同一年度に発行した同じ償還期間の政府保証債と財投機関債の調達金利を比較したところ、同一年度内においても発行する時期、発行規模、発行価額等によって調達金利が変動することもあるため一概には比較できないものの、財投機関債よりも政府保証債の方がおおむね低利での発行となっていた(別図表20参照)。

d 機構債の償還期間

機構が平成17年度以降に新規に発行した機構債の償還期間別の割合の推移をみると、図表2-3-8のとおり、機構は、設立当初は償還期間10年以下の機構債の発行を主に行っており、17年度における機構債発行額総額のうちの償還期間10年以下の機構債の発行割合は計75.0%となっていたが、27年度以降は償還期間10年未満の機構債を発行しておらず、令和元年度においては償還期間10年以下の機構債の発行割合が16.3%まで低下していた。他方、償還期間30年以上の機構債の発行割合は、平成17年度の計10.1%から令和元年度の計76.8%まで増加しており、その結果、償還期間の加重平均は、平成17年度の12.2年から令和元年度の28.7年と長期化している。(注27)

(注27)
機構は、機構債の償還期間を長期化しているのは、将来の金利の変動により、債務の確実な返済という目的を達成できなくなるリスクの低減を図るためとしている。すなわち、機構債の償還期間を長期化することにより、金利が将来上昇した場合においても将来の市場金利による借換えが必要な長期借入金等は減少することとなるなどのため、金利上昇時における資金調達費用の増加幅は、機構債の償還期間を長期化させる前に比べて減少することになる。

図表2-3-8 機構債の償還期間別割合の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-8 機構債の償還期間別割合の推移(平成17年度~令和元年度)画像

(オ) 債務の返済

機構は、平成17年度から令和元年度までの間において、第1の2(2)イ(エ)のとおり6会社から貸付料を徴収したり、第2の3(1)ア(エ)のとおり資金調達を行ったりするなどして、図表2-3-9のとおり、計54兆3698億余円の債務の返済を行っている。また、機構は、資金調達に当たり、資金調達費用を可能な限り抑制するためとして、繰上償還を可能としない契約内容としており、長期借入金等に係る債務の返済は約定した返済期日に行っていることから、年度内に返済期日が到来した債務の額が当該年度の債務の返済額となる。

図表2-3-9 債務の返済額の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-9 債務の返済額の推移(平成17年度~令和元年度)画像

(カ) 国による債務承継

機構は、第2の1(2)エ(イ)のとおり、利便増進事業のために必要となる貸付料の減額等を行っており、そのための財源として、20年度において、機構が債務として負っていた有利子借入金2兆0536億余円、債券8268億余円の計2兆8804億余円が国の一般会計に承継されている。これらの承継された債務については、国債整理基金特別会計を通じて国により償還が行われている。

(キ) 出資金

出資金は、道路関係四公団からの承継出資金及び機構設立以降の追加出資金であり、これらの出資金の内訳は、首都高速道路に係る業務に要する費用に充てる資金の一部に充てるべきものとして出資される出資金(以下「首都高速道路に係る出資金」という。)、阪神高速道路に係る業務に要する費用に充てる資金の一部に充てるべきものとして出資される出資金(以下「阪神高速道路に係る出資金」という。)、本四道路に係る業務に要する費用に充てる資金の一部に充てるべきものとして出資される出資金(以下「本四道路に係る出資金」という。)及び上記以外の全国路線網に係る出資金(以下「その他全国路線網に係る出資金」という。)となっている。首都高速道路公団からの承継出資金は首都高速道路に係る出資金に、阪神高速道路公団からの承継出資金は阪神高速道路に係る出資金に、本州四国連絡橋公団からの承継出資金は本四道路に係る出資金に、日本道路公団からの承継出資金はその他全国路線網に係る出資金に、それぞれ含まれている。

機構設立時から令和元年度までの各年度末時点における出資金残高の推移をみると、図表2-3-10のとおり、承継出資金の額は計4兆3711億余円であったが、機構設立以降、首都高速道路に係る出資金、阪神高速道路に係る出資金及び本四道路に係る出資金の追加出資が行われるなどした結果、元年度末までに1兆2452億余円増加して、総額計5兆6164億余円となっていた。機構が受ける追加出資は、利子等が発生しないことから、機構の無利子の資金調達と捉えることができ、また、機構は、解散の日までに高速道路勘定における出資金の額に相当する出資積立金を積み立てることとなっているため、当該出資金は、機構が解散する日までに返済することになる債務と類似の性格を有している。そして、元年度末時点において出資積立金の積立ては開始されていないため、出資金の額全額に相当する額を今後積み立てる必要がある。

図表2-3-10 出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-10 出資金残高の推移(設立時~令和元年度)画像

a 首都高速道路に係る出資金及び阪神高速道路に係る出資金

機構は、機構法によれば、首都高速道路又は阪神高速道路の新設等に要する費用に充てる資金の一部に充てるべきものとして、追加出資金を財源として、首都会社又は阪神会社に対して、首都高速道路又は阪神高速道路の新設等に要する費用の一部を無利子で貸し付けることとされている。

首都高速道路に係る出資金について、機構設立時から元年度までの各年度末時点における残高をみると、図表2-3-11のとおり、首都高速道路公団からの承継出資金の額は7508億余円であったが、民営化以降において首都高速道路の新設等に要する費用の一部を無利子で貸し付けるための財源として国及び7都県市による追加出資が国と7都県市とで1対1の割合で平成17年度から令和元年度までの間に計4263億余円行われ、元年度末における首都高速道路に係る出資金の残高は1兆1772億余円となっている。

h-2-3-11図表2-3-11 首都高速道路に係る出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-11 首都高速道路に係る出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

(単位:億円)
区分 設立時
A
平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
政府出資金 3754 3847 3999 4147 4289 4454 4623 4834 5033
地方公共団体出資金 3754 3847 3999 4147 4289 4454 4623 4834 5033
  埼玉県 443 447 455 455 455 456 456 457 458
千葉県 60 60 60 61 63 64 65 66 66
東京都 2006 2073 2175 2256 2333 2450 2558 2677 2788
神奈川県 621 633 654 687 718 741 771 816 859
横浜市 334 336 343 361 379 397 422 464 507
川崎市 287 296 310 325 339 344 349 352 352
さいたま市 - - - - - - - - -
7508 7695 7998 8294 8579 8908 9247 9669 1兆0066
区分 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
B
差額(追加出資の計)
B-A
 
政府出資金 5203 5330 5461 5637 5745 5801 5886 2131
地方公共団体出資金 5203 5330 5461 5637 5745 5801 5886 2131
  埼玉県 458 458 458 458 458 459 459 16
千葉県 66 66 66 66 66 66 66 6
東京都 2883 2924 2942 2963 3009 3019 3028 1022
神奈川県 897 940 996 1074 1105 1127 1164 542
横浜市 545 588 644 721 753 774 812 477
川崎市 352 352 352 352 352 352 352 65
さいたま市 - - - - 0 0 1 1
1兆0407 1兆0660 1兆0922 1兆1274 1兆1491 1兆1602 1兆1772 4263

また、阪神高速道路に係る出資金について、機構設立時から元年度までの各年度末時点における残高をみると、図表2-3-12のとおり、阪神高速道路公団からの承継出資金の額は5688億余円であったが、民営化以降において、阪神高速道路の新設等に要する費用の一部を無利子で貸し付けるための財源として国及び7府県市による追加出資が国と7府県市とで1対1の割合で平成17年度から令和元年度までの間に計1998億余円行われていた。また、平成31年4月に、阪神京都線のうち新十条通が京都市に移管され、同月から無料開放されることに伴い、機構は、通則法に基づき、30年度に、当該道路の一部を不要財産として京都府及び京都市に現物で払い戻し、京都府及び京都市からの出資金に相当する資本金計225億余円を減資していた。そして、31年3月から阪神京都線のうち油小路線が一般国道1号として全国路線網に指定されたことにより、京都府及び京都市が出資していた額見合いの政府出資金計225億余円については、その他全国路線網に係る出資金とされた。

令和元年度末における阪神高速道路に係る出資金の残高は、承継出資金5688億余円に追加出資金1998億余円を加えて、減資された225億余円及びその他全国路線網に係る出資金とされた225億余円を減じた結果、7235億余円となっている。

h-2-3-12図表2-3-12 阪神高速道路に係る出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-12 阪神高速道路に係る出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

(単位:億円)
区分 設立時
A
平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
政府出資金 2844 2909 3021 3131 3225 3301 3386 3478 3581 3652
地方公共団体出資金 2844 2909 3021 3130 3224 3301 3386 3478 3581 3652
京都府 84 90 107 111 112 112 112 112 112 112
大阪府 818 841 860 884 904 922 944 974 1008 1031
兵庫県 519 523 533 548 563 574 584 584 585 587
京都市 84 90 107 111 112 112 112 112 112 112
大阪市 818 841 860 884 904 922 944 974 1008 1031
神戸市 519 523 533 548 563 574 584 584 585 587
堺市 - - 19 43 63 81 103 133 167 190
5688 5819 6043 6262 6450 6603 6772 6957 7162 7305
区分 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
B
差額
B-A
   
追加出資の計 減資等
政府出資金 3721 3776 3796 3813 3603 3617 773 999 △ 225  
地方公共団体出資金 3721 3776 3796 3813 3603 3617 773 999 △ 225
京都府 112 112 112 112 - - △ 84 28 △ 112
大阪府 1054 1072 1079 1084 1090 1094 276 276 -
兵庫県 587 587 587 587 587 587 67 67 -
京都市 112 112 112 112 - - △ 84 28 △ 112
大阪市 1054 1072 1079 1084 1090 1094 276 276 -
神戸市 587 587 587 587 587 587 67 67 -
堺市 213 231 238 243 248 253 253 253 -
7443 7553 7592 7627 7206 7235 1546 1998 △ 451

本四道路に係る出資金について、機構設立時から元年度までの各年度末時点における残高をみると、図表2-3-13に示すとおりとなっており、本州四国連絡橋公団からの承継出資金の額は1兆0966億余円であった。そして、機構は、資金調達のコストを一定の水準に抑えて金利負担を軽減するなどのために、平成17年度から25年度までの間に国及び10府県市から追加出資を受けており、25年度末における出資金の残高は承継出資金1兆0966億余円に機構設立時から25年度までの間の追加出資金計6416億円を加えた計1兆7382億余円となっていて、26年度以降の追加出資は行われていないため、令和元年度末における本四道路に係る出資金の残高は平成25年度末と同額である。

26年度以降に追加出資が行われていないのは、22年4月に、国土交通省が、34年度(令和4年度)までの出資期間を前提とした本四道路の新料金案を示したことを契機として、平成22年5月に24年度以降の追加出資を行わないことなどを10府県市が同省に申し入れたことから、同省と10府県市との間で以降の追加出資について協議が行われ、同省が24年2月に「今後の本四高速料金の基本指針」を示して、国及び10府県市の追加出資については減額の上、24、25両年度に限り継続することにしたためである。

h-2-3-13図表2-3-13 本四道路に係る出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-13 本四道路に係る出資金残高の推移(設立時~令和元年度)

(単位:億円)
区分 設立時
A
平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25~令和
元年度
B
差額(追加出資の計)
B-A
政府出資金 7306 7573 8106 8640 9173 9706 1兆0240 1兆0773 1兆1178 1兆1584 4277
地方公共団体出資金 3659 3792 4059 4326 4592 4859 5126 5392 5589 5798 2138
  大阪府 148 153 161 169 178 186 194 203 210 218 69
兵庫県 674 694 732 770 808 847 885 923 957 991 316
岡山県 471 484 511 537 564 590 617 643 667 690 219
広島県 406 432 485 538 591 644 697 750 780 811 404
徳島県 370 380 401 422 443 464 485 506 525 543 173
香川県 471 484 511 537 564 590 617 643 667 690 219
愛媛県 406 432 485 538 591 644 697 750 780 811 404
高知県 148 153 161 169 178 186 194 203 210 218 69
大阪市 148 153 161 169 178 186 194 203 205 218 69
神戸市 411 423 446 469 493 516 539 562 583 604 192
1兆0966 1兆1366 1兆2166 1兆2966 1兆3766 1兆4566 1兆5366 1兆6166 1兆6768 1兆7382 6416

機構法によれば、本四道路に係る出資金に相当する額1兆7382億余円については、高速道路勘定に係る他の出資金相当額と同様に、機構の解散の日までに出資積立金の積立てを行う必要があることとされている。ただし、民営化申合せにおいて、「機構は、民営化から45年後には債務を確実に完済し、その時点で高速道路等を道路管理者に移管し、無料開放する。なお、これを実現するため、本四道路に係る出資金の返済方法については、機構の解散時までに検討する」こととなっている。これは、国土交通省によると、機構が、45年間のうちに債務の返済等を完了するために本四道路に係る貸付料を高めに設定して、本四会社が、貸付料の支払費用を本四道路の通行料金に転嫁することになると、当時の経済情勢の下では本四道路の交通量が減少して債務の返済等に著しく支障が生ずると想定されたためであるとしている。そして、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法施行令の附則により、当分の間、貸付料等により償う機構の業務に要する費用である出資積立金の積立てに要する費用から本四道路に係る出資金に相当する額を除くこととなっている。

c その他全国路線網に係る出資金

その他全国路線網に係る出資金は、日本道路公団からの承継出資金1兆9548億余円及びaのとおり30年度にその他全国路線網に係る出資金とされた225億余円の計1兆9774億余円(全額政府出資金)となっており、令和元年度末における残高は同額となっている。

以上のとおり、機構は、承継債務及び引受債務をより確実に返済することができるように自ら資金調達を行ったり、追加出資を受けたりなどして、これらの債務の返済を行うとともに、機構設立時の債務等の構成を変化させてきている。機構設立時から元年度までの各年度末時点における債務等の残高について、無利子借入金、有利子借入金、債券、長期未払金(東京湾横断道路建設長期未払金)(注28)及び出資金別にみると、図表2-3-14のとおり、債務等の総額に占める有利子借入金の割合は、機構設立時の28.0%から平成27年度には2.4%にまで低下し、その後増加して令和元年度に12.4%となっていて、債券の占める割合は機構設立時の58.1%から元年度には69.9%となっていた(機構設立時から元年度までの各年度末時点における債務等の種類別残高の推移は、別図表21参照)。

(注28)
長期未払金(東京湾横断道路建設長期未払金)   東京湾横断道路の建設に関する特別措置法(昭和61年法律第45号)等に基づいて、アクアラインの建設工事に要した費用をアクアラインの供用開始後長期間に分割して機構が東京湾横断道路株式会社に支払うことに係る未払金。昭和62年に同社と日本道路公団との間で締結された「東京湾横断道路の建設に関する協定」に基づいて、日本道路公団が同社に対して支払を行っていたが、日本道路公団の解散に伴い、民営化施行法に基づき、この協定は、同社、機構及び東会社の間で締結したものとみなすこととされて、機構が日本道路公団からアクアラインに係る高速道路資産と共に、長期未払金(東京湾横断道路建設長期未払金)に係る債務を承継している。

図表2-3-14 機構の債務等の残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-14 機構の債務等の残高の推移(設立時~令和元年度)画像

イ 債務返済計画

債務返済計画は、最新の協定の内容を反映して当該協定の対象となる路線網等ごとに作成されるものであり、また、6会社の収支予算の明細は、協定ごとに作成され、機構が引き受けることとなる債務等の額が記載されており、機構は、各会社の収支予算の明細は債務返済計画の一部を構成するものであるとしている。そこで、原則として、当初協定を反映した当初の債務返済計画(以下「当初債務返済計画」という。)から令和元年度末債務返済計画までを対象に、債務返済計画の内容及び合算値、債務返済計画に大きな影響を与えている支払利息及び貸付料の算定方法等並びに債務返済計画の計画値及び実績値を分析したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 債務返済計画の内容

機構は、債務返済計画の変更に当たり、原則として、債務返済計画を変更する時点で決算が確定した年度までは実績値を、当年度は実績見込値又は計画値を、翌年度以降は計画値をそれぞれ計上しており、2年3月に変更された全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画では、平成30年度までの実績値及び令和元年度の実績見込値を計上し、2年度以降は計画値を計上している。また、債務返済計画は、機構が解散する日までに債務の返済等が可能かどうかを確認することを目的に作成されている長期的なものであることから、未収金及び未払金は発生した年度に全て精算されたとみなしたり、資金調達した現金は現預金のまま保管する場合であっても全て調達した年度に返済に回したとみなしたりするなど、各会計年度における財務状況等を表す財務諸表等と比較すると各年度の値を簡便化するなどして作成されている。

(イ) 債務返済計画の合算値

債務返済計画上の初年度である平成18年度から令和47年度の機構が解散する日までの間における高速道路事業全体の債務の返済等の状況の全体像を明らかにするために、令和元年度末債務返済計画における平成18年度から令和47年度までの間の各項目の総額(全ての路線網等の令和元年度末債務返済計画の合算値。別図表22及び別図表23参照)を、返済すべき債務等と機構収支に分けて示すと、図表2-3-15のとおり、返済すべき債務等の額は、平成18年4月1日時点の41.5兆余円の未償還残高の総額に加えて、39.1兆余円の債務を6会社から引き受けるなどして、ここから国に債務承継した2.8兆余円を控除するなどした計77.8兆余円となっている。また、機構収支は、6会社からの貸付料等の収入103.5兆余円から支払利息22.6兆余円、機構管理費等5.7兆余円を控除するなどした計76.0兆余円となっている。返済すべき債務等の額と機構収支との差額1.7兆余円は本四道路に係る出資金であり、令和元年度末債務返済計画上は未償還残高として残ることとなっているが、第2の3(1)ア(キ)bのとおり、その返済方法については機構の解散時までに検討することとされている。

また、当初債務返済計画と令和元年度末債務返済計画について、各項目の総額を比較したところ、特定更新等工事に係る債務(以下「特定更新等工事債務」という。)以外の高速道路の新設等に係る債務(以下「建設債務」という。)の額が8.3兆余円増加し、また、特定更新等工事債務が8.0兆余円増加することなどにより、機構が返済すべき債務等の額は12.8兆余円増加していた。そして、機構収支は、平成26年度に特定更新等工事の実施のために料金徴収の満了日が62年度(令和32年度)から平成77年度(令和47年度)まで延長されて高速道路資産の貸付期間が延びたことなどにより貸付料収入が2.9兆余円増加したり、低金利の状況が続いたことにより支払利息が13.0兆余円減少したりしたことなどにより、13.6兆余円増加していた。

h-2-3-15図表2-3-15 令和元年度末債務返済計画及び当初債務返済計画における平成18年度から令和47年度までの高速道路事業全体の債務等の状況

図表2-3-15 令和元年度末債務返済計画及び当初債務返済計画における平成18年度から令和47年度までの高速道路事業全体の債務等の状況

(単位:兆円)
区分 ① 当初債務返済計画 ② 令和元年度末債務返済計画 差額② - ①
期間等 注(2) 金額 期間等 注(2) 金額
未償還残高【A】 平成18年4月1日 41.6 平成18年4月1日 41.5 0.0
建設債務に係る分 平成18年4月1日 37.1 平成18年4月1日 37.1 0.0
出資金に係る分 平成18年4月1日 4.4 平成18年4月1日 4.4 0.0
期中増【B】 平成18年度~令和32年度 23.3 平成18年度~令和47年度 39.1 15.7
建設債務に係る分 平成18年度~令和32年度 21.4 平成18年度~令和47年度 29.8 8.3
特定更新等工事債務に係る分 注(3) - 平成27年度~令和11年度、
17、22両年度、26年度~43年度
8.0 8.0
出資金に係る分 平成18年度~令和4年度 1.8 平成18年度~令和9年度 1.1 △ 0.6
国への債務承継額(利便増進事業)【C】 - 平成20年度等 2.8 2.8
返済すべき債務等の計【D=A+B-C】 64.9 77.8 12.8
【収入】  
貸付料【E】 平成18年度~令和32年度 100.5 平成18年度~令和47年度 103.5 2.9
建設債務に係る分 平成18年度~令和32年度 100.5 平成18年度~令和47年度 88.1 △ 12.4
特定更新等工事債務に係る分 - 令和26年度~43年度 15.4 15.4
占用料等【F】 平成18年度~令和32年度 0.2 平成18年度~令和47年度 0.5 0.3
建設債務に係る分 平成18年度~令和32年度 0.2 平成18年度~令和32年度、
38年度~47年度
0.4 0.2
特定更新等工事債務に係る分 - 令和26年度~43年度 0.0 0.0
出資金等【G】 平成18年度~令和4年度 1.8 平成18年度~令和9年度、
16年度~22年度
1.4 △ 0.4
収入の計【H=E+F+G】 102.7 105.5 2.8
【支出】
機構管理費等【I】 平成18年度~令和32年度 3.9 平成18年度~令和47年度 5.7 1.7
建設債務に係る分 平成18年度~令和32年度 3.9 平成18年度~令和47年度 5.0 1.0
特定更新等工事債務に係る分 - 令和26年度~43年度 1.2 1.2
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る消費税相当額 注(4) - 平成27年度~令和11年度、
17、22両年度
△ 0.5 △ 0.5
国庫納付金 注(5)【J】 - 平成23年度 0.2 0.2
支払利息【K】 平成18年度~令和32年度 35.7 平成18年度~令和43年度 22.6 △ 13.0
建設債務に係る分 平成18年度~令和32年度 35.7 平成18年度~令和38年度 15.9 △ 19.7
特定更新等工事債務に係る分 - 令和26年度~43年度 1.8 1.8
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る支払利息相当額注(4) - 平成28年度~令和32年度 4.8 4.8
無利子貸付金【L】 平成18年度~令和32年度 0.5 平成18年度~令和9年度、
16年度~22年度
0.8 0.2
支出の計【M=I+J+K+L】 40.2 29.4 △ 10.7
機構収支の計【N=H-M】 平成18年度~令和32年度 62.4 平成18年度~令和47年度 76.0 13.6
本四道路に係る出資金【O=D-N】 2.4 1.7 △ 0.7
(ウ) 支払利息の算定方法等

令和元年度末債務返済計画における機構が支出する支払利息の総額は、(イ)のとおり22.6兆余円と多額に上っており、債務返済計画に大きな影響を与えている。機構は、将来の各年度の支払利息の計画値を算定するに当たっては、過年度に調達した有利子債務の金利と将来新規に調達する予定の有利子債務の金利(以下「将来調達金利」という。)とを加重平均した金利を当該年度の有利子債務残高の計画値に乗ずることなどにより算出している。

機構は、当初債務返済計画から令和元年度末債務返済計画までの全ての債務返済計画において、調達金利の上昇リスクを確実な債務返済を行う上での最大のリスクと位置付けて、債務返済計画の策定又は変更を行う直近の年度から数年後に将来調達金利が4.00%まで上昇すると設定している。機構の平成17年度業務実績報告書(18年6月)によれば、当初債務返済計画における将来調達金利については、将来の償還期間10年の国債の利回りに関する当時の直近の予測(政府3.7%(注29)、民間シンクタンクの平均2.8%)や経済成長率との整合性を勘案して、18年度2.34%、19年度3.00%、20年度3.50%、21年度以降4.00%に設定したとされている。

また、機構は、当初債務返済計画の策定以降、債務返済計画の変更に当たっては、将来調達金利の設定の妥当性について、長期金利全体の一般的な指標となっている償還期間10年の国債の利回り(名目長期金利)に関して内閣府が作成する中長期の経済財政に関する試算(以下「内閣府試算」という。)や経済成長率等を参考として機構の将来調達金利が4.00%以内で推移するとみることが妥当であると判断していた。そして、4.00%にまで将来調達金利が上昇するという設定についての見直しはしないものの、直近年度の資金調達に係る平均調達金利の実績値(以下「実績調達金利」という。)や短期的又は長期的金利上昇幅を勘案して、将来調達金利が4.00%に上昇するまでの過程を見直しているとしており、令和2年3月に変更された全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における将来調達金利については、元年度0.72%、2年度1.09%、3年度2.06%、4年度3.03%、5年度以降4.00%と設定していた。

そして、当初債務返済計画及び上記の令和元年度末債務返済計画における将来調達金利の設定並びに機構の各年度の実績調達金利の推移は、図表2-3-16に示すとおりとなっており、機構は、上記のとおり、債務返済計画において、将来調達金利を4.00%まで上昇すると設定している一方で、実績調達金利は、平成18年度の1.96%から令和元年度の0.40%まで低下傾向が継続していた。

(注29)
政府3.7%   「構造改革と経済財政の中期展望-2005年度改定」の審議のための参考として、平成18年1月に内閣府が作成して経済財政諮問会議に提出した参考試算における22年度の名目長期金利

図表2-3-16 機構の将来調達金利及び実績調達金利の推移

図表2-3-16 機構の将来調達金利及び実績調達金利の推移画像

また、上記のとおり、機構は、調達金利の上昇リスクに備えて、将来調達金利を4.00%まで上昇すると設定しているが、平成31年4月22日の参議院決算委員会において、令和2年度以降、機構の将来調達金利が平成29年度末の有利子債務残高の平均金利である1.16%までしか上昇しないと仮定して、全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の債務返済計画(31年3月26日付けの協定変更を反映した債務返済計画)を基に支払利息を試算したところ、その総額は約8兆円となり、将来調達金利の設定が上限4.00%である債務返済計画における支払利息の総額約20兆円と比べて約12兆円の減額となるとの政府の答弁(注30)がなされている。このように、将来調達金利をどのように設定するかは、債務返済計画に大きな影響を与えることになる。

前記のとおり、機構設立以降、実績調達金利は機構が設定している将来調達金利を下回って推移しており、過去に設定していた将来調達金利と実績調達金利に開差が生じてきたことなどから、債務返済計画が変更されて実績値が反映されたり、実績調達金利等を踏まえて将来調達金利の設定が見直されたりすることなどにより、債務返済計画において支払利息の総額が低減してきた。機構が高速道路機構ファクトブックにおいて公表している毎年度の債務返済計画における全ての路線網等の合算値(注31)に係る18年度から令和47年度までの支払利息の総額の推移をみると、図表2-3-17のとおり、当初債務返済計画における35兆7159億余円から元年度の25兆2465億余円まで大幅に減少していた。平成18年度の35兆7159億余円から24年度の22兆8433億余円にまで減少しているのは、23、24両年度に過去の支払利息の実績値を債務返済計画に反映するとともに、実績調達金利を踏まえた将来調達金利の見直しを行ったためである。26年度の21兆6959億余円から27年度の31兆5635億余円に増加しているのは、特定更新等工事に伴い債務が追加されるなどしたためである。

(注30)
政府の答弁   平成31年4月22日参議院決算委員会における機構の将来の想定金利及び支払利息に関する国土交通省道路局長の答弁
(注31)
合算値   機構は、毎年度一回発行する高速道路機構ファクトブックにおいて、高速道路事業の全体像を俯瞰する上での参考資料として全ての路線網等の債務返済計画を合算した債務返済計画を公表している。合算した債務返済計画の各項目(支払利息や貸付料等)の総額の推移を比較することで、債務返済計画の変更の状況を分析することができる。
h-2-3-17図表2-3-17 高速道路機構ファクトブックにおける支払利息の総額の推移

図表2-3-17 高速道路機構ファクトブックにおける支払利息の総額の推移

(単位:億円)
発行年度 支払利息の総額  
建設債務に係る分 特定更新等工事債務
に係る分
平成18年度 35兆7159 35兆7159  
19~22年度      
23年度 27兆7855
(△7兆9303)
27兆7855
(△7兆9303)
 
24年度 22兆8433
(△4兆9421)
22兆8433
(△4兆9421)
 
25年度 22兆9942
(1508)
22兆9942
(1508)
 
26年度 21兆6959
(△1兆2982)
21兆6959
(△1兆2982)
 
27年度 31兆5635
(9兆8676)
21兆7227
(268)
9兆8408
(9兆8408)
28年度 30兆7884
(△7751)
20兆9872
(△7355)
9兆8011
(△396)
29年度 29兆3780
(△1兆4104)
20兆2592
(△7280)
9兆1187
(△6824)
30年度 26兆9506
(△2兆4273)
18兆9201
(△1兆3391)
8兆0304
(△1兆0882)
令和元年度 25兆2465
(△1兆7041)
17兆7429
(△1兆1772)
7兆5036
(△5268)
  • 注(1) 各年度の高速道路機構ファクトブックを基に会計検査院が作成した。
  • 注(2) 平成18年度に発行された高速道路機構ファクトブックには当初債務返済計画の合算値が記載されている。
  • 注(3) 平成19年度から22年度までの間は、将来調達金利の設定の見直しや債務返済計画を変更する際に既に確定した決算値等の反映が行われていないことから、本図表に金額を計上していない。
  • 注(4) 括弧書きは、前年度から(平成23年度については18年度から)の増減額である。
(エ) 貸付料の算定方法等

債務返済計画における機構の収入の大半は貸付料であり、令和元年度末債務返済計画においては、平成18年度から令和47年度までの間における貸付料の総額は、図表2-3-15のとおり、103.5兆余円と多額に上っており、債務返済計画に大きな影響を与えている。計画貸付料の算定に当たっては、第1の2(2)イ(エ)のとおり、計画料金収入から計画管理費を控除して計算されている。このうち計画料金収入については、国土交通省が実施する全国道路・街路交通情勢調査(以下「交通センサス」という。)を基に算出された現在及び将来のゾーン間交通量(注32)により、6会社それぞれが、機構の業務実施計画の添付書類である「推定交通量及びその算出の基礎を記載した書類」に記載された計算方法に従い、高速道路利用交通量の配分を推計するなどして自社の推定交通量を算出し、その推定交通量に高速道路料金を乗ずるなどして算出している。

そこで、全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網、阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網別に、交通センサスの結果が推定交通量の算出結果にどのように反映されているかについて確認するために、平成11年度の交通センサスの結果を基礎として策定された当初債務返済計画並びに17年度の交通センサス及び22年度の交通センサスの結果を反映して変更された債務返済計画における推定交通量をみると、図表2-3-18のとおり、いずれの路線網についても、おおむね、11年度の交通センサスの結果を基に算出された推定交通量が最も大きく、交通センサスが見直される度に、当該交通センサスに基づいて人口及びGDPの将来値により推計される将来のゾーン間交通量が減少したことなどにより、推定交通量が減少している。

(注32)
ゾーン間交通量   道路網を複数に分割して設定されたゾーン間の交通量

図表2-3-18 路線網別の推定交通量の算出結果の変遷

図表2-3-18 路線網別の推定交通量の算出結果の変遷画像

また、機構が高速道路機構ファクトブックにおいて公表している毎年度の債務返済計画の全ての路線網等の合算値に係る18年度から令和47年度までの貸付料の総額の推移をみたところ、図表2-3-19に示すとおりとなっていた。すなわち、貸付料の総額は、平成18年度の100兆5939億余円から、24年度の84兆8465億余円まで減少していた。これは、21年度の債務返済計画において、利便増進事業による貸付料の減額を行ったことや、23年度の債務返済計画において、上記のとおり、推定交通量の算出の基礎を17年度の交通センサスに変更したり、24年度に将来交通需要推計の算出方法が変更されたりしたため推定交通量が大幅に減少したことによる。また、30年度においても、上記のとおり、推定交通量の算出の基礎を22年度の交通センサスに変更したことによる推定交通量の減少等のため、前年度と比較して7775億余円減少していた。

他方で、第2の1(1)エのとおり、18年度以降、おおむね実績料金収入が計画料金収入を上回って推移してきており、それにより貸付料の実績値が計画よりも多額になっているため、債務返済計画に実績値が反映されることなどで、上記23、24、30各年度以外の年度においては、貸付料の総額が増加している。特に、27年度においては、特定更新等工事の実施のために料金の徴収期間の満了の日が延長されたため、前年度と比較して16兆8594億余円と大幅に増加していた。

h-2-3-19図表2-3-19 高速道路機構ファクトブックにおける貸付料の総額の推移

図表2-3-19 高速道路機構ファクトブックにおける貸付料の総額の推移

(単位:億円)
発行年度 貸付料の総額
建設債務に係る分 特定更新等工事債務
に係る分
平成18年度 100兆5939 100兆5939
19~22年度
23年度 88兆7058
(△11兆8880)
88兆7058
(△11兆8880)
24年度 84兆8465
(△3兆8592)
84兆8465
(△3兆8592)
25年度 84兆9530
(1065)
84兆9530
(1065)
26年度 86兆3665
(1兆4134)
86兆3665
(1兆4134)
27年度 103兆2260
(16兆8594)
86兆0518
(△3147)
17兆1742
(17兆1742)
28年度 103兆3417
(1156)
86兆1615
(1097)
17兆1801
(59)
29年度 103兆3816
(398)
86兆8930
(7314)
16兆4885
(△6915)
30年度 102兆6040
(△7775)
87兆2401
(3471)
15兆3638
(△1兆1247)
令和元年度 103兆5975
(9935)
88兆0807
(8405)
15兆5168
(1529)
  • 注(1) 毎年度の高速道路機構ファクトブックを基に会計検査院が作成した。
  • 注(2) 平成18年度に発行された高速道路機構ファクトブックには当初債務返済計画の合算値が記載されている。
  • 注(3) 平成19年度から22年度までの間は、債務返済計画を変更する際に既に確定した決算値等の反映が行われていないことから、本図表に金額を計上していない。
  • 注(4) 括弧書きは、前年度から(平成23年度については18年度から)の増減額である。
(オ) 債務返済計画の計画値と実績値との比較

機構は、ウェブサイト等において、各年度末時点における最新の未償還残高の計画値の総額とこれに対応する各年度における実績値との対比を毎年度公表している。この計画値と実績値との対比の推移をみると、機構設立以降、毎年度末の未償還残高の実績値は計画値を下回っていた(別図表24参照)。

そこで、毎年度末の債務の未償還残高の実績値が計画値を下回っている要因をみると、予定路線の開通時期の遅れに伴う債務の引受時期の後ろ倒しや、特定更新等工事債務の引受けが低調であったことなどにより6会社からの債務の引受額の実績値が計画値を下回ったことが大きな要因となっていた。(注33)

(注33)
例えば、令和元年度の計画値は、全国路線網については元年9月の協定変更を反映した債務返済計画の値となっており、この債務返済計画では、近畿自動車道名古屋神戸線(新名神高速道路)の高槻から箕面までの間に係る新設事業として、西会社から元年度に1041億円を引き受けることとされていたが、事業予定が変更されて、令和元年度末債務返済計画では3年度に引き受けることとされるなどした結果、元年度の未償還残高の実績値はその分減少することとなり、未償還残高の実績値が計画値を下回る要因となっていた。

また、各年度末の未償還残高の計画値は、前記のとおり、各年度末時点において最新の計画値を合算したものであり、過去の実績値等を反映して複数回にわたって見直されてきたものであるため、短期的な計画値と実績値との比較となっている。そこで、長期的な計画値と実績値との比較を行うために、当初債務返済計画と比較して実績値がどのように推移しているかを分析することとし、当初債務返済計画における債務及び出資金の合計値の未償還残高に係る計画値と17年度から令和元年度までの各年度末の実績値とを比較すると、図表2-3-20のとおり、当初債務返済計画における元年度末の未償還残高(債務と出資金の合計)は39.2兆余円となっていたのに対して元年度末における実績値は32.3兆余円となっていて、6.8兆余円の開差が生じていた。このような開差が生じていたのは、当初債務返済計画の当時には想定されていなかった特定更新等工事の実施による引受債務の追加等の影響があった一方で、平成18年度から令和元年度までの間の支払利息の支出の実績値が当初債務返済計画における支払利息の計画値よりも6.9兆余円少なくなっていることから、機構の実績調達金利が設定した将来調達金利よりも低く推移したことによる支払利息の低減による影響が大きいと認められた。

図表2-3-20 当初債務返済計画の未償還残高の計画値と実績値との比較(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-20 当初債務返済計画の未償還残高の計画値と実績値との比較(平成17年度~令和元年度)

ウ 債務の返済等が完了していない路線網等ごとの債務返済計画

元年度末時点において債務の返済等が完了していない全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網、阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網、一の路線である一般国道158号(中部縦貫自動車道(安房峠道路))及び一般国道201号(八木山バイパス)(その2)の計五つの路線網等の債務返済計画のうち、全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網について、返済すべき債務等の額や未償還残高の推移等を分析したところ、次のような状況となっていた(一の路線である一般国道158号(中部縦貫自動車道(安房峠道路))及び一般国道201号(八木山バイパス)(その2)については、別図表25参照)。

(ア) 全国路線網

a 返済すべき債務等の額

全国路線網の令和元年度末債務返済計画における各項目の総額について、返済すべき債務等と機構収支に分けて示すと、図表2-3-21のとおり、返済すべき債務等の額は計61兆7909億余円、機構収支は計60兆0526億余円(平成18年度から30年度までの実績値は計15兆3320億余円、令和元年度以降の計画値は計44兆7206億余円)となっており、差額の1兆7382億余円は本四道路に係る出資金であり、未償還残高として残ることとなっている。

そして、全国路線網の債務返済計画には、本四道路に係る地域路線網が平成26年4月1日付けで全国路線網に指定されたことに伴い、本四道路に係る地域路線網の建設債務等が引き継がれている。また、30年3月31日に一の路線である一般国道165号及び166号(南阪奈道路)が、31年3月31日に阪神高速道路(京都圏)に係る地域路線網のうち一般国道1号として指定された京都市道高速道路2号線(油小路線)が、令和元年6月30日に一の路線である一般国道31号(広島呉道路)がそれぞれ全国路線網に指定されたことに伴い、指定日翌日以降の各路線の建設債務に係る未償還残高計1138億余円等が全国路線網の債務返済計画に引き継がれている。

h-2-3-21図表2-3-21 全国路線網の令和元年度末債務返済計画における債務等の額

図表2-3-21 全国路線網の令和元年度末債務返済計画における債務等の額

(単位:億円)
区分
総額 平成18年度から30
年度までの実績値
令和元年度以降
の計画値
平成18年度当初の未償還残高【A】 31兆5911
建設債務に係る分 注(2) 28兆4996
出資金に係る分 注(2) 3兆0914
期中増【B】 32兆1328 10兆3001 21兆8326
建設債務に係る分 25兆5424 9兆5764 15兆9660
特定更新等工事債務に係る分 注(3) 5兆9661 995 5兆8665
出資金に係る分 6241 6241 -
他の債務返済計画からの引受建設債務 注(4)【C】 1138 1138 -
国への債務承継額(利便増進事業)注(5)【D】 2兆0468 2兆0468 -
返済すべき債務等の計【E=A+B+C-D】 61兆7909
【収入】
貸付料【F】 80兆8157 19兆9031 60兆9126
  建設債務に係る分 69兆8196 19兆9031 49兆9165
特定更新等工事債務に係る分 10兆9961 - 10兆9961
占用料等【G】 4048 2563 1485
建設債務に係る分 3724 2563 1160
特定更新等工事債務に係る分 324 - 324
出資金【H】 6016 6016 -
補助金【I】 1489 1032 457
収入の計【J=F+G+H+I】 81兆9711 20兆8642 61兆1068
【支出】
機構管理費等【K】 4兆6039 8834 3兆7205
建設債務に係る分 4兆1238 8908 3兆2330
特定更新等工事債務に係る分 8884 - 8884
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る消費税相当額 注(6) △ 4083 △ 73 △ 4009
支払利息【L】 17兆1655 4兆5455 12兆6200
建設債務に係る分 12兆5832 4兆5447 8兆0385
特定更新等工事債務に係る分 1兆0759 - 1兆0759
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る支払利息相当額 注(6) 3兆5063 8 3兆5055
無利子貸付金【M】 1489 1032 457
支出の計【N=K+L+M】 21兆9184 5兆5321 16兆3862
機構収支の計【O=J-N】 60兆0526 15兆3320 44兆7206
本四道路に係る出資金【P=E-O】 1兆7382

全国路線網に係る高速道路資産の機構からNEXCO3会社及び本四会社への貸付期間は、機構への高速道路資産帰属の日から42年1月24日までとなっており、令和元年度末債務返済計画においては、同日までに本四道路に係る出資金を除いて、債務の返済等を完了することとされていた。

債務の返済等の順序については、特定更新等工事の追加を反映した最初の債務返済計画である平成27年3月25日付けで変更された債務返済計画において、①建設債務の返済、②出資積立金の積立て、③有利子の特定更新等工事債務の返済の順とされた。これは、道路関係四公団の民営化から45年以内に債務を確実に返済するという民営化の趣旨を踏まえて、特定更新等工事を行うことになる以前から返済等を行うこととなっている建設債務及び出資積立金と新たに加えられた特定更新等工事債務とを債務返済計画において区分し、建設債務の返済及び出資積立金の積立てを機構設立から45年以内に完了した後に、特定更新等工事債務を返済することとしたためである。

全国路線網に係る令和元年度末債務返済計画における各年度当初の未償還残高の推移をみると、図表2-3-22のとおり、平成18年度から令和30年度までの間(①の期間)においては、建設債務に係る未償還残高のみが減少している。他方、特定更新等工事債務については、平成27年度から令和11年度までの間は、債務を引き受けるため未償還残高が大きく増えており、12年度以降は、特定更新等工事債務に係る毎年度の支払利息相当額が未償還残高に積み増されることにより緩やかに特定更新等工事債務の未償還残高は増加している。建設債務の返済が完了する30年度から32年度までの間(②の期間)は、返済方法が未定となっている本四道路に係る出資金を除いた出資金と同額の出資積立金を積み立てることとなっている。この間においても特定更新等工事債務の返済は行われないため、特定更新等工事に係る支払利息相当額により特定更新等工事債務の未償還残高が増加している。建設債務の返済及び出資積立金の積立てが完了した後の期間(③の期間)において、特定更新等工事債務を返済し、41年度に、本四道路に係る出資金を除いて、債務の返済等が完了することとなっている。

図表2-3-22 全国路線網に係る令和元年度末債務返済計画の未償還残高の推移

図表2-3-22 全国路線網に係る令和元年度末債務返済計画の未償還残高の推移画像

その後、2年10月23日付けの債務返済計画の変更により、東会社の関越自動車道新潟線(中央JCT(仮称)~大泉JCT)及び中会社の中央自動車道富士吉田線(中央JCT(仮称)~東名JCT(仮称))の新設事業に係る費用の見直しが行われるなどして、高速道路資産の貸付期間及び通行料金の徴収期間の満了日は、45年10月6日に延長されている。債務の返済等の順序については、上記の両事業に係る債務を除いた建設債務の返済を30年度に終えた後に、本四道路に係る出資金を除いた出資金と同額の出資積立金の積立てが32年度中に完了し、その後、上記の両事業に係る債務と特定更新等工事債務の返済が45年度に同時に完了することとなっている。

c 本四道路に係る出資金

第2の3(1)ア(キ)bのとおり、全国路線網のうち本四道路に係る出資金1兆7382億余円については、平成15年の民営化申合せにおいて、機構解散時までに返済方法を検討することとなっていることから、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法施行令の附則により、当分の間、出資積立金の積立てに要する費用から本四道路に係る出資金に相当する額を除くこととなっている。機構法によれば、解散の日までには、出資積立金として積み立てられる必要があるとされているが、上記のことから、全国路線網の債務返済計画においては、本四道路に係る出資金の額が未償還残高として残ることとなっている。

本四道路に係る出資金の総額は1兆7382億余円と多額に上っており、機構が出資積立金として同額を積み立てるためには、貸付料収入や高速道路の維持修繕に要する費用等による収支差の状況に鑑みれば一定の期間が必要になり、債務返済計画に影響を与えることになる。また、本四道路は26年度から全国路線網に指定されて、本四道路に係る地域路線網のみの貸付料等ではなく全国路線網の貸付料等で本四道路に係る債務の返済等を行うことになるなど、機構解散時までに返済方法を検討することとされた15年度からは、本四道路を取り巻く状況は変化している。しかし、令和元年度末時点において、国土交通省の審議会等において本四道路に係る出資金の返済方法について検討されたことはない。

したがって、国土交通省及び機構において、本四道路に係る出資金の返済方法については、計画的に検討を行い、その結果を債務返済計画に反映する必要がある。

(イ) 首都高速道路に係る地域路線網

a 返済すべき債務等の額

首都高速道路に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における機構が返済すべき債務等の額と機構収支をみると、図表2-3-23のとおり、返済すべき債務等の額は9兆4168億余円、機構収支は同額となっており、機構収支の計の平成18年度から30年度までの実績値は計1兆7818億余円、令和元年度以降の計画値は計7兆6350億余円となっている。

h-2-3-23図表2-3-23 首都高速道路に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における債務等の額

図表2-3-23 首都高速道路に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における債務等の額

(単位:億円)
区分 総額
平成18年度から30年度
までの実績値
令和元年度以降
の計画値
平成18年度当初の未償還残高【A】 5兆5951
建設債務に係る分 4兆8255
出資金に係る分 7695
期中増【B】 4兆2944 1兆7625 2兆5319
建設債務に係る分 2兆4363 1兆2933 1兆1430
特定更新等工事債務に係る分 注(2) 1兆4351 784 1兆3566
出資金に係る分 4229 3906 322
国への債務承継額(利便増進事業)注(3)【C】 4727 4727 -
返済すべき債務等の計【D=A+B-C】 9兆4168
【収入】
貸付料【E】 13兆3794 2兆5988 10兆7806
建設債務に係る分 10兆3725 2兆5988 7兆7737
特定更新等工事債務に係る分 3兆0068 - 3兆0068
占用料等【F】 614 115 498
建設債務に係る分 464 115 348
特定更新等工事債務に係る分 149 - 149
出資金【G】 4229 3906 322
補助金【H】 407 7 400
収入の計【I=E+F+G+H】 13兆9046 3兆0019 10兆9027
【支出】
機構管理費等【J】 8317 569 7747
建設債務に係る分 6797 627 6169
特定更新等工事債務に係る分 2471 - 2471
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る消費税相当額 注(4) △951 △58 △893
支払利息【K】 3兆1923 7716 2兆4207
建設債務に係る分 1兆7576 7708 9867
特定更新等工事債務に係る分 5229 - 5229
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る支払利息相当額 注(4) 9117 7 9109
無利子貸付金【L】 4636 3914 722
支出の計【M=J+K+L】 4兆4877 1兆2200 3兆2677
機構収支の計【N=I-M】 9兆4168 1兆7818 7兆6350

b 未償還残高の推移

首都高速道路に係る地域路線網の高速道路資産の機構から首都会社への貸付期間は、機構への高速道路資産帰属の日から47年9月30日までとなっており、令和元年度末債務返済計画においては、同日までに債務の返済等を完了することとされている。

特定更新等工事の追加を反映した最初の債務返済計画である平成26年11月20日付けで変更された債務返済計画においては、全国路線網と同様に、特定更新等工事債務の返済よりも前に出資積立金の積立てを行うこととなっていた。

しかし、機構は、国、東京都、首都会社及び東京都中央区で構成される首都高日本橋地下化検討会(29年11月設立)における議論を踏まえて、首都高速道路日本橋区間の地下化に要する費用の財源の約1000億円を確保するために、令和元年度末債務返済計画において、東京都からの出資金及び同出資金見合いの国からの出資金(以下「東京都等出資金」という。)計6074億余円と同額の出資積立金の積立てを有利子である特定更新等工事債務の返済の後に行うことに見直す変更を行っていた(以下、出資積立金の積立ての全部又は一部を特定更新等工事債務の返済の後に行うことを「出資積立金の積立時期の見直し」という。)。出資積立金の積立時期の見直しにより、有利子である特定更新等工事債務の返済が早期に開始されて完了するため、特定更新等工事債務に係る支払利息が低減することになる(図表2-3-24参照)。そして、この支払利息の低減額は、上記約1000億円の債務の引受け及びこの引受債務に係る支払利息に充てられることになっている。

図表2-3-24 出資積立金の積立時期の見直しの概念図

図表2-3-24 出資積立金の積立時期の見直しの概念図画像

上記の東京都等出資金に係る出資積立金の積立時期の見直しを反映した首都高速道路に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における各年度当初の未償還残高の推移をみると、図表2-3-25のとおり、平成18年度から令和26年度までの間(①の期間)は、建設債務のみ返済を行い、出資積立金の積立て及び特定更新等工事債務の返済は行わないこととなっており、建設債務に係る未償還残高のみが減少している。そして、26年度に建設債務の返済を完了させ、同年度から29年度までの間(②の期間)は、東京都等出資金を除いた出資金と同額の出資積立金を積み立てて、その後、特定更新等工事債務を29年度から43年度までの間(③の期間)に返済することとし、特定更新等工事債務の返済が完了した後の期間(④の期間)に東京都等出資金と同額の出資積立金を積み立てて、47年度に首都高速道路に係る地域路線網の債務の返済等が完了することとなっている。

図表2-3-25 首都高速道路に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画の未償還残高の推移

図表2-3-25 首都高速道路に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画の未償還残高の推移

東京都等出資金に係る出資積立金の積立時期の見直しにより支払利息がどの程度低減したかについて、会計検査院において、図表2-3-26に示す一定の条件を仮定するなどして、出資積立金の積立時期の見直しを行う直前の債務返済計画(2年2月4日付けで変更された債務返済計画)を基に試算したところ、総額で4163億余円の低減となった。

h-2-3-26図表2-3-26 試算に当たって仮定した条件等

図表2-3-26 試算に当たって仮定した条件等

ア 仮定した条件

・債務の返済等の順序は、①建設債務の返済、②東京都等出資金以外の出資金に係る出資積立金の積立て、③特定更新等工事債務の返済、④東京都等出資金に係る出資積立金の積立てとする。

イ 令和2年2月4日付けで変更された債務返済計画と同じ条件とする箇所

・建設債務の返済完了時期は26年度とする

・各年度の支払利息は、過年度に調達した有利子債務の金利と将来調達金利とを加重平均した金利を当該年度の有利子債務残高に乗ずることなどにより算出されており(第2の3(1)イ(ウ)参照)、試算の対象とした各年度の支払利息の試算額についても同様に算定する。

・支払利息以外の項目である首都会社からの引受債務の額、貸付料等の収入額及び機構の管理費に係る支出額については、2年2月4日付けで変更された債務返済計画の計画値を用いることで、未償還残高の計算を行う。

(ウ) 阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網

a 返済すべき債務等の額

阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における機構が返済すべき債務等の額と機構収支をみると、図表2-3-27のとおり、返済すべき債務等の額は6兆4858億余円、機構収支は同額となっており、機構収支の計の平成18年度から30年度までの実績値は計1兆1397億余円、令和元年度以降の計画値は計5兆3460億余円となっている。

h-2-3-27図表2-3-27 阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画にお ける債務等の額

図表2-3-27 阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画にお ける債務等の額

(単位:億円)
区分
総額 平成18年度から30年
度までの実績値
令和元年度以降
の計画値
平成18年度当初の未償還残高【A】 4兆1861
建設債務に係る分 3兆6402
出資金に係る分 5458
期中増【B】 2兆6441 6253 2兆0187
建設債務に係る分 1兆2193 4286 7906
追加的建設債務に係る分 5565 - 5565
特定更新等工事債務に係る分 注(2) 6846 219 6627
出資金に係る分 1835 1747 88
国への債務承継額(利便増進事業)注(3)【C】 3444 3444 -
返済すべき債務等の計【D=A+B-C】 6兆4858
【収入】
貸付料【E】 9兆2301 1兆7871 7兆4429
建設債務に係る分 7兆0342 1兆7732 5兆2610
追加的建設債務に係る分 7770 139 7630
特定更新等工事債務に係る分 1兆4189 - 1兆4189
占用料等【F】 618 323 294
建設債務に係る分 574 323 250
特定更新等工事債務に係る分 44 - 44
出資金【G】 1835 1747 88
収入の計【H=E+F+G】 9兆4756 1兆9943 7兆4813
【支出】
機構管理費等【I】 5757 756 5001
建設債務に係る分 4857 762 4095
追加的建設債務に係る分 199 10 189
特定更新等工事債務に係る分 1122 - 1122
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る消費税相当額 注(4) △422 △16 △405
支払利息【J】 2兆2304 6041 1兆6263
建設債務に係る分 1兆3612 6041 7570
追加的建設債務に係る分 2005 △1 2006
特定更新等工事債務に係る分 2103 - 2103
債務返済開始前の特定更新等工事債務に係る支払利息相当額 注(4) 4583 0 4582
無利子貸付金【K】 1835 1747 88
支出の計【L=I+J+K】 2兆9897 8545 2兆1352
機構収支の計【M=H-L】 6兆4858 1兆1397 5兆3460

b 未償還残高の推移

阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の高速道路資産の機構から阪神会社への貸付期間は、機構への高速道路資産帰属の日から44年9月18日までとなっており、令和元年度末債務返済計画においては同日までに債務の返済等を完了することとされている。

特定更新等工事の追加を反映した最初の債務返済計画である平成27年3月25日付けで変更された債務返済計画においては、全国路線網等と同様に、特定更新等工事債務の返済よりも前に出資積立金の積立てを行うこととなっていた。しかし、国幹部会が27年7月に発表した「高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の中間答申」、28年12月に出資者の一部である大阪府等5府県市(注34)から国に提出された「新たな高速道路料金に関する提案(阪神圏の高速道路を賢く使う料金体系)」及び同月に国が発表した近畿圏方針案を受けて、機構は、特定更新等工事債務に係る支払利息を低減させ、一般国道1号(淀川左岸線延伸部)及び一般国道2号(大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄))の建設(以下「追加的建設事業」という。)に係る追加的な料金負担の軽減を図るために、出資積立金の積立時期の見直しを行うこととして、29年3月31日付けで阪神高速道路(阪神圏)に係る債務返済計画を変更して、特定更新等工事債務の返済の後に、出資積立金全額を積み立てることとした。そして、上記支払利息の低減額は、追加的建設事業に係る債務(以下「追加的建設債務」という。)の引受け及びこの引受債務に係る支払利息に充てられることになっている。

上記出資積立金の積立時期の見直しを反映している阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画における各年度当初の未償還残高の推移をみると、図表2-3-28のとおり、平成18年度から令和26年度までの間(①の期間)は、建設債務の返済及び平成29年度から追加的建設債務の返済を行い、特定更新等工事債務の返済及び出資積立金の積立ては行わないこととなっており、建設債務及び追加的建設債務に係る未償還残高が減少している。追加的建設事業の完了は令和13年度と予定されているが、追加的建設事業の財源に充てられる料金負担が平成29年6月から開始されており、対応する貸付料が機構の収入となっていることから、同年から機構が追加的建設債務を引き受ける令和13年度までの間においては、追加的建設債務の未償還残高はマイナスとして計上されている。26年度に建設債務の返済が完了してから38年度までの間(②の期間)は、特定更新等工事債務及び追加的建設債務の返済を行って両者の返済を38年度に完了させ、その後、同年度から44年度までの間(③の期間)に出資積立金を積み立てて、44年度に阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の債務の返済等を完了することとなっている。

(注34)
大阪府等5府県市   大阪府、兵庫県、大阪、神戸、堺各市

図表2-3-28 阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画の未償還残高の推移

図表2-3-28 阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の令和元年度末債務返済計画の未償還残高の推移画像

出資積立金の積立時期の見直しにより支払利息がどの程度低減したかについて、会計検査院において、図表2-3-29に示す一定の条件を仮定するなどして、出資積立金の積立時期の見直しを行う直前の債務返済計画(平成27年3月25日付けで変更された債務返済計画)を基に試算したところ、総額で3530億余円の低減となった。

h-2-3-29図表2-3-29 試算に当たって仮定した条件等

図表2-3-29 試算に当たって仮定した条件等

ア 仮定した条件

・債務の返済等の順序は、①建設債務の返済、②特定更新等工事債務の返済、③出資積立金の積立てとする。

イ 平成27年3月25日付けで変更された債務返済計画と同じ条件とする箇所

・建設債務の返済完了時期は令和27年度とする。

・各年度の支払利息は、過年度に調達した有利子債務の金利と将来調達金利とを加重平均した金利を当該年度の有利子債務残高に乗ずることなどにより算出されており(第2の3(1)イ(ウ)参照)、試算の対象とした各年度の支払利息の試算額についても同様に算定する。

・支払利息以外の項目である阪神会社からの引受債務の額、貸付料等の収入額、機構の管理費に係る支出額については、27年3月25日付けで変更された債務返済計画の計画値を用いることで、未償還残高の計算を行う。

(エ) 出資積立金の積立時期

特定更新等工事を行うこととする26年6月の特措法等の改正の際に、道路関係四公団の民営化から45年以内に確実に債務を返済するという民営化の趣旨を踏まえて、特定更新等工事を行うことになる前から返済等することとなっている建設債務及び出資金と新たに加えられた特定更新等工事債務とを債務返済計画において区分することとされた。そして、債務の返済等の順序については、建設債務の返済及び出資積立金の積立てを機構設立から45年以内に完了した後に、特定更新等工事債務を返済するという方針が国から示された。しかし、27年7月に国幹部会が発表した「高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の中間答申」においては、「民営化の経緯から、出資金も含めて建設債務の償還を優先するため、更新事業に関する債務は、その償還が開始されるまで利息に伴い増加するが、有利子債務を厳格に管理しつつ、出資金の償還時期の見直しなどにより、全体として、利用者負担が減少するような対応が必要である」とされ、出資積立金の積立時期の見直しについて言及されている。そして、実際に、この中間答申を踏まえるなどして、首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網の全出資金については、第2の3(1)ウ(イ)b及び(ウ)bのとおり、出資者との合意や各会社と調整を図った上で、国等が方針を示し、出資積立金の積立時期の見直しを行うこととして、それぞれの債務返済計画を変更し、特定更新等工事債務に係る支払利息を低減させていた。一方、全国路線網に係る出資金及び首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金以外の出資金については、出資積立金の積立時期の見直しを行っておらず、それぞれの債務返済計画において、特定更新等工事債務の返済前に出資積立金が積み立てられることになっている。

しかし、機構法によれば、出資積立金は機構が解散する日までに積み立てること、機構が解散した場合において出資者に残余財産を分配することとされているが、特定更新等工事債務の返済よりも前に出資積立金の積立てを行うこととはされていない。そして、上記のように出資積立金の積立時期の見直しを行わず、特定更新等工事債務の返済よりも前に出資積立金を積み立てることとしていると、出資積立金を積み立てる期間(全国路線網に係る出資金については令和30年度から32年度までの間、首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金以外の出資金については26年度から29年度までの間)に有利子債務である特定更新等工事債務を減少させることができず、同期間以降により多くの支払利息が発生することとなる。

そこで、全国路線網の出資金及び首都高速道路に係る地域路線網の東京都等出資金以外の出資金に係る出資積立金の積立時期の見直しを行うこととすれば、将来の支払利息の額等にどのような効果が生じるかについて、会計検査院において、図表2-3-30に示す一定の条件を仮定するなどして、令和元年度末債務返済計画を基に機械的に試算した。

h-2-3-30図表2-3-30 試算に当たって仮定した条件等

図表2-3-30 試算に当たって仮定した条件等

ア 仮定した条件

・全国路線網の債務返済計画及び首都高速道路に係る地域路線網の債務返済計画共に、建設債務の返済が完了した後直ちに特定更新等工事債務の返済を開始し、特定更新等工事債務の返済が完了した後に出資積立金の積立てを開始することとする。

・特定更新等工事債務の返済を早めることとすることにより、個々の債務の約定の返済期日を前倒しすることとし、この場合に発生する可能性のある費用については考慮しないこととする。

・現預金等の資産の運用益は考慮しないこととする。

イ 令和元年度末債務返済計画と同じ条件とする箇所

・建設債務の返済完了時期は、全国路線網の債務返済計画については令和30年度、首都高速道路に係る地域路線網の債務返済計画については26年度とする。

・各年度の支払利息は、過年度に調達した有利子債務の金利と将来調達金利とを加重平均した金利を当該年度の有利子債務残高に乗ずることなどにより算出されており(第2の3(1)イ(ウ)参照)、試算の対象とした各年度の支払利息の試算額については、機構が実際に令和元年度末債務返済計画における支払利息の計算に適用している上記の金利をそのまま有利子債務の未償還残高に乗じて算定する。

・支払利息以外の項目である各会社からの引受債務の額、貸付料等の収入額及び機構の管理費に係る支出額については、令和元年度末債務返済計画の計画値を用いることで、未償還残高の計算を行う。このため、試算の結果、支払利息の低減が図られた場合であっても、引受債務を増額したり、貸付料等を減額したりすることはせず、債務の返済等に低減額を全て充てる。

・全国路線網の債務返済計画について、本四道路に係る出資金の額は未償還残高として残す(第2の3(1)ウ(ア)c参照)。

その結果、有利子債務の返済完了期日が早まることにより、図表2-3-31のとおり、支払利息が、全国路線網については6310億余円、首都高速道路に係る地域路線網については3594億余円、計9904億余円低減されることとなった。なお、支払利息の低減により債務の返済等に充てられる収支差が大きくなったことから、全国路線網については41年2月、首都高速道路に係る地域路線網については45年3月に債務の返済等が完了することとなり、令和元年度末債務返済計画と比較して、債務の返済等の完了期日が、それぞれ、全国路線網は11か月、首都高速道路に係る地域路線網は2年5か月早まることとなった。

h-2-3-31図表2-3-31 出資積立金の積立時期の見直しを行った場合における全国路線網及び首都高速道路に係る地域路線網の支払利息の総額及び債務の返済等完了期日の試算結果

図表2-3-31 出資積立金の積立時期の見直しを行った場合における全国路線網及び首都高速道路に係る地域路線網の支払利息の総額及び債務の返済等完了期日の試算結果

(単位:億円)
債務返済計画の対象となる路線網 支払利息の総額
(平成18年度から債務の返済等の完了期日までの間)
債務の返済等の完了期日
令和元年度末
債務返済計画
A
出資積立金の積
立時期の見直し
を行った場合
B
差額
B-A
令和元年度末
債務返済計画
C
出資積立金の
積立時期の見直し
を行った場合
D
会計検査院の試算の
結果、早まる債務の
返済等の完了期日
D-C
全国路線網 17兆1655 16兆5345 △ 6310 令和42年1月 41年 2月 △11か月
首都高速道路に係る地域路線網 3兆1923 2兆8328 △ 3594 47年9月 45年 3月 △2年5か月
20兆3579 19兆3674 △ 9904 - - -
  • (注) 全国路線網の債務返済計画は令和2年10月に変更されて、債務の返済等の完了は45年10月とされているが、試算は令和元年度末債務返済計画を基に行っている。

したがって、機構法に定める承継債務及び新規債務の早期の確実な返済という機構の目的等に鑑みると、国土交通省及び機構において、国、機構、各会社及び出資者である地方公共団体間で調整を図った上で出資積立金の積立時期の見直しを行い、将来の支払利息の低減を図るよう検討する必要があると認められた。

(2) 機構の財務の状況

機構の財務の状況について、機構の損益計算書を基に機構の損益の状況を、貸借対照表及びキャッシュ・フロー計算書を基に機構の財務基盤の安定性を、機構及び6会社の財務諸表等を基に高速道路事業全体の財務の状況をそれぞれ分析したところ、次のような状況となっていた。

ア 損益の状況

機構における損益の状況を確認するために、平成17年度から令和元年度までの経常損益及び当期純損益の推移をみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 経常損益

経常収益をみると、図表2-3-32のとおり、利便増進事業の実施により貸付料が減少したことから、平成20年度の1兆7926億余円から21年度の1兆4315億余円まで大幅に減少した後、24年度からは利用者の増加等の影響により増加傾向に転じ、令和元年度には2兆0807億余円となっていた。

経常費用をみると、支払利息及び減価償却費が90%超を占めており、支払利息は債務の減少及び近年の低金利の影響により減少傾向となっている一方、減価償却費は、継続して多額の高速道路資産が機構に帰属したことから増加傾向となっていた。そして、経常費用は、図表2-3-32のとおり、平成17年度を除き、1兆4021億余円から1兆5373億余円までの間で推移していた。

経常損益は、図表2-3-32のとおり、経常収益とほぼ同様の傾向となっており、18年度は3733億余円であったが、利便増進事業の実施により21年度にマイナス299億余円に減少した後、22年度に増加傾向に転じて、26年度以降の直近6年間では5167億余円から令和元年度の6785億余円まで一貫して増加していた。

図表2-3-32 経常損益等の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-32 経常損益等の推移(平成17年度~令和元年度)画像

(イ) 当期純損益

当期純損益の推移をみると、図表2-3-33のとおり、増減を繰り返しつつ、平成26年度以降の直近6年間では、当期純利益が5215億余円から7048億余円までおおむね増加傾向となっていた。

21年度は、(ア)のとおり、利便増進事業の実施により、貸付料が減少したことで、経常利益は大きく減少している。一方、20年度において、利便増進事業の実施による将来にわたる貸付料の減額分等が利便増進事業引当金として計上され、同年度以降、各年度の貸付料の減額分等に応じた当該引当金の戻入が臨時利益として毎年度計上されるなどしていた。その結果、21年度から25年度までの間は、利便増進事業の影響により、経常利益は大きく減少しているが、当期純利益は23年度を除き、大きく減少することなく推移していた。

また、第1の2(5)イのとおり、23年度において、東日本大震災の復興財源とするために、2500億円を国庫納付しており、これを臨時損失として計上しているため、当期純利益は大きく減少していた。

図表2-3-33 当期純損益等の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-33 当期純損益等の推移(平成17年度~令和元年度)画像

イ 財務基盤の安定性

貸付料等によって債務を返済していくという仕組みを踏まえて、機構の財務基盤の安定性について確認するために、次の指標を用いて分析した。

① 6会社に比べて支払利息の負担が大きいことから、支払利息の負担能力を示す 「インタレスト・カバレッジ・レシオ」(以下「ICR(注35)」という。)

② 長期的な財務基盤の安定性を示す「負債比率」

③ 出資金に頼ることなく自己資本を増加させることができているかを測るための 「自己資本に対する利益剰余金の割合」

その結果は、次のような状況となっていた。

(注35)
ICR   Interest Coverage Ratioの略称。事業活動で得られた利益(受取利息及び受取配当金を含む。)で借入金等の利息の支払能力を測る財務指標。損益計算書を基にした算定方法とキャッシュ・フロー計算書を基にした算定方法があるが、本報告書においては手許資金での支払能力をより現実的に示すキャッシュ・フロー計算書を基にした算定方法により算定した。ICRは、借入金や債券から発生する支払利息を事業利益(キャッシュ・フロー計算書を基にした場合、支払利息や税金等の控除前の業務活動によるキャッシュ・フロー)でどれだけカバーできているかを表し、財務基盤の安定性を測る指標となる。ICRが1以下であると、本業では、借入金や社債等の支払利息を賄えないことになり、1を超えて値が大きくなるほど、元本の返済能力が高いことになる。
  算定方法 (業務活動によるキャッシュ・フロー+支払利息+税金 等の支払額)÷支払利息
(ア) ICR

機構のICRの推移をみると、図表2-3-34のとおり、機構設立当初から1を超えていて、業務活動で得た収入、すなわち6会社からの貸付料収入により、毎年度発生する利息の支払だけでなく、債務の元本の返済も進めている。そして、ICRの値は、17年度の2.2倍から令和元年度の8.3倍へと上昇していた。

図表2-3-34 ICRの推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-34 ICRの推移(平成17年度~令和元年度)画像

(イ) 負債比率

自己資本に対する債務の割合を示す負債比率は、図表2-3-35のとおり、機構設立時から元年度末にかけて、債務が38兆2179億余円から29兆7832億余円まで減少し、自己資本が5兆2430億余円から13兆6249億余円まで増加した結果、728.9%から218.5%へと減少していた。

図表2-3-35 負債比率の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-35 負債比率の推移(設立時~令和元年度)画像

(ウ) 自己資本に対する利益剰余金の割合

自己資本に対する利益剰余金の割合は、図表2-3-36のとおり、利益剰余金が平成17年度末の517億余円から令和元年度末の7兆1348億余円まで一貫して増加していることから、平成17年度末の0.9%から令和元年度末の52.3%へと大幅に増加していた。

図表2-3-36 自己資本に対する利益剰余金の割合の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-36 自己資本に対する利益剰余金の割合の推移(平成17年度~令和元年度)

以上のように、ICR、負債比率及び自己資本に対する利益剰余金の割合はおおむね改善していることから、財務基盤の安定性は、元年度末時点でみれば、設立時に比べて向上していると考えられる。

ウ 高速道路事業全体の財務の状況

6会社が新設等のために負った債務は、完成した高速道路資産と共に機構に引き受けられる仕組みとなっているため、高速道路資産の完成前には、6会社で流動資産として計上される仕掛道路資産及び将来的に機構に引き受けられることとなる6会社の債務は、機構の財務諸表には反映されない。また、料金収入は6会社の財務諸表等において計上され、支払利息や消費税等は機構の財務諸表に計上されるなど、高速道路事業全体のキャッシュ・フローにおける重要な要素を占める項目がそれぞれ別の財務諸表等に計上されている。以上のことから、機構及び6会社の財務諸表等を別々に分析すると、高速道路事業全体の財務の状況が十分に把握できない場合がある。

そこで、会計検査院において、機構の債務と機構が将来的に6会社から引き受けることとなる新規債務とを合算した債務の残高及び6会社の料金収入に対する機構の業務活動によるキャッシュ・フロー(以下「キャッシュ・フロー・マージン(注36)」という。)を試算して、高速道路事業全体の財務の状況を分析したところ、次のような状況となっていた。

(注36)
キャッシュ・フロー・マージン   売上高によって、どれだけキャッシュを獲得したかを表す財務指標。本報告書においては、料金収入を売上高とみなして算定した。キャッシュ・フロー・マージンは売上高のうち、現金預金等のキャッシュをどれだけ効率的に稼いでいるかを測る指標となり、値が大きいほど、債務の返済や新規投資を行う能力が高いことになる。
  算定方法 機構の業務活動によるキャッシュ・フロー÷6会社の料金 収入×100
(ア) 機構の債務及び6会社の新規債務の残高

機構の債務と機構が将来的に6会社から引き受けることとなる新規債務とを合算した債務の残高をみると、図表2-3-37のとおり、機構及び会社設立時の38兆9859億余円から元年度末の32兆4208億余円まで、機構単独で負っている債務と同様に、おおむね減少傾向となっていた。

図表2-3-37 機構の債務及び6会社の新規債務を合算した債務の残高の推移(設立時~令和元年度)

図表2-3-37 機構の債務及び6会社の新規債務を合算した債務の残高の推移(設立時~令和
						元年度)

(イ) キャッシュ・フロー・マージン

債務の返済の原資となる6会社が支払う貸付料は、6会社が計上する料金収入から計画管理費を控除するなどして算定されている。そして、機構では、貸付料等から支払利息や人件費等を支払った残額で、債務の返済を行っている。高速道路事業全体で、債務を返済するための資金を獲得できていたのかをみるために、キャッシュ・フロー・マージンの推移をみたところ、図表2-3-38のとおり、平成21年度は料金収入の減少により、23年度は2500億円の国庫納付によりそれぞれ減少しているものの、料金収入の増加や機構における支払利息の減少等により、17年度の32.0%から令和元年度の70.6%までおおむね増加傾向となっていた。

図表2-3-38機構及び6会社におけるキャッシュ・フロー・マージンの推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-3-38 機構及び6会社におけるキャッシュ・フロー・マージンの推移(平成17年度~
							令和元年度)

4 国による支援の状況

第1の2(5)のとおり、民営化申合せにおいて、機構による確実な債務返済を可能にするなどのために、財政上の措置、金融上の措置及び税制上の措置を法令において規定することなどにより、機構及び6会社に対する支援を行うこととなっており、機構法等において、所要の規定が設けられるなどしている。そして、国及び地方公共団体は、これらの規定に基づくなどして、機構に対して出資や補助金の交付を行うなど、様々な措置を実施している。これらの措置には、機構の財務基盤の安定等を図るものや国が特定の施策を実行するために行うものなどがあるが、国が機構及び6会社に対して財政上、金融上、税制上等の措置として行っていると考えられるものについては、広く国による支援として捉えて、道路関係四公団の民営化以降に、国又は地方公共団体から機構及び6会社に対して行われた支援について、その実績及び効果を分析したところ、次のような状況となっていた。

(1) 財政上の支援等

ア 財政上の支援
(ア) 出資金

機構は、第2の3(1)ア(キ)のとおり、国及び政令で定める地方公共団体から首都高速道路に係る出資金、阪神高速道路に係る出資金及び本四道路に係る出資金として、多額の追加出資を受けている。また、これらの高速道路事業に関する出資金のほか、機構は、鉄道事業に対しても国から出資を受けている。

a 首都高速道路に係る出資金及び阪神高速道路に係る出資金

機構は、首都高速道路又は阪神高速道路の新設等に要する費用に充てる資金の一部に充てるべきものとして、追加出資金を財源として、首都会社又は阪神会社に対して、首都高速道路又は阪神高速道路の新設等に要する費用の一部を無利子で貸し付けている。

首都会社及び阪神会社は、国土交通省等と調整の上、各年度に行う新設等に要する費用に対して、出資率25%等を乗ずることなどにより無利子貸付額を算定し、機構に対して申請を行っている。そして、機構は、首都会社及び阪神会社が機構に対して申請を行った無利子貸付額を基に必要となる出資額を算定しており、この額についての資本金の増資についての国土交通大臣の認可を得た上で、国及び地方公共団体から出資を受けている。

機構は、機構設立時から元年度までの間において、首都会社に係る出資金として計4263億余円、阪神高速道路に係る出資金として計1998億余円の追加出資を国及び地方公共団体から受けて、首都会社又は阪神会社に対して無利子貸付けを実施している。道路関係四公団の民営化以降に、首都会社及び阪神会社において、これらの無利子貸付金により実施された事業の実績をみると、図表2-4-1のとおり、平成17年度から令和元年度までの間において、首都会社では、4263億余円の無利子貸付金を機構から受けて、元年度末時点で1兆5420億余円(このうち無利子貸付金充当額4233億余円)の事業を完了しており、阪神会社では、1998億余円の無利子貸付金を機構から受けて、元年度末時点で5509億余円(このうち無利子貸付金充当額1998億余円)の事業を完了している。

h-2-4-1図表2-4-1 出資金を財源にした無利子貸付金を受けて実施された事業

図表2-4-1 出資金を財源にした無利子貸付金を受けて実施された事業

(単位:百万円)
会社名 無利子貸付金充当対象事業 事業費 無利子貸付金の状況
貸付金充当額 貸付年度 返済年度
首都会社 1 本牧JCT改良(残事業) 697 12 平成17 平成17
2 防災安全対策工 165,581 35,826 平成17~25 平成17~26
3 埼玉新都心線(新都心~さいたま見沼)新設 21,520 2,775 平成17~18 平成18
4 石川町出口新設 343 149 平成18~19 平成19
5 中央環状新宿線(4号新宿線~5号池袋線)新設 198,343 34,526 平成17~22 平成19~23
6 有明辰巳JCT間改良 1,864 577 平成18~19 平成19
7 晴海線(豊洲~東雲JCT)新設 25,378 3,823 平成17~21 平成20~22
8 川崎縦貫線(大師JCT~殿町)新設 55,204 26,374 平成17~23 平成22~25
9 中央環状新宿線(3号渋谷線~4号新宿線)新設 272,606 31,703 平成20~25 平成21~26
10 中央環状品川線(大橋JCT~大井JCT)新設 175,019 61,650 平成18~23 平成23~26
11 横浜環状北線(生麦JCT~横浜港北JCT)新設 392,026 145,700 平成17~令和元 平成24~令和元
12 王子南出入口新設 19,484 7,926 平成18~26 平成26
13 晴海線(晴海~豊洲)新設 30,086 8,049 平成24~29 平成29~30
14 板橋熊野町JCT間改良 14,169 8,007 平成19~29 平成29~30
15 堀切小菅JCT間改良 16,123 4,612 平成24~29 平成29~30
16 小松川JCT新設 36,942 9,639 平成19~令和元 令和元
17 渋谷入口新設 6,064 1,746 平成26~30 令和元
18 横浜環状北西線(横浜港北JCT~横浜青葉JCT)新設 110,593 40,240 平成24~令和元 令和元
令和元年度末までに完了した事業の小計 1,542,051 423,334
元年度末において事業中の額 3,064 平成27~令和元 令和2~9
1,542,051 426,398
阪神会社 1 防災安全対策工 66,438 15,110 平成17~25 平成17~25
2 京都線(上鳥羽~第二京阪)新設 21,837 3,903 平成17~19 平成19
3 京都線(山科~鴨川東)新設 30,453 6,110 平成17~19 平成20
4 神戸山手線(湊川JCT~神戸長田)新設 58,587 21,971 平成17~22 平成22
5 京都線(鴨川東~上鳥羽)新設 6,801 1,507 平成17~22 平成22
6 大和川線(三宅西~三宅JCT)新設 1,131 603 平成24 平成24
7 淀川左岸線I期(島屋~海老江JCT)新設 138,936 64,898 平成17~27 平成25~27
8 守口JCT新設 9,229 2,253 平成18~25 平成25
9 松原JCT新設 9,006 2,230 平成18~26 平成26
10 大和川線(三宝JCT~三宅西)新設 193,785 76,582 平成17~令和元 平成28~令和元
11 信濃橋渡り線西船場JCT新設 14,755 4,675 平成25~令和元 令和元
令和元年度末までに完了した事業の小計 550,962 199,846
元年度末において事業中の額
550,962 199,846
合計 2,093,014 626,244
  • 注(1) 事業費は、機構が首都会社又は阪神会社から無利子貸付金に係る債務を引き受けたときの債務の総額を記載しており、有利子債務のみを引き受けたときの債務の額は含んでいない。また、首都高速道路公団又は阪神高速道路公団が行った新設等に係る債務を含んでいるものがある。
  • 注(2) 首都会社の令和元年度末において事業中の額の事業費が「-」となっているのは、事業費が確定していないためである。

b 本四道路に係る出資金

機構は平成17年度から25年度までの間、国及び10府県市から計6416億円の追加出資を受けている。これらの出資金については、機構が本四道路に係る債務の返済に充当していて、出資を受けるときに出資金の未償還残高は増加したものの、その分の有利子債務の返済が行われている。

c 機構の鉄道事業に係る出資金

機構は、本州四国連絡橋(本四備讃線)の道路鉄道共用部の鉄道専用施設等に係る耐震補強事業に要する費用に充てるべきものとして国から24年度から28年度までの間に計117億余円の出資を受けており、これらを財源として本四会社等に耐震補強事業を委託している。

(イ) 補助金

機構法によれば、国は、予算の範囲内において、機構に対して、6会社が行う高速道路の災害復旧及びスマートICの整備に要する費用に充てる資金の一部を無利子で貸し付ける業務に要する経費を補助することができることとされており、国は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構有料道路災害復旧事業費補助(以下「災害復旧事業費補助」という。)及び高速道路連結部整備事業費補助を行っている。さらに、機構法によれば、政令で定める地方公共団体は、予算の範囲内において、機構に対して、首都高速道路又は阪神高速道路の災害復旧等に要する費用に充てる資金の一部を首都会社又は阪神会社に無利子で貸し付ける業務に要する経費を補助することができることとされている。

また、上記のほか、高速道路通行者負担軽減補助金及び新線調査費等補助金(本州四国連絡橋維持修繕費補助金)が国から機構に対して交付されている。17年度から令和元年度までの間における機構に対する国等からの補助金の交付額は、図表2-4-2のとおり、計3070億余円となっている。

h-2-4-2図表2-4-2 機構に対する補助金の交付状況(平成17年度~令和元年度)

図表2-4-2 機構に対する補助金の交付状況(平成17年度~令和元年度)

(単位:百万円)
補助金名 平成
17年度
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
災害復旧事業費補助 12,283 - 2,850 5,673 - - 12,251
(256)
  34,413
高速道路連結部整備事業費補助 - - - - - - - -
高速道路通行者負担軽減補助金 - - - - - - - -
新線調査費等補助金(本州四国連絡橋維持修繕費補助金) - 15 16 21 19 25 13 19
12,283 15 2,866 5,694 19 25 12,264
(256)
34,433
補助金名 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
災害復旧事業費補助 - - - 5,193 29,001 1,882 12,117 115,665
(256)
高速道路連結部整備事業費補助 - 34 447 1,256 3,568 4,332 3,191 12,830
高速道路通行者負担軽減補助金 62,000 50,700 25,600 10,500 10,700 10,856 7,849 178,205
新線調査費等補助金(本州四国連絡橋維持修繕費補助金) 25 27 26 24 34 36 36 343
62,025 50,762 26,073 16,974 43,303 17,107 23,194 307,045
(256)
  • (注) 括弧書きは地方公共団体から交付を受けた補助金であり、内数である。

a 災害復旧事業費補助

災害復旧事業費補助は、機構が6会社に対して高速道路の災害復旧に要する費用に充てる資金の一部を無利子で貸し付ける業務の財源として国等から機構に対して交付される補助金であり、通常の災害復旧事業と同様に、被災した施設等を原形に復旧することなどを目的としている。(注37)

(注37)
補助対象となる災害復旧事業は、「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構有料道路災害復旧事業費補助要綱」(平成23年国道高第66号)によれば、地震や火山活動による被害等でその被害が激甚なものに限ることなどとされており、補助額は、維持工事等を除いた災害復旧事業に要する費用の額に対して財務省と国土交通省が協議して定める額とされている。

機構は、図表2-4-2のとおり、国等から平成17年度から令和元年度までの間に計1156億余円の災害復旧事業費補助の交付を受けており、これを財源とした機構からの無利子貸付けを受けてNEXCO3会社及び首都会社が平成17年度から令和元年度までの間に実施した災害復旧事業の実績をみると、図表2-4-3のとおり、各会社は、機構から計1156億余円の無利子貸付けを受けて、東日本大震災等により被災した高速道路の災害復旧事業を行っていた。

h-2-4-3図表2-4-3 機構からの無利子貸付けを受けてNEXCO3会社及び首都会社が行った災害復旧事業

図表2-4-3 機構からの無利子貸付けを受けてNEXCO3会社及び首都会社が行った災害復旧事業

(単位:百万円)
無利子貸付けの対象となった災害 災害発生年度 会社名 無利子貸付金の額
平成16年(2004年)新潟県中越地震 平成16年度 東会社 12,283
平成19年(2007年)新潟県中越沖地震 19年度 東会社 8,523
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) 22年度 東会社 45,894
首都会社 770
平成28年(2016年)熊本地震 28年度 西会社 34,195
平成30年7月豪雨(西日本豪雨)及び平成30年台風21号 30年度 東会社 199
中会社 1,695
西会社 12,104
115,665
  • 注(1) 東日本大震災における首都会社への無利子貸付けの財源には、東京都からの補助金1億4582万余円及び横浜市からの補助金1億1086万余円が含まれている。
  • 注(2) 西日本豪雨及び平成30年台風21号に係る無利子貸付けは一括で申請等が行われているため、まとめて記載している。
  • 注(3) 違約金等の発生により国に返還された補助金の額に対応する無利子貸付金の額は除いている。

b 高速道路連結部整備事業費補助

高速道路連結部整備事業費補助は、機構が6会社に対してスマートICの整備に要する費用に充てる資金の一部を無利子で貸し付けるための財源として国から機構に対して交付される補助金である。スマートICの整備は、平成20年度に開始された利便増進事業により本格的に行われてきたが、利便増進事業の財源がなくなったため、整備を継続するための手段として26年度から高速道路連結部整備事業費補助により措置された。(注38)

(注38)
補助の対象となる事業費の範囲は、「スマートインターチェンジ整備事業費(高速道路連結部整備事業費)補助金交付要綱」(平成26年国道高第54号)によれば、スマートIC整備事業の工事のために直接必要な本工事費等であって、当該工事完了後に機構に帰属することとなる高速道路資産に係るものに限るとされており、補助額は、事業費の額の2分の1の範囲内とされている。

機構は、図表2-4-2のとおり、国から、26年度から令和元年度までの間に計128億余円の高速道路連結部整備事業費補助の交付を受けており、これを財源とした機構からの無利子貸付けを受けてNEXCO3会社及び本四会社が行ったスマートICの整備の実績をみると、図表2-4-4のとおり、各会社は、機構から計128億余円の無利子貸付けを受けて、計53か所のスマートICの整備を行っていた。

h-2-4-4図表2-4-4 機構からの無利子貸付けを受けてNEXCO3会社及び本四会社が行ったスマ ートICの整備

図表2-4-4 機構からの無利子貸付けを受けてNEXCO3会社及び本四会社が行ったスマートICの整備

(単位:百万円)
会社名 対象スマートIC名 道路名 府県名 事業費
(補助基本額)
無利子貸付金の状況
貸付金
充当額
充当割合 貸付年度 返済年度
東会社 田村中央 磐越自動車道 福島 2,289 1,144 50.0% 平成26~30 令和元
ならは 常磐自動車道 福島 2,507 1,253 50.0% 平成26~30 令和元
八戸西 八戸自動車道 青森 1,896 948 50.0% 平成26~30 令和元
水戸北 常磐自動車道 茨城 1,046 523 50.0% 平成26~令和元 令和2
横手北 秋田自動車道 秋田 1,859 929 50.0% 平成26~令和元 令和2
平泉 東北自動車道 岩手 947 473 50.0% 平成27~令和元 令和3
矢板北 東北自動車道 栃木 224 112 50.0% 平成29~令和元 令和3
横須賀PA 横浜横須賀道路 神奈川 58 29 50.0% 平成27~令和元 令和3
出流原PA 北関東自動車道 栃木 109 54 50.0% 平成29~令和元 令和4
つくば 首都圏中央連絡自動車道 茨城 33 16 50.0% 平成29~令和元 令和4
三芳 関越自動車道 埼玉 253 126 50.0% 平成27~令和元 令和4
大谷 東北自動車道 栃木 78 39 50.0% 平成27~令和元 令和5
甘楽PA 上信越自動車道 群馬 92 46 50.0% 平成29~令和元 令和5
下野 北関東自動車道 栃木 23 11 50.0% 平成30~令和元 令和5
菅生 東北自動車道 宮城 68 34 50.0% 平成29~令和元 令和5
胎内 日本海東北自動車道 新潟 19 9 50.0% 平成30~令和元 令和5
筑北 長野自動車道 長野 36 18 50.0% 平成30~令和元 令和5
都賀西方 東北自動車道 栃木 192 96 50.0% 平成28~令和元 令和5
つくばみらい 常磐自動車道 茨城 3 1 50.0% 令和元 令和6
蓮田 東北自動車道 埼玉 5 2 50.0% 令和元 令和6
花巻PA 東北自動車道 岩手 4 2 50.0% 令和元 令和6
山形PA 東北中央自動車道 山形 2 1 50.0% 令和元 令和6
小高 常磐自動車道 福島 4 2 50.0% 令和元 令和7
23か所 11,758 5,879 50.0%
中会社 小黒川 中央自動車道 長野 647 323 50.0% 平成26~29 平成29
駒ヶ岳 中央自動車道 長野 690 344 50.0% 平成26~29 平成30
足柄 東名高速道路 静岡 938 469 50.0% 平成28~30 令和元
駒門 東名高速道路 静岡 740 370 50.0% 平成28~令和元 令和2
厚木PA 首都圏中央連絡自動車道 神奈川 674 337 50.0% 平成26~令和元 令和3
上市 北陸自動車道 富山 477 238 50.0% 平成28~令和元 令和3
座光寺 中央自動車道 長野 292 146 50.0% 平成28~令和元 令和3
富士吉田南 東富士五湖道路 山梨 650 325 50.0% 平成28~令和元 令和3
神坂 中央自動車道 岐阜 130 64 50.0% 平成30~令和元 令和4
刈谷 伊勢湾岸自動車道 愛知 150 75 50.0% 平成30~令和元 令和4
秦野SA 新東名高速道路 神奈川 154 77 50.0% 平成27~令和元 令和4
多賀 名神高速道路 滋賀 19 9 50.0% 令和元 令和5
城端SA 東海北陸自動車道 富山 1 0 50.0% 令和元 令和6
山北 新東名高速道路 神奈川 125 62 50.0% 平成26~令和元 令和6
岡崎阿知和 東名高速道路 愛知 0 0 50.0% 令和元 令和7
甲府中央 中央自動車道 山梨 116 58 50.0% 平成27~令和元 令和7
東郷 東名高速道路 愛知 3 1 50.0% 令和元 令和7
海津 東海環状自動車道 岐阜 314 156 50.0% 平成26~令和元 令和9
18か所 6,126 3,063 50.0%
西会社 沼田PA 山陽自動車道 広島 1,181 590 50.0% 平成26~29 平成30
別府湾 大分自動車道 大分 418 208 50.0% 平成26~30 令和元
中山 松山自動車道 愛媛 1,141 570 50.0% 平成26~令和元 令和2
人吉球磨 九州自動車道 熊本 2,517 1,258 50.0% 平成26~令和元 令和2
湯田温泉 中国自動車道 山口 2,100 1,050 50.0% 平成26~令和元 令和2
加茂BS 松江自動車道 島根 116 58 50.0% 平成29~令和元 令和5
味坂 九州自動車道 福岡 48 24 50.0% 平成30~令和元 令和6
城陽 新名神高速道路 京都 28 14 50.0% 平成29~令和元 令和6
新名神大津 新名神高速道路 滋賀 90 45 50.0% 平成26~令和元 令和6
東温 松山自動車道 愛媛 38 18 50.0% 平成30~令和元 令和6
阿波 徳島自動車道 徳島 10 5 50.0% 令和元 令和8
11か所 7,689 3,844 50.0%
本四会社 坂出北 瀬戸中央自動車道 香川 86 43 50.0% 平成29~令和元 令和7
1か所 86 43 50.0%
合計 53か所 25,661 12,830 50.0%
  • 注(1) 対象スマートIC名には、仮称のものが含まれている。
  • 注(2) スマートICの整備が完了していないため、総事業費が確定していないものがある。
  • 注(3) 補助基本額は、無利子貸付金算定の対象となる事業費である。
  • 注(4) PAはパーキングエリア、SAはサービスエリア、BSはバスストップ(バス停)を示す。

c 高速道路通行者負担軽減補助金

高速道路通行者負担軽減補助金は、高速道路通行者負担軽減補助金交付要綱(平成26年国道高第259号)によれば、6会社が行う高速道路料金の割引のために必要となる貸付料の額の軽減を機構が行うこととした場合において、機構の債務の返済に関する業務を確実かつ円滑に実施することを目的として、国が予算の範囲内において機構に対して補助することとし、もって高速道路の通行者の負担の軽減を図ることとするとされている。また、補助金の額は、機構が高速道路料金の割引のために行う債務の返済に必要な額であり、そのために必要となる貸付料の減額を行うこととした額とされている。高速道路通行者負担軽減補助金の交付を受けた機構は、補助金の受領年度に同補助金を債務返済に充当することで債務返済の余力が生ずるため、その余力により翌年度の各会社への貸付料を軽減することとしており、貸付料の軽減を受けた各会社は、貸付料の減額分により料金割引を実施することとしている。

高速道路通行者負担軽減補助金は、平成25年度に6会社のうち首都会社及び阪神会社を除いた4会社において利便増進事業による料金割引が終了することを受けて、その激変緩和措置として開始されたものであるが、26年度以降は物流コストの低減を図る事業として実施されている。高速道路通行者負担軽減補助金の交付額の実績及び貸付料の減額の実績をみると、図表2-4-5のとおり、25年度の交付額は620億円であったが、料金割引の対象を限定するなどしたことから27年度以降大幅に減少し、28年度から30年度までは100億円程度で推移しており、令和元年度は78億余円となり、減少傾向となっている。また、平成25年度から令和元年度までの間の総額は1782億余円となっていて、機構は、同補助金の交付を受けてNEXCO3会社の貸付料を減額しており、平成26年度から令和2年度までの間に減額された貸付料は交付額に消費税等相当額を加えた総額1926億余円となっている。

上記貸付料の減額を受けて、NEXCO3会社は、大口・多頻度割引の拡充(平成26年度~令和2年度)、アクアライン割引(平成26年度~30年度)及び休日割引(26年4月~同年6月)を実施している。

h-2-4-5図表2-4-5 高速道路通行者負担軽減補助金の交付額及び減額された貸付料

図表2-4-5 高速道路通行者負担軽減補助金の交付額及び減額された貸付料

(単位:百万円)
補助金交付年度 補助額
(税抜き)
減額された貸付料(税込み)
全国路線網 一の路線
東会社 中会社 西会社 八王子
バイパス
(中会社)
広島呉道路
(西会社)
平成25年度 62,000 20,539 24,077 22,305 22 18 66,961
26年度 50,700 16,662 19,831 18,263 - - 54,756
27年度 25,600 9,600 9,193 8,855 - - 27,648
28年度 10,500 3,773 4,221 3,346 - - 11,340
29年度 10,700 3,677 4,105 3,774 - - 11,556
30年度 10,856 3,339 4,338 4,048 - - 11,725
令和元年度 7,849 2,514 3,182 2,938 - - 8,634
178,205 60,104 68,947 63,529 22 18 192,620
  • 注(1) 通行料金には消費税等が含まれているため、NEXCO3会社が実施する料金割引額は消費税等を含めて計算している。
  • 注(2) 補助金交付年度の翌年度の貸付料を減額するため、本図表中の「減額された貸付料」は「補助金交付年度」の翌年度の貸付料である。

d 新線調査費等補助金(本州四国連絡橋維持修繕費補助金)

新線調査費等補助金(本州四国連絡橋維持修繕費補助金)は、機構が行う大鳴門橋を維持修繕するための鉄道事業が適切に実施されることを目的として、当該事業のうち鉄道施設分として負担することとなっている部分に対して、予算の範囲内において、国から機構に対して交付される補助金であり、機構は18年度から令和元年度までの間に3億余円の交付を受けて、本四会社に大鳴門橋の維持修繕を委託する費用に充てている。

(ウ) 料金補塡

6会社は、第2の1(2)エ(イ)の利便増進事業の実施や、前記の高速道路通行者負担軽減補助金の交付等による料金割引のほかに、国の要請に応えるなどして各種の料金割引又は無料化を実施しており、それらの料金割引等については、国等が直接6会社に対して料金相当額を補塡(以下「料金補塡」という。)している。民営化以降に実施された国等からの料金補塡の状況をみると、図表2-4-6のとおり、計2381億余円の料金補塡がなされていた。平成20年度は、「原油価格の高騰に伴う、中小企業、各業種、国民生活等への対策の強化について(基本方針)」(平成19年12月原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議)を踏まえた深夜割引拡充社会実験が行われたことにより、22年度は高速道路無料化社会実験が行われたことにより、23年度は東日本大震災による被災者等を支援するための東北地方の高速道路の無料措置が行われたことにより、それぞれ他の年度と比較して料金補塡の額が多くなっている。

h-2-4-6図表2-4-6 国等による料金補塡の状況(平成17年度~令和元年度)

図表2-4-6 国等による料金補塡の状況(平成17年度~令和元年度)

(単位:百万円)
年度 料金補塡
の額
東会社 中会社 西会社 本四会社 首都会社 阪神会社
平成17年度 6,288 214 - 652 - 3,005 2,415
18年度 10,094 111 141 1,246 - 4,818 3,777
19年度 23,233 3,406 3,600 4,285 578 6,196 5,166
20年度 45,571 9,616 12,619 11,630 745 5,739 5,221
21年度 15,045 2,098 428 1,124 - 6,759 4,636
22年度 87,443 18,349 19,999 49,095 - - -
23年度 43,423 28,719 4,038 10,665 - - -
24年度 1,457 1,457 - - - - -
25年度 1,627 1,620 2 0 4 - -
26年度 643 627 2 0 13 - -
27年度 597 583 2 0 11 - -
28年度 586 566 2 0 17 - -
29年度 570 556 2 0 11 - -
30年度 508 483 2 12 11 - -
令和元年度 1,020 1,008 1 0 11 - -
238,113 69,418 40,843 78,713 1,401 26,519 21,217
  • (注) 国からの料金補塡のほか、地方公共団体等からの料金補塡を含めている。
(エ) 道路事業資金収益回収特別貸付金等の貸付け

道路事業資金収益回収特別貸付金は、日本電信電話株式会社の株式の売払収入を活用した社会資本整備の促進措置として創設されたものであり、国は、特措法等の規定に基づいて、首都会社に対して、無利子で、首都高速道路の円滑な交通を確保するために緊急に実施する必要がある首都高速道路の新設等に要する費用に充てる資金の一部として同貸付金を17年度に108億余円、18年度に211億余円及び19年度に158億余円の計478億余円貸し付けている。また、同貸付金の制度が創設された元年に建設省(13年1月6日以降は国土交通省)及び自治省(13年1月6日以降は総務省)との間で締結された覚書に基づいて、東京都も国と同額の無利子貸付けを首都会社に対して行っている。首都会社は、これらの無利子貸付金を受けて、中央環状新宿線の整備を実施している。

(オ) 財政上の支援の寄与

国等による財政上の支援は、機構及び6会社の財務基盤の安定を目的とし、ひいては機構の債務の返済等が円滑かつ確実に行われることに寄与するものであり、その総額は多額に上っている。実際に、第2の3(1)ア(ア)のとおり、機構設立時に機構が負っていた38兆2179億余円の債務残高が令和元年度末時点においては29兆6761億余円に減少しているなど、債務の返済が8兆5418億余円行われており、また、債務返済計画においても機構解散の日までに債務の返済等を完了することが可能とされている。

そこで、会計検査院において、国等による財政上の支援のうち追加出資等が債務の返済等にどのように寄与しているかをみるために、図表2-4-7に示す一定の条件を仮定するなどして、機構が国等からの出資金又は補助金を財源として、既に6会社に貸し付けている無利子貸付金相当額及び今後6会社に貸し付ける計画とされている無利子貸付金相当額について、仮に6会社が有利子で調達し、機構が有利子債務として引き受けることなどとした場合に機構の債務の返済等がどのようになるかを令和元年度末債務返済計画を基に機械的に試算した。

h-2-4-7図表2-4-7 試算に当たって仮定した条件等

図表2-4-7 試算に当たって仮定した条件等

ア 試算の対象とした債務返済計画

・令和元年度末時点において債務の返済等が完了していない路線網等のうち、国等からの財政上の支援の対象となっている全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網を対象とする。

イ 全国路線網について仮定した条件

・本四道路に係る出資金のうち承継出資金1兆0966億余円以外の追加出資金計6416億円はなかったこととし、同額の有利子債務の返済が行われていないこととする。

・機構設立以降に国から機構に交付される災害復旧事業費補助及び高速道路連結部整備事業費補助を財源に機構が行う無利子貸付けに係る引受債務計1684億余円を有利子債務として引き受けることとする。

ウ 首都高速道路に係る地域路線網について仮定した条件

・首都高速道路に係る出資金のうち承継出資金7508億余円以外の追加出資金はないこととし、この追加出資金等を財源に機構が行う無利子貸付けに係る引受債務計4816億余円を有利子債務として引き受けることとする。

・国及び地方公共団体から機構に交付される災害復旧事業費補助を財源に機構が行う無利子貸付けに係る引受債務計7億余円を有利子債務として引き受けることとする。

・国及び東京都からの首都会社への無利子貸付金(道路事業資金収益回収特別貸付金等)に係る引受債務計956億余円を有利子債務として引き受けることとする。

エ 阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網について仮定した条件

・阪神高速道路(阪神圏)に係る出資金のうち承継出資金5351億余円以外の追加出資金いこととし、この追加出資金を財源に機構が行う無利子貸付けに係る引受債務計1942円を有利子債務として引き受けることとする。

オ 各路線網に共通して仮定した条件

・各年度の支払利息については、各路線網の令和元年度末債務返済計画における各年度払利息の額を当該年度期首時点の有利子債務の未償還残高で除して得た値を用いるなて計算することとする。

・各路線網の令和元年度末債務返済計画には料金徴収期間満了の日以降の6会社からの引務並びに機構の収入及び支出の額が記載されていないため、試算の結果、債務の返済同日までに完了しないことになる場合、料金徴収期間満了の日の属する年度以降の貸等の計画値については、過去10年度分の平均値を取るなどして計算することとする。

カ 試算の対象外とする財政上の支援

・機構が行う鉄道事業に対する出資金及び補助金(新線調査費等補助金(本州四国連絡持修繕費補助金))は高速道路に係る債務の返済等には関係しないため試算の対象か外する。

・高速道路通行者負担軽減補助金は機構が実施する貸付料の減額等に相当する額を補助ものであり、また、料金補塡は6会社が実施する料金割引を補塡するものであるため、の返済等には影響しないことから、試算の対象から除外する。

その結果、図表2-4-8のとおり、機構が引き受ける有利子債務及び支払利息が増加するなどして、全国路線網、首都高速道路に係る地域路線網及び阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網に係る債務の返済等の完了時期は、それぞれ、44年8月、54年2月及び47年6月に延びることとなる。特に首都高速道路に係る地域路線網については、追加出資等が行われていなければ、機構法において定められている解散の期限である47年9月30日までに債務の返済等を終えることができない試算結果となった(図表2-4-9参照)。

このように、国等による追加出資等の財政上の支援は、債務の返済等の完了期日が、それぞれ2年6か月、6年4か月及び2年9か月早期化することに寄与していたと考えられる。

h-2-4-8図表2-4-8 国等による追加出資等がなかった場合の債務の返済等完了期日の試算結果

図表2-4-8 国等による追加出資等がなかった場合の債務の返済等完了期日の試算結果

(単位:億円)
債務返済計画の対象となる路線網 会計検査院の試算による有利子引受債務の増加額 会計検査院の試算による支払利息の増加額 令和元年度末債務返済計画における債務の返済等の完了期日
会計検査院の試算による債務の返済等の完了期日
国等による追加出資等により、早期化したと考えられる債務の返済等の完了期日
B-A
全国路線網 5644 1兆4718 令和42年1月 44年 8月 2年6か月
首都高速道路に係る地域路線網 7532 8828 47年9月 54年 2月 6年4か月
阪神高速道路(阪神圏)に係る地域路線網 2515 3402 44年9月 47年 6月 2年9か月
1兆5692 2兆6949 - - -

図表2-4-9 首都高速道路に係る地域路線網の試算結果(未償還残高の推移)

図表2-4-9 首都高速道路に係る地域路線網の試算結果(未償還残高の推移)画像

イ 金融上の支援
(ア) 政府による債務保証

第2の2(1)エ(ア)及び第2の3(1)ア(エ)cのとおり、機構は設立以降毎年度、6会社のうち本四会社を除く5会社は設立から平成21年度までの間に限り、資金調達に当たり元金及び利息の支払について政府保証を受けている。17年度から令和元年度までの間において、各年度の一般会計予算総則に定められている政府保証の限度額と各年度の決算額とを比較すると、図表2-4-10のとおり、機構については、平成17年度から26年度までの間は2兆円前後、27年度から30年度までの間は1兆円前後の限度額が各年度定められており、おおむね毎年度限度額まで政府保証を受けている一方、上記の5会社については、政府保証を受けていた17年度から21年度までの間、限度額に対する決算額の割合は機構に比べておおむね低くなっていた(注39)

(注39)
6会社のうち、資金調達に当たり政府保証を受けていない本四会社を除く5会社における割合が低くなっていたことについて、同5会社は、民営化申合せにおいて、道路関係四公団の民営化により新設される高速道路株式会社は自己調達した資金により高速道路等の建設を行うこととされたことなどを受けて、自らの信用力による自己調達を原則とし、政府保証による調達を限定的にしたためなどとしている。
h-2-4-10図表2-4-10 機構及び6会社のうち本四会社を除く5会社の政府保証の限度額と決算額の対 比(平成17年度~令和元年度)

図表2-4-10 機構及び6会社のうち本四会社を除く5会社の政府保証の限度額と決算額の対比(平成17年度~令和元年度)

(単位:百万円)
法人名 区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
機構 限度額(A) 2,214,800 2,185,000 2,475,000 2,383,000 1,816,000 2,514,000 1,840,000 2,286,000
決算額(B) 2,208,780 2,190,000 2,483,000 2,393,000 1,821,000 2,325,000 1,840,000 2,286,000
割合(B/A) 99.7% 100.2% 100.3% 100.4% 100.2% 92.4% 100.0% 100.0%
東会社 限度額(A) 171,200 133,600 112,400 64,400 36,500 - - -
決算額(B) 60,000 80,000 60,000 50,000 10,000 - - -
割合(B/A) 35.0% 59.8% 53.3% 77.6% 27.3% - - -
中会社 限度額(A) 262,800 216,000 174,600 107,200 57,900 - - -
決算額(B) 100,000 140,000 120,000 80,000 30,000 - - -
割合(B/A) 38.0% 64.8% 68.7% 74.6% 51.8% - - -
西会社 限度額(A) 131,600 113,400 92,300 59,400 36,400 - - -
決算額(B) 40,000 85,000 82,000 47,000 36,400 - - -
割合(B/A) 30.3% 74.9% 88.8% 79.1% 100.0% - - -
首都会社 限度額(A) 13,100 28,700 20,400 18,500 12,200 - - -
決算額(B) 10,000 27,200 20,400 18,500 12,200 - - -
割合(B/A) 76.3% 94.7% 100.0% 100.0% 100.0% - - -
阪神会社 限度額(A) 6,300 17,400 12,700 7,600 3,500 - - -
決算額(B) 6,340 12,560 10,500 7,600 3,500 - - -
割合(B/A) 100.6% 72.1% 82.6% 100.0% 100.0% - - -
法人名 区分 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
機構 限度額(A) 2,386,000 1,940,000 1,251,000 956,000 1,385,000 1,245,000 520,000 27,396,800
決算額(B) 2,386,000 1,940,000 1,251,000 956,000 1,315,000 1,127,500 520,000 27,042,280
割合(B/A) 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 94.9% 90.5% 100.0% 98.7%
東会社 限度額(A) - - - - - - - 518,100
決算額(B) - - - - - - - 260,000
割合(B/A) - - - - - - - 50.1%
中会社 限度額(A) - - - - - - - 818,500
決算額(B) - - - - - - - 470,000
割合(B/A) - - - - - - - 57.4%
西会社 限度額(A) - - - - - - - 433,100
決算額(B) - - - - - - - 290,400
割合(B/A) - - - - - - - 67.0%
首都会社 限度額(A) - - - - - - - 92,900
決算額(B) - - - - - - - 88,300
割合(B/A) - - - - - - - 95.0%
阪神会社 限度額(A) - - - - - - - 47,500
決算額(B) - - - - - - - 40,500
割合(B/A) - - - - - - - 85.2%
  • 注(1) 各年度の予算書及び決算参照書(国の債務に関する計算書)を基に会計検査院が作成した。
  • 注(2) 平成17年度の機構及び各会社の限度額及び決算額には、道路関係四公団の分を含めている。
  • 注(3) 一般会計予算総則に定められている限度額を超えて政府保証を受けているのは、予算総則の規定に基づき、債券の発行価格が額面金額を下回るときにその発行価格差減額を埋めるために発行する債券の額面金額及びその利息に相当する額を予算総則に定められている限度額に加算して決算上の限度額としているためである。

また、各年度に政府が保証した債務の合計額のうち、機構及び上記5会社の債務の額が占める割合の推移をみると、図表2-4-11のとおり、19年度の43.8%を最高に、20年度以降においては12.2%から31.9%までの割合で推移していた。なお、令和元年度に上記の割合が低下したのは、後述する(イ)のとおり、機構が元年度以降に政府保証債により調達する予定の額を平成30年度に財政融資資金の借入れにより調達したことによる。また、17年度から令和元年度までの間に政府保証を受けた全ての財投機関等に対する各年度の政府保証額をみると、平成17、21、28、29、令和元各年度を除く全ての年度で最も機構に対する政府保証額が大きかった。

このように、国は、機構に対して資金調達に係る厚い支援を行っており、機構は、第2の3(1)ア(エ)cのとおり、より低利での資金調達を行うことができている。

図表2-4-11 各年度に政府が保証した債務の合計額及びこのうちの機構と6会社のうち本四会社を除く5会社の債務の額が占める割合の推移(平成17年度~令和元年度)

図表2-4-11 各年度に政府が保証した債務の合計額及びこのうちの機構と6会社のうち本四
						会社を除く5会社の債務の額が占める割合の推移(平成17年度~令和元年度)

(イ) 財政融資資金の貸付け

財政融資は、財政融資資金法(昭和26年法律第100号)に基づき、国、地方公共団体又は特別の法律により設立された法人に対して確実かつ有利な運用となるように融資を行うことにより、公共の利益の増進に寄与することを目的として設置された国の特別の資金である財政融資資金(平成12年度以前は資金運用部資金。以下同じ。)を活用して、政策的必要性が高く、償還確実性のある事業に対して行われる長期・固定・低利の融資である。

道路関係四公団の民営化に当たっては、6会社の経営の自主性を早期に発現るなどの観点から、財政融資資金の借入れは停止することなどとされて、民以降、国は、機構及び6会社に対して財政融資資金の貸付けを行っていなかった。

しかし、29年12月の財政制度等審議会財政投融資分科会において、現下の低金利状況をいかし、財政融資資金借入金を活用して、大都市圏環状道路等の整備を加速することによる生産性の向上及び橋りょうの耐震化対策の加速による安全・安心の確保を行うために、機構が30年度に1兆5000億円の財政融資資金からの借入れを実施することが決定された。また、30年12月の同分科会等において、土砂災害等の危険性の高い暫定2車線区間の4車線化等を実施するために、令和元年度についても、財政投融資計画(当初)で1兆円、財政投融資計画(補正)で5500億円の財政融資資金からの機構の借入れの実施がそれぞれ決定された(以下、平成30年度の1兆5000億円の借入れを「平成30年度借入れ」といい、令和元年度財政投融資計画(当初)による1兆円の借入れを「令和元年度当初借入れ」といい、元年度財政投融資計画(補正)による5500億円の借入れを「令和元年度補正借入れ」という。)。これにより、機構は、今後複数年度にかけて政府保証債により調達する予定の額を単年度の財政融資資金借入金により前倒しで調達することとなった。機構の財政融資資金借入金に係る融通条件等をみると、図表2-4-12のとおり、償還期間40年以内又は30年以内の超長期の償還期限となっており、0.30%から0.86%までの低利で借り入れている。

h-2-4-12図表2-4-12 機構の財政融資資金借入金の融通条件等

図表2-4-12 機構の財政融資資金借入金の融通条件等

(単位:百万円、%)
借入年度 借入金額 償還方法 償還期限 利率
平成30年度 1,500,000 元金均等償還(半年賦) 40年以内(30年以内の据置期間を含む。) 0.86
令和元年度
(当初計画)
1,000,000 元金均等償還(半年賦) 40年以内(30年以内の据置期間を含む。) 0.45
元年度
(補正計画)
550,000 元金均等償還(半年賦) 500億円については40年以内(20年以内の据置期間を含む。)、5000億円については30年以内(20年以内の据置期間を含む。) 0.30
  • (注) 貸付利率の融通条件については、国債の利回りを基準として財務大臣が毎月定める利率とするとており、本図表中の利率は、実際に借入れを行った際に適用された利率を借入金額により加重平均しのを記載している。

機構は、第2の3(1)イ(ウ)のとおり、将来発行する政府保証債の金利を上限4.00%に設定しており、財政融資資金の借入れにより、将来想定されている金利が4.00%より低利で固定されるため、機構の金利負担が軽減されるとしている。そして、その金利負担の軽減により機構の債務引受余力が増大することで、各会社の投資余力が増えることになる。財務省等は、機構への財政融資を決定するに当たり、平成30年度借入れで約1兆円、令和元年度当初借入れで約7000億円、令和元年度補正借入れで約4000億円、計約2兆1000億円の金利負担が軽減され、機構の債務引受余力及び各会社の投資余力が増大するとしている。

機構、NEXCO3会社及び本四会社は、この機構の債務引受余力及び各会社の投資余力の増大を活用して、大都市圏環状道路等の整備加速による生産性の向上、橋りょうの耐震強化対策の加速による安全・安心の確保のための事業等計約2兆3300億円(平成30年度借入れで約1兆0400億円、令和元年度当初借入れで約7700億円、令和元年度補正借入れで約5200億円)を実施することとして、平成30年3月、31年3月及び令和2年3月に協定を変更している(別図表26参照)。

この財政融資資金の借入れにより生じた金利負担の軽減額計約2兆1000億円は、財政融資資金の借入れが決定されたときの計画金利(平成30年度借入れは1.40%、令和元年度当初借入れは1.30%、令和元年度補正借入れは0.62%)に基づいて算出されたものであり、実際に借入れを行った際の金利は、図表2-4-12のとおり、0.30%から0.86%までとなっていた。会計検査院において、図表2-4-13に示す一定の条件を仮定するなどして、各財政融資資金の借入れを反映する直前までの協定変更を反映した債務返済計画を基に、実際に借入れを行った際の金利により機構の金利負担の軽減額を試算したところ、料金の徴収期間の満了の日までに、平成30年度借入れで約3兆2800億円、令和元年度当初借入れで約2兆6000億円、令和元年度補正借入れで約1兆3700億円、計約7兆2500億円となった。この金利負担の軽減額は、上記の事業に係る引受債務や当該引受債務に係る支払利息等に充てられることになっている。

h-2-4-13図表2-4-13 試算に当たって仮定した条件等

図表2-4-13 試算に当たって仮定した条件等

ア 試算の対象とした債務返済計画

・財政融資資金の借入れにより生ずる金利負担軽減を活用した事業はいずれも全国路線網で実施されることとなっているため、全国路線網の債務返済計画を対象とする。

・平成30年度借入れ、令和元年度当初借入れ及び令和元年度補正借入れのそれぞれについて、財政融資資金の借入れを反映する直前の債務返済計画を基に試算を行うこととする。

イ 仮定した条件

・各年度の支払利息は、過年度に調達した有利子債務の金利と将来調達金利とを加重平均した金利を当該年度の有利子債務残高に乗ずることなどにより算出されており(第2の3(1)イ(ウ)参照)、試算の対象とした各年度の支払利息の試算額については、平成30年度借入れ、令和元年度当初借入れ及び令和元年度補正借入れのそれぞれについて試算の対象とした債務返済計画ごとに、実際に借入れを行った際の金利により再計算した金利を用いて算定することとする。

区分 試算の対象とした債務返済計画 適用した金利
平成30年度借入れ 平成29年8月4日付けまでの協定変更を反映した債務返済計画 0.86%
令和元年度当初借入れ 平成30年8月6日付けまでの協定変更を反映した債務返済計画 0.45%
令和元年度補正借入れ 令和元年9月20日付けまでの協定変更を反映した債務返済計画 0.30%
ウ 税制上の支援

機構及び6会社は、道路の公共性等に鑑みて、図表2-4-14のとおり、税制上の支援を受けており、機構及び6会社の固定資産税や不動産取得税等のうち、道路法上の道路、道路予定区域内の土地に係る分等については、高速道路が債務の返済等が完了した後に無料開放されること、高速道路の料金に利潤を含めないことなどから非課税とされている。また、機構の所得税等については、機構が国又は地方公共団体の出資を受けている独立行政法人であるため、他の同様の独立行政法人と同様に非課税とされている。

h-2-4-14図表2-4-14 機構及び6会社が受けている税制上の支援

図表2-4-14 機構及び6会社が受けている税制上の支援

法人名 税制上の支援(非課税措置)
機構 ①所得税、②法人税、③登録免許税、④印紙税、⑤法人都道府県民税、⑥法人事業税、⑦不動産取得税(道路関係四公団から承継した不動産及び高速道路資産の貸付業務の用に供する不動産で政令で定めるもの)、⑧自動車取得税(道路関係四公団から承継した自動車)、⑨法人市町村民税、⑩固定資産税(高速道路資産の貸付業務の用に供する固定資産で政令で定めるもの)、⑪都市計画税(高速道路資産の貸付業務の用に供する固定資産で政令で定めるもの)、⑫事業所税
6会社 ①事業所税、②不動産取得税(6会社の事業の用に供する不動産で政令で定めるもの)、③固定資産税(6会社の事業の用に供する固定資産で政令で定めるもの)、④都市計画税(6会社の事業の用に供する固定資産で政令で定めるもの)
  • 注(1) 機構の⑦、⑩及び⑪並びに6会社の②、③及び④に記載の「政令で定めるもの」は、機構の業務又は6会社の事業の用に供する固定資産のうち、いずれも道路法上の道路、道路予定区域内の土地に係る分等であり、これらの非課税措置については、令和元年度末時点において、7年度までの時限措置とされている。
  • 注(2) 機構の法人都道府県民税及び法人市町村税の均等割部分について、横浜市に所在する機構本部については、神奈川県及び横浜市の条例に基づき非課税となっているが、大阪市に所在する機構関西業務部については非課税とはなっていない。
エ 債務承継による支援

第2の1(2)エ(イ)のとおり、国は、利便増進事業を実施するために、機構の債務2兆8804億余円を一般会計において承継している。機構は、国による債務承継を受けて、多額の貸付料を減額したりスマートICの整備等に係る債務を引き受けたりすることとし、6会社は、これらを受けて、料金割引を実施したり、スマートICを整備したりしている。

貸付料が減額されたり、機構の引受債務が増額されたりする場合、通常は、債務返済計画に影響を与えることになるが、利便増進事業は、貸付料の減額分とスマートICの整備による新たな引受債務の額とを合計した額の債務を国が承継することなどで、債務返済計画に長期的には影響を与えないことになっている。そこで、利便増進事業の実施のための国による債務承継を債務返済計画に反映する前後となる平成20年10月時点及び債務承継を初めて反映した21年3月時点の全ての路線網等の債務返済計画の合算値を比較したところ、図表2-4-15のとおり、債務の未償還残高の計画値は、20年度に国に債務等を承継して大幅に減少する一方で、その後の料金割引による貸付料の減額及びスマートICの整備による引受債務の増額により、29年度には利便増進事業を実施する前の債務返済計画と同じ水準となっていた。

したがって、国による債務承継により、機構は、債務返済計画に長期的には影響を与えることなく、第2の1(2)エ(イ)のとおり多額の貸付料の減額等を実施し、高速道路の利用者は広く料金割引等の恩恵を受けることができている。

図表2-4-15 国による債務承継前後の債務返済計画における債務の未償還残高の計画値の推移

図表2-4-15 国による債務承継前後の債務返済計画における債務の未償還残高の計画値の推移

(2) その他の支援

財政上の支援、金融上の支援、税制上の支援及び債務承継という直接的な国等による支援のほか、新直轄道路及び国等が施行する事業と各会社が施行する事業を組み合わせた道路整備の手法(以下「合併施行方式」という。)により整備される高速道路(以下「合併施行道路」という。)に係る事業についても、機構が将来負うことになった可能性がある債務額を減らすことにより機構の財務基盤の安定に資するものであることから、これらを国による支援と捉えて分析すると、次のような状況となっていた。

ア 新直轄方式による高速自動車国道の整備

「道路関係四公団の民営化について」において、料金収入により管理費を賄えないなど、道路関係四公団の民営化により新設される高速道路株式会社による整備及び管理が難しいと見込まれる路線又は区間を対象にして、同会社による整備の補完措置として、必要な高速道路を建設するために国と都道府県(政令指定都市の区域内における高速自動車国道にあっては、当該政令指定都市。以下同じ。)の負担(国と都道府県の負担割合は3対1)により、新直轄方式による事業を導入することとされ、これにより、有料道路の残事業費を約3兆円削減することとされた。

新直轄方式は、日本道路公団又はNEXCO3会社が有料道路として建設することとされていた高速自動車国道について、高速自動車国道法の規定に基づき整備計画を変更するなどして、整備の施行主体を国土交通大臣に切り替えて、国が新設、改築、維持、修繕、災害復旧その他の管理を自ら直轄事業として行う方式であるため、新直轄道路は、第1の2(2)エのとおり、通行者から通行料金を徴収することなく、無料で供用されることとなっている。

新直轄道路として整備される区間は、高速自動車国道法等の規定に基づき、関係都道府県の意見を聴取した上で国幹会議の議を経て国土交通大臣が定めることとなっている。国幹会議は、15年12月から令和2年3月までの間に計4回開催されており、そのうち第1回(平成15年12月開催)、第2回(18年2月開催)及び第4回(21年4月開催)の計3回の国幹会議の議(注40)を経るなどして、新直轄道路は、図表2-4-16のとおり、計35区間、延長計834㎞、事業費計3兆3044億円とされた。

(注40)
国幹会議においては、料金収入で管理費が賄えない又は有料道路の場合の費用対効果が1未満となる区間等については新直轄道路として国土交通大臣が整備することとされた一方、事業が一定程度進捗しており引き続きNEXCO3会社が整備を進めることにより整備効果の早期発現が期待できる区間等についてはNEXCO3会社が有料道路事業として整備することなどとされた。
h-2-4-16図表2-4-16 新直轄道路の一覧

図表2-4-16 新直轄道路の一覧

路線名 区間 延長(km) 事業費(億円) 新直轄方式に切り替えられた時期
(選定された国幹会議)
開通状況
北海道縦貫自動車道函館名寄線 七飯~大沼 10 914 平成18年2月(第2回) 未済
士別剣淵~名寄 24 337 15年12月(第1回) 未済
北海道横断自動車道黒松内北見線 足寄~北見 79 1072 15年12月(第1回) 一部
北海道横断自動車道黒松内釧路線 本別~釧路 65 2162 15年12月(第1回) 一部
東北横断自動車道釜石秋田線 遠野~宮守 9 206 15年12月(第1回)
宮守~東和 24 503 15年12月(第1回)
日本海沿岸東北自動車道 荒川胎内~朝日まほろば 20 753 18年2月(第2回)
あつみ温泉~鶴岡JCT 26 1085 15年12月(第1回)
酒田みなと~遊佐 12 310 21年5月(第4回) 未済
本荘~岩城 21 760 15年12月(第1回)
大館北~小坂JCT 14 533 15年12月(第1回)
東北中央自動車道相馬尾花沢線 福島JCT~米沢 28 1549 15年12月(第1回)
米沢~米沢北 9 334 15年12月(第1回)
東根~尾花沢 23 835 18年2月(第2回) 一部
中部横断自動車道 富沢~六郷 28 3154 18年2月(第2回) 一部
八千穂~佐久南 15 852 15年12月(第1回)
佐久南~佐久JCT 8 412 15年12月(第1回)
近畿自動車道松原那智勝浦線 南紀田辺~南紀白浜 14 853 18年2月(第2回)
南紀白浜~すさみ南 24 1324 15年12月(第1回)
近畿自動車道尾鷲多気線 尾鷲北~紀伊長島 21 1097 15年12月(第1回)
中国横断自動車道姫路鳥取線 佐用JCT~西粟倉 19 611 15年12月(第1回)
智頭~鳥取 24 952 15年12月(第1回)
米子~米子北 5 120 15年12月(第1回) 未済
中国横断自動車道尾道松江線 尾道JCT~三次東JCT 50 1506 15年12月(第1回)
三次東JCT~三刀屋木次 61 1777 15年12月(第1回)
四国横断自動車道阿南四万十線 阿南~小松島 10 459 15年12月(第1回) 未済
小松島~徳島東 8 1086 18年2月(第2回) 未済
須崎西~四万十町中央 22 806 15年12月(第1回)
四国横断自動車道愛南大洲線 宇和島北~西予宇和 16 543 15年12月(第1回)
九州横断自動車道延岡線 嘉島JCT~矢部 23 1002 15年12月(第1回) 一部
東九州自動車道 佐伯~蒲江 20 776 18年2月(第2回)
蒲江~北川 26 863 15年12月(第1回)
清武JCT~日南北郷 19 1622 15年12月(第1回) 一部
日南北郷~日南東郷 9 200 15年12月(第1回)
志布志~末吉財部 48 1676 15年12月(第1回) 一部
27区間 699 2兆4363 15年12月(第1回)
7区間 123 8371 18年2月(第2回)
1区間 12 310 21年5月(第4回)
計35区間 834 3兆3044
  • 注(1) 区間の始点又は終点の名称には、仮称のものが含まれている。
  • 注(2) 開通していない区間に係る事業費は令和元年度末時点のものである。
  • 注(3) 「開通状況」については、令和元年度末時点において、開通しているものは「済」、対象区間のうち一部開通しているものは「一部」、未開通のものは「未済」としている。
イ 合併施行方式による高速道路の整備

合併施行方式は、適正な料金水準の下で採算を確保しつつ、必要な道路を効率的に整備するために採用されているものである。国等が施行する事業については道路法の規定に基づく国道等の新設又は改築として、各会社が施行する事業については特措法の規定に基づく高速道路の新設又は改築として実施する方式(注41)であり、用地取得等を国等が公共事業として実施し、舗装工事等を各会社が有料道路事業として実施するなど、施行方法等については対象区間ごとに国等と各会社とで基本協定等を締結するなどして役割分担を定めている。

(注41)
合併施行方式は道路関係四公団の民営化以前から導入されていた方式であり、一般国道自動車専用道路に対して主に適用されていたものであったが、第4回国幹会議において、今後整備を行う高速道路は、有料が望ましいと考えられる区間であっても、交通需要推計の見直しによる将来の料金収入減に伴う厳しい償還見通しから、合併施行方式等の適切な料金水準の下で採算の確保に配慮した整備手法の導入が必要であるとされた。そして、第4回国幹会議の議を経るなどして、合併施行方式の場合の有料投資可能額(料金収入で償還することが可能な額)や有料道路ネットワークの連続性の観点から、東京外かく環状道路(関越~東名)、名古屋環状2号線(名古屋西~飛島)及び東関東自動車道水戸線(潮来~鉾田)の高速自動車国道3区間に対する合併施行方式の導入が決定された。

このように、合併施行方式は、高速道路の整備において、一部を公共事業として国等が実施し、残りの部分を各会社が有料道路事業として実施するものであることから、有料道路として、高速道路の通行者から通行料金を徴収することとなっている。そして、その料金収入により、各会社が有料道路事業として実施した整備に要した費用及び道路全体の維持管理に係る費用を賄うこととされており、国等が公共事業として実施した整備に要した費用は償還の対象とされていないことから、全てを有料道路事業として整備するよりも機構が最終的に負うこととなる債務の額が減ることとなる。

機構と各会社が締結する協定に定められている合併施行道路を有料道路事業の着手年度別にみると、図表2-4-17のとおり、民営化前に着手した路線は計9区間、延長計78.1㎞、民営化後に着手した又は着手予定の路線は計40区間、延長計471.7㎞、合計49区間、延長合計549.8㎞となっていた。

h-2-4-17図表2-4-17 協定に定められている合併施行道路

図表2-4-17 協定に定められている合併施行道路

有料道路事業
着手年度
路線名 区間 延長
(km)
昭和62 大阪市道高速道路淀川左岸線 海老江JCT~豊崎 4.4
平成4 一般国道1号(第二京阪道路) 京田辺松井IC~門真JCT 19.3
6 京都市道高速道路1号線・京都市道高速道路2号線 鴨川東~上鳥羽 1.9
7 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 鶴ヶ島JCT~川島IC 7.7
11 大阪府道高速大和川線 三宝JCT~三宅西 9.1
12 一般国道468号(横浜横須賀道路) 釜利谷JCT~戸塚IC 8.7
13 一般国道478号(京都縦貫自動車道) 沓掛IC~大山崎IC・JCT 9.8
15 一般国道468号(東京湾横断・木更津東金道路) 木更津東IC~木更津JCT 7.1
16 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 海老名JCT~相模原愛川IC 10.1
  9区間 78.1
17 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 八王子JCT~八王子西IC 9.2
18 都道首都高速品川目黒線 大井JCT~大橋JCT 9.4
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) つくば牛久IC~阿見東IC 12.0
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 高尾山IC~八王子JCT 2.0
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 白岡菖蒲IC~久喜白岡JCT 3.3
19 一般国道1号(第二京阪道路) 阪神高速8号京都線接続部~巨椋池IC 0.9
一般国道468号(東京湾横断・木更津東金道路) 東金JCT~茂原長南IC 21.6
20 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 阿見東IC~稲敷IC 6.0
一般国道475号(東海環状自動車道) 美濃関JCT~関広見IC 2.9
21 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 川島IC~桶川北本IC 5.7
一般国道481号(関西国際空港連絡橋) 関西国際空港IC~りんくうIC 4.6
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) つくば中央IC~つくばJCT 4.3
一般国道497号(西九州自動車道(佐世保道路)) 佐世保みなとIC~佐世保中央IC 2.9
一般国道47号(仙台北部道路) 利府しらかし台IC~富谷JCT 6.6
22 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 茅ヶ崎JCT~海老名南JCT 7.9
23 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 相模原相川IC~高尾山IC 14.8
一般国道468号(東京湾横断・木更津東金道路) 茂原長南IC~木更津東IC 21.3
一般国道47号(仙台北部道路) 富谷JCT~富谷IC 1.7
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 桶川北本IC~白岡菖蒲IC 10.8
一般国道475号(東海環状自動車道) 関広見IC~新四日市JCT 76.6
24 横浜市道高速横浜環状北西線 横浜青葉JCT~横浜港北JCT 7.1
関越自動車道新潟線等注(2) 大泉JCT~東名JCT 16.2
近畿自動車道伊勢線注(3) 名古屋西IC~飛島JCT 12.2
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 久喜白岡JCT~五霞IC 12.7
大阪府道高速大和川線 三宅西~三宅JCT 0.6
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 五霞IC~つくば中央IC 35.4
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 稲敷IC~大栄JCT 20.3
27 一般国道45号(三陸縦貫自動車道(仙塩道路)) 仙台港北IC~利府中IC(4車線化) 7.8
29 一般国道1号(淀川左岸線延伸部) 豊崎~門真JCT 8.7
一般国道2号(大阪湾岸道路西伸部) 六甲アイランド北~駒栄 14.5
一般国道17号(新大宮上尾道路) 与野JCT~上尾南 8.0
東関東自動車道水戸線 潮来IC~鉾田IC 30.9
30 一般国道2号(第二神明道路) 永井谷JCT~石ヶ谷JCT 6.2
一般国道24号(京奈和自動車道(大和北道路)) 奈良北IC~奈良IC 6.1
一般国道24号(京奈和自動車道(大和北道路)) 奈良IC~郡山下ツ道JCT 6.3
令和元 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 大栄JCT~松尾横芝IC 18.5
一般国道201号(八木山バイパス) 篠栗IC~穂波東IC(4車線化) 13.3
2 一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 栄IC・JCT~藤沢IC 7.3
3 一般国道1号(新湘南バイパス) 茅ヶ崎海岸IC~大磯IC 5.6
10 一般国道4号(東埼玉道路) 草加八潮IC・JCT~浦和野田線IC 9.5
40区間 471.7
合計 49区間 549.8

上記合併施行道路のうち、令和元年度末において、合併施行方式により新設の事業が行われているもの及び今後新設の事業が行われるものをみると、図表2-4-18のとおり、全体事業費に対する公共事業費の比率である公共事業費比率については36.3%から91.6%までとなっている。

h-2-4-18図表2-4-18 令和元年度末において新設の事業中及び今後新設の事業が行われる道路における公共事業費比率

図表2-4-18 令和元年度末において新設の事業中及び今後新設の事業が行われる合併施行道路における公共事業費比率

(単位:億円、%)
路線名 区間 延長
(km)
有料道路事業
着手年月日
完成予定 全体
事業費
A
公共
事業費
B
有料道路事業費 公共事業費比率
(B/A)×100
(令和元年度末時点において事業中)
一般国道468号(横浜横須賀道路) 釜利谷JCT~戸塚IC 8.7 平成13年3月10日 令和8年3月31日 5820 2118 3702 36.3
一般国道475号(東海環状自動車道) 関広見IC~新四日市JCT 76.6 平成24年3月1日 令和9年3月31日 9214 7115 2099 77.2
関越自動車道新潟線等 大泉JCT~東名JCT 16.2 平成24年5月17日 令和3年3月31日 1兆5975 6294 9681 39.3
近畿自動車道伊勢線 名古屋西IC~飛島JCT 12.2 平成24年5月17日 令和3年3月31日 2721 1017 1704 37.3
一般国道1号(淀川左岸線延伸部) 豊崎~門真JCT 8.7 平成29年4月1日 令和14年3月31日 4000 1760 2240 44.0
一般国道2号(大阪湾岸道路西伸部) 六甲アイランド北~駒栄 14.5 平成29年4月1日 令和14年3月31日 5000 2455 2545 49.1
一般国道17号(新大宮上尾道路) 与野JCT~上尾南 8.0 平成29年4月20日 令和9年3月31日 2000 1542 458 77.1
東関東自動車道水戸線 潮来IC~鉾田IC 30.9 平成29年7月1日 令和7年3月31日 1110 940 170 84.6
一般国道2号(第二神明道路) 永井谷JCT~石ヶ谷JCT 6.2 平成30年5月1日 令和7年3月31日 1900 1493 407 78.5
一般国道24号(京奈和自動車道(大和北道路)) 奈良北IC~奈良IC 6.1 平成30年5月1日 令和15年3月31日 2050 1268 782 61.8
奈良IC~郡山下ツ道JCT 6.3 平成30年5月1日 令和10年3月31日 850 399 451 46.9
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 大栄JCT~松尾横芝IC 18.5 平成31年4月1日 令和7年3月31日 1040 494 546 47.5
一般国道201号(八木山バイパス) 篠栗IC~穂波東IC 13.3 令和元年5月1日 令和12年3月31日 360 248 112 68.8
(令和元年度末時点において今後実施予定)
一般国道468号(首都圏中央連絡自動車道) 栄IC・JCT~藤沢IC 7.3 令和2年4月1日 令和7年3月31日 4600 3051 1549 66.3
一般国道1号(新湘南バイパス) 茅ヶ崎海岸IC~大磯IC 5.6 令和3年4月1日 令和6年3月31日 890 659 231 74.0
一般国道4号(東埼玉道路) 草加八潮IC・JCT~浦和野田線IC 9.5 令和10年4月1日 令和12年3月31日 2000 1833 167 91.6
16区間 248.6     5兆9530 3兆2686 2兆6844 54.9
  • 注(1) JCT名及びIC名には、仮称のものが含まれている。
  • 注(2) 事業費は令和元年度末時点のものである。
  • 注(3) 一般国道201号(八木山バイパス)については、4車線化事業である。