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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 令和3年5月

福島第一原子力発電所事故に伴い放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理状況等に関する会計検査の結果について


第2  検査の結果

1 福島第一原発事故に伴い放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理状況等に係る予算の執行状況

福島第一原発事故の発生に伴い事故由来放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理等に係る事業の経費には、国の一般会計及び東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)における東日本大震災に係る復旧・復興事業の予算として措置されているもの、一般会計及び復興特会における地方交付税交付金により予算が措置されているもの並びに地方公共団体により予算が措置されているものがある。

上記の事業を実施主体別にみると、各府省庁等が直接実施する事業(請負契約や委託契約による場合を含む。以下「直轄事業」という。)、国以外のものが国から経費の支援等を受けて実施する事業(以下「補助事業」という。)及び地方公共団体が自ら経費を負担して実施する事業(以下「地方単独事業」という。)の三つの事業類型がある。

そして、要請事項に共通する予算の執行状況を直轄事業及び補助事業に係る支出済額(注35)計5兆9902億余円と地方単独事業に係る支出済額計2243億余円の別にみると、次の(1)及び(2)のとおりであり、事業類型等別にみると、(3)のとおりである。

(注35)
支出済額 支出済額は、14府省庁等から把握した内容を基に整理しており、直轄事業及び補助事業については支出済額、地方単独事業については、地方公共団体における支出済額と、その財源となるなどしている特別交付税若しくは震災復興特別交付税の算定額又は東京電力から支払われた損害賠償金の額が同額となることから、これらの額を集計している。

(1) 直轄事業及び補助事業に係る予算の執行状況

東日本大震災に係る復旧・復興事業の予算は、平成23年度については、一般会計補正予算(第1号)、同(第2号)及び同(第3号)(以下、これらを合わせて「23年度補正予算」という。)で、24年度以降については復興特会で、それぞれ措置されている。

復興庁は、復興特会で実施する復旧・復興事業に係る事業費について、「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」(平成28年3月11日閣議決定)等に基づき、「被災者支援」「住宅再建・復興まちづくり」「産業・生業(なりわい)の再生」「原子力災害からの復興・再生」「震災復興特別交付税」「その他(復興債償還費等)」の六つの項目に整理しており、このうち「原子力災害からの復興・再生」に福島第一原発事故の発生に伴い事故由来放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理等に係る事業の経費が含まれる。そこで、23年度補正予算で事業費が措置された事業のうち、会計検査院において選定した「放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施」等の24年度以降に「原子力災害からの復興・再生」に整理される事業と同種の事業と、24年度から令和元年度までの復興特会で事業費が措置された事業のうち「原子力災害からの復興・再生」に整理される事業の支出済額を示すと、図表1-1のとおり、計5兆9902億余円となっている。そして、このうち要請事項である①「除染の取組等の状況」、②「放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理状況」、③「中間貯蔵施設に係る事業の実施状況」及び④「放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の最終処分への取組状況」に係る支出済額は、計4兆5887億余円となっている(各事業の支出済額等については、別図表1-1別図表1-2別図表1-3別図表1-4別図表1-5別図表1-6別図表1-7別図表1-8別図表1-9別図表1-10別図表1-11別図表1-12別図表1-13別図表1-14参照)。

なお、国の予算の執行に係る経費のうち、放射性物質汚染対処特措法に基づき国や地方公共団体等が行う汚染土壌等の除染等事業、放射性物質汚染廃棄物処理事業及び中間貯蔵施設に関する事業(以下、これらの3事業を合わせて「特措法3事業」という。)及び緊急実施除染事業に要した経費については、東京電力が負担すべき経費となっていることから、国から東京電力に対して求償(注36)を行うこととなっている。

(注36)
求償  放射性物質汚染対処特措法によれば、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関して、放射性物質汚染対処特措法に基づき講ぜられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)により関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとされている。このため、特措法3事業に係る費用は、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(平成25年12月20日閣議決定)等により、放射性物質汚染対処特措法に基づき復興予算として計上した上で、事業実施後に環境省等から東京電力に求償することとされている。また、放射性物質汚染対処特措法が施行される前から緊急的に実施されていた内閣府所管の緊急実施除染事業に係る費用は、「「除染に関する緊急実施基本方針」の迅速な実施について」(平成23年8月26日閣議決定)により、原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものについては、国が財政支出を行う範囲において、当該原子力事業者に求償することとするとされている。
h1-1図表1-1 直轄事業及び補助事業に係る支出済額(令和元年度末現在)

図表1-1 直轄事業及び補助事業に係る支出済額(令和元年度末現在)

事業等
区分
府省等名 事業類型 支出済額
(百万円)
要請事項注(3)



注(4)




注(5)
求償
等の
有無

注(6)


事業分類

注(7)




注(8)
除染等 4,568,414
除染の取組等及び除去土壌等の処理に関
する事業(直轄)
10府省等 直轄事業 1,472,580 ア 除染関係事業 1-1
注(2)
除染の取組等及び除去土壌等の処理に関
する事業(補助)
環境省 補助事業 1,493,532 ア 除染関係事業 1-2
農地除染対策実証事業及び森林除染等実
証事業
農林水産省 直轄事業 399 ア 除染関係事業 1-3
2,135
緊急実施除染事業等(直轄) 内閣府 直轄事業 13,624 ウ 混在事業 1-4
緊急実施除染事業(補助) 内閣府 補助事業 201,497 ウ 混在事業 1-4
3府省における放射線量低減のための事
業等
内閣府、文部科学、厚生労働両省 直轄事業 195 ア 除染関係事業 1-5
補助事業 17,981
3,014
放射性物質汚染廃棄物処理事業(直轄) 環境省 直轄事業 594,185 イ 廃棄物関係事業 1-6
放射性物質汚染廃棄物処理事業(補助) 環境省 補助事業 4,476 イ 廃棄物関係事業 1-7
放射性物質被害林産物処理支援事業 農林水産省 補助事業 2,310 イ 廃棄物関係事業 1-8
中間貯蔵施設事業 環境省 直轄事業 683,771 エ 中間貯蔵施設事業 1-9
その他 文部科学、農林水産、環境各省等 直轄事業 76,968 オ その他事業 -
補助事業 1,736
ふるさとの復活 734,431
特定復興再生拠点区域における除染等 環境省 直轄事業 93,563 ウ 混在事業 1-10
道路等の側溝堆積物の撤去等 復興庁 補助事業 5,453 イ 廃棄物関係事業 1-11
その他 復興庁 補助事業 635,414 オ その他事業 -
食の安全確保・健康不安対策 内閣府、文部科学、厚生労働、農林水 産、環境各省等 直轄事業 55,824 オ その他事業 -
補助事業 130,889
風評被害対策 文部科学、農林水産、経済産業、国土交通各省等 直轄事業 4,468 オ その他事業 -
補助事業 7,480
損害賠償関連 文部科学省 直轄事業 141,469 オ その他事業 -
研究開発拠点整備等 文部科学、農林水産、経済産 業、環境各省 直轄事業 38,411 オ その他事業 -
補助事業 109,174
その他 内閣府、復興庁、文部科学、農林水産、経済産業、環境各省等 直轄事業 181,142 オ その他事業 -
補助事業 18,518
5,990,224
うち要請事項①~④に係る項目の計 4,588,725
  • 注(1) 平成23年度は一般会計、24、25両年度は23年度の一般会計の繰越分及び復興特会計上額、26年度以降は復興特会計上額である。
  • 注(2) 「府省等名」欄における「10府省等」は、裁判所、内閣府、法務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、国土交通、環境、防衛各省を示している。
  • 注(3) ①は「除染の取組等の状況」、②は「放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理状況」、③は「中間貯蔵施設に係る事業の実施状況」、④は「放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の最終処分への取組状況」のうち、各項目の事業内容が該当するものに○を付している。
  • 注(4) 環境省等が実施している調査、研究、実証実験等の研究開発の財源となっている項目に○を付している(別図表1-13及び別図表1-14参照)。
  • 注(5)「その他」欄は帰還に向けた環境整備、原発避難者向け災害公営住宅の整備等の要請事項の①から④までに該当しない事業内容が含まれているものに○を付している。
  • 注(6) 「有」は東京電力に求償若しくは賠償請求しているもの又は今後求償する予定となっているもの、「検」は求償の要否を検討するとしているもの、「無」は求償しないとしているもの又は賠償請求しないとしているものを示している(別図表1-12参照)。
  • 注(7) 「事業分類」欄における「ア 除染関係事業」「イ 廃棄物関係事業」「ウ 混在事業」「エ 中間貯蔵施設事業」「オ その他事業」については、後述(3)参照
  • 注(8) 別図表において内訳を示している項目にそれぞれの別図表番号を示している。

(2) 地方単独事業に係る予算の執行状況等

地方公共団体の予算の執行に係る経費のうち、福島第一原発事故に伴い実施する地方単独事業の経費については、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月東日本大震災復興対策本部決定)によれば、地方負担分について地方交付税の加算を行うなどにより確実に地方の復興財源の手当を行うとされており、特別交付税又は震災復興特別交付税の算定の対象となっている。また、福島第一原発事故と相当因果関係がある損害等が生ずるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものであれば東京電力に対する賠償請求(注37)の対象となっている。このことを踏まえて、地方公共団体が平成23年度から令和元年度までの間に福島第一原発事故に伴い実施した地方単独事業を、更に特別交付税又は震災復興特別交付税の算定の対象としている事業(以下「地方単独事業(地方交付税交付金)」という。)と、特別交付税又は震災復興特別交付税の算定の対象としておらず、東京電力から損害賠償金が支払われている事業(以下「地方単独事業(東京電力賠償請求)」という。)の二つに区分すると、図表1-2のとおり、地方単独事業(地方交付税交付金)は計632億余円、地方単独事業(東京電力賠償請求)は計1610億余円、合計2243億余円となっている(都道府県別の状況等については別図表1-15別図表1-16別図表1-17参照)。

(注37)
賠償請求  文部科学省に設けられた原子力損害賠償紛争審査会が原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)第18条第2項第2号の規定に基づく指針として平成23年8月に策定した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」によれば、「本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものであれば、原子力損害に含まれると考える」とされている。そして、東京電力は、同中間指針等を踏まえて25年7月、29年5月及び令和2年4月に作成した「地方公共団体さまへの賠償に係るご案内」において、水道・工業用水道事業、下水道・集落排水事業、廃棄物処理事業、農畜産物等に係る検査費用、追加的費用、営業損害等の賠償項目について、必要かつ合理的な範囲が賠償対象となるとし、また、除染費用については、「放射性物質汚染対処特措法にもとづき適切に対応」するとして、これらに係る賠償金の請求を受け付けるとしている。これらを踏まえて、地方公共団体は、上記費用のうち自ら実施する事業に係る費用について、東京電力に対して賠償請求を行っている。
h1-2図表1-2 地方単独事業に係る支出済額(平成23年度~令和元年度)

図表1-2 地方単独事業に係る支出済額(平成23年度~令和元年度)

(単位:百万円)
区分 特別交
付税の
種類
項目
注(4)
平成
23年度
24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
合計
事業分類
注(5)



注(6)
地方単独事業(地方交付税交付金) 特別
交付税

注(2)
除染 525 813 35 31 6 1 0 - - 1,414 ウ 混在事業 1-15
風評被害等 4,120 1,596 947 727 630 521 459 423 435 9,862 オ その他事業
周辺地域対策 1,368 434 254 381 238 214 204 224 209 3,531
小計 6,014 2,845 1,236 1,140 876 737 663 648 645 14,808
震災復
興特別
交付税

注(3)
除染 814 2,967 330 1,117 257 125 9 2 2 5,627 ウ 混在事業 1-16
風評被害等 3,903 6,239 5,787 4,666 2,971 2,479 2,251 2,242 2,419 32,961 オ その他事業
子ども環境整備 - 1,467 1,431 1,147 1,022 1,418 1,247 1,130 996 9,862
小計 4,717 10,675 7,550 6,931 4,251 4,023 3,508 3,375 3,417 48,451
10,731 13,520 8,786 8,071 5,128 4,761 4,171 4,024 4,063 63,259
地方単独事業(東京電力賠償請求) 除染 - - - - 166 230 418 114 44 974 ア 除染関係事業 1-17
廃棄物 - 699 1,248 2,098 2,000 3,326 5,047 1,952 1,138 17,512 イ 廃棄物関係事業
上水道 - 1,661 4,352 3,286 4,967 3,839 1,439 1,783 509 21,840
下水道 64 4,118 3,260 8,496 8,347 21,794 9,821 4,797 1,795 62,496
上下水将来分 - - - - - 668 284 121 44 1,119
農畜産 - 0 273 358 675 381 320 109 81 2,199 オ その他事業
食品、給食、牧草等検査 - 205 958 782 1,015 839 580 308 327 5,017
その他 - 5 4,482 7,906 8,406 8,862 6,128 6,683 7,429 49,904
64 6,690 14,577 22,927 25,580 39,942 24,042 15,870 11,371 161,066
地方公共団体計 224,326
  • 注(1) 平成23年度から令和元年度までに係る支出済額は、地方単独事業(地方交付税交付金)については、特別交付税又は震災復興特別交付税の算定額を集計しており、地方単独事業(東京電力賠償請求)については、東京電力から支払われた損害賠償金の額を集計している。
  • 注(2) 「特別交付税」は、特別交付税のうち通常の地方交付税交付金の財源等の枠組みにより交付される特別交付税を示している。
  • 注(3) 「震災復興特別交付税」は、時限的な税制措置を講ずることなどにより、特別に財源を確保した上で、東日本大震災の災害復旧事業等に係る道府県及び市町村の負担額等について対処するために交付される特別交付税を示している。
  • 注(4) 「項目」欄は、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号)において、特別の財政需要として特別交付税の算定の対象となると定められた項目又は東京電力の賠償項目を示している。
  • 注(5) 「事業分類」欄における「ア 除染関係事業」「イ 廃棄物関係事業」「ウ 混在事業」「オ その他事業」については、後述(3)参照
  • 注(6) 別図表において内訳を示している項目にそれぞれの別図表番号を示している。

(3) 事業分類別及び事業類型別の予算の執行状況

(1)及び(2)のとおり、要請事項に共通する予算は、直轄事業、補助事業又は地方単独事業の三つの事業類型のいずれかで執行されており、地方単独事業は更に地方単独事業(地方交付税交付金)又は地方単独事業(東京電力賠償請求)の二つに区分できる。これらの事業を、その内容により、次のアからオまでの五つの事業分類により整理して、予算の執行状況を示すと、次のとおりである(以下、アからオまでの五つの事業を合わせて「除染関係事業等5事業」という。)。

ア 除染等の措置等として実施される事業(以下「除染関係事業」という。)
イ 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理として実施される事業(以下「廃棄物関係事業」という。)
ウ 除染関係事業と廃棄物関係事業を合わせて実施される事業(以下「混在事業」という。)
エ 中間貯蔵施設の整備や運営等に伴って実施される事業(以下「中間貯蔵施設事業」という。)
オ アからエまでの事業以外の「食の安全確保・健康不安対策」「風評被害対策」「子ども環境整備」等の事業(以下「その他事業」という。)

除染関係事業等5事業に係る平成23年度から令和元年度までの間の予算の執行状況をみると、支出済額は合計6兆2145億余円となっており、これを上記の事業分類別及び事業類型別にみると、図表1-3及び図表1-4のとおり、「ア 除染関係事業」が計2兆9908億余円(合計6兆2145億余円に占める割合48.1%)、「イ 廃棄物関係事業」が計7093億余円(同11.4%)、「ウ 混在事業」が計3157億余円(同5.1%)、「エ 中間貯蔵施設事業」が計6837億余円(同11.0%)、「オ その他事業」が計1兆5148億余円(同24.4%)となっている。

h1-3図表1-3 事業分類別及び事業類型別の支出済額等(令和元年度末現在)

図表1-3 事業分類別及び事業類型別の支出済額等(令和元年度末現在)

事業分類 事業類型 支出済額
(百万円)
全体に占
める割合
(%)
求償
・賠償
の有無
前述
注(1) 注(2)
ア 除染関係事業 直轄事業 1,475,311 48.1 一部有
補助事業 1,514,529 一部有
地方単独事業(地方交付税交付金) -
地方単独事業(東京電力賠償請求) 974
2,990,816
イ 廃棄物関係事業 直轄事業 594,185 11.4
補助事業 12,241 一部有
地方単独事業(地方交付税交付金) -
地方単独事業(東京電力賠償請求) 102,969
709,396
ウ 混在事業 直轄事業 107,188 5.1 一部有
補助事業 201,497
地方単独事業(地方交付税交付金) 7,042 一部有
地方単独事業(東京電力賠償請求) -
315,727
エ 中間貯蔵施設事業 直轄事業 683,771 11.0
オ その他事業 直轄事業 498,284 24.4
補助事業 903,214
地方単独事業(地方交付税交付金) 56,217
地方単独事業(東京電力賠償請求) 57,121
1,514,837
合計 直轄事業 3,358,741 (1)
補助事業 2,631,482
地方単独事業 224,326 (2)
地方単独事業(地方交付税交付金) 63,259
地方単独事業(東京電力賠償請求) 161,066
6,214,550
  • 注(1) 「支出済額」欄には、直轄事業及び補助事業については支出済額、地方単独事業(地方交付税交付金)については特別交付税又は震災復興特別交付税の算定額、地方単独事業(東京電力賠償請求)については東京電力から支払われた損害賠償金の額をそれぞれ記載している。
  • 注(2) (1)及び(2)において前述しているものにそれぞれの記述箇所を示している。

図表1-4 事業分類別の支出済額(令和元年度末現在)

図表1-4  事業分類別の支出済額(令和元年度末現在)

除染関係事業等5事業に係る支出済額について事業類型別にみると、図表1-5のとおり、直轄事業が計3兆3587億余円(合計6兆2145億余円に占める割合54.0%)、補助事業が計2兆6314億余円(同42.3%)、地方単独事業が計2243億余円(同3.6%)となっている。

図表1-5 事業類型別の支出済額(令和元年度末現在)

図表1-5  事業類型別の支出済額(令和元年度末現在)

直轄事業に係る支出済額について、前記のアからオまでの事業分類別にみると、図表1-6のとおり、「ア 除染関係事業」が計1兆4753億余円(合計3兆3587億余円に占める割合43.9%)、「イ 廃棄物関係事業」が計5941億余円(同17.7%)、「ウ 混在事業」が計1071億余円(同3.2%)、「エ 中間貯蔵施設事業」が計6837億余円(同20.4%)、「オ その他事業」が計4982億余円(同14.8%)となっている。

図表1-6 直轄事業における事業分類別の支出済額(令和元年度末現在)

図表1-6  直轄事業における事業分類別の支出済額(令和元年度末現在)

また、地方公共団体を含めた国以外のものが実施する事業(補助事業及び地方単独事業)に係る支出済額について、前記の事業分類別及び事業類型別にみると、図表1-7のとおり、「ア 除染関係事業」が計1兆5155億余円(合計2兆8558億余円に占める割合53.1%)、「イ 廃棄物関係事業」が計1152億余円(同4.0%)、「ウ 混在事業」が計2085億余円(同7.3%)、「エ 中間貯蔵施設事業」が0円(同0%)、「オ その他事業」が計1兆0165億余円(同35.6%)となっている。

図表1-7 地方公共団体を含めた国以外のものが実施する事業における事業分類別及び事業類型別の支出済額(令和元年度末現在)

図表1-7  地方公共団体を含めた国以外のものが実施する事業における事業分類別及び事業類型別の支出済額(令和元年度末現在)

2 除染の取組等の状況

(1) 除染の取組等の実施状況

ア 除染特別地域における除染等の実施状況
(ア) 環境本省及び福島地方環境事務所の体制整備等

環境本省では、福島第一原発事故発生後、放射性物質に汚染された廃棄物の適正処理についての検討が大臣官房廃棄物・リサイクル対策部において、放射性物質による環境の汚染への対処(除染及び中間貯蔵施設整備の推進全般)についての検討が水・大気環境局においてそれぞれ開始された。その後、平成25年9月には、復興庁等との連携を図り、除染、廃棄物処理及び中間貯蔵施設整備に関する技術的事項を総括する放射性物質汚染対処技術統括官が設置され、29年7月には、大臣官房廃棄物・リサイクル対策部、水・大気環境局及び放射性物質汚染対処技術統括官の3部局に所掌がまたがっていた除染、廃棄物処理及び中間貯蔵施設整備の業務を一元的に所掌する環境再生・資源循環局が新設された。

また、環境省は、24年1月の放射性物質汚染対処特措法の全面施行に伴い、除染を推進するとともに汚染された廃棄物の処理を進めるために、東北地方環境事務所の管理の下に、その所掌事務の一部を処理する担当官を配置する事務所として福島環境再生事務所を福島市内に設置し、その後、現地の意思決定の迅速化及び体制強化のために、29年7月に、同事務所を他の地方環境事務所と同格の地方環境事務所として位置付けて、福島地方環境事務所とした。

福島地方環境事務所は、除染特別地域での除染や除去土壌等の適正管理を推進するための事業、汚染された廃棄物の処理事業、これらに必要な除染特別地域の11市町村との調整実務等を実施しており、また、岩手、宮城、福島各県内の市町村が行う除染の計画や事業内容についての相談・調整等も実施している。なお、東北地方環境事務所は、青森、岩手、宮城、秋田、山形各県内で汚染された廃棄物が発生した場合の処理に関する事項について、関東地方環境事務所は、東京都、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県内の市区町村が行う除染に関する事項及び東京都、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、山梨、静岡各県内で汚染された廃棄物が発生した場合の処理に関する事項についてそれぞれ担当している。

(イ) 除染モデル実証事業、先行除染等の実施状況

国は、効率的、効果的な除染方法の開発や作業員の安全確保の方策を確立することなどを目的として除染モデル実証事業を実施したり、除染の活動拠点となる施設等を先行的に除染することなどを目的として先行除染を実施したりなどしている。

内閣府、農林水産、環境、防衛各省が実施した除染モデル実証事業、先行除染等の実施状況をみると、図表2-1のとおり、支払金額は計223億余円、除染実施数量は面積計449.5ha及び道路延長計300m、除去土壌の発生量は計約9万㎥、除染廃棄物の発生量は計約3万㎥となっている(事業等別の実施状況については別図表2-1別図表2-2別図表2-3別図表2-4別図表2-5参照)。

h2-1図表2-1 除染モデル実証事業、先行除染等の実施状況

図表2-1 除染モデル実証事業、先行除染等の実施状況

事業等名 府省名 除染実施市町村 期間 支払金額
(百万円)
除染実施数量 発生量(㎥)
除去
土壌
除染
廃棄物
除染モデル実証事業 内閣府 田村、南相馬両市、川俣、広野、楢葉、富岡各町、川内村、大熊、浪江両町、葛尾、飯舘両村(注) 平成
23年9月
~24年8月
11,993 208.4 ha 38,292 13,687
陸上自衛隊による
役場の先行除染
防衛省 楢葉、富岡、浪江各町、飯舘村 23年12月 (環境省が
購入した資
機材の額)
159
5.4 ha 1,475 424
先行除染 環境省 田村、南相馬両市、川俣、楢葉、富岡各町、川内村、大熊、浪江両町、葛尾、飯舘両村 24年1月
~26年3月
7,471 195.6 ha 26,843 13,118
農地除染対策実証事業 農林水産省 川俣町及び飯舘村 24年2月
~25年1月
2,135 40.0 ha 30,606 2,699
常磐自動車道除染
モデル実証事業
環境省 富岡、双葉、浪江各町 24年3月
~7月
586 300 m 774 365
22,346 面積 449.5 ha 97,990 30,293
道路延長 300 m
(ウ) 面的除染等の実施状況

a 面的除染及び常磐自動車道の除染の実施状況

第1の2(2)ア(ア)dのとおり、基本方針によれば、除染特別地域内の土壌等の除染等の措置は環境省が行うとされており、環境省は、除去土壌等の発生推計量に見合う仮置場(以下、除去土壌等を保管するための仮置場を「除染仮置場」という。)が確保されていたり、その見込みが立っていたりする箇所の周辺地区から順次除染の工事を発注して、除染に着手することにした(以下、除染モデル実証事業、先行除染等を踏まえて、環境省が本格的に実施した広域的な除染を「面的除染」という。)。

環境省は、面的除染の実施に当たって、特別地域内除染実施計画に定めた次の目標の達成に向けて、除染を行うこととしている。

① 追加被ばく線量が20mSv/年以上である地域については、当該地域を段階的かつ迅速に縮小することを目指すものとする。

② 追加被ばく線量が20mSv/年未満である地域については、長期的な目標として追加被ばく線量が1mSv/年以下となることなどを目指すものとする。

面的除染は、24年7月に田村市、楢葉町及び川内村で、同年8月に飯舘村で、25年3月に川俣町及び葛尾村で、同年6月に南相馬市及び大熊町で、同年8月に富岡町で、同年10月に浪江町で、27年4月に双葉町でそれぞれ開始されており、24年12月からは常磐自動車道の除染が開始されている。そして、28年度末までに除染特別地域の11市町村全てにおいて、帰還困難区域を除き面的除染が完了した。

面的除染完了年度までの面的除染等の実施状況をみると、図表2-2のとおり、実施数量は住宅、公共施設等(学校、公園、墓地及び大型施設を含む。以下同じ。)計23,047件、農地・牧草地(果樹園を含む。以下同じ。)計約8169万㎡、森林(法面、草地及び芝地を含む。以下同じ。)計約7603万㎡、道路計約1473万㎡で、住宅、公共施設等を除く実施総面積は計約1億7247万㎡となっている。

そして、原子力災害対策本部長は、第1の2(1)エに示した避難指示解除の要件を満たしたとして、26年3月から令和2年1月までの間に11市町村長に対して避難指示解除の指示を行い、これを受けて、11市町村長は、図表2-2のとおり、平成26年4月1日から令和2年3月4日までの間に居住制限区域及び避難指示解除準備区域を全て解除した。

h2-2図表2-2 面的除染等の実施状況及び避難指示解除の状況

図表2-2 面的除染等の実施状況及び避難指示解除の状況

市町村等名 面的除染等 居住制限区域
解除年月日
避難指示解除
準備区域
解除年月日
実施数量
住宅、公
共施設等
(件)
開始年月 完了年月 農地・牧草地
(㎡)
森林
(㎡)
道路
(㎡)
実施総面積
(㎡)
田村市 平成24年7月 25年6月 26年4月1日 150 1,434,959 2,754,318 294,737 4,484,014
南相馬市 25年6月 29年3月 28年7月12日 4,658 15,920,261 14,881,761 2,669,540 33,471,562
川俣町 25年3月 27年12月 29年3月31日 452 4,764,196 7,239,600 684,580 12,688,376
楢葉町 24年7月 26年3月 27年9月5日 2,625 8,140,673 7,164,270 1,675,212 16,980,155
富岡町 25年8月 29年1月 29年4月1日 6,204 7,484,010 7,899,491 1,678,400 17,061,901
川内村 24年7月 26年3月 28年6月14日 26年10月1日 161 1,331,400 2,009,504 380,414 3,721,318
大熊町 25年6月 26年3月 31年4月10日 213 1,684,840 1,952,095 306,996 3,943,931
双葉町 27年4月 28年3月 令和2年3月4日 97 1,035,000 62,000 84,200 1,181,200
浪江町 25年10月 29年3月 平成29年3月31日 5,910 14,025,920 4,851,891 2,086,200 20,964,011
葛尾村 25年3月 27年12月 28年6月12日 476 4,720,660 6,658,633 946,150 12,325,443
飯舘村 24年8月 28年12月 29年3月31日 2,101 21,151,876 20,564,508 3,272,421 44,988,805
常磐自動車道 24年12月 25年6月 - - - 659,736 659,736
23,047 81,693,795 76,038,071 14,738,586 172,470,452
  • 注(1) 帰還困難区域に係る除染は含まない。
  • 注(2) 川内村の居住制限区域については、平成26年10月1日に避難指示解除準備区域に見直された後、28年6月14日に避難指示解除準備区域の指定が解除された。
  • 注(3) 田村市、楢葉、双葉両町には、居住制限区域に指定された区域はない。
  • 注(4) 常磐自動車道について、このほかに側溝の除染を79km実施している。

面的除染等に係る契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量をみると、図表2-3のとおり、計33件、計8602億余円、除去土壌計約556万㎥及び除染廃棄物計約271万㎥となっている。

h2-3図表2-3 面的除染等に係る契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量

図表2-3 面的除染等に係る契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量

市町村等名 契約件数 (件) 支払金額 (百万円) 発生量(㎥)
除去土壌 除染廃棄物
田村市 1 6,478 11,134 33,656
南相馬市 5 138,557 395,119 564,011
川俣町 3 80,197 360,688 166,491
楢葉町 2 41,009 316,064 141,248
富岡町 4 178,846 1,208,076 337,817
川内村 2 8,970 29,768 55,787
大熊町 1 7,560 115,187 61,506
双葉町 1 1,175 109,365 9,412
浪江町 4 100,215 990,520 289,850
葛尾村 2 58,713 381,291 298,222
飯舘村 7 236,187 1,647,899 748,692
常磐自動車道 1 2,368 4,371 8,523
33 860,280 5,569,482 2,715,215
  • 注(1) 市町村等ごとの面的除染等の完了年度までの契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量を集計している。
  • 注(2) 面的除染に係る契約には廃棄物処理に係る事業を含めている場合があり、支払金額には廃棄物処理に係る金額も含まれる。

また、面的除染の地目等別の実施状況について、年度別の実施数量をみると、図表2-4のとおり、住宅、公共施設等及び農地・牧草地については平成27年度が最も多く、森林及び道路については25年度から28年度まで同程度となっている。

図表2-4 面的除染の年度別の実施数量の推移(平成24年度~28年度)

図表2-4 面的除染の年度別の実施数量の推移(平成24年度~28年度)画像

帰還困難区域については、令和元年12月20日に閣議決定された「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」によれば、「「たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組む」との決意の下、対応を検討する必要がある。このため、特定復興再生拠点区域外の帰還困難区域について、各地方公共団体の実態や意見を踏まえて、土地活用のあり方等も含めて検討を進める必要がある」とされている(「特定復興再生拠点区域における除染の実施状況」については、ウにおいて後述する。)。

そして、原子力災害対策本部は、2年12月25日に、「特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除について」において、「地元自治体の強い意向がある場合に、拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除に限定して適用される」とした上で、個別の土地活用案件ごとに、「空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下になることが確実であること及び土地活用を行う者等によって、必要な環境整備が実施されていることが確認できた場合、地元との十分な協議の上で、避難指示を解除する」とする仕組みを提示し、「帰還困難区域を抱える自治体の状況はそれぞれ大きく異なり、拠点区域外の復興・再生に向けた意向も異なるため、国は、各自治体の意向を十分に尊重し、この仕組みを運用していく」としている。

b フォローアップ除染等の実施状況

環境省は、平成25年9月の「除染の進捗状況についての総点検」において、除染実施後に除染後における効果が維持されているか確認し、「新たに汚染が特定された地点や仮に取り残しがあった地点があった場合は、放射線量の水準等に応じ、フォローアップの除染を行う」としている。そして、除染に係る事項について検討するために設置された環境回復検討会において27年12月に示された「フォローアップ除染の考え方について」によれば、「フォローアップ除染」について、次の考え方により取り組むこととされている。

① 除染後における効果が維持されていない箇所が確認された場合に、個々の現場の状況に応じて原因を可能な限り把握し、合理性や実施可能性を判断した上で実施することを基本とする。

② 政府の長期的な目標である追加被ばく線量が1mSv/年以下となることが確認できる場合にはフォローアップ除染の検討対象とはしない。

③ 居住制限区域においては、除染後も宅地内で年間積算線量が20mSv以下となることを確実に満たすとはいえない場合に、その原因となっている箇所に限定して、後述する事後モニタリングを待たずに面的除染直後にフォローアップ除染を実施する。

環境省は、上記の考え方に基づき、除染実施後において、除染後における効果が維持されていない箇所に対して、フォローアップ除染を実施している。

また、環境省は、面的除染の実施時には関係人の同意が得られずに除染が実施できなかった場合であっても、その後関係人の同意が得られた場合は除染を実施している。

面的除染完了後のフォローアップ除染等の実施状況をみると、図表2-5のとおり、実施数量は住宅、公共施設等計745件、農地・牧草地計約1659万㎡、森林計約400万㎡、道路計約94万㎡で、住宅、公共施設等を除く実施総面積は計約2154万㎡となっている。

h2-5図表2-5 フォローアップ除染等の実施状況

図表2-5 フォローアップ除染等の実施状況

市町村名 住宅、公
共施設等
(件)
実施総面積
(㎡)
農地・牧草地
(㎡)
森林
(㎡)
道路
(㎡)
南相馬市 71 2,062,098 1,434,504 377,194 3,873,797
川俣町 - 1,430,195 148,050 28,674 1,606,919
楢葉町 170 186,702 276,034 54,265 517,001
富岡町 348 579,413 811,440 18,514 1,409,367
川内村 9 - 133,628 - 133,628
大熊町 3 1,578 - - 1,578
双葉町 - - 187,053 - 187,053
浪江町 117 66,360 297,007 440,514 803,881
葛尾村 - 997,020 219,127 - 1,216,147
飯舘村 27 11,270,551 496,710 27,170 11,794,431
745 16,593,918 4,003,554 946,331 21,543,804

そして、市町村別のフォローアップ除染等に係る契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量をみると、図表2-6のとおり、計19件、計2108億余円、除去土壌計約68万㎥及び除染廃棄物計約30万㎥となっている。

h2-6図表2-6 フォローアップ除染等に係る契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量

図表2-6 フォローアップ除染等に係る契約件数、支払金額及び除去土壌等の発生量

市町村名 契約件数
(件)
支払金額
(百万円)
発生量(㎥)
除去土壌 除染廃棄物
南相馬市 3 59,367 44,908 9,138
川俣町 2 10,497 73,313 19,110
楢葉町 4 27,623 381,643 213,616
富岡町 2 11,404 16,937 11,722
川内村 2 1,795 3,668 1,852
大熊町 1 11,147 29,273 13,311
双葉町 1 7,302 18,042 293
浪江町 2 56,144 60,340 10,334
葛尾村 1 18,522 4,715 3,673
飯舘村 1 7,020 47,191 24,481
19 210,824 680,030 307,530
  • (注) 図表2-3に掲げた面的除染等に係る契約においてフォローアップ除染等を実施している場合があるが、支払金額及び発生量はフォローアップ除染等に係るもののみを集計している。

c 空間線量率の監視

環境省は、23年12月14日に、放射性物質汚染対処特措法に基づく除染の方法等を体系的に取りまとめた「除染関係ガイドライン」を策定して公表している(最終改定30年3月)。そして、同ガイドラインによれば、除染の実施に当たっては、除染の効果を確認するために、除染の作業の開始前と終了後に空間線量率等を測定することとされており、測定箇所については、人が比較的多くの時間を過ごすことが想定される場所等(例えば、戸建住宅の場合は2点から5点程度)を設定することとされている。また、放射性物質の放射能は、時間の経過とともに自然減衰したり、降雨等の自然要因による放射性物質の移動等に伴い減少する効果(以下「ウエザリング」という。)があったりするとされている。

環境省は、除染の実施に当たり、除染の工事に係る特記仕様書等において、事前測定として、除染の作業の開始前に、地表面から1mの高さの位置での空間線量率等を測定し、事後測定として、除染の作業の終了後に、事前測定と同一箇所かつ同一位置で空間線量率等を測定することを定めている。ただし、事後測定の結果が事前測定を下回っていない場合であっても、仕様書に沿って除染の作業を実施していれば契約の履行としては完了とされることになっている。

また、環境省は、除染後における効果が一定期間以上維持されているかを確認するために、事後モニタリングとして、除染の作業の終了後、初回は除染作業終了後約半年から1年までの間に、その後は必要に応じて、広域的な範囲を対象に別途発注して事前測定及び事後測定と同一箇所かつ同一位置で空間線量率等を測定することにしており、この事後モニタリングは30年度まで実施された。

上記の事前測定、事後測定及び事後モニタリングの流れを示すと、図表2-7のとおりである。

図表2-7 事前測定、事後測定及び事後モニタリングの流れ

図表2-7 事前測定、事後測定及び事後モニタリングの流れ画像

そして、環境省が25年度から30年度までの間に除染特別地域において実施した事後モニタリングは、図表2-8のとおり、契約件数計29件、契約金額計70億0486万余円、これらに係る測定延べ箇所数は合計1,737,742か所となっている。

h2-8図表2-8 事後モニタリングの実施状況(平成25年度~30年度)

図表2-8 事後モニタリングの実施状況(平成25年度~30年度)

測定箇所
市町村名
契約
件数
(件)
契約金額
(千円)
測定延べ箇所数(か所)
住宅、公共
施設等
農地・牧草
森林 道路
田村市 2 137,181 11,513 8,837 12,725 4,693 37,768
南相馬市 3 1,395,036 205,917 93,024 37,226 43,521 379,688
川俣町 3 266,760 15,191 19,713 16,238 7,702 58,844
楢葉町 3 969,840 139,153 23,244 16,166 20,303 198,866
富岡町 3 1,233,144 186,348 38,285 40,185 51,057 315,875
川内村 3 216,216 10,591 10,083 6,394 25,840 52,908
大熊町 2 113,832 7,833 4,029 6,271 4,837 22,970
双葉町 1 29,376 1,566 2,311 411 1,601 5,889
浪江町 3 1,306,800 217,734 51,843 13,794 41,080 324,451
葛尾村 3 521,283 63,605 30,578 28,483 26,483 149,149
飯舘村 3 815,400 86,159 42,972 35,609 26,594 191,334
29 7,004,868 945,610 324,919 213,502 253,711 1,737,742

そして、環境省は、除染特別地域において実施した23年11月から28年11月までの事前測定の結果、23年12月から29年11月までの事後測定の結果、26年10月から30年8月までの事後モニタリングの結果(各市町村において広域的な範囲で実施している最新の結果)に基づき、除染による地表面から1mの高さの空間線量率の低減効果を評価して、その結果を「除染・事後モニタリングの結果」として公表している。

環境省が公表した評価結果によれば、図表2-9のとおり、事前測定からの空間線量率の低減した割合(以下「低減率」という。)は、事後測定においては、住宅、公共施設等は60%、農地・牧草地は59%、森林は30%、道路は44%となっていることから、除染の効果を確認することができたとされている。また、事後モニタリングにおいては、住宅、公共施設等は76%、農地・牧草地は72%、森林は55%、道路は64%となっていることから、事後モニタリングの時点まで除染後における効果が維持されていることを確認することができたとされている。

h2-9図表2-9 環境省が公表した低減効果

図表2-9 環境省が公表した低減効果

地目等 対象
箇所数
(か所)
事前測定に
おける平均
空間線量率
(μSv/h)
事後測定に
おける平均
空間線量率
(μSv/h)
事後モニタ
リングにお
ける平均空
間線量率
(μSv/h)
低減率
(A-B)/A
(%)
低減率
(A-h)/A
(%)
A B C D E
住宅、公共施設等 261,153 1.39 0.56 60 0.33 76
農地・牧草地 119,226 1.45 0.59 59 0.41 72
森林 93,938 1.59 1.11 30 0.72 55
道路 86,915 1.21 0.67 44 0.44 64
561,232 平均 52 平均 70
  • (注) 環境省公表資料を基に会計検査院が作成した。

そこで、会計検査院において、環境省から、上記の評価に用いた事前測定、事後測定及び事後モニタリングに係る測定データの提出を受けて、上記の評価について検証したところ、次のような結果となった。

(a) 測定箇所別の低減率による検証結果

測定箇所ごとに、事前測定、事後測定及び事後モニタリングの空間線量率を比較して集計したところ、図表2-10のとおり、対象箇所数561,232か所(事後モニタリングを実施した延べ箇所数1,737,742か所のうち同一箇所かつ同一位置で事前測定及び事後測定を実施していて比較可能な箇所)のうち、事後測定の結果が事前測定を下回っていないものが計12,894か所(対象箇所数の2.2%。同図表のパターン④)、事後モニタリングの結果が事後測定を下回っていないものが計50,004か所(同8.9%。同図表のパターン③49,749か所及びパターン⑧255か所の合計)見受けられた。環境省によれば、これらは、測定環境の影響や、水みち、雨だれ等の地形的要因等による局所的な空間線量率の変動等の影響によると考えられるとのことであったが、これらの影響を定量的に把握するのは困難であり、同省においても把握していないことから、除染の効果又は除染後における効果の維持が確認できなかった。

h2-10図表2-10 事前測定、事後測定及び事後モニタリングの比較(単位:か所)

図表2-10 事前測定、事後測定及び事後モニタリングの比較(単位:か所)

(単位:か所)
評価等
比較等
対象
箇所数
事後測定が
事前測定を
下回ってい
るもの
事後測定が
事前測定を
下回ってい
ないもの
事後モニタ
リングが事
後測定を下
回っている
もの
事後モニタ
リングが事
後測定を下
回っていな
いもの
事後モニタ
リングが事
後測定を下
回っている
もの
事後モニタ
リングが事
後測定を
下回っていな
いもの
事後モニタ
リングが事
前測定を下
回っている
もの
事後モニタ
リングが事
前測定を下
回っていな
いもの
(事前>事後) (事後>モニ) (事後≦モニ) (事前≦事後) (事後>モニ) (事前>モニ) (事前≦モニ) (事後≦モニ)
パターンNo
測定箇所数 561,232 548,338 498,589 49,749 12,894 12,639 12,018 621 255
除染の効果 確認できた 確認できなかった
除染後にお
ける効果の
維持
確認できた 確認できなかった 確認できなかった
  • 注(1) ( )内の「事前」は事前測定を、「事後」は事後測定を、「モニ」は事後モニタリングをそれぞれ示す。
  • 注(2) パターン⑤から⑦までの除染後における効果の維持については、事後モニタリングが事後測定を下回っているものの、事後測定が事前測定を下回っていないものであって除染の効果が確認できなかったことから「-」としている。

環境省は、上記事後モニタリングの結果が事後測定を下回っていない50,004か所については、初回の事後モニタリングの結果を確認するなどした上でフォローアップ除染の要否を検討し、必要に応じてフォローアップ除染を実施しているとしている。

一方、環境省は、広大な地域の線量低減を短期間に実施する必要があったことから面的除染を優先して実施し、上記事後測定の結果が事前測定を下回っていない12,894か所については、事後測定の結果を直ちにフォローアップ除染の要否の検討に活用するのではなく、事後モニタリングの結果を待ってフォローアップ除染の要否を検討していた。

このように、事後測定の結果については、「除染・事後モニタリングの結果」において全体的な除染の効果の評価に用いられているものの、個々の測定箇所における空間線量率の上昇等への対策には直ちに用いられていない状況となっていた。しかし、事後測定の結果は、個々の測定箇所における除染後の空間線量率を示したものであり、これを直ちに用いていれば地目等ごとの線量を低減させるためのきめ細かい対応等が可能となったと考えられる。(注38)

(注38)
環境省は、現在実施している特定復興再生拠点区域の除染において、面的除染の経験を踏まえて、従来のように土壌を削り取って覆土した後に事後測定を行うのではなく、土壌を削り取った段階で早期に線量測定を行い、必要に応じて追加で土壌を削り取るなどのフォローアップ除染と同等の対策を実施するよう、線量測定の実施時期を試行的に変更して測定結果を直ちに活用することとしている。

(b) 測定間隔別の低減率による検証結果

前記のとおり、放射性物質の放射能は、自然減衰したり、ウエザリングがあったりするとされていることから、事前測定と事後測定の測定間隔が長くなるに従って、自然減衰やウエザリングの影響も大きくなると考えられる。

そこで、事前測定から事後測定までの測定間隔別に測定箇所数を集計したところ、図表2-11のとおり、測定間隔は90日未満から730日以上と大幅な差が生じていて、測定間隔の平均は245日で、180日以上の箇所が全体の57.2%、1年以上の箇所が全体の22.0%を占めていた。このように、測定間隔が一定でなく、また、測定間隔が長くなっていることについて、環境省は、事後測定は周辺の除染の実施状況にも影響されることから、ある程度まとまった範囲の除染が終了した後に実施しているためであるとしている。

h2-11図表2-11 事前測定から事後測定までの測定間隔別の測定箇所数

図表2-11 事前測定から事後測定までの測定間隔別の測定箇所数

対象
箇所数
(か所)
測定
間隔
の平

(日)
測定間隔別の測定箇所数
90日
未満
(か所)
割合
(%)
90日
以上
180日
未満
(か所)
割合
(%)
180日
以上
270日
未満
(か所)
割合
(%)
270日
以上
365日
未満
(か所)
割合
(%)
365日
以上
450日
未満
(か所)
割合
(%)
450日
以上
540日
未満
(か所)
割合
(%)
540日
以上
630日
未満
(か所)
割合
(%)
630日
以上
730日
未満
(か所)
割合
(%)
730日
以上
(か所)
割合
(%)
561,232 245 122,099 21.8 118,344 21.1 105,910 18.9 91,184 16.2 53,512 9.5 35,405 6.3 13,152 2.3 7,067 1.3 14,559 2.6
180日以上の箇所が全体に占める割合 57.2
1年以上の箇所が全体に占める割合 22.0

上記のとおり、除染の効果に係る前記環境省の評価結果については、測定間隔が短い箇所と長い箇所のデータが混在していたり、また、事前測定から事後測定までの測定間隔が平均245日と比較的長くなっていたりしていて、自然減衰やウエザリングに起因する線量低減効果が相当程度影響していると思料された。

除染は自然の中で実施されるものであり、作業自体にも一定の期間を要することなどから、自然減衰やウエザリングに起因する線量低減効果の影響を完全に排除して、除染の効果のみを厳密に測定することは困難であるものの、その影響をできるだけ排除して除染の効果を統一的に確認できるよう、環境省は、現在実施している特定復興再生拠点区域の除染の工事において事後測定を実施するに当たって、測定間隔を可能な限り一定にして速やかに測定を実施するなどの手法を検討する必要がある。

イ 除染実施区域における除染の実施状況

除染実施区域における除染等の措置等については、第1の2(2)ア(イ)dのとおり、国が管理する土地については国が、都道府県が管理する土地については当該都道府県が、市町村が管理する土地については当該市町村が、これら以外の土地については当該土地が所在する市町村がそれぞれ実施するなどとなっている。

そして、福島県は、内閣府及び環境省から交付された放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(以下「低減対策緊急補助金」という。)を財源として福島県民健康管理基金を造成して、同基金を取り崩して除染等の措置等を自ら実施したり、除染等の措置等を実施する市町村等に対して、同基金を取り崩して交付金を交付したりしている。また、福島県以外で除染等の措置等を実施する県、市町村等に対しては、環境省から低減対策緊急補助金が交付されている。

除染実施区域のうち福島県内の市町村等別に除染の実施状況をみると、図表2-12のとおり、住宅計311,157戸、公共施設等計10,480施設、農地・牧草地計31,231ha、森林計4,541ha、道路計14,010kmとなっており、環境省は、29年度末までに36市町村の除染実施区域全域で除染が完了したとしている。

h2-12図表2-12 福島県内の除染実施区域における除染の市町村等別実施状況

図表2-12 福島県内の除染実施区域における除染の市町村等別実施状況

市町村等名 住宅
(戸(棟))
公共施設等
(施設)
農地・牧草地
(ha)
森林
(ha)
道路
(km)
福島市 92,730 1,514 5,740 1,528 2,322
郡山市 84,492 1,040 4,555 47 2,810
いわき市 7,514 392 138 7 201
白河市 14,720 342 80 73 388
須賀川市 10,088 492 3,408 0 692
相馬市 1,888 150 314 21 17
二本松市 16,555 966 3,433 1,038 1,024
田村市 4,856 327 1,529 住宅に含む 218
南相馬市 18,180 166 3,899 64 912
伊達市 11,803 1,285 3,003 72 946
本宮市 8,618 462 129 146 610
桑折町 4,576 799 932 13 196
国見町 3,085 669 862 29 231
川俣町 6,015 165 565 468 357
大玉村 2,155 150 414 住宅に含む 123
鏡石町 340 49 162 - 28
天栄村 2,021 134 - 49 94
会津坂下町 1,188 50 - - 1
湯川村 481 41 - - 42
会津美里町 355 20 - - 0
西郷村 7,610 373 238 129 207
泉崎村 1,917 62 - 13 77
中島村 269 13 - 13 0
矢吹町 999 31 132 - 21
棚倉町 360 30 - 12 1
鮫川村 79 5 61 15 -
石川町 5 15 35 4 0
玉川村 25 9 - - -
平田村 - 5 152 - -
浅川町 - 6 - - -
古殿町 24 6 9 0 0
三春町 4,887 246 326 33 324
小野町 41 6 - 0 1
広野町 1,750 46 315 234 121
川内村 1,070 20 570 459 245
新地町 250 22 52 1 -
県実施分 153 265 - 35 1,635
国実施分 58 107 170 28 151
311,157 10,480 31,231 4,541 14,010
  • (注) 空間線量率を測定した結果、除染が必要ないと判断され、除染を実施していないものは含まれていない。

また、除染実施区域のうち福島県外における除染の実施状況をみると、図表2-13のとおり、住宅計44,086戸、公共施設等計5,715施設、農地・牧草地計約910万㎡、森林計約237万㎡、道路計約154kmとなっており、環境省は、28年度末までに57市町村の除染実施区域全域で除染が完了したとしている(市町村別の内訳については別図表2-6参照)。

h2-13図表2-13 福島県外における除染の実施状況

図表2-13 福島県外における除染の実施状況

県名 市町村数 住宅
(戸(棟))
公共施設等
(施設)
農地・牧草地
(㎡)
森林(㎡) 道路(m)
岩手県 3 115 409 - - 200
宮城県 8 5,446 355 494,800 1,519,753 45,580
茨城県 19 2,132 921 - 7,186 3,465
栃木県 7 26,731 1,674 8,522,400 831,760 4,527
群馬県 9 1,423 86 91,889 15,392 1,876
埼玉県 2 - 150 - - 3,409
千葉県 9 8,239 2,120 - - 95,486
57 44,086 5,715 9,109,089 2,374,091 154,543
  • 注(1) 除染実施区域において、国及び県が自ら管理する土地について実施した除染も含まれている。
  • 注(2) 空間線量率を測定した結果、除染が必要ないと判断され、除染を実施していないものは含まれていない。

なお、図表2-12及び図表2-13には、除染実施区域に所在する国の宿舎、庁舎、独立行政法人のほ場、国有林、国道等について各省等が実施した除染の実施数量が含まれており、省等別の除染の実施状況をみると、住宅計61戸、公共施設等計112施設、農地・牧草地計約185万㎡、森林計約39万㎡、道路計約160kmとなっている(省等別の内訳については別図表2-7参照)。

ウ 特定復興再生拠点区域における除染の実施状況

ア(ウ)aのとおり、除染特別地域における面的除染については、帰還困難区域を除いて28年度末までに完了している。また、イのとおり、除染実施区域における除染については、福島県内では29年度末までに、福島県外では28年度末までにそれぞれ完了している。

一方、帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域における除染は、27年6月に開始され、現在も引き続き実施中であり、その実施状況をみると、次のとおりとなっている。

(ア) 関係人の同意状況

除染に着手するためには、土地所有者等の関係人を把握して、住民説明会等を行った上で、関係人に対して、建物等への立入りの了解、除染方法の確認及び除染の同意を得る必要がある。

特定復興再生拠点区域における除染の同意対象者数、同意取得者数及び同意取得率については、令和元年度末現在において6町村で同意対象者計7,770人に対して同意取得者は計7,089人となっており、同意取得率は91.2%となっている。そして、町村により、同意取得が開始された時期に差があるものの、いずれの町村においても元年度末現在における同意取得率は8割以上となっている(年度別町村別の内訳については別図表2-8参照)。

(イ) 除染の実施状況

環境省は、避難が長期化せざるを得ないと見込まれる地域の復興に係る取組を検討するための基礎データを収集することを目的として、平成25年10月に、帰還困難区域において除染モデル実証事業を実施している。この事業は、双葉、浪江両町の帰還困難区域内計6か所において、帰還困難区域における除染による空間線量率の低減効果を把握するものであり、環境省は、同事業の結果、住宅、公共施設等、農地・牧草地及び道路の空間線量率(測定高1m又は50cm)については、除染により50%から80%程度の低減がみられたとしている。

特定復興再生拠点区域においては、環境省が除染を実施しており、特別地域内除染実施計画に位置付けられている道路等の広域的インフラについては、復興再生計画の認定前から放射性物質汚染対処特措法に基づき先行的に除染を実施していて、大熊町において27年6月に、双葉町において28年9月に、富岡町において29年5月にそれぞれ除染を開始している。

また、29年12月以降、環境省は、福島復興特措法に基づき、復興再生計画に従って除染を実施していて、大熊、双葉両町において29年度に、富岡、浪江両町及び葛尾、飯舘両村において30年度にそれぞれ除染を開始している。

6町村の除染の実施状況をみると、図表2-14のとおり、令和元年度末までの除染実施面積は計約903万㎡となっており、6町村とも年度ごとの除染実施面積はおおむね増加傾向となっている。

h2-14図表2-14 特定復興再生拠点区域における除染の実施状況(平成27年度~令和元年度)

図表2-14 特定復興再生拠点区域における除染の実施状況(平成27年度~令和元年度)

町村名 特定復興再生拠点
区域における除染
の対象面積(㎡)
(令和2年12月末現在)
除染実施面積(㎡) (参考)
帰還困難区
域の面積
(百万㎡)
平成
27年度
28年度 29年度 30年度 令和
元年度
注(1)
富岡町 3,040,000 - - 369,051 183,949 816,000 1,369,000 約8
大熊町 7,270,000 234,983 444,961 790,056 1,198,000 1,011,200 3,679,200 約49
双葉町 4,190,000 - 171,263 243,737 492,000 465,700 1,372,700 約49
浪江町 4,640,000 - - - 289,700 1,409,100 1,698,800 約180
葛尾村 790,000 - - - 5,000 369,000 374,000 約16
飯舘村 1,260,000 - - - 43,400 498,600 542,000 約11
21,190,000 234,983 616,224 1,402,844 2,212,049 4,569,600 9,035,700 注(2) 約313
  • 注(1) 帰還困難区域の面積について、内閣府は百万㎡単位で整理しており、㎡単位の計数は把握していないとしている。
  • 注(2) 帰還困難区域は、このほかに特定復興再生拠点区域が設定されていない南相馬市に約24百万㎡ある。
  • 注(3) 平成29、30両年度の富岡町、27年度から29年度までの大熊町、28、29両年度の双葉町における住宅、公共施設等分の年度ごとの除染実施面積は、件数のみ把握していることから、住宅、公共施設等の除染実施面積の合計を各年度の件数で案分して算出したものである。

また、除染の対象面積に対する元年度末現在の除染の進捗率を町村別にみると、図表2-15のとおり、32.8%から50.6%までとなっており、6町村の合計では42.6%となっている。

図表2-15 特定復興再生拠点区域における除染の進捗状況

図表2-15 特定復興再生拠点区域における除染の進捗状況画像

そして、元年度末までの特定復興再生拠点区域における除染による除去土壌等の発生量をみると、図表2-16のとおり、除去土壌計757,077㎥、除染廃棄物計187,496㎥で、合計944,573㎥となっていて、上記のとおり除染の進捗率が42.6%であることからみて、今後、同区域においては、更に多量の除去土壌等の発生が見込まれる。

h2-16図表2-16 特定復興再生拠点区域における除去土壌等の発生量の状況(平成27年度~令和元年度)

図表2-16 特定復興再生拠点区域における除去土壌等の発生量の状況(平成27年度~令和元年度)

(単位:㎥)
町村名 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
除去
土壌
除染
廃棄物
除去
土壌
除染
廃棄物
除去
土壌
除染
廃棄物
除去
土壌
除染
廃棄物
除去
土壌
除染
廃棄物
除去
土壌
除染
廃棄物
富岡町 - - - - 28,272 6,466 17,430 7,832 55,613 12,305 101,315 26,603
大熊町 11 3 124,482 18,024 78,609 25,281 73,239 18,265 87,581 24,681 363,922 86,254
双葉町 - - 18,450 2,724 39,055 6,369 26,472 2,752 69,447 5,052 153,424 16,897
浪江町 - - - - - - 10,191 2,939 84,237 23,878 94,428 26,817
葛尾村 - - - - - - 34 180 14,317 9,860 14,351 10,040
飯舘村 - - - - - - 2,031 3,708 27,606 17,177 29,637 20,885
11 3 142,932 20,748 145,936 38,116 129,397 35,676 338,801 92,953 757,077 187,496
944,573

特定復興再生拠点区域における除染に係る契約及び支払の状況をみると、図表2-17のとおり、元年度末までの6町村の合計で、契約件数は計16件、契約金額は計1333億余円、特別地域内除染実施計画に従って先行的に実施されている除染に係る支払金額は計362億余円、復興再生計画に従って実施されている除染に係る支払金額は計677億余円となっている。

なお、環境省は、特別地域内除染実施計画に従って先行的に実施している除染については、放射性物質汚染対処特措法に基づき実施していることから、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」等により、放射性物質汚染対処特措法に基づき復興予算として計上した上で、事業実施後にその費用を東京電力に求償しており((注36)参照)、復興再生計画に従って実施している除染については、第1の2(2)ウのとおり国の負担において行っている。

h2-17図表2-17 特定復興再生拠点区域における除染に係る契約及び支払の状況(平成27年度~令和元年度)

図表2-17 特定復興再生拠点区域における除染に係る契約及び支払の状況(平成27年度~令和元年度)

町村名 契約
件数
(件)
契約金額
(百万円)
除染の区分 支払金額(百万円)
平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
富岡町 3 20,860 特別地域内
除染実施計画
- - 1,490 3,338 1,147 5,976
復興再生計画 - - - 3,417 7,925 11,342
- - 1,490 6,755 9,073 17,319
大熊町 3 54,608 特別地域内
除染実施計画
10,017 2,023 12,033 - 29 24,102
復興再生計画 - - 7,020 4,968 7,468 19,456
10,017 2,023 19,053 4,968 7,497 43,559
双葉町 4 30,716 特別地域内
除染実施計画
- 2,324 3,379 14 13 5,732
復興再生計画 - - 6,532 581 12,915 20,029
- 2,324 9,912 595 12,929 25,761
浪江町 2 15,757 特別地域内
除染実施計画
- - - - 366 366
復興再生計画 - - - 7,495 1,793 9,288
- - - 7,495 2,160 9,655
葛尾村 2 6,929 特別地域内
除染実施計画
- - - - 106 106
復興再生計画 - - - 51 3,134 3,186
- - - 51 3,241 3,293
飯舘村 2 4,488 特別地域内
除染実施計画
- - - - - -
復興再生計画 - - - 772 3,716 4,488
- - - 772 3,716 4,488
16 133,358 特別地域内
除染実施計画
10,017 4,348 16,903 3,352 1,663 36,284
復興再生計画 - - 13,552 17,285 36,954 67,792
10,017 4,348 30,456 20,638 38,618 104,077
  • (注) 契約金額及び復興再生計画に従って実施している除染に係る支払金額については、除染に係る費用のみを集計することができないため、建物解体工事等に係る費用が含まれている。

環境省は、除染の実施に当たり、除染の作業の開始前に空間線量率等の事前測定を、除染の作業の終了後に空間線量率等の事後測定をそれぞれ実施している。特定復興再生拠点区域における地目等別の事前測定及び事後測定における平均空間線量率、低減率等をみると、図表2-18のとおり、住宅、公共施設等の低減率は66.0%、農地・牧草地の低減率は54.9%となっており、全ての地点を平均すると低減率は55.8%となっている。

h2-18図表2-18 特定復興再生拠点区域における除染の地目等別の事前測定及び事後測定における平均空間線量率、低減率等

図表2-18 特定復興再生拠点区域における除染の地目等別の事前測定及び事後測定における平均空間線量率、低減率等

地目等 対象箇所数

(か所)
事前測定に
おける平均
空間線量率
(μSv/h)
A
事後測定に
おける平均
空間線量率
(μSv/h)
B
低減率

(%)
(A-B)/A
住宅、公共施設等 46,826 2.14 0.72 66.0
農地・牧草地 5,054 3.05 1.37 54.9
森林 4,327 2.39 1.91 20.1
道路 17,634 2.21 1.34 39.2
73,841 2.23 0.99 平均 55.8
  • (注) 令和元年度末までに完了した除染に係る契約について、地表面から1mの高さの位置で空間線量率を測定した73,841か所を対象としている。

(2) 除染適正化に向けた取組状況

平成25年1月に、環境省が発注した除染の工事において、楢葉町下小塙工区内の個人宅のベランダにおける除染で高圧水洗浄の洗浄水を飛散させたり、飯舘村二枚橋郵便局における除染で高圧水洗浄の洗浄水を側溝に流入させたりするなど、除染が適正に行われていないとの報道がなされた。これを契機として、環境省は、同月に、事実関係の確認のための調査や適正な除染の推進方策の検討を行う除染適正化推進本部を設置した。そして、事実関係の確認のために、事業者等へのヒアリング、現地調査等を行った結果、上記の報道内容は事実であると判断して、洗浄水が飛散するなどした箇所等必要な部分の除染を事業者に実施するよう指示し、再発防止策を策定して報告するよう求めた。

また、環境省は、今後の不適正事案の防止を図るために、同月に、除染適正化プログラムを作成し、再発防止策として、①事業者の責任施工の徹底、②幅広い管理の仕組みの構築及び③環境省の体制強化を実施しており、図表2-19のとおり、基本的な認識や意識の向上、作業手順等の遵守等の再発防止策を講じている(除染事業における不適切な事案については、参議院決算委員会が決算に関する決議において内閣に対する警告を行っており、その内容については別図表2-9参照)。

h2-19図表2-19 再発防止策の取組状況(平成24年度~令和元年度)

図表2-19 再発防止策の取組状況(平成24年度~令和元年度)

項目 対応状況
①事業者の責任施工の徹底
事業者の責任施工の貫徹
基本的な認識や意識の向上、作業手順等の遵守

・請負業者に対して、工程会議の場を活用して、共通仕様書等の内容について周知徹底

・不適正除染事案を分かりやすく説明したパンフレットを作成

必要な記録等の作成及び保管 施工予定箇所と作業実績の報告方法、作業日報の記載事項等について見直し
問題が発生した場合の事実確認とその対応策の実施 問題発生時は速やかに事実確認を行い、発注者に対して対応策や再発防止策を講ずるよう随時指導
厳正な処分の実施

・作業指揮者を環境省の工事又は役務の入札参加資格を持っている会社から選出するよう義務化

・業界団体(一般社団法人日本建設業連合会等)に対して会員企業へ法令遵守等を要請するよう依頼

・南相馬市の国直轄除染における除染廃棄物の不法投棄事案については受注者の入札参加資格の停止6週間を実施

除染に関する抜き打ち的検査の強化 平成24年度52回、25年度182回、26年度206回、27年度573回、 28年度289回、29年度170回、30年度46回、令和元年度40回、計1,558回の確認調査を抜き打ち的に実施
施工管理に関する規程類の見直し 施工予定箇所と作業実績の報告方法、作業日報の記載事項等について見直し
除染適正化推進委員会の設置 平成24年度1回、25年度2回、27年度1回、28年度1回、29年度1回、計6回実施
②幅広い管理の仕組みの構築
地元自治体との連携による工事状況の確認や情報交換 県と市町村により「国直轄除染の実施状況確認調査」を実施した。また、国直轄除染の除染仮置場について住民自らが監視員として管理状況の監視を実施した。
地元住民に対する除染事業の日時、場所等の公表 ホームページ「今週の福島」「データでみる福島再生」を活用した進捗状況の公表
第三者による除染効果の事後モニタリング (本報告書第2の2(1)ア(ウ)cにおいて実施状況を記述)
新技術を活用した放射性物質の除去状況の確認 平成25年2月からγカメラ測定を一部実施
③環境省の体制強化
環境省の監督体制の抜本的強化 除染の現場を巡回する監督員の人数
環境省職員 委託監督員        
平成27年4月 99 111 210
28年4月 88 106 194
29年4月 82 73 155
30年4月 108 74 182
31年4月 121 72 193
上記体制でほぼ毎日巡回を実施
また、環境省の監督職員等に対して必要な支援及び補助を行う支援業務を委託
不適正除染110番の新設 平成25年1月から30年3月末までに115件の通報実績
通報等を一元管理するためのルール作り 不適正除染に関する通報があった場合、情報集約、対応方針の決定、現地調査、調査結果に基づく対応、整理表の作成、事案の公表等を行うこととする体制を整備
迅速な現地調査等の対応

環境省は、再発防止策として設置した除染適正化推進委員会において、請負業者による除染の実施状況、施工管理体制等の報告を定期的に聴取して、不適切な対応が見受けられる場合には改善を求めるとともに、適正な除染の推進に資する情報を公開している。29年6月開催の第6回除染適正化推進委員会の資料によると、①不適正除染事例及び②事業実施に当たっての法令遵守、地元の安心の確保及び信頼向上に関して問題が指摘されている事例として、環境省が発注した契約に係る7件が報告されている(別図表2-10参照)。

一方、環境省は、図表2-19の取組状況のうち不適正除染110番の通報実績や通報等の一元管理については、29年度に除染が完了して不適正事案の件数が減少しているとして、30年度以降、通報があった場合の情報集約を行っておらず、事案の公表も行っていなかった。しかし、30年度以降の通報実績をみると5件と一定数見受けられることから、不適正な除染を防止する取組を効果的に機能させることが必要である。

したがって、現在実施している特定復興再生拠点区域の除染の工事についても、不適正除染に関する通報があった場合、引き続き現地調査、調査結果に基づく対応等を行うとともに、情報集約や事案の公表を行うなどして、再発防止に取り組む必要がある。

3 放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の処理状況

(1) 放射性物質に汚染された廃棄物の処理状況

放射性物質に汚染された廃棄物には、図表3-1のとおり、主に①汚染廃棄物対策地域内にある災害廃棄物等の対策地域内廃棄物、②放射能濃度が8,000Bq/kg超で、特別な管理が必要であるとして環境大臣に指定された焼却灰等の指定廃棄物、③土壌等の除染等の措置に伴い生じた落葉等の除染廃棄物及び④除染廃棄物以外の特定一般廃棄物及び特定産業廃棄物を含む農林業系廃棄物等のその他の廃棄物がある。

図表3-1 放射性物質に汚染された廃棄物の種類

図表3-1 放射性物質に汚染された廃棄物の種類画像

福島県内におけるこれらの廃棄物に係る主な処理の流れは、図表3-2のとおりであり、除染廃棄物を除いた対策地域内廃棄物(以下、(1)において除染廃棄物を除く。)のうち、再生利用可能なものについては再生利用を行うことになっている。それ以外の対策地域内廃棄物のうち、可燃物については、国が設置するなどした焼却施設で焼却処理を行った後、発生した焼却灰等の放射能濃度が10万Bq/kg以下の場合には管理型最終処分場で埋立処分を行い、10万Bq/kg超の場合は中間貯蔵施設に搬入することになっており、不燃物については、放射能濃度が10万Bq/kg以下の場合には管理型最終処分場で埋立処分を行うことになっている。また、除染特別地域において発生した除染廃棄物については、国が設置するなどした焼却施設で焼却処理を行った後、発生した焼却灰等は中間貯蔵施設に搬入することになっている。そして、除染実施区域において発生した除染廃棄物及びその他の廃棄物については、国が処理を行う一部の廃棄物を除き市町村等が処理を行うこととなっている(各廃棄物の保管状況については、別図表3-1参照)。

図表3-2 福島県内における汚染廃棄物の主な処理のフロー図

図表3-2 福島県内における汚染廃棄物の主な処理のフロー図画像

また、福島県外における汚染廃棄物に係る主な処理の流れは、図表3-3のとおり、指定廃棄物については当該指定廃棄物を排出した都県内で既存の管理型処分場の活用等により国が処理を行うこととなっており、除染廃棄物及びその他の廃棄物については、市町村等が処理を行うこととなっている(各廃棄物の保管状況については、別図表3-1参照)。

図表3-3 福島県外における汚染廃棄物の主な処理のフロー図

図表3-3 福島県外における汚染廃棄物の主な処理のフロー図画像

ア 対策地域内廃棄物

対策地域内廃棄物については、図表3-2のとおり、原則として対策地域内廃棄物仮置場で保管し選別した後、再生利用が可能なものについては再生利用を行い、その他の可燃物については焼却処理を行い、不燃物については、放射能濃度が10万Bq/kg以下のものについては管理型最終処分場で埋立処分を行うことになっている。

対策地域内廃棄物仮置場における対策地域内廃棄物の搬入量、搬出量及び保管量の推移をみたところ、図表3-4のとおり、令和元年度末までに搬入されたものは計2,620,983tで、そのうち2,142,081tが処理等のために搬出されており、図表3-5のとおり、元年度末現在で計28か所の対策地域内廃棄物仮置場において計478,901tが保管されている。

h3-4図表3-4 対策地域内廃棄物仮置場への搬入量、搬出量及び保管量の推移(平成24年度~令和元年度)

図表3-4 対策地域内廃棄物仮置場への搬入量、搬出量及び保管量の推移(平成24年度~令和元年度)

(単位:t)
年度 搬入量 搬出量 保管量
(年度末現在)
平成24年度 7,000 221 6,779
25年度 102,656 5,753 103,681
26年度 345,951 143,814 305,817
27年度 357,794 281,820 381,791
28年度 587,386 467,974 501,203
29年度 525,517 525,004 501,716
30年度 326,409 449,925 378,200
令和元年度 368,268 267,567 478,901
2,620,983 2,142,081
h3-5図表3-5 対策地域内廃棄物仮置場の箇所数及び対策地域内廃棄物の保管量(令和元年度末現在)

図表3-5 対策地域内廃棄物仮置場の箇所数及び対策地域内廃棄物の保管量(令和元年度末現在)

所在市町村名 対策地域内廃棄物
仮置場の箇所数
(か所)
対策地域内廃棄物
の保管量
(t)
南相馬市 1 96,874
川俣町 3 9,176
楢葉町 1 24,196
富岡町 4 30,503
大熊町 1 44,600
双葉町 3 60,986
浪江町 3 146,149
葛尾村 3 13,358
飯舘村 9 53,056
28 478,901
イ 指定廃棄物

元年度末現在で指定廃棄物一時保管場所、指定廃棄物仮置場等に保管されている指定廃棄物は、図表3-6のとおり、10都県で計1,825件の計298,538tとなっており、指定廃棄物の種類別にみると、焼却灰等の数量が252,733tと最も多く、全体のおおむね8割を占めている。また、指定廃棄物のうち、16条報告に基づき指定されたものが1,217件の216,720t、18条申請に基づき指定されたものが608件の81,818tとなっている。

h3-6図表3-6 指定廃棄物一時保管場所、指定廃棄物仮置場等に保管されている指定廃棄物の都県別の種類別保管状況(令和元年度末現在)

図表3-6 指定廃棄物一時保管場所、指定廃棄物仮置場等に保管されている指定廃棄物の都県別の種類別保管状況(令和元年度末現在)

都県名
種類
焼却灰等 浄水発生土
(上水道)
浄水発生土
(工業用水道)
下水汚泥
注(1)
農林業系廃棄物
注(2)
その他 合計
件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t)
岩手県 16条 7 85 7 85
18条 2 226 1 1 3 227
9 312 1 1 10 313
宮城県 16条 2 194 2 194
18条 7 820 4 2,274 5 2 16 3,096
9 1,014 4 2,274 5 2 18 3,290
福島県 16条 1,009 208,214 22 1,108 7 347 95 2,788 1,133 212,458
18条 35 35,677 14 1,336 2 131 15 5,288 13 2,578 392 13,490 471 58,503
1,044 243,891 36 2,445 9 479 110 8,077 13 2,578 392 13,490 注(3)1,604 注(3)270,962
茨城県 16条 14 1,016 14 1,016
18条 6 1,363 2 925 1 0 3 229 12 2,519
20 2,380 2 925 1 0 3 229 26 3,535
栃木県 16条 20 1,379 2 60 22 1,439
18条 4 1,067 12 667 8 2,200 27 8,137 6 21 57 12,093
24 2,447 14 727 8 2,200 27 8,137 6 21 79 13,533
群馬県 16条
18条 6 545 1 127 5 513 1 0 13 1,186
6 545 1 127 5 513 1 0 13 1,186
千葉県 16条 38 1,525 38 1,525
18条 10 1,194 1 542 16 452 27 2,189
48 2,719 1 542 16 452 65 3,714
東京都 16条 1 1 1 1
18条 1 980 1 0 2 980
2 981 1 0 3 981
神奈川県 16条
18条 3 2 3 2
3 2 3 2
新潟県 16条
18条 4 1,017 4 1,017
4 1,017 4 1,017
合計 16条 1,089 212,222 26 1,362 7 347 95 2,788 1,217 216,720
18条 58 40,510 43 4,388 3 258 31 9,470 45 12,990 428 14,200 608 81,818
1,147 252,733 69 5,750 10 606 126 12,258 45 12,990 428 14,200 1,825 298,538
  • 注(1) 下水汚泥を焼却し発生した焼却灰等を含む。
  • 注(2) 稲わら等
  • 注(3) 福島県における保管量1,604件の270,962tのうち、610件の81,601tについては、管理型最終処分場での埋立処分や、中間貯蔵施設への搬入等が行われている。
  • 注(4) 指定廃棄物の指定通知書又は指定廃棄物保管場所変更届出書に記載された保管場所の所在地により、都県別に整理している。
(ア) 16条報告の状況

16条報告が行われた施設数の推移をみると、図表3-7のとおり、平成23年度には442施設であったが、特定産業廃棄物処理施設の多くが16条調査及び16条報告の免除を受けたことなどから27年度までに計99施設に減少し、その後は、緩やかな減少傾向で推移し、令和元年度には計93施設となっており、近年は指定基準に適合しない廃棄物が生ずる可能性がある施設の数は少なくなってきている。そして、指定基準(8,000㏃/㎏以下であること)に適合しない廃棄物についてみると、福島県外では、平成27年度以降報告されていない一方で、福島県内では、令和元年度まで毎年度報告されており、元年度の16条報告計339件のうち73件(21.5%)を占めている。また、放射能濃度別の16条報告の件数の推移をみると、図表3-7のとおり、16条調査及び16条報告が免除されるための確認の要件の一つである800㏃/㎏を下回っていたものは、平成24年度では16条報告計1,438件のうち533件(37.1%)であったが、令和元年度では同1,008件のうち753件(74.7%)となっていて、指定基準を大きく下回っている報告の割合が増加している。

環境省自らが実施する16条調査と16条報告の関係についてみると、環境省が設置するなどしている仮設焼却施設のうち特定一般廃棄物処理施設又は特定産業廃棄物処理施設に該当する施設は、別図表0-3に示す16条調査の対象施設であり、その設置者である環境大臣は、放射性物質汚染対処特措法に基づき環境大臣に対して16条報告を行わなければならないこととなっている。

しかし、環境省は、平成24年度から令和元年度までの間に特定一般廃棄物処理施設又は特定産業廃棄物処理施設である9仮設焼却施設で生じた焼却灰等のうち、45件の26,407tについては、16条調査を行っていたものの、一般廃棄物及び産業廃棄物以外の特定廃棄物等のみの焼却処理を実施していた期間は16条報告が不要であると誤解していたことなどから、16条報告を行っていなかった。このため、これらの焼却灰等のうち、放射能濃度が8,000㏃/㎏を超えていた35件の15,166tは、指定廃棄物とされないまま管理され、保管されていた。

上記の検査結果を踏まえて、環境省は、上記45件の26,407tについて、3年2月までに16条報告を行い、このうち、上記35件の15,166tについて、環境大臣は、3年3月までに、指定廃棄物に指定した。

h3-7図表3-7 16条報告施設数及び放射能濃度別16条報告件数の推移(平成23年度~令和元年度)

図表3-7 16条報告施設数及び放射能濃度別16条報告件数の推移(平成23年度~令和元年度)

年度 平成
23年度
24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和
元年度
16





特定産業廃棄物
処理施設等(注)
140 78 18 15 11 13 8 10 9
福島県内 16 13 6 6 4 5 5 5 4
福島県外 124 65 12 9 7 8 3 5 5
特定一般廃棄物
処理施設
174 112 87 76 77 78 77 78 82
福島県内 20 17 18 18 19 22 24 26 26
福島県外 154 95 69 58 58 56 53 52 56
水道施設、
工業用水道施設
83 63 26 15 8 1 9 - 1
福島県内 12 12 5 2 2 1 3 - 1
福島県外 71 51 21 13 6 - 6 - -
公共下水道、
流域下水道
44 17 10 3 3 1 1 7 1
福島県内 13 7 8 2 2 1 1 2 -
福島県外 31 10 2 1 1 - - 5 1
集落排水施設 1 1 - - - - - - -
福島県内 1 1 - - - - - - -
福島県外 - - - - - - - - -
施設計 442 271 141 109 99 93 95 95 93
福島県内 62 50 37 28 27 29 33 33 31
福島県外 380 221 104 81 72 64 62 62 62






16




8,000㏃/kg超 46 242 141 98 50 129 117 83 73
福島県内 36 189 123 97 50 129 117 83 73
福島県外 10 53 18 1 - - - - -
800㏃/kg超~
8,000㏃/kg以下
293 663 458 328 258 290 217 187 182
福島県内 49 133 140 156 150 220 165 151 157
福島県外 244 530 318 172 108 70 52 36 25
800㏃/kg以下 297 533 677 623 693 633 647 747 753
福島県内 35 64 56 49 79 61 80 102 109
福島県外 262 469 621 574 614 572 567 645 644
16条報告計 636 1,438 1,276 1,049 1,001 1,052 981 1,017 1,008
福島県内 120 386 319 302 279 410 362 336 339
福島県外 516 1,052 957 747 722 642 619 681 669

16条調査のために実施される事故由来放射性物質の濃度を測定するための検査機関への委託等に必要な経費に係る地方公共団体等の負担に対する国の支援についてみると、環境省は、平成23年度から令和元年度までの間に、廃棄物処理施設モニタリング等事業費補助金(平成29年度以前は廃棄物処理施設モニタリング事業費補助金)を計15億5834万余円交付している(都県別の内訳については別図表3-2参照)。

(イ) 福島県内の指定廃棄物の保管等の状況

福島県内の指定廃棄物については、図表3-2のとおり、原則として、指定廃棄物仮置場等で保管し選別した後、可燃物については焼却処理を行い、不燃物については、放射能濃度が10万Bq/kg以下のものについては管理型最終処分場で埋立処分を行い、10万Bq/kg超のものについては中間貯蔵施設に搬入することになっている。

福島県内で23年度から令和元年度までの間に指定された指定廃棄物に係る指定件数及び指定数量は、図表3-8のとおり、計1,734件の計293,936tとなっており、近年は、仮設焼却施設等での焼却処理により発生する焼却灰等の量の増加等に伴い、指定件数及び指定数量共に増加傾向にある。

h3-8図表3-8 福島県内の指定廃棄物に係る指定件数及び指定数量(平成23年度~令和元年度)

図表3-8 福島県内の指定廃棄物に係る指定件数及び指定数量(平成23年度~令和元年度)

年度 指定件数(件) 指定数量(t)
平成23年度 11 2,887
24年度 325 96,086
25年度 159 19,784
26年度 143 13,119
27年度 120 12,601
28年度 210 23,209
29年度 194 34,281
30年度 251 37,957
令和元年度 321 54,007
1,734 293,936
  • (注) 各年度の指定件数及び指定数量については、既に焼却処理が行われ現存しないもの及び指定廃棄物を焼却処理し発生した焼却灰等を再度指定廃棄物として指定したものも含まれており、計欄は各年度の指定件数及び指定数量の延べ数である。

そして、図表3-9のとおり、指定が行われた指定廃棄物1,734件の293,936tのうち、130件の22,974tについては元年度末までに焼却施設へ搬入されているため、元年度末現在で福島県内に保管されている指定廃棄物は1,604件の270,962tとなっている。また、元年度末現在の保管量のうち、488件の46,387tは管理型最終処分場等へ、122件の35,214tは中間貯蔵施設への搬入が行われており、708件の105,685tが一時保管者により指定廃棄物一時保管場所において、286件の83,675tが環境省により指定廃棄物仮置場等において保管されている。

h3-9図表3-9 福島県内における指定廃棄物に係る保管場所別の件数及び数量(令和元年度末現在)

図表3-9 福島県内における指定廃棄物に係る保管場所別の件数及び数量(令和元年度末現在)

保管場所等 件数(件) 数量(t)
累計指定廃棄物 1,734 293,936
焼却施設搬入 注(1) 130 22,974
令和元年度末保管 1,604 270,962
管理型最終処分場等
注(2)
488 46,387
中間貯蔵施設 122 35,214
指定廃棄物一時保管場所 708 105,685
指定廃棄物仮置場、仮設焼却施設等 286 83,675
  • 注(1) 焼却施設に搬入された指定廃棄物については、焼却処理が行われるため、令和元年度末保管の件数及び数量に含めていない。
  • 注(2) 管理型最終処分場で埋立てを行うための前処理であるセメント固型化を行う施設に搬入された指定廃棄物を含む。

福島県内では、国が引き続き特定廃棄物等の焼却処理を行っており、これらの焼却処理により生じた焼却灰等についても16条報告が行われることがあり、当該焼却灰等の放射能濃度が8,000Bq/kg超であれば指定廃棄物として指定されることから、今後も継続的に指定廃棄物の発生が見込まれる。

(ウ) 福島県外の指定廃棄物の保管等の状況

福島県外の特定廃棄物は全て指定廃棄物であり、環境省が平成24年3月に策定した「指定廃棄物の今後の処理の方針」によれば、国は、指定廃棄物が多量に発生して保管がひっ迫している都道府県において、必要な処理施設等を確保することを目指すとされている。そして、同年10月以降、8,000㏃/kg超の廃棄物の発生量が多く特に保管状況がひっ迫している宮城県等5県(注39)において市町村長会議等を開催し、このうち宮城、栃木、千葉各県については長期管理施設等の詳細調査候補地を提示しているが、これまでのところ詳細調査の実施には至っていない。このため、福島県外の指定廃棄物は、発生箇所等において一時保管が継続している状況である。

(注39)
宮城県等5県  宮城、茨城、栃木、群馬、千葉各県

そこで、福島県外の指定廃棄物について、都県別に23年度末から令和元年度末までの保管量の推移をみたところ、図表3-10のとおり、平成26年度以降は27,000t程度で推移しており、指定廃棄物の保管量はほとんど変動していなかった。なお、岩手、宮城、山形、千葉、静岡各県においては、放射性物質汚染対処特措法施行規則第14条の2の規定に基づき指定取消しの措置が行われた廃棄物があるため、前年度と比べて指定廃棄物としての保管量が減少している場合がある。これらの指定取消しが行われた廃棄物については、廃掃法等の処理基準等に基づいて、一般廃棄物については市町村の処理責任、産業廃棄物については排出事業者の処理責任の下でそれぞれ必要な保管及び処分を行うこととなっている。

h3-10図表3-10 福島県外における指定廃棄物に係る都県別の保管量の推移(平成23年度末~令和元年度末)

図表3-10 福島県外における指定廃棄物に係る都県別の保管量の推移(平成23年度末~令和元年度末)

都県名 平成23年
度末
24年度末 25年度末 26年度末 27年度末 28年度末 29年度末 30年度末 令和元年
度末
岩手県 保管量(t) 114 357 468 475 475 475 475 589 313
宮城県 保管量(t) 264 3,252 3,270 3,384 3,405 3,412 3,360 3,291 3,290
山形県 保管量(t) 2 2 2 2
茨城県 保管量(t) 159 3,448 3,532 3,532 3,532 3,535 3,535 3,535 3,535
栃木県 保管量(t) 597 9,508 10,499 13,529 13,533 13,533 13,533 13,533 13,533
群馬県 保管量(t) 140 748 1,186 1,186 1,186 1,186 1,186 1,186 1,186
千葉県 保管量(t) 408 2,690 3,663 3,686 3,714 3,706 3,710 3,710 3,714
東京都 保管量(t) 980 981 981 981 981 981 981 981 981
神奈川県 保管量(t) 2 2 2 2 2 2 2
新潟県 保管量(t) 797 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017 1,017
静岡県 保管量(t) 8 8 8 8 8 8 8
保管量(t) 3,462 22,015 24,636 27,809 27,862 27,861 27,813 27,857 27,576
対前年度
増減率(%)
535.8 11.9 12.9 0.2 △ 0.0 △ 0.2 0.2 △ 1.0
  • (注) 指定廃棄物の指定通知書又は指定廃棄物保管場所変更届出書に記載された保管場所の所在地により、都県別に整理している。

また、環境省は、一時保管者が指定廃棄物を国等に引き渡すまで保管するに当たり、指定廃棄物を保管する施設等の関係者や周辺住民への影響が発生することなく、安全かつ適正に保管できるよう、保管施設等の整備等に係る費用に対する支援を行うことを目的として、一時保管者等と委託契約を締結しており、23年度から令和元年度までに計339件の契約を締結して、計78億3386万余円を一時保管者等に支払っている(指定廃棄物の一時保管に係る委託契約の都県別の契約件数及び支払金額の状況については別図表3-3参照)。

ウ 除染廃棄物及びその他の廃棄物
(ア) 除染廃棄物

福島県内において発生した除染廃棄物については、図表3-2のとおり、焼却処理を行った後、発生した焼却灰等については中間貯蔵施設等へ搬入することになっている。

一方、福島県外において発生した除染廃棄物については、放射性物質汚染対処特措法施行規則等によれば、特定一般廃棄物として廃掃法及び放射性物質汚染対処特措法の処理基準に基づき、市町村等が処理することとされている。そして、除染実施者である市町村等は、除染実施区域において、除去土壌等を一時的に保管するための除染仮置場を設置して除去土壌等を保管したり、除染仮置場を確保できない場合は土壌等の除染等の措置を実施した現場に除去土壌等を現場保管したりしている(以下、保管している場所を「現場保管場所」という。)。

「除染実施区域内の土地等に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた除染廃棄物の処理の推進について」(平成27年10月環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長、産業廃棄物課長及び水・大気環境局放射性物質汚染対策担当参事官通知)によれば、既設の焼却炉で焼却処理が完了したり完了に近い状況まで処理が進んでいたりする市町村があり、処理を進めるに当たっては、放射能濃度が8,000Bq/kg以下の廃棄物については、通常行われている処理方法により安全に処理できることから、既設の焼却炉を活用して、処理後の焼却灰の放射能濃度を管理しながら焼却炉の運転を行うことが有効であると考えられるとされている。このため、環境省は、除染廃棄物を保管している市町村等に対して、県を通じて既設の焼却炉を積極的に活用することを助言している。

そこで、福島県外における除染が終了したとされる平成28年度末及び令和元年度末現在の除染廃棄物の保管量を比較したところ、図表3-11のとおり、平成28年度末現在の保管量計142,862㎥に対して、令和元年度末現在の除染廃棄物の保管量は計142,798㎥となっており、ほとんど減少していない。また、除染仮置場の箇所数については34か所のまま減少しておらず、現場保管場所の箇所数については平成28年度末現在の計9,288か所に対して令和元年度末現在は計9,279か所となっており、ほとんど減少していない。このように、福島県外における保管措置が講じられた除染廃棄物の処理は、ほとんど進捗していない状況となっている(元年度末現在の市町村別の内訳については別図表3-4参照)。

h3-11図表3-11 福島県外における除染廃棄物の保管状況

図表3-11 福島県外における除染廃棄物の保管状況

県名 時点 除染仮置場 現場保管場所
箇所数 保管量 箇所数 保管量 保管量
(か所) (㎥) (か所) (㎥) (㎥)
岩手県 平成28年度末 - - 2 23 23
令和元年度末 - - 2 23 23
宮城県 平成28年度末 26 66,425 536 1,619 68,044
令和元年度末 26 66,425 536 1,619 68,044
茨城県 平成28年度末 1 822 18 2,819 3,641
令和元年度末 1 822 12 2,761 3,583
栃木県 平成28年度末 2 5,764 8,723 64,809 70,574
令和元年度末 2 5,764 8,720 64,803 70,567
群馬県 平成28年度末 5 567 8 4 572
令和元年度末 5 567 8 4 572
千葉県 平成28年度末 - - 1 6 6
令和元年度末 - - 1 6 6
平成28年度末 34 73,579 9,288 69,283 142,862
令和元年度末 34 73,579 9,279 69,219 142,798
  • (注) 環境省が平成28年度末現在及び令和元年度末現在の除去土壌等保管台帳により把握していた保管量をそれぞれ集計している。
(イ) 農林業系廃棄物

稲わら等の農林業系廃棄物は、16条調査及び16条報告の対象とされておらず、18条申請に基づき指定廃棄物となったものを除き、廃掃法等に基づき市町村等が保管や処理等を行っている。そして、このうち、事故由来放射性物質に汚染されたことにより特定一般廃棄物又は特定産業廃棄物とされているものについては、第1の2(2)イ(ウ)のとおり、廃掃法に基づく処理基準のほか、それぞれ、放射性物質汚染対処特措法施行規則に規定する特定一般廃棄物処理基準又は特定産業廃棄物処理基準に従い、処理を行わなければならないとされている。

環境省が市町村に対して確認した結果によれば、事故由来放射性物質によって汚染された、又はそのおそれがある農林業系廃棄物(指定廃棄物を含む。)は、図表3-12のとおり、2年4月現在で、北海道等10道県(以下「10道県」という。)に計79,658tあり、これら全てが焼却等の処理が行われないまま保管されている。そして、平成25年8月からの保管量の減少率をみると、10道県合計で79.6%となっている。

10道県のうち25年8月現在で10,000t以上保管していた岩手県等6県の減少率をみると、宮城県の50.3%から茨城県の96.4%までと県により差がある状況となっている。これら6県のうち、25年8月現在では福島県の保管量が155,624tと最も多かったが、同県においては他県と異なり国が該当する農林業系廃棄物の焼却処理を行っていることから令和2年4月現在までに88.1%減少しており、2年4月現在では宮城県の保管量が33,209tと最も多くなっている。

h3-12図表3-12 農林業系廃棄物の保管状況(令和2年4月現在)

図表3-12 農林業系廃棄物の保管状況(令和2年4月現在)

(単位:t)
道県名 平成25年
保管量
(t)
令和2年
保管量
(t)
平成25年か
らの減少率
(%)注(5)
北海道 4 4 (4) 0.0
8,000㏃/㎏超 3 3 (3) 0.0
8,000㏃/kg以下 0 0 0 0.0
岩手県 46,970 14,721 (14,721) △ 68.7
8,000㏃/㎏超 732 699 (699) △ 4.4
8,000㏃/kg以下 46,237 14,021 (14,021) △ 69.7
宮城県 66,768 33,209 (30,934) △ 50.3
8,000㏃/㎏超 3,906 1,159 (570) △ 70.3
8,000㏃/kg以下 62,862 32,049 (30,364) △ 49.0
福島県
注(4)
155,624 18,570 (16,564) △ 88.1
8,000㏃/㎏超 7,586 3,208 (1,201) △ 57.7
8,000㏃/kg以下 148,038 15,362 (15,362) △ 89.6
茨城県 25,663 913 (912) △ 96.4
8,000㏃/㎏超 0 0 - 0.0
8,000㏃/kg以下 25,663 912 (912) △ 96.4
栃木県 63,137 9,032 (895) △ 85.7
8,000㏃/㎏超 8,447 5,720 - △ 32.3
8,000㏃/kg以下 54,689 3,312 (895) △ 93.9
群馬県 24,134 1,277 (1,277) △ 94.7
8,000㏃/㎏超 - - -
8,000㏃/kg以下 24,134 1,277 (1,277) △ 94.7
千葉県 3,629 278 (278) △ 92.3
8,000㏃/㎏超 - - -
8,000㏃/kg以下 3,629 278 (278) △ 92.3
新潟県 3,669 1,630 (1,630) △ 55.6
8,000㏃/㎏超 - - -
8,000㏃/kg以下 3,669 1,630 (1,630) △ 55.6
長野県 21 21 (21) 0.0
8,000㏃/㎏超 - - -
8,000㏃/kg以下 21 21 (21) 0.0
389,622 79,658 (67,240) △ 79.6
8,000㏃/㎏超 20,677 10,791 (2,475) △ 47.8
8,000㏃/kg以下 368,945 68,866 (64,764) △ 81.3
  • 注(1) 環境省が各道県を通じて市町村に対して確認した結果を集計している。
  • 注(2) 平成25年保管量は同年8月現在、令和2年保管量は同年4月現在の確認結果である。
  • 注(3) 括弧内は、指定廃棄物を除いた量を表している。なお、平成25年の確認では、指定の有無は確認項目に入っていない。
  • 注(4) 汚染廃棄物対策地域に指定されている楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町及び葛尾村分を含めていない。
  • 注(5) 「0.0」は変化なしを示す。

そして、2年4月現在で保管されている農林業系廃棄物のうち、放射能濃度8,000㏃/㎏以下で指定廃棄物ではないものは計64,764t(全体の81.3%)となっている。

一方、放射能濃度が8,000㏃/㎏超で指定廃棄物ではない農林業系廃棄物の保管量は、2,475t(全体の3.1%)となっている。これらは、16条報告の対象とされておらず、18条申請を行うかどうかは占有者の判断に委ねられていることから、18条申請が行われずに指定廃棄物とされない場合は、8,000㏃/㎏以下の指定廃棄物でない農林業系廃棄物と同様に、廃掃法等に基づき市町村等が保管や処理等を行うことになる。

このように、市町村等が保管や処理等を行うことになる指定廃棄物ではない農林業系廃棄物も2年4月現在で計67,240t(全体の84.4%)となっていて、保管が継続していることから、環境省は、指定廃棄物ではない農林業系廃棄物の処理を加速化させることを目的として、放射性物質汚染廃棄物処理事業費補助金(平成25年度は放射性物質汚染廃棄物処理加速化事業費補助金)(農林業系廃棄物の処理加速化事業)を交付して当該廃棄物の処理に要する費用の一部を支援している。同補助金の25年度から令和元年度までの交付額は、岩手県等4県の54市町村等に対して計26億2284万余円となっており、これにより、計63,429tの農林業系廃棄物が処理されている(県別の内訳については別図表3-5参照)。

上記支援のほか、環境省は、指定廃棄物ではない農林業系廃棄物の処理については、保管している市町村等から処理に関する相談等があれば、必要な取組や支援を行っており、前記のとおり、福島県内に仮設焼却施設を設置するなどして焼却処理を実施している。(注40)

(注40)
このほか、岩手県一関市において、平成23、24両年度に放射能濃度が8,000㏃/㎏超のものを含む放射性物質に汚染された牧草1,202tの焼却処理等を同市に委託して事業費23年度3873万余円、24年度1億6429万余円で実施し、放射能濃度が8,000㏃/kg超の牧草を既設の廃棄物処理施設を活用して安全に焼却及び処分できることを確認できたとしており、これをホームページ等で公表したり、農林業系廃棄物を保管する市町村等に情報提供したりすることにより、8,000㏃/kg以下の農林業系廃棄物の処理の推進に活用しているとしている。
(ウ) 焼却灰、汚泥等

「事故由来放射性物質に汚染された廃棄物の処理の推進について」(平成25年7月環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長、産業廃棄物課長通知)によれば、放射能濃度8,000Bq/kg以下の廃棄物について、一部の焼却施設においては、焼却灰の処分について周辺地域の理解が得られないこと、廃棄物処理業者や自治体が独自に設定した一定濃度以上の廃棄物の搬入を拒否していること、自治体が廃棄物処理業者に対して一定濃度以上の廃棄物を取り扱わないよう指導していることなどにより、当該焼却灰の保管が長期間継続している状況にあるとされている。そして、同通知によれば、放射能濃度が8,000㏃/㎏以下の廃棄物を長期間保管する場合、「最終処分先が確保できない廃棄物の保管が排出者の大きな負担になるだけでなく、これらの処分が滞ることにより、市町村等の一般廃棄物処理、上下水・工業用水道事業や農業生産活動への影響も懸念される」とされている。また、環境省は、同通知において、「放射能濃度が8,000Bq/㎏以下の廃棄物について、独自に設定した一定濃度以上の廃棄物又は特定一般廃棄物若しくは特定産業廃棄物を区域内に搬入することを制限したり、廃棄物処理業者に対して取扱いの禁止を指導するようなことは、科学的にも法的にも根拠のないものである」との見解を示すとともに、都道府県等に対して独自基準による制限や指導を行わないよう周知している。

環境省が元年度に市町村等を対象に実施した調査によれば、最終処分や再生利用が行われずに保管されている事故由来放射性物質によって汚染された、又はそのおそれがある放射能濃度8,000㏃/kg以下の焼却灰、汚泥等は、図表3-13のとおり、元年10月現在で、岩手県等9県に計261,260tが保管されている。廃棄物の種類別には、廃棄物処理施設由来のばいじんが計45,372t、下水道施設由来の焼却灰等が計45,322t、水道施設由来の廃棄物が計113,323tなどとなっている。平成28年9月現在の保管量と比較すると、全体では36.2%、廃棄物の種類別には、廃棄物処理施設由来のばいじんが32.2%、下水道施設由来の焼却灰等が22.8%、水道施設由来の廃棄物が17.1%減少している。都県別にみると、28年9月現在で保管していた11都県のうち、9県については、令和元年10月現在も保管が継続している。

h3-13図表3-13 特定廃棄物以外の焼却灰、汚泥等の保管状況

図表3-13 特定廃棄物以外の焼却灰、汚泥等の保管状況

(単位:t)
都県名 時点 焼却灰等
(廃棄物処理施設由来)
汚泥・焼却灰等
(下水道施設由来)
水道施設
由来
その他
焼却灰 ばいじん その他 汚泥 焼却灰等 その他
岩手県 平成28年9月 - 62 827 - - - - 8 897
令和元年10月 - 62 - - - - - - 62
宮城県 平成28年9月 - - - - - - 5,545 - 5,545
令和元年10月 - - - - - - - - -
福島県 平成28年9月 92,556 41,323 30,820 9,447 1,154 1,699 1,987 2,471 181,458
令和元年10月 19,059 28,862 31,683 - - 137 1,109 4,319 85,172
茨城県 平成28年9月 - 47 - 1 191 - 15 - 254
令和元年10月 - 7 - - - - 15 - 22
栃木県 平成28年9月 - 1,610 - - - - 578 - 2,188
令和元年10月 - 1,610 - - - - 19 - 1,629
群馬県 平成28年9月 - - - - 1 - 2,340 - 2,341
令和元年10月 - - - - - - 311 - 311
埼玉県 平成28年9月 85 1,522 1 - 2,275 - 58,377 - 62,260
令和元年10月 - - 2 - - - 49,500 - 49,502
千葉県 平成28年9月 - 709 3,154 - - - - 1,991 5,854
令和元年10月 - 327 - - - - - 1,992 2,319
東京都 平成28年9月 3,467 740 - - - - - 39 4,247
令和元年10月 - - - - - - - - -
神奈川県 平成28年9月 - 20,916 - - 55,123 251 - 6 76,296
令和元年10月 - 14,503 - - 45,322 - - 24 59,849
新潟県 平成28年9月 - - - - - - 67,899 1 67,900
令和元年10月 - - - - - - 62,369 24 62,393
平成28年9月 96,108 66,930 34,802 9,448 58,744 1,950 136,741 4,517 409,243
令和元年10月 19,059 45,372 31,685 - 45,322 137 113,323 6,359 261,260
減少率(%) △ 80.2 △ 32.2 △ 9.0 △ 100.0 △ 22.8 △ 92.9 △ 17.1 40.8 △ 36.2
  • (注) 環境省が各都県を通じて市町村等を対象に実施した調査の結果を集計している。

特定一般廃棄物又は特定産業廃棄物である焼却灰、汚泥等の最終処分量の推移等について環境省が東京都等10都県(注41)に所在する最終処分場を対象として実施しているアンケート(以下「最終処分場アンケート」という。)の結果によれば、元年度時点において、放射能濃度についての独自基準が設けられている最終処分場はアンケートに回答した最終処分場の2割程度となっており、8,000㏃/kg以下の特定廃棄物以外の廃棄物について保管が継続していることの一因となっていると思料される。

このような状況に対して、環境省は、ホームページやパンフレット等によって8,000㏃/kg以下の廃棄物の処理の安全性の周知を図るとともに、保管者からの相談に対応することで、適正な処理を推進していくとしている。

(注41)
東京都等10都県  東京都、岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県
(エ) 道路等側溝堆積物

復興庁は、福島第一原発事故以降、放射性物質を含んでいることを理由に道路等側溝堆積物の処分が困難になったことや、住民による清掃活動が中止されたことなどにより、道路等側溝の維持管理活動が中断されている地域があり、豪雨時の路面の冠水を始め、悪臭や害虫発生等の実害が生じているため、福島県及び除染実施計画を定めた同県内の市町村が実施する道路等側溝堆積物を撤去して処理する事業に対して、平成28年度から令和元年度までの間に、福島再生加速化交付金(道路等側溝堆積物撤去・処理支援)を福島県及び18市町村に計54億5333万余円交付している。福島県及び18市町村においては、道路等側溝堆積物59,445㎥が撤去され、このうち8,000㏃/kg以下の道路等側溝堆積物計52,420㎥が同交付金事業により処理されている。そして、残りの7,025㎥は、同交付金の交付対象となっていない8,000㏃/㎏超の道路等側溝堆積物であり、環境省により除去土壌等と一体的に処理されている(年度別の内訳については別図表3-6参照)。

エ 国による中間処理の状況
(ア) 可燃物の処理

図表3-2のとおり、福島県内の対策地域内廃棄物のうち可燃物については、再生利用が可能なものについては再生利用を行い、その他の特定廃棄物及び除染特別地域において発生した除染廃棄物については、焼却処理を行うことになっている(注42)。そして、焼却処理により発生した焼却灰等のうち、混入していた金属類の再生利用が可能なものについては再生利用を行い、その他の放射能濃度が10万Bq/kg以下の焼却灰等については管理型最終処分場で埋立処分し、10万Bq/kg超の焼却灰等及び除染廃棄物を焼却して発生した焼却灰等については中間貯蔵施設へ搬入することになっている。

(注42)
特定廃棄物は放射性物質汚染対処特措法施行規則第25条で定められている特定廃棄物処分基準に従い処分を行うこととされており、特定廃棄物処分基準によれば、特定廃棄物の処分は、①特定廃棄物が飛散したり流出したりしないようにすること、②特定廃棄物を焼却する場合には、所定の構造を有する焼却設備を用いて焼却すること、③特定廃棄物を破砕する場合には、破砕によって生ずる粉じんの周囲への飛散を防止するために、建物の中に設けられた設備を用いて破砕する等の必要な措置を講ずることなどとされている。

また、環境省は、「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」(平成23年法律第99号。以下「災害廃棄物特措法」という。)第4条第1項の規定に基づき、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)に規定する特定被災地方公共団体である市町村から要請があり、かつ必要があると認められるときは、当該市町村に代わり、災害廃棄物の代行処理を行うこととなっている。そして、災害廃棄物特措法第5条第1項の規定に基づき、上記の代行処理に要する費用は、国及び当該市町村が負担することとなっている。

環境省は、これらの特定廃棄物等の焼却を行うに当たり、廃棄物の量が膨大であるため、市町村等が設置している既設焼却施設を活用するほか、仮設焼却施設を設置するなどしている。国が焼却処理を行うために使用していた又は使用する予定の焼却施設は、仮設焼却施設16施設、既設焼却施設4施設であり、元年度末現在で使用中の焼却施設は仮設焼却施設6施設となっている(別図表3-7参照)。

上記のうち仮設焼却施設での焼却処理には、焼却施設を設置する用地の使用に係る補償金、焼却施設の建設費、施設を稼働させて焼却処理を行ったり、施設の修繕を行ったりするための管理・運転費、施設での処理が終了した後に施設の解体等を行うための原状回復費が発生する。また、既設焼却施設で焼却処理を行う場合は、環境省が当該焼却施設の設置主体と請負契約を締結して、焼却処理等に係る管理・運転費を支払っている。元年度までに特定廃棄物等の焼却処理に要した費用は、図表3-14のとおり、仮設焼却施設については、用地に係る補償金1億9801万余円、建設費1825億7076万余円、管理・運転費1891億9125万余円、原状回復費118億6410万余円の計3838億2413万余円となっており、既設焼却施設については、管理・運転費11億7272万余円となっていて、合計で3849億9686万余円となっている。

h3-14図表3-14 仮設焼却施設等における国による特定廃棄物等の焼却処理に係る年度別費用内訳(平成24年度~令和元年度)

図表3-14 仮設焼却施設等における国による特定廃棄物等の焼却処理に係る年度別費用内訳(平成24年度~令和元年度)

(単位:千円)
年度 仮設焼却施設 既設焼却施設 合計
用地に係る
補償金
建設費 管理・運転費 原状回復費 管理・
運転費
平成24年度 4,369,806 4,369,806 11,387 4,381,193
25年度 3,443 2,389,380 2,392,823 112,755 2,505,578
26年度 252 6,657,090 1,053,583 7,710,925 194,899 7,905,825
27年度 33,841 48,907,987 25,504,597 2,894,400 77,340,826 94,697 77,435,524
28年度 41,560 81,434,825 37,933,010 119,409,396 104,893 119,514,289
29年度 42,464 21,229,879 46,018,794 1,237,313 68,528,452 233,147 68,761,599
30年度 38,507 14,231,499 44,404,476 58,674,483 413,733 59,088,217
令和元年度 37,942 5,739,680 31,887,409 7,732,392 45,397,425 7,210 45,404,635
198,012 182,570,769 189,191,250 11,864,106 383,824,139 1,172,724 384,996,863

また、環境省は、元年度末までに、図表3-15のとおり、対策地域内廃棄物431,127t、指定廃棄物14,165t、除染廃棄物818,357t、その他の廃棄物286,924tを焼却処理しており、これにより放射能濃度が10万Bq/kg以下の焼却灰等が351,970t、10万Bq/kg超の焼却灰等が5,241t発生している。

そして、元年度末現在で、これらの計357,212tのうち212,645tが管理型最終処分場、中間貯蔵施設等に搬出され、144,584tが焼却施設等において保管されている(焼却施設別の焼却量、焼却灰等発生量等については別図表3-8参照)。

h3-15図表3-15 特定廃棄物等に係る焼却量、焼却灰等発生量等(平成24年度~令和元年度)

図表3-15 特定廃棄物等に係る焼却量、焼却灰等発生量等(平成24年度~令和元年度)

(単位:t)
年度 焼却量 焼却灰等発生量 焼却灰等
搬出量
焼却灰等保管量
(年度末時点)
注(2)
対策地域
内廃棄物
指定
廃棄物
除染
廃棄物
その他の
廃棄物
注(1)
放射能濃度
10万Bq/kg
以下
放射能濃度
10万Bq/kg
平成24年度 217 22,966 23,183 4,307 4,307 4,307
25年度 3,040 2,103 57,013 62,157 19,490 19,490 23,797
26年度 4,099 1,066 9,343 14,508 4,092 4,092 27,889
27年度 103,602 724 124,062 7,120 235,509 54,348 1,663 56,011 30 83,871
28年度 122,391 5,443 176,340 56,300 360,476 75,520 2,501 78,021 4,929 156,963
29年度 118,803 4,345 142,250 29,551 294,950 59,263 269 59,533 29,670 186,825
30年度 46,663 2,194 210,833 21,052 280,742 66,431 786 67,218 67,869 186,191
令和元年度 32,310 1,457 161,702 83,576 279,047 68,516 21 68,537 110,144 144,584
431,127 14,165 818,357 286,924 1,550,576 351,970 5,241 357,212 212,645
  • 注(1) その他の廃棄物とは、農林業系廃棄物等である(図表3-1参照)。
  • 注(2) 焼却灰等を搬出する際に、容器の詰め替え等を行いその重量を再計量しているため、焼却灰等発生量から焼却灰等搬出量を差し引いても、焼却灰等保管量と一致しない。

さらに、焼却施設等から搬出された焼却灰等212,645tについて、搬出先別の搬出量は、図表3-16のとおり、焼却灰等に含まれる鉄等の再生利用が可能なもの18,408tが再生利用され、その他の焼却灰等については80,559tが管理型最終処分場へ、113,436tが中間貯蔵施設へ、241tが実証調査施設へそれぞれ搬出されている。

h3-16図表3-16 搬出先別の焼却灰等搬出量(平成27年度~令和元年度)

図表3-16 搬出先別の焼却灰等搬出量(平成27年度~令和元年度)

(単位:t)
年度 再生利用 管理型
最終処分場
中間貯蔵施設 実証調査施設
(注)
平成27年度 30 30
28年度 4,795 134 4,929
29年度 4,235 13,251 12,076 106 29,670
30年度 4,231 28,784 34,854 67,869
令和元年度 5,115 38,523 66,505 110,144
18,408 80,559 113,436 241 212,645
  • (注) 実証調査施設とは、後述5(1)ア(ア)aの環境省が飯舘村蕨平地区に設置した仮設資材化施設である。
(イ) 不燃物の処理

対策地域内廃棄物のうち不燃物については、破砕等の中間処理を行った後、図表3-2のとおり、再生利用が可能なものについては再生利用を行い、放射能濃度が10万Bq/kg以下のものは管理型最終処分場で埋立処分を行うことになっている。また、福島県内の指定廃棄物のうち不燃物については、同じく中間処理を行った後、放射能濃度が10万Bq/kg以下のものについては管理型最終処分場で埋立処分を行い、10万Bq/kg超のものについては中間貯蔵施設に搬入することになっている。そして、元年度末までに再生利用された対策地域内廃棄物のうち不燃物は、図表3-17のとおり、コンクリートがら等計366,096t、金属くず等計82,542t及び800㎥、家電類計12,648t及び93,955台、廃油等計554,049L、車両類計6,138台、消火器類計10,476台及び13,783本等となっている。

h3-17図表3-17 対策地域内廃棄物のうち不燃物の再生利用量(平成24年度~令和元年度)

図表3-17 対策地域内廃棄物のうち不燃物の再生利用量(平成24年度~令和元年度)

年度 コンクリート
がら等
金属くず等 家電類 廃油等 車両類 消火器類 その他
(t) (t) (㎥) (t) (台) (L) (台) (台) (本) (t) (本) (個) (袋)
平成24年度 129
25年度 1,370 16,362 440
26年度 4,661 800 12,448 100 5,600 523 206 808 47
27年度 3,176 12,687 200 15,902 12,590 883 482 87
28年度 65,225 21,780 15,608 230,964 1,464 11,109 4,232 1,022
29年度 96,259 23,056 19,998 36,793 1,781 7,847 5,408 1,843 38
30年度 113,319 9,526 13,177 123,476 500 2,674 4,059 1,039
令和元年度 88,114 9,460 12,808 144,626 418 2,629 737 949
366,096 82,542 800 12,648 93,955 554,049 6,138 10,476 13,783 15,126 5,748 47 38
  • (注) 環境省から民間の業者へ引渡しを行った量を基に集計している。

また、図表3-18のとおり、特定廃棄物のうち放射能濃度が10万Bq/kg以下の不燃物計49,294㎥は、管理型最終処分場で埋立処分が行われている。

h3-18図表3-18 特定廃棄物のうち不燃物の埋立処分量(平成29年度~令和元年度)

図表3-18 特定廃棄物のうち不燃物の埋立処分量(平成29年度~令和元年度)

(単位:㎥)
廃棄物の種類 平成29年度 30年度 令和元年度
対策地域内廃棄物 2,751 20,781 21,834 45,366
指定廃棄物 579 2,892 455 3,927
3,331 23,673 22,289 49,294
  • (注) 埋立処分事業は、平成29年度から開始されている。

一方、対策地域内廃棄物の不燃物のうち高濃度PCB廃棄物(注43)及び破損した蛍光灯については、2年9月現在でコンデンサー18台及び安定器等239台の高濃度PCB廃棄物並びに破損した蛍光灯約30㎥が対策地域内廃棄物仮置場に保管されたままとなっており、処理方法が確定していない。

(注43)
高濃度PCB廃棄物  封入されたPCBの重量の割合が0.5%を超えるなどのPCB廃棄物

また、環境省は、汚染廃棄物対策地域内の351事業者を対象としてPCB廃棄物等の所在を確認する調査を実施しており、元年度末までに高濃度PCB廃棄物であるコンデンサーが3台、安定器が68個発見されている一方で、PCB廃棄物等の所在が不明と回答した事業者及び未回答の事業者が計94事業者あることから、環境省は、これらについても、引き続き調査を実施していくとしている。

廃掃法が適用されるPCB廃棄物については「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(平成13年法律第65号。以下「PCB特措法」という。)等に基づき、保管事業者は、政令で定める処分期間内に、自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならないとされているのに対して、特定廃棄物に該当する高濃度PCB廃棄物は、廃掃法の適用範囲外であり、廃掃法が適用されるPCB廃棄物を対象としているPCB特措法等が適用されず、放射性物質汚染対処特措法が適用されることとなる。このため、国は廃掃法が適用されるPCB廃棄物とは別の枠組みで責任を持って処理しなければならないことになる。これについて、環境省は、特定廃棄物に該当する高濃度PCB廃棄物は、PCB等の残留性有機汚染物質による環境汚染を防止するための「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(平成16年条約第3号)の適用対象となり、10年までに環境上適正な管理を行うことが定められていることなどから、所在を確認するための調査を引き続き実施しており、これにより処理すべき総量が把握された後に処理の具体的な時期や方法の調整を実施する予定であるとしている。

(2) 除去土壌等の処理状況

ア 除染特別地域

環境省は、除染特別地域に除染仮置場を設置しており、図表3-19のとおり、元年度末現在において除去土壌等を保管している除染仮置場は計153か所(面積計7,826,025㎡)、除去土壌等の保管量は計3,601,049㎥となっている。

h3-19図表3-19 除染仮置場箇所数、面積及び除去土壌等の保管量(令和元年度末現在)

図表3-19 除染仮置場箇所数、面積及び除去土壌等の保管量(令和元年度末現在)

所在市町村名 箇所数
(か所)
面積
(㎡)
除去土壌等
の保管量
(㎥)
田村市 2 10,442 6,215
南相馬市 10 1,578,813 234,225
川俣町 26 658,267 355,235
楢葉町 5 134,927 125,013
富岡町 8 1,216,908 717,957
川内村 2 117,442 40,491
大熊町 5 358,063 144,145
双葉町 2 126,008 73,108
浪江町 19 1,042,728 392,547
葛尾村 17 416,362 136,946
飯舘村 57 2,166,065 1,375,167
153 7,826,025 3,601,049

そして、除染仮置場における除去土壌等の搬入量及び搬出量を年度別にみたところ、図表3-20のとおり、元年度末までの搬入量は計9,746,771㎥で、このうち計6,145,722㎥が中間貯蔵施設等及び仮設焼却施設に搬出されている。

h3-20図表3-20 除染仮置場における除去土壌等の搬入量及び搬出量

図表3-20 除染仮置場における除去土壌等の搬入量及び搬出量

(単位:㎥)
年度 搬入量 搬出量 保管量
(年度末現在)
中間貯蔵
施設等
仮設焼
却施設
平成23年度 3,157,602 702 2,712 3,414 3,154,188
24年度
25年度
26年度
27年度 3,253,265 8,774 431,071 439,845 5,967,608
28年度 2,260,353 57,148 614,806 671,954 7,556,007
29年度 396,992 218,308 574,544 792,852 7,160,147
30年度 210,097 979,822 742,951 1,722,773 5,647,471
令和元年度 468,462 2,251,625 263,259 2,514,884 3,601,049
9,746,771 3,516,379 2,629,343 6,145,722  

また、環境省は、借地して除染仮置場を設置した場合、除去土壌等の搬出が完了した除染仮置場については、原状回復工事を行った上で、用地を土地の所有者等に返却している(以下、用地を返却することを「返地」という。除染特別地域における除染仮置場の返地の状況については、(3)において後述する。)。

イ 除染実施区域
(ア) 福島県内における除去土壌等の保管状況

除染実施者である市町村は、除染実施区域において、除染仮置場や除去土壌等を除染仮置場から集約して中間貯蔵施設へ輸送するための積込場(以下、これらを合わせて「除染仮置場等」という。)を設置して除去土壌等を保管したり、除染仮置場等を確保できない場合は現場保管場所に保管したりしている。そして、福島県内の除染実施区域で発生して除染仮置場等及び現場保管場所に保管された除去土壌等については、平成27年度から中間貯蔵施設への輸送が順次開始されている。

除去土壌等の中間貯蔵施設への輸送が開始された27年度以降の除去土壌等の累計発生量並びに除染仮置場等及び現場保管場所における保管量の推移をみると、図表3-21のとおり、累計発生量は令和元年度末までに計693万㎥となり、保管量は平成28年12月末現在の計608万㎥をピークとして年々減少して、令和元年度末現在では計332万㎥(累計発生量の48.0%)となっている。

図表3-21 除去土壌等の累計発生量及び保管量の推移(平成27年度~令和元年度)

図表3-21 除去土壌等の累計発生量及び保管量の推移(平成27年度~令和元年度)画像

また、環境省と同様に、除染実施者である市町村は、除去土壌等の搬出が完了した除染仮置場等について、原状回復工事を行った上で返地している。

元年度末現在の除染仮置場等及び現場保管場所の箇所数等をみると、図表3-22のとおり、除去土壌等を保管中の除染仮置場等は計404か所(元年度末までに設置された除染仮置場等計1,029か所の39.3%)、保管量は計2,624,279㎥、返地済みの除染仮置場等は410か所(同39.8%)となっている。また、除去土壌等を保管中の現場保管場所は計40,127か所(元年度末までに設置された現場保管場所計190,842か所の21.0%)、保管量は計702,955㎥、除去土壌等の搬出が完了した現場保管場所は150,715か所(同79.0%)となっている(市町村別の内訳については別図表3-9参照)。

h3-22図表3-22 除染仮置場等及び現場保管場所の箇所数等(令和元年度末現在)

図表3-22 除染仮置場等及び現場保管場所の箇所数等(令和元年度末現在)

除染仮置場等 現場保管場所
保管中 搬出済み 返地済み
の除染仮
置場等
保管中 搬出が完了
した現場保
管場所
箇所数
(か所)
保管量
(㎥)
箇所数
(か所)
箇所数
(か所)
箇所数
(か所)
箇所数
(か所)
保管量
(㎥)
箇所数
(か所)
箇所数
(か所)
404 2,624,279 215 410 1,029 40,127 702,955 150,715 190,842
  • (注) 内閣府の緊急実施除染事業等により9市町村において発生した除去土壌等の除染仮置場等及び現場保管場所を含む。
(イ) 福島県外における除去土壌の保管状況

福島県外で発生した除去土壌については、埋立処分の方法等に関して具体的に定めたものはなく、環境省において検討を続けているところであり、多くの市町村において保管したままの状態となっている。福島県外における元年度末現在の除去土壌の保管状況をみると、図表3-23のとおり、除染仮置場は43か所、現場保管場所は28,707か所となっており、これらを合わせた保管量は計329,447㎥となっている(市町村別の内訳については別図表3-4参照)。

h3-23図表3-23 福島県外における除去土壌の保管状況(令和元年度末現在)

図表3-23 福島県外における除去土壌の保管状況(令和元年度末現在)

(令和元年度末現在)
項目
県名
除染仮置場 現場保管場所
箇所数
(か所)
保管量
(㎥)
箇所数
(か所)
保管量
(㎥)
保管量
(㎥)
岩手県 - - 315 26,549 26,549
宮城県 28 13,637 133 14,749 28,387
茨城県 2 1,835 1,032 51,136 52,971
栃木県 2 354 24,762 110,672 111,026
群馬県 7 1,268 749 3,333 4,602
埼玉県 2 650 46 6,633 7,284
千葉県 2 47 1,670 98,577 98,625
43 17,793 28,707 311,653 329,447
  • (注) 環境省が令和元年度末現在で把握していた保管量を集計している。
(ウ) 除去土壌等の管理

除去土壌等の保管に当たっては、放射性物質汚染対処特措法施行規則によれば、保管の場所から飛散したり流出したりしないように容器に収納するなど必要な措置を講ずること、保管に伴い生ずる汚水による公共の水域及び地下水の汚染を防止するために保管場所の底面を遮水シートで覆うなど必要な措置を講ずること、雨水又は地下水が浸入しないように除去土壌等の表面を遮水シートで覆うなど必要な措置を講ずることなどとされている。

また、放射性物質汚染対処特措法によれば、除染実施者は、除去土壌等を保管したとき、又は土地の所有者等に除去土壌等を保管させたときは、遅滞なく、当該土壌等の除染等の措置を実施した土地等に係る除染実施計画を定めた都道府県知事等に当該除去土壌等を保管した土地の所在地及び保管の状態その他環境省令で定める事項を届け出なければならないとされている。そして、除染実施計画を定めた都道府県知事等は、除染実施区域内の土地等に係る除去土壌等保管台帳を作成して管理しなければならないとされており、放射性物質汚染対処特措法施行規則によれば、除去土壌等保管台帳は、帳簿及び図面をもって作成することとされている。(注44)

(注44)
除去土壌等保管台帳の帳簿には、①土地の所有者等の氏名又は名称、住所及び連絡先、②保管を行う者の氏名又は名称、住所及び連絡先、③保管を行う土地の所在地、④保管を開始した年月日、⑤保管を終了した年月日、⑥除去土壌等の種類及び数量、⑦保管開始前及び開始後における放射線の量等を記載することとされ、図面は、除去土壌等の保管場所を明らかにした図面とすることとされている。

除去土壌等又は除染実施計画策定前の土壌等の除染等の措置に類する行為であって国の補助金等を受けたものにより生じた土壌等(以下、これらを合わせて「補助対象除染により生じた土壌等」という。)の管理の状況についてみたところ、次のような事態が見受けられた。

a 補助対象除染により生じた土壌等の保管状態が確認できない事態

平成28年3月に、福島市において、除去土壌等が埋設された箇所を含む住宅敷地を除染時の土地の所有者が売却して、売却時に引き継がれた放射線モニタリングの測定地点を伝えるための略図(除去土壌等の保管場所を明らかにした図面ではない。)の情報を基に住宅が建築された結果、敷地内の地下に埋設保管されていた除去土壌等の直上に住宅が建てられるという事案の発生が判明した。

この事案の発生を受けて、環境省は、同年10月に、「除染等の措置に伴い生じた除去土壌等の保管場所に係る留意事項の周知について(依頼)」(平成28年環水大総発第1610211号環境省水・大気環境局放射性物質汚染対策担当参事官通知)を各県除染担当部局に発して、各市町村の除染担当部局において除去土壌等の保管場所を確認できることについて土地の所有者等に周知すること、必要に応じて当該保管場所に係る土地の所有者等による現地確認等に各市町村の除染担当部局が協力することなどを県内の関係市町村に周知するよう依頼した。

また、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法の除染関係の説明について」(平成24年環水大総発第120511001号環境省水・大気環境局放射性物質汚染対策担当参事官通知)によれば、除染実施計画策定前に行われた土壌等の除染等の措置に類する行為であって補助金等の交付を受けたものの実施に伴い発生した土壌等については、放射性物質汚染対処特措法の規制対象とはならないものの、法令等の規定に沿って対応することが望ましいとされている。

そこで、補助対象除染により生じた土壌等の管理状況を一部の市町村において確認したところ、次のような事態が見受けられた。

千葉県松戸、柏両市は、23年度又は24年度に、環境省から低減対策緊急補助金の交付を受けて、除染業務を契約額計5,455,332円(国庫補助金相当額計4,854,405円)で建設会社等に請け負わせて実施している。

この業務は、両市内に所在する計24施設において、敷地の除草、表土の処理、側溝の清掃等の除染の作業等を実施したものであり、両市は、業務完了後、補助対象除染により生じた土壌等が発生した施設について、それぞれ除去土壌等保管台帳を作成していた。そして、計24施設のうち計2施設の除去土壌等保管台帳によれば、補助対象除染により生じた土壌等(松戸市2㎥、柏市50㎥)は、シート等により覆った上で同施設の敷地内に埋設し、覆土を施して飛散防止及び放射線の遮蔽を行うとされていた。

令和2年2月の会計実地検査時点において現地の状況を確認したところ、除去土壌等保管台帳上、補助対象除染により生じた土壌等が埋設保管されたとされている箇所に住宅が建築されていて、補助対象除染により生じた土壌等の保管状態が確認できず、補助対象除染により生じた土壌等の管理が適切とは認められない状況となっていた。

前記のとおり、環境省は補助対象除染により生じた土壌等の適正保管のために通知を発して関係市町村に周知しているものの、現場保管されている補助対象除染により生じた土壌等はいまだ各地に多数存在し、上記のような事態も発生している。

したがって、環境省においては、補助対象除染により生じた土壌等の適正な保管に向けて、同種の事態の再発を防止するために、補助対象除染により生じた土壌等の保管状況を適切に把握するよう関係市町村に徹底を図る必要がある。

b 除去土壌等保管台帳の記載等が実態と異なっていた事態

環境省は、除染実施計画に基づき除染の工事を実施した市町村を対象に、除去土壌等の保管状況を把握するための調査を毎年度実施して、調査結果を基に「汚染状況重点調査地域(福島県外)における保管場所の箇所数及び除去土壌等の保管量」等として、ホームページに掲載するなどしている。

除去土壌等の保管量をみたところ、2県及び3市町が実施した除染の工事の一部において、図表3-24のとおり、現場保管されている一部の工区に係る除去土壌の数量を含めずに除去土壌等保管台帳を作成していたり、除去土壌の誤った数量を除去土壌等保管台帳に記載していたり、除染廃棄物を除去土壌として除去土壌等保管台帳に記載していたりなどしたため、除去土壌の実際の保管数量よりも少ない数量が除去土壌等保管台帳に記載されるなどしており、これに基づくなどした除去土壌等の保管量が環境省に報告されていた事態が見受けられた。

h3-24図表3-24 除去土壌等保管台帳の記載等が実態と異なっていた事態の一覧

図表3-24 除去土壌等保管台帳の記載等が実態と異なっていた事態の一覧

(単位:㎥)
県名 除染
実施者
除染実施
計画策定

種別
現場保管
場所
除去土壌等
保管台帳の
記載数量
(A)
実際の
保管数量

(B)
過大又は過小
(△)となっていた数量
(C)=(A)-(B)

摘要
千葉県 千葉県 柏市 除去土壌 公園 1,521 2,118 △ 597 一部の工区に係る除去土壌の数量を含めずに除去土壌等保管台帳を作成していたり、除去土壌の誤った数量を除去土壌等保管台帳に記載していたりしたもの
流山市 流山市 除去土壌 公園 585 1,494 △ 909
岩手県 平泉町 平泉町 除去土壌 学校、
児童遊園
1,357 1,411 △ 54 除去土壌の誤った数量を除去土壌等保管台帳に記載していたなどのもの
栃木県 日光市 日光市 除去土壌 宅地 103 120 △ 16
茨城県 茨城県 阿見町 除去土壌 学校 1,030 1,022 8 除染廃棄物を除去土壌として除去土壌等保管台帳に記載していたもの
除染廃棄物 - 8 △ 8

保管数量の除去土壌等保管台帳への記載が適切でなかった場合には、除去土壌等の搬出や処分を行う際に支障が生ずるおそれがある。

したがって、環境省においては、関係市町村に対して、除去土壌等の実際の保管量等が除去土壌等保管台帳に正確に記載されているかどうかを改めて確認し、必要に応じて記載内容の見直しを行うよう徹底を図る必要がある。

(3) 廃棄物仮置場、指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場の運用状況

環境省は、福島県内の特定廃棄物の選別や保管等を行うために、福島県内に対策地域内廃棄物仮置場及び指定廃棄物仮置場(特定廃棄物(除染廃棄物を除く。)を保管している除染仮置場を含まない。以下、これらを合わせて「廃棄物仮置場」という。)を、また、除去土壌等を保管するために、除染特別地域内に除染仮置場をそれぞれ設置している。

廃棄物仮置場、指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場の運用状況について検査したところ、次のとおりとなっていた。

ア 設置状況及び補償金

元年度末までの廃棄物仮置場の累計設置箇所数及び累計設置箇所数から返地した廃棄物仮置場の箇所数を除いた管理箇所数の推移をみたところ、図表3-25のとおり、元年度末までの累計設置箇所数は53か所となっており、また、平成26年3月に廃棄物仮置場の返地が開始されて以降、管理箇所数は28年12月末の39か所をピークとしてその後徐々に減少して、令和元年度末には27か所となっていた。

図表3-25 廃棄物仮置場の累計設置箇所数及び管理箇所数の推移(平成25年度~令和元年度)

図表3-25 廃棄物仮置場の累計設置箇所数及び管理箇所数の推移(平成25年度~令和元年度)画像

また、元年度末までの除染仮置場の累計設置箇所数及び累計設置箇所数から返地した除染仮置場の箇所数を除いた管理箇所数の推移をみたところ、図表3-26のとおり、除染が開始された平成23年度以降、累計設置箇所数は急激に増加を続けていたが、帰還困難区域を除く除染特別地域の面的除染が完了した28年度以降は特定復興再生拠点区域の除染により生じた除去土壌等の仮置きのために設置するにとどまっていることから、ほぼ横ばいで推移していて令和元年度末までの累計設置箇所数は330か所となっている。そして、平成25年4月に除染仮置場の返地が開始されて以降、管理箇所数は28年12月末の277か所をピークとしてその後徐々に減少して、令和元年度末には214か所(除去土壌等を保管している除染仮置場153か所及び除去土壌等の搬出が完了した除染仮置場61か所)となっていた。

図表3-26 除染仮置場の累計設置箇所数及び管理箇所数の推移(平成23年度~令和元年度)

図表3-26 除染仮置場の累計設置箇所数及び管理箇所数の推移(平成23年度~令和元年度)画像

環境省は、廃棄物仮置場又は除染仮置場の設置に当たり、地形、土地利用状況、周辺環境、運搬経路、利用可能面積等を考慮して候補地を選定し、選定した候補地について、当該地域の住民の了承を得た上で、土地の所有者等との間で「土地使用に関する補償契約」を締結して、土地の使用に係る補償金を土地の所有者等に支払っている。

そして、環境省が土地の所有者等に支払った補償金は、図表3-27のとおり、平成24年度から令和元年度までの合計で116億6608万余円となっている。

h3-27図表3-27 補償金額等(平成24年度~令和元年度)

図表3-27 補償金額等(平成24年度~令和元年度)

年度 廃棄物仮置場 除染仮置場 補償金額計

(千円)
補償契約件数
(件)
面積
(㎡)
補償金額
(千円)
補償契約件数
(件)
面積
(㎡)
補償金額
(千円)
平成24年度       - 78,184 25,560 25,560
25年度 - - 15,006 - 1,550,138 451,569 466,575
26年度 - - 179,489 - 7,376,222 1,313,999 1,493,488
27年度 314 1,281,411 189,298 1,975 10,245,466 1,690,709 1,880,007
28年度 326 1,467,638 231,207 1,963 10,857,180 1,799,575 2,030,783
29年度 301 1,425,183 235,922 1,859 10,880,915 1,764,058 1,999,980
30年度 379 1,388,013 259,386 1,713 10,382,707 1,680,896 1,940,282
令和元年度 353 1,295,617 205,302 1,718 9,906,957 1,624,101 1,829,403
1,673 6,857,862 1,315,613 9,228 61,277,769 10,350,470 11,666,083
  • 注(1) 廃棄物仮置場は平成25年度以降に設置されたため、24年度は該当がない。
  • 注(2) 平成25、26両年度の廃棄物仮置場の補償契約件数及び面積並びに24年度から26年度までの除染仮置場の補償契約件数は、関係書類の保存期間が満了していて把握できなかったため、「-」としている。
  • 注(3) 平成23年度に設置した除染仮置場があるが、無償で土地を使用するなどしているため、本図表には含めていない。
イ 廃棄物仮置場等の設置場所の災害対策

環境本省、福島地方環境事務所及び指定廃棄物の一時保管者は、放射性物質汚染対処特措法、放射性物質汚染対処特措法施行規則、除染関係ガイドライン等に基づき、廃棄物や除去土壌等の保管を行っている。そして、廃棄物仮置場については、平成25年に環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部指定廃棄物対策チームが作成した特定廃棄物に係る災害時等の点検体制基準に基づき、大雨警報や暴風警報等が発令された場合等に点検を行うこととなっている。指定廃棄物一時保管場所については、25年に、環境本省、地方環境事務所、一時保管者等の関係者の役割を定めた「災害等発生時における指定廃棄物の保管状況の確認体制について」(環境省廃棄物・リサイクル対策部指定廃棄物対策チーム作成)等に基づき、自然災害等が発生して、指定廃棄物の飛散流出が発生した場合、又はそのおそれがある場合には、速やかに保管状況を確認することとし、自然災害の発生が予測される場合には、飛散流出の未然防止に努めて、飛散流出が確認された場合には、速やかに指定廃棄物の回収を行うとともに、空間線量率の測定を行い、安全性の確認を行うこととなっている。除染仮置場については、除染関係ガイドラインに基づき、自然災害等により被災した場合は被害状況を把握することとし、自然災害時に異常が予見されるような事象が確認された場合は、可能な範囲で速やかに防護措置を講ずることとなっている。

そして、環境省は、令和元年10月に発生した令和元年東日本台風(台風第19号)による被災状況の点検を行うとともに、被災状況を踏まえて、自然災害を想定した点検及び対策を実施している。

そこで、環境省が実施している被災状況の点検状況や、自然災害を想定した点検及び対策の実施状況について、飛散流出をもたらすおそれのある津波、洪水、土砂災害、ため池崩壊等の自然災害を対象にみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 令和元年東日本台風(台風第19号)による被災状況の点検

環境省は、元年10月に、廃棄物仮置場、福島県内外の指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場を対象に令和元年東日本台風(台風第19号)による被災状況の点検を行っており、点検の結果、指定廃棄物一時保管場所1か所(宮城県内)において浸水が確認され、除染仮置場4か所(環境省管理1か所、市村管理3か所)において流出が確認されたとして、その旨を環境本省の庁舎の掲示板へ掲示したり、ホームページに掲載したりなどして公表している。そして、環境省は、これらの指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場並びにそれらの周辺箇所の空間線量率や水中の放射能濃度の測定等を実施した結果、いずれの箇所においても、空間線量率や水質への影響が確認されなかったとして、その旨を上記と同様の方法で公表するなどしている。

(イ) 自然災害を想定した点検及び対策の実施状況

a 廃棄物仮置場

環境省は、元年12月から2年2月までの間に、元年11月末現在で特定廃棄物(除染廃棄物を除く。)を保管している廃棄物仮置場24か所を対象に、各種ハザードマップや地形図を照らし合わせて、津波浸水想定区域内、洪水浸水想定区域内、土砂災害警戒区域内、土砂災害危険箇所、急傾斜地近傍又は谷地形(以下、土砂災害警戒区域内、土砂災害危険箇所、急傾斜地近傍又は谷地形を合わせて「土砂災害警戒区域内等」という。)に設置されていないか確認している。その結果、図表3-28のとおり、廃棄物仮置場5か所が津波浸水想定区域内や洪水浸水想定区域内に設置されていることが判明した。そして、環境省は、上記の5か所については、廃棄物仮置場の基本構造であるフェンスに囲われているなどとして、追加の対策は不要であるとしているものの、2年9月末現在において廃棄物の全てを搬出した2か所を除いた3か所については、可能な限り廃棄物の早期搬出に努めるとともに、今後、廃棄物の飛散流出の可能性についての評価を行い、その結果に応じて対策を講ずる予定としている。

一方、上記の点検には、ため池浸水想定区域内に設置されていないかの確認は含まれていなかった。

h3-28図表3-28 廃棄物仮置場の点検結果(令和元年11月末現在)

図表3-28 廃棄物仮置場の点検結果(令和元年11月末現在)

(単位:か所)
県名

































































福島県 5 5 - 1 1 - - - - 確認が実施されていない 5 5 -
  • (注) 1か所の廃棄物仮置場で複数の想定される自然災害の条件に該当する場合がある。

b 指定廃棄物一時保管場所

環境省は、元年10月から2年4月までの間に、福島県内については元年11月末現在で、福島県外については元年12月末現在で指定廃棄物を保管している指定廃棄物一時保管場所379か所を対象に、定期検査や日常の保守管理の一環として、各種ハザードマップや地形図を照らし合わせて、洪水浸水想定区域内若しくは河川近傍(以下、これらを合わせて「洪水浸水想定区域内等」という。)又は土砂災害警戒区域内等に設置されていないか確認している。その結果、図表3-29のとおり、9都県内の指定廃棄物一時保管場所130か所が洪水浸水想定区域内等や土砂災害警戒区域内等に設置されていることが判明した。そして、環境省は、現地調査を行うなどした結果、117か所については指定廃棄物が建物内に保管されていることなどから対策が不要であるとし、残りの13か所については、保管状況、対策工の有無等から対策が必要であるかについて追加の検討が必要としている。

一方、上記の点検には、津波浸水想定区域内又はため池浸水想定区域内に設置されていないかの確認は含まれていなかった。

h3-29図表3-29 指定廃棄物一時保管場所の点検結果(令和元年11月末又は12月末現在)

図表3-29 指定廃棄物一時保管場所の点検結果(令和元年11月末又は12月末現在)

(単位:か所)
都県名





































































宮城県 確認が実施されていない 17 13 4 1 1 確認が実施されていない 17 13 4
福島県 42 42 12 12 54 54
茨城県 3 3 3 3
栃木県 34 33 1 5 5 34 28 6
群馬県 8 8 8 8
千葉県 8 6 2 8 6 2
東京都 1 1 1 1 1 1
神奈川県 2 2 2 2
新潟県 3 3 3 3
118 110 8 19 13 6 130 117 13
  • (注) 1か所の指定廃棄物一時保管場所で複数の想定される自然災害の条件に該当する場合がある。

そして、環境省は、前記13か所の指定廃棄物の一時保管者と調整を行った上で、図表3-30のとおり、2年9月末現在において、2か所については、指定廃棄物一時保管場所の移転及び指定取消しを行った上での処分を進めており、残りの11か所については、必要に応じて、指定廃棄物一時保管場所の移転や、飛散流出を防止するために指定廃棄物一時保管場所の周囲全体を耐候性大型土のう等(以下「大型土のう」という。)で囲うなどの対策を検討する方針としている。

h3-30図表3-30 指定廃棄物一時保管場所の対策の状況等

図表3-30 指定廃棄物一時保管場所の対策の状況等

都県名









(か所)









(t)
想定される自然災害
(令和元年12月末現在)
対策の状況及び今後の方針
(2年9月末現在)
洪水浸水想定
区域内等
土砂災害警戒
区域内等
対策実施済み 対策未実施




(か所)




(t)




(か所)




(t)




(か所)




(t)
対策内容



(か所)




(t)
今後の方針
宮城県 4 424 4 424 - - 1 3 一時保管場所の移転 3 421 飛散流出防止対策
栃木県 6 80 1 22 5 57 - - - 6 80 一時保管場所の移転
千葉県 2 1,076 2 1,076 - - - - - 2 1,076 飛散流出防止対策
東京都 1 1 1 1 1 1 1 1 指定取消しを
行った上で処分
- - -
13 1,581 8 1,523 6 58 2 4   11 1,577  
  • 注(1) 1か所の指定廃棄物一時保管場所で複数の想定される自然災害の条件に該当する場合がある。
  • 注(2) 保管量は令和元年度末現在の数字である。

c 除染仮置場

環境省は、元年12月から2年2月までの間に、元年11月末現在で除去土壌等を保管している除染特別地域内の除染仮置場170か所を対象に、地図情報等に基づき洪水浸水想定区域内等又は土砂災害警戒区域内等に設置されていないか確認している。その結果、図表3-31のとおり、159か所が洪水浸水想定区域内等や土砂災害警戒区域内等に設置されていることが判明した。そして、159か所の除染仮置場を対象に、令和元年東日本台風(台風第19号)相当の降雨があった場合等において、除去土壌等が浸水・流水、河岸浸食、斜面崩壊、土石流等の自然災害により流出するおそれがないか現地調査を行うなどした結果、158か所については、柵で周囲が囲われていたり、遮水シートで覆った大型土のう内に除去土壌等が保管されていたりなどしていることから対策が不要であるとし、残りの1か所については対策が必要であるとして、元年度末現在において、除去土壌(元年11月末現在の保管量1,486㎥)を中間貯蔵施設へ搬出している。

h3-31図表3-31 除染仮置場の点検結果(令和元年11月末現在)

図表3-31 除染仮置場の点検結果(令和元年11月末現在)

(単位:か所)
県名等
(管理主体)


































































福島県
(国管理)
確認が実施されていない 89 89 - 84 83 1 確認が実施されていない 159 158 1
  • (注) 1か所の除染仮置場で複数の想定される自然災害の条件に該当する場合がある。

一方、上記の点検には、津波浸水想定区域内又はため池浸水想定区域内に設置されていないかの確認は含まれていなかった。(注45)

(注45)
会計検査院が令和元年度末現在において除去土壌等が保管されている除染仮置場153か所を対象に、ハザードマップや地形図と照らし合わせて津波浸水想定区域内又はため池浸水想定区域内に設置されていないかについて確認したところ、5か所において津波浸水想定区域内に設置され、3か所においてため池浸水想定区域内に設置されていた。

環境省は、指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場について、比較的発生頻度の高い津波に対しては既に海岸堤防等が整備済み又は整備中であり、それが機能すれば、津波による被災の可能性や、飛散流出防止のための特別な対策の必要性が低いと考えていたことなどから、津波浸水想定区域内に設置されていないかの確認を実施していなかったり、また、廃棄物仮置場、指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場について、洪水等による自然災害に比べて、ため池崩壊の影響範囲は限定的で浸水の深さも浅いと考えていたことなどから、ため池浸水想定区域内に設置されていないかの確認を実施していなかったりしていた。

しかし、比較的発生頻度の高い津波の規模を超える規模の津波やため池崩壊が発生する可能性や、廃棄物等が飛散流出した場合に周辺住民等に与える不安等に鑑みると、環境省は、指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場については津波浸水想定区域内に設置されていないかの確認を、廃棄物仮置場、指定廃棄物一時保管場所及び除染仮置場についてはため池浸水想定区域内に設置されていないかの確認をそれぞれ行い、必要に応じて廃棄物又は除去土壌等を飛散流出の可能性が低い箇所へ搬出したり、飛散流出を防止するための対策を実施したりする必要がある。また、追加の検討の結果、災害が発生した場合に指定廃棄物が飛散流出するおそれのある指定廃棄物一時保管場所については、指定廃棄物を飛散流出の可能性が低い箇所へ搬出したり、必要に応じて飛散流出を防止するための対策を実施したりするなど、指定廃棄物の安全な保管に努める必要がある。

4 中間貯蔵施設に係る事業の実施状況

環境省は、中間貯蔵施設に、廃棄物関連施設として、次の施設を整備することとしている。

① 中間貯蔵施設外の仮設焼却施設で発生した10万Bq/kg超又は除染廃棄物由来の焼却灰等を保管するための灰保管施設

② 分別前の除去土壌等及び分別後の除染廃棄物を保管するための保管場

③ 分別後の除染廃棄物を保管するための分別処理物置場(以下、①から③までの施設を合わせて「廃棄物保管場」という。)

④ 保管場及び分別処理物置場で保管している除染廃棄物又は特定廃棄物等の可燃物を焼却処理するための仮設焼却施設

⑤ 灰保管施設で保管され、又は中間貯蔵施設内の仮設焼却施設で発生した焼却灰等を溶融し固化処理して減容化するための仮設灰処理施設

⑥ 仮設灰処理施設において溶融され固化処理された焼却灰及びばいじん(以下、これらを合わせて「溶融処理済ばいじん」という。)を貯蔵容器に収納した上で貯蔵するための廃棄物貯蔵施設

また、環境省は、中間貯蔵施設に、除去土壌等関連施設として、次の施設を整備することとしている。

① 分別前の除去土壌等及び分別後の除染廃棄物を保管するための保管場(上記の②と同一の施設)

② 輸送の調整等のために、受入・分別施設への搬入前に分別前の除去土壌等の一時的な荷下ろしを行う一時保管場(以下、保管場及び一時保管場を合わせて「除去土壌等保管場」という。なお除去土壌等保管場には除染廃棄物を保管していることから廃棄物保管場としても利用されている。)

③ 中間貯蔵施設に搬入される除去土壌等の輸送車両等からの荷下ろし、大型土のうの破袋、除去土壌等の除去土壌と除染廃棄物への分別等の作業を行い、各土壌貯蔵施設に貯蔵するものなどを整理するための受入・分別施設

④ 受入・分別施設において分別された除去土壌を、放射能濃度が8,000㏃/㎏以下のものと8,000㏃/㎏超のものとに区分して貯蔵するための土壌貯蔵施設

そして、元年度末現在、中間貯蔵施設には、図表4-1のとおり、廃棄物保管場、仮設焼却施設、仮設灰処理施設、廃棄物貯蔵施設、除去土壌等保管場、受入・分別施設、土壌貯蔵施設等が整備されている。

図表4-1 中間貯蔵施設における施設の整備状況(令和元年度末現在)

図表4-1 中間貯蔵施設における施設の整備状況(令和元年度末現在)画像

(1) 中間貯蔵施設に係る用地の取得状況

用地の取得については、地権者の意向を踏まえて、買取りに加えて地上権設定によることもできることとなっている。地上権の設定期間は、中間貯蔵施設に除去土壌等の搬入を開始してから30年後となる27年3月12日までとされ、地上権の設定割合は、元年度末までに設定した場合は一律土地価格の70%、2年度以降に設定する場合は土地の使用期間が短くなることから低減していくこととなっており、2年度に設定した場合は宅地及び田畑は58%、山林は63%となっている。

中間貯蔵施設予定地の面積は、図表4-2のとおり、計15,994,087㎡であり、内訳は、国有地及び公有地(以下「公有地等」という。)が3,329,001㎡、民有地が12,665,085㎡となっている。

h4-2図表4-2 中間貯蔵施設予定地の公有地等及び民有地の内訳(令和元年度末現在)

図表4-2 中間貯蔵施設予定地の公有地等及び民有地の内訳(令和元年度末現在)

区分 面積(㎡) 全体に占める割合(%)
450,554 2.8
大熊町 1,429,241 8.9
双葉町 1,130,524 7.1
福島県 174,697 1.1
双葉地方広域市町村圏組合 143,983 0.9
公有地等計 3,329,001 20.8
民有地 12,665,085 79.2
合計 15,994,087 100.0

公有地等及び民有地の取得状況は、次のとおりとなっている。

ア 公有地等

公有地等については、図表4-3のとおり、大熊、双葉両町の一部計422,845㎡(取得対象の公有地等の12.7%)について取得済みとなっており、内訳は、買取りが196,772㎡、地上権設定が226,073㎡となっている。

h4-3図表4-3 公有地等の取得状況(面積)(令和元年度末現在)

図表4-3 公有地等の取得状況(面積)(令和元年度末現在)

区分 総面積
(㎡)
(A)
左のうち
取得済
面積
(㎡)
(B)
割合
(%)
(B/A)
買取り
(㎡)
地上権設定
(㎡)
所管換
(㎡)
450,554 -     - -
大熊町 1,429,241 281,594 142,740 138,853   19.7
双葉町 1,130,524 141,250 54,031 87,219   12.5
福島県 174,697 - - -   -
双葉地方広域市町村圏組合 143,983 - - -   -
3,329,001 422,845 196,772 226,073 - 12.7

また、公有地等の取得に要した事業費(元年度末現在)については、図表4-4のとおり、計4億8564万余円となっており、内訳は、買取りが1億5745万余円、地上権設定が3億2819万余円となっている(取得した公有地等の主なものは、民間に売却する目的で造成された工業団地の用地となっている。)。

h4-4図表4-4 公有地等の取得に要した事業費(平成30年度及び令和元年度)

図表4-4 公有地等の取得に要した事業費(平成30年度及び令和元年度)

(単位:千円)
年度 事業費  
買取り 地上権
設定
 
大熊町   双葉町  
買取り 地上権設定 買取り 地上権設定
平成30年度 411,738 157,270 254,467 305,357 74,244 231,112 106,381 83,026 23,355
令和元年度 73,909 184 73,724 36,001 184 35,817 37,907 - 37,907
485,647 157,455 328,192 341,358 74,429 266,929 144,288 83,026 61,262

環境省は、公有地等については、今後も道路、水路等の機能を維持する必要があることから取得の対象とならない可能性のある土地が一定程度あると見込んでおり、また、未取得となっている土地のうち上記以外の土地については、中間貯蔵施設の建設について福島県及び大熊、双葉両町が容認していることなどから、必要に応じて取得できる見込みであるとしている。

イ 民有地

民有地の取得状況(元年度末現在)を地権者数でみると、図表4-5のとおり、当該用地の登記簿上の地権者2,351人のうち、1,951人について連絡先を把握しており、これらの者については全て個別訪問済みである。そのうち1,756人から用地を取得済みであり、内訳は、買取りが1,607人、地上権設定が149人となっている。

連絡先を把握できていない400人について、環境省は、戸籍、住民票情報等により、法定相続人の連絡先の調査や確認等を行っているとしており、着実な事業実施に向けて、引き続き地権者への丁寧な説明を尽くしながら用地取得に全力で取り組むとしている。

h4-5図表4-5 民有地の取得状況(地権者数)(平成26年度~令和元年度)

図表4-5 民有地の取得状況(地権者数)(平成26年度~令和元年度)

年度 総地
権者

(人)
(A)
連絡先把握済み 個別訪問済み 取得済み
当該
年度
(人)
累計
(人)
(B)
割合
(%)
(B/A)
当該
年度
(人)
累計
(人)
(C)
割合
(%)
(C/A)
当該
年度
(人)
  累計
(人)
(D)
  割合
(%)
(D/A)
買取

(人)
地上権
設定
(人)
買取

(人)
地上権
設定
(人)
平成
26年度
2,356 - - - - - - 2 2 - 2 2 - 0.1
27年度 2,356 1,494 1,494 63.4 1,466 1,466 62.2 81 75 6 83 77 6 3.5
28年度 2,351 254 1,748 74.4 267 1,733 73.7 691 652 39 774 729 45 32.9
29年度 2,351 139 1,887 80.3 151 1,884 80.1 645 589 56 1,419 1,318 101 60.4
30年度 2,351 56 1,943 82.6 58 1,942 82.6 267 227 40 1,686 1,545 141 71.7
令和
元年度
2,351 8 1,951 83.0 9 1,951 83.0 70 62 8 1,756 1,607 149 74.7

民有地の取得状況(元年度末現在)を面積でみると、図表4-6のとおり、計11,219,239㎡(取得対象の民有地の88.6%)について取得済みとなっており、内訳は、買取りが9,576,899㎡、地上権設定が1,642,339㎡となっている。

h4-6図表4-6 民有地の取得状況(面積)(平成26年度~令和元年度)

図表4-6 民有地の取得状況(面積)(平成26年度~令和元年度)

年度 総面積
(㎡)
(A)
取得済面積
当該
年度
(㎡)
  累計
(㎡)
(B)
  割合
(%)
(B/A)
買取り
(㎡)
地上権
設定
(㎡)
買取り
(㎡)
地上権
設定
(㎡)
平成26年度 12,665,085 2,197 2,197 - 2,197 2,197 - 0.0
27年度 213,778 180,726 33,051 215,975 182,923 33,051 1.7
28年度 3,539,197 3,181,826 357,371 3,755,172 3,364,749 390,422 29.6
29年度 4,984,386 4,247,937 736,448 8,739,559 7,612,687 1,126,871 69.0
30年度 2,012,051 1,524,848 487,203 10,751,610 9,137,535 1,614,074 84.9
令和元年度 467,628 439,363 28,265 11,219,239 9,576,899 1,642,339 88.6

民有地の取得に要した事業費(元年度末現在)については、図表4-7のとおり、計157億4701万余円となっており、内訳は、買取りが139億1861万余円、地上権設定が18億2839万余円となっている。

h4-7図表4-7 民有地の取得に要した事業費(平成26年度~令和元年度)

図表4-7 民有地の取得に要した事業費(平成26年度~令和元年度)

(単位:千円)
年度 事業費  
買取り 地上権設定
平成26年度 9,217 9,217 -
27年度 402,319 380,161 22,158
28年度 5,111,425 4,779,892 331,532
29年度 6,923,458 5,938,874 984,583
30年度 2,714,911 2,251,130 463,781
令和元年度 585,679 559,339 26,340
15,747,012 13,918,616 1,828,395

そして、公有地等及び民有地を合わせた取得済面積は、合計で11,642,084㎡(全体面積15,994,087㎡の72.8%)、内訳は、買取りが計9,773,671㎡、地上権設定が計1,868,413㎡となっている。また、公有地等及び民有地の取得に要した事業費は、合計で162億3266万余円、内訳は、買取りが計140億7607万余円、地上権設定が計21億5658万余円となっている。

(2) 施設の整備及び稼働の状況

ア 廃棄物関連施設

中間貯蔵施設における廃棄物関連施設は、前記のとおり、廃棄物保管場、仮設焼却施設、仮設灰処理施設及び廃棄物貯蔵施設から構成されており、図表4-8のとおり、廃棄物保管場は平成27年3月に、仮設焼却施設は29年12月に、仮設灰処理施設及び廃棄物貯蔵施設は令和2年3月に、それぞれ一部の施設が稼働を開始している。

h4-8図表4-8 廃棄物関連施設の整備及び稼働の状況(令和2年4月末現在)

図表4-8 廃棄物関連施設の整備及び稼働の状況(令和2年4月末現在)

施設種別 工区 施設数 整備完了年月 稼働(搬入)
開始年月
廃棄物保管場 灰保管施設 大熊工区 2 平成29年 8月 平成29年 8月
双葉工区 7 29年 9月 29年 9月
9    
保管場 大熊工区 49 27年 3月 27年 3月
双葉工区 38 27年10月 27年10月
87    
一時保管場 大熊工区 1 令和元年10月 令和元年10月
双葉工区 1 元年 7月 元年 7月
2    
分別処理物置場 大熊工区 7 平成29年 9月 平成29年 9月
双葉工区 3 29年 6月 29年 6月
10    
108    
仮設焼却施設 大熊工区 1 29年12月 29年12月
双葉工区その1 1 令和 2年 2月 令和 2年 2月
双葉工区その2 1
3    
仮設灰処理施設 双葉工区その1 1 2年 2月 2年 3月
双葉工区その2 1 2年 4月
2    
廃棄物貯蔵施設 大熊1工区 1 2年 3月 2年 4月
双葉1工区 1 2年 2月 2年 3月
双葉2工区 1 3年 3月 未稼働
3    
  • 注(1) 施設種別及び工区については、整備時の事業名に基づき表記している。
  • 注(2) 施設数が2以上の工区における整備完了年月及び稼働(搬入)開始年月には、最初に整備が完了した施設に係る年月を記載している。
  • 注(3) 仮設焼却施設については、別図表3-7及び別図表3-8における大熊町仮設焼却施設が大熊工区、双葉町仮設焼却第一施設が双葉工区その1、双葉町仮設焼却第二施設が双葉工区その2となっている。

環境省は、次のとおり、福島県内で発生した除染廃棄物、対策地域内廃棄物及び指定廃棄物(双葉町及び大熊町で生じたものを除く。)について、中間貯蔵施設外の仮設焼却施設等において焼却処理を行い、放射能濃度が10万Bq/kg超又は除染廃棄物由来の焼却灰等については、中間貯蔵施設に搬入した上で、廃棄物関連施設において処理することにしている。

① 中間貯蔵施設外の焼却施設から搬入された放射能濃度10万Bq/kg超又は除染廃棄物由来の焼却灰等を灰保管施設に搬入した上で、順次、仮設灰処理施設に搬入する。

② 除染仮置場等から搬入された除去土壌等を受入・分別施設において除去土壌と除染廃棄物に分別した後、除染廃棄物を分別処理物置場に搬入した上で、順次、仮設焼却施設に搬入する(除去土壌は土壌貯蔵施設に搬出される。後掲イ参照)。

③ ②で仮設焼却施設に搬入された除染廃棄物について、前処理破砕をして焼却処理を行った後、発生した焼却灰等を灰保管施設に搬入した上で、順次、仮設灰処理施設に搬入する。

④ ①及び③で仮設灰処理施設に搬入された焼却灰等を溶融し固化処理することにより生成される溶融処理済ばいじんを廃棄物貯蔵施設に搬出する(溶融処理済ばいじんと同時に生成される溶融スラグについては、土壌貯蔵施設の遮水シート保護等に活用される。)。

上記処理の流れを示すと、図表4-9のとおりである。

図表4-9 中間貯蔵施設における廃棄物等の処理のフロー図

図表4-9 中間貯蔵施設における廃棄物等の処理のフロー図画像

第1の2(3)ア(ア)のとおり、中間貯蔵施設等ロードマップによれば、中間貯蔵施設の整備については、仮置場への本格搬入開始から3年程度を目途として供用開始できるよう、遅くとも平成24年度内に立地場所を選定し、26年7月頃に本体工事、27年1月頃に廃棄物等の搬入を開始するとされ、「国は、中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了する。最終処分の方向については、放射性物質の効果的な分離・濃縮等の技術の発展によるところが大きいため、国は、技術の研究開発・評価に努める」こととされている。

廃棄物関連施設のうち、中間貯蔵施設内に設置されている3仮設焼却施設については、中間貯蔵施設外の仮設焼却施設等と同様に焼却処理を行うとされており、焼却処理に伴い令和元年度末までに発生した焼却灰等の発生量は、大熊町仮設焼却施設が28,963t、双葉町仮設焼却第一施設が1,346tとなっており、双葉町仮設焼却第二施設は焼却処理実績がない(別図表3-8参照)。また、図表3-16のとおり、元年度末までに中間貯蔵施設に搬入された焼却灰等の量は113,436tとなっている(大熊町仮設焼却施設で発生した28t及び双葉町仮設焼却第一施設で発生した1,346tを含む。)。

そこで、焼却灰等113,436tの処理に係る廃棄物保管場、仮設灰処理施設及び廃棄物貯蔵施設の整備、稼働、搬入及び保管の状況について示すと、次の(ア)から(ウ)までのとおりである。

(ア) 廃棄物保管場

廃棄物保管場の整備の状況は、図表4-10のとおり、元年度末までに灰保管施設計9施設、保管場計89施設(平成27年3月以降に整備され令和元年度末現在稼働中のものは87施設)、一時保管場計3施設(同2施設)及び分別処理物置場10施設の計111施設(同108施設)(面積計1,344,297㎡、整備費計111億7278万余円)が整備済みとなっていて、これらの保管容量は計3,704,046㎥、元年度末現在の保管量は計3,180,157㎥(保管容量の85.9%)となっている。

h4-10図表4-10 廃棄物保管場の整備の状況(令和元年度末現在)

図表4-10 廃棄物保管場の整備の状況(令和元年度末現在)

町名
(工区)
施設種別 施設数
注(1)
整備済面積
(㎡)
整備費
(千円)
整備済
保管容量
(㎥)
注(2)
令和元年度末
保管量
(㎥)
注(3)
稼働(搬入)開始
年月日
大熊町
(大熊工区)
灰保管施設 2(2) 10,168 1,399,680 30,660 30,660 平成29年 8月22日
保管場 51(49) 823,593 4,230,424 2,370,893 2,004,308 27年 3月13日
一時保管場 2(1) 13,427 162,453 15,440 670 令和元年10月23日
分別処理物置場 7(7) 59,624 261,259 116,531 94,759 平成29年 9月21日
62(59) 906,812 6,053,817 2,533,524 2,130,397  
双葉町
(双葉工区)
灰保管施設 7(7) 26,873 816,387 90,884 89,227 29年 9月 7日
保管場 38(38) 385,595 4,028,370 996,744 917,200 27年10月26日
一時保管場 1(1) 6,356 170,330 7,890 466 令和元年 7月 1日
分別処理物置場 3(3) 18,661 103,882 75,004 42,867 平成29年 6月 9日
49(49) 437,485 5,118,971 1,170,522 1,049,760  
灰保管施設 9(9) 37,041 2,216,067 121,544 119,887  
保管場 89(87) 1,209,188 8,258,794 3,367,637 2,921,508  
一時保管場 3(2) 19,783 332,784 23,330 1,136  
分別処理物置場 10(10) 78,285 365,142 191,535 137,626  
合計 111(108) 1,344,297 11,172,789 3,704,046 3,180,157  
  • 注(1) 括弧内は、平成27年3月以降に整備され令和元年度末現在稼働中の施設数である。
  • 注(2) 整備済保管容量は、環境省が整備済面積から推計したものである。
  • 注(3) 保管場及び一時保管場は、除去土壌等保管場として併用されており、保管場の保管量は、分別前の除去土壌等及び分別後の除染廃棄物の量を含み、一時保管場の保管量は、分別前の除去土壌の量を含む。
(イ) 仮設灰処理施設

仮設灰処理施設は、福島県内の仮設焼却施設等から搬出された焼却灰等を溶融し固化処理して減容化するための施設であり、図表4-11のとおり、2年3月に仮設灰処理施設(双葉工区その1)が、同年4月に仮設灰処理施設(双葉工区その2)が稼働を開始し、同月末までに3,471tが溶融処理されている。

h4-11図表4-11 仮設灰処理施設の整備及び稼働の状況(令和2年4月末現在)

図表4-11 仮設灰処理施設の整備及び稼働の状況(令和2年4月末現在)

施設名 整備完了年
稼働(搬入)
開始年月日
施設面積
(㎡)
整備費(千円)
注(1)
処理能力
(t/日・炉)

注(2)
処理済量(t)

注(2)
稼働開始から2
年4月末までの
稼働日数(日)

注(2)
稼働率(%)
B/(A×C)
注(2)
仮設灰処理施設(双葉工区その1) 令和2年2月 2年3月12日 14,565 58,465,476 75 953 14 90
75 2,186 15 194
仮設灰処理施設(双葉工区その2) 2年4月 7日 20,983 70,652,117 75 - - -
75 332 4 110
    35,549 129,117,593   3,471 33  
  • 注(1) 整備費は令和元年度末現在のものである。
  • 注(2) 溶融炉が2系列となっていることから、処理能力、処理済量、稼働開始から2年4月末までの稼働日数及び稼働率は、それぞれ記載している。
(ウ) 廃棄物貯蔵施設

廃棄物貯蔵施設3施設は、仮設灰処理施設で発生した溶融処理済ばいじんを放射性物質の流出等を防止できるよう貯蔵容器に格納した上で保管する施設であり、図表4-12のとおり、搬入見込量110,000㎥に基づき保管容量が決定された廃棄物貯蔵施設3施設(保管容量計110,000㎥、整備費(契約額)215億1590万余円)のうち、元年度末までに廃棄物貯蔵施設(大熊1工区)及び廃棄物貯蔵施設(双葉1工区)の2施設(保管容量計65,000㎥、整備費(契約額)134億9798万余円)が整備済みとなっている。整備済みとなっている2施設については、2年3月以降、順次、溶融処理済ばいじんの搬入が開始されており、同年4月末までに溶融処理済ばいじん330㎥(保管容量の0.3%)が搬入済みとなっている。また、廃棄物貯蔵施設(大熊1工区)及び廃棄物貯蔵施設(双葉1工区)における搬入完了予定時期は、それぞれ7年7月又は4年11月となっている。

h4-12図表4-12 廃棄物貯蔵施設の整備の状況等(令和2年4月末現在)

図表4-12 廃棄物貯蔵施設の整備の状況等(令和2年4月末現在)

施設名 整備完了
年月
施設面積
(㎡)
整備費
(契約額)
(千円)
保管容量
(㎥)
稼働(搬入)開始
年月日
搬入完了
予定年月日
搬入済量
(㎥)
注(1)
廃棄物貯蔵施設(大熊1工区) 令和2年3月 21,360 8,803,555 43,000 2年4月23日 7年7月31日 27
廃棄物貯蔵施設(双葉1工区) 2年2月 13,263 4,694,425 22,000 2年3月30日 4年11月30日 303
廃棄物貯蔵施設(双葉2工区) 3年3月 21,376
注(2) 8,017,920
45,000 未稼働 未定
  55,999 21,515,900 110,000     330
  • 注(1) 搬入済量は、貯蔵容器の容積1.5㎥に搬入済みの貯蔵容器の個数を乗じて算出している。
  • 注(2) 廃棄物貯蔵施設(双葉2工区)の整備費(契約額)は令和2年度末現在のものである。
イ 除去土壌等関連施設

環境省は、図表4-13のとおり、中間貯蔵施設における除去土壌等関連施設のうち、除去土壌等保管場については平成27年3月に、受入・分別施設については29年6月に、土壌貯蔵施設については同年10月に、それぞれ一部の施設の稼働を開始している。

h4-13図表4-13 除去土壌等関連施設の整備及び稼働の状況(令和元年度末現在)

図表4-13 除去土壌等関連施設の整備及び稼働の状況(令和元年度末現在)

施設種別 工事 工区 施設数 整備完了年月 稼働(搬入)
開始年月
除去土壌等保管場 大熊工区 50 平成27年 3月 平成27年 3月
双葉工区 39 27年10月 27年10月
89    
受入・分別施設 第1期 大熊工区 1 29年 8月 29年 8月
双葉工区 1 29年 6月 29年 6月
第2期 大熊1工区 1 30年 7月 30年 7月
大熊2工区 1 30年 7月 30年 7月
大熊3工区 1 30年 7月 30年 7月
双葉1工区 1 30年 9月 30年 9月
双葉2工区 1 31年 2月 31年 2月
第3期 大熊4工区 1 令和元年 8月 令和元年 8月
大熊5工区 1 元年 8月 元年 8月
9    
土壌貯蔵施設 第1期 大熊工区 1 平成29年10月 平成29年10月
双葉工区 1 29年12月 29年12月
第2期 大熊1工区 1 30年 7月 30年 7月
大熊2工区 1 30年 7月 30年 7月
大熊3工区 1 30年 9月 30年10月
双葉1工区 1 30年 9月 30年 9月
双葉2工区 1 令和元年 5月 令和元年 5月
第3期 大熊4工区 1 2年 3月 2年 3月
大熊5工区 1 平成31年 4月 平成31年 4月
双葉3工区 1 令和元年12月 令和元年12月
10    
  • (注) 除去土壌等保管場の整備完了年月及び稼働(搬入)開始年月には、最初に整備が完了した施設に係る年月を記載している。

そして、環境省は、福島県内の除染仮置場等や現場保管場所の除去土壌等について、最終処分するまでの間、中間貯蔵施設に搬入した上で集中的に管理して保管することとしており、除去土壌等関連施設において次の手順で処理している。

① 除去土壌等を収納した大型土のうを受入・分別施設の整備状況等に応じて受入・分別施設又は除去土壌等保管場に搬入し、除去土壌等保管場に搬入した大型土のうについては、順次、受入・分別施設に搬入する。

② 除染仮置場等や現場保管場所又は除去土壌等保管場から輸送車両等で受入・分別施設に搬入した大型土のうを荷下ろし設備で荷下ろしする。

③ 破袋設備において大型土のうを破袋して除去土壌等を分別設備に送り、除去土壌と除染廃棄物とに分別する。

④ 分別した除去土壌を放射能濃度別に土壌貯蔵施設に搬入して貯蔵する。

そこで、除去土壌等保管場、受入・分別施設及び土壌貯蔵施設の整備並びに除去土壌等の搬入、保管等の状況を示すと、次の(ア)から(ウ)までのとおりである。

(ア) 除去土壌等保管場

環境省は、除去土壌等保管場の構造について、除染関係ガイドラインに記載された除染仮置場の構造に準拠して、学識経験者、福島県、大熊、双葉両町等から構成される中間貯蔵施設環境安全委員会の意見を踏まえて、除去土壌等保管場の除去土壌等を定置する場所及びその周囲を舗装し、除去土壌等については雨水の浸入防止を図るために、防水性等を備えた大型土のうに詰めており、また、搬入中の段階から1日の作業終了後に除去土壌等保管場の上部を遮水性シートで覆い、雨水の浸入を防ぐことを徹底するなどの対策を実施している。

環境省は、受入・分別施設、土壌貯蔵施設等が本格的に稼働するまでの間、輸送量に応じて除去土壌等保管場を順次整備しながら、除去土壌等保管場への除去土壌等の搬入を順次行っている。そして、除去土壌等保管場(整備費計85億9157万余円)の累計設置施設数は、図表4-14のとおり、27年3月に除去土壌等保管場が稼働を開始して以降、輸送量の増加に伴い年々増加しており、令和元年度末現在で計89施設となっている。そして、元年度末までの除去土壌等保管場への累計搬入量は計3,317,994㎥(除去土壌等関連施設における除去土壌等の数量は、輸送時に複数の大型土のうを一つにまとめるなどした数量であり、除染仮置場での除去土壌等の数量とは一致しない。以下同じ。)であり、このうち計395,350㎥が受入・分別施設へ搬出され、元年度末現在の保管量は計2,922,644㎥となっている。

図表4-14 除去土壌等保管場の累計設置施設数、除去土壌等の累計搬入量及び保管量の推移(平成26年度~令和元年度)

図表4-14 除去土壌等保管場の累計設置施設数、除去土壌等の累計搬入量及び保管量の推移(平成26年度~令和元年度)画像

(イ) 受入・分別施設

受入・分別施設は、中間貯蔵施設に搬入される除去土壌等の輸送車両等からの荷下ろし、大型土のうの破袋、除去土壌と除染廃棄物の分別等の作業を行うなどの施設(図表4-15参照)であり、元年度末までの整備費は計163億2801万余円となっている。

図表4-15 受入・分別施設の概念図

図表4-15 受入・分別施設の概念図画像

環境省は、受入・分別施設を用地の取得状況等に応じて段階的に整備するとして、平成28年度に2工区、29年度に5工区の整備を開始し、30年度には令和元年度の予定輸送量400万㎥に対応するために、更に2工区の整備を開始しており、図表4-16のとおり、平成29年6月から令和元年度末までのこれら9工区(整備済面積計248,115㎡)における受入分別処理可能量(1日当たりの処理見込量に稼働可能日数を乗じた値)計3,661,000㎥に対して、累計受入分別処理実績は計3,494,125㎥(受入分別処理可能量の95.4%)となっている。

h4-16図表4-16 受入・分別施設の受入分別処理可能量及び累計受入分別処理実績(令和元年度末現在)

図表4-16 受入・分別施設の受入分別処理可能量及び累計受入分別処理実績(令和元年度末現在)

工事 工区 受入分別処理
開始年月
令和元年度末までの受入分別処理可能量 令和元年度末までの累計受入分別処理実績(注) 割合
(B/A)
(㎥)
(㎥)
(%)
 
第1期 大熊工区 平成29年 8月 581,500 565,183 97.2
双葉工区 29年 6月 361,600 350,856 97.0
第2期 大熊1工区 30年 7月 505,800 456,616 90.3
大熊2工区 30年 7月 755,900 728,298 96.3
大熊3工区 30年 7月 508,300 480,462 94.5
双葉1工区 30年 9月 306,000 301,726 98.6
双葉2工区 31年 2月 305,700 305,605 100.0
第3期 大熊4工区 令和元年 8月 114,600 96,560 84.3
大熊5工区 元年 8月 221,600 208,819 94.2
  3,661,000 3,494,125 95.4
  • (注) 累計受入分別処理実績は、重量で記録されていたものを会計検査院において体積に換算している。
(ウ) 土壌貯蔵施設

土壌貯蔵施設は、受入・分別施設において分別された除去土壌について、放射能濃度が8,000Bq/kg以下のものと8,000Bq/kg超のものとに区分して貯蔵する施設であり、元年度末までの整備費は計672億3451万余円となっている。

環境省は、中間貯蔵施設の設計を、環境省が平成26年12月に定めた「中間貯蔵施設に係る指針」等に基づいて行っている。同指針等によれば、土壌貯蔵施設において除去土壌の保管を行う貯蔵地からの浸出水による公共の水域及び地下水の汚染を防止するために、貯蔵地内の除去土壌の保有水、雨水等を集めて排出することができる集排水設備を設けるとともに、貯蔵地から保有水、雨水等が浸出することを防止できる遮水工等を設けることとされており、環境省は、これにより設計し土壌貯蔵施設を整備している。また、環境省は、土壌貯蔵施設への除去土壌の投入については、放射能濃度が,000Bq/8 kg以下の場合はダンプトラック(投入車両)で行っており、8,000Bq/kg超の場合は飛散防止のための覆いなどをしたベルトコンベア等の設備で行っている(図表4-17参照)。貯蔵に当たっては、土壌等の飛散防止及び作業員の被ばく防止を図るために、搬入作業時の散水や1日の作業終了時の覆土等の必要な措置を講じている。

図表4-17 土壌貯蔵施設の概念図

図表4-17 土壌貯蔵施設の概念図画像

環境省は、土壌貯蔵施設を用地の取得状況等に応じて段階的に整備するとして、令和元年度末までに10工区を整備(整備済面積計974,371㎡)しており、元年度末現在の土壌貯蔵施設の除去土壌を貯蔵できる容量(以下「貯蔵容量」という。)は、図表4-18のとおり、10工区で計3,028,524㎥(土の締固め後の数量。(ウ)において同じ。)となっており、実際に除去土壌を貯蔵した累計貯蔵実績は計2,091,337㎥(貯蔵容量の69.1%)となっている。

h4-18図表4-18 土壌貯蔵施設の貯蔵容量及び累計貯蔵実績(令和元年度末現在)

図表4-18 土壌貯蔵施設の貯蔵容量及び累計貯蔵実績(令和元年度末現在)

工事 工区 貯蔵開始年月 令和元年度末現在の貯蔵容量 令和元年度末までの累計貯蔵実績(注) 割合
(B/A)
(㎥)
(㎥)
(%)
 
第1期 大熊工区 平成29年10月 155,700 123,626 79.4
双葉工区 29年12月 60,000 64,489 107.5
第2期 大熊1工区 30年 7月 390,000 293,061 75.1
大熊2工区 30年 7月 1,192,000 690,566 57.9
大熊3工区 30年10月 406,000 305,223 75.2
双葉1工区 30年 9月 181,317 152,463 84.1
双葉2工区 令和元年 5月 201,305 172,314 85.6
第3期 大熊4工区 2年 3月 5,000 2,182 43.7
大熊5工区 平成31年 4月 424,702 270,876 63.8
双葉3工区 令和元年12月 12,500 16,532 132.3
  3,028,524 2,091,337 69.1
  • (注) 累計貯蔵実績は、重量で記録されていたものを会計検査院において体積に換算しており、計算上、割合が100%を超えるものがある。

(3) 中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送

環境省は、平成26年度から令和元年度までの間に、図表4-19のとおり、福島県内の除染仮置場等から中間貯蔵施設に計6,683,133㎥の除去土壌等を輸送している。

h4-19図表4-19 輸送の実施状況(平成26年度~令和元年度)

図表4-19 輸送の実施状況(平成26年度~令和元年度)

年度 中間貯蔵施設事業の方針等 輸送車両延べ台数
(台)
輸送実績
(㎥)
平成26、27両年度 パイロット輸送として、おおむね1年をかけて、福島県内43市町村の除染仮置場等から、各市町村おおむね1,000㎥程度ずつ輸送する。 7,529 45,939
28年度 「平成28年度を中心とした中間貯蔵施設事業の方針」に基づき、輸送量を15万㎥として、段階的に本格輸送を開始する。 30,509 187,955
29年度 「平成29年度の中間貯蔵施設事業の方針」に基づき、輸送量を50万㎥程度として、学校等に保管されている除去土壌等を優先的に輸送する。 87,638 551,481
30年度 「平成30年度の中間貯蔵施設事業の方針」に基づき、輸送量を「当面5年間の見通し」の最大値である180万㎥程度として、身近な場所や幹線道路沿いの除染仮置場等の早期解消を視野に、市町村と連携して計画的に輸送する。 270,135 1,839,058
令和元年度 「2019年度の中間貯蔵施設事業の方針」に基づき、輸送量を400万㎥程度として、身近な場所から除染仮置場等をなくすことを目指して、市町村と連携して計画的に輸送する。 590,994 4,058,700
986,805 6,683,133

そして、上記の輸送量は、図表4-20のとおり、環境省が平成28年3月に定めた「中間貯蔵施設に係る「当面5年間の見通し」のイメージ」の予定輸送量と同等となっていた。

図表4-20 中間貯蔵施設への輸送量の推移(平成26年度~令和元年度)

図表4-20 中間貯蔵施設への輸送量の推移(平成26年度~令和元年度)画像

また、環境省が請負業者に支払った輸送に係る工事費は、図表4-21のとおり、令和元年度末までの総額で計643億5795万余円となっている。

h4-21図表4-21 輸送に係る工事費(平成27年度~令和元年度)

図表4-21 輸送に係る工事費(平成27年度~令和元年度)

(単位:千円)
年度 平成27年度 28年度 29年度 30年度 令和 元年度
工事費(支払額) 542,853 2,996,657 14,728,088 40,198,778 5,891,576 64,357,952

(4) JESCOの事業実施状況

第1の2(3)ア(イ)のとおり、国は、中間貯蔵を行うために必要な施設を整備して、「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」とされている。そして、JESCOは、環境省から委託を受けて中間貯蔵施設事業の管理等に関する業務等を実施しており、図表4-22のとおり、元年度には、工事発注支援、工事監督支援、中間貯蔵施設区域の運営管理、輸送統括管理、モニタリング、技術的課題への対応及び減容化・再生利用の技術開発の業務を実施している。

h4-22図表4-22 令和元年度においてJESCOが環境省から委託を受けて実施している業務の内容

図表4-22 令和元年度においてJESCOが環境省から委託を受けて実施している業務の内容

業務 業務の内容
工事発注支援 工事発注支援、設計変更支援、土壌汚染状況調査
工事監督支援 工事監督支援、積込場工事監督支援、品質確保、放射線管理
中間貯蔵施設区域の運営管理 施設の管理運営、中間貯蔵施設区域の維持管理、入退ゲートの管理、スクリーニング施設の管理運営、保管場の管理、取得用地の管理、分析施設の運営、研究施設の運営、中間貯蔵工事情報センターの運営、土壌貯蔵施設の管理、緑地の管理
輸送統括管理 輸送統括管理、総合管理システムの運用・改善、各種道路交通データ等を活用した輸送・運搬マネジメント支援、通信不感区域対策、輸送車両の休憩施設・待機場所の管理、教育・研修、情報の公開
モニタリング 施設及び輸送路の放射線モニタリング、輸送路の環境モニタリング、輸送路の交通量モニタリング、作業場所の放射線モニタリング、モニタリング地点情報の共有、地下水観測井の情報管理、気象観測、今後のモニタリングの検討等、情報の公開
技術的課題への対応及び減容化・再生利用の技術開発 技術的調査・検討、中間貯蔵施設技術実証フィールド構想及び運営管理の検討、除去土壌等の減容等技術実証、除去土壌の分級に係る実証試験及び技術検討

環境省が平成25年度から令和元年度までの間にJESCOに支払った委託費は、図表4-23のとおり、中間貯蔵施設の整備や除去土壌等の輸送の進捗に伴い年々増加しており、元年度には116億余円となっている。

h4-23図表4-23 環境省からJESCOへの委託費(平成25年度~令和元年度)

図表4-23 環境省からJESCOへの委託費(平成25年度~令和元年度)

(単位:百万円)
年度 平成25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 令和元年度
委託費
(支払額)
162 353 1,500 4,757 6,786 11,458 11,688 36,707

また、JESCOは、「日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律」が施行された平成26年12月に、福島県いわき市に中間貯蔵管理センターを設置している。そして、中間貯蔵施設の業務に係る人員(契約社員、派遣社員等を含む。)は、同月現在では、本社10人、中間貯蔵管理センター10人の計20人であったが、業務量の増加に伴い人員を増加させており、令和2年4月1日現在、本社58人、中間貯蔵管理センター(福島県内の支所等を含む。)257人の計315人となっている。

5 放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の最終処分への取組状況

放射性物質に汚染された廃棄物及び除去土壌等の最終処分への取組状況は、次のような状況となっていた。

(1) 放射性物質に汚染された廃棄物

ア 特定廃棄物
(ア) 福島県内における状況

福島県内における特定廃棄物(以下、(ア)において除染廃棄物を除く。)等の最終処分の状況をみると、図表5-1のとおり、元年度までの再生利用量は計1,621,164t、管理型最終処分場埋立量は計125,928㎥となっている。

h5-1図表5-1 特定廃棄物の最終処分の状況(平成24年度~令和元年度)

図表5-1 特定廃棄物の最終処分の状況(平成24年度~令和元年度)

年度 再生利用量(t)
注(1)
管理型最終処分場埋立量(㎥)
注(2)
平成24年度 134
25年度 2,577
26年度 138,890
27年度 177,416
28年度 345,260
29年度 405,059 13,553
30年度 372,723 58,156
令和元年度 179,101 54,218
1,621,164 125,928
  • 注(1) 環境省が行った集計による。令和元年度末までに再生利用されている特定廃棄物は全て対策地域内廃棄物である。
  • 注(2) 環境省は管理型最終処分場への埋立量を袋単位で管理しているため、袋の種類に応じて1袋=1.21㎥又は1.125㎥として体積に換算している。
  • 注(3) 管理型最終処分場埋立量には、対策地域内廃棄物、指定廃棄物及びその他の廃棄物を焼却して発生した焼却灰等が混合されたものが含まれており、焼却灰等の由来となる廃棄物の種類別の埋立量は算出できない。

a 再生利用の状況

環境省によれば、対策地域内廃棄物については、対策地域内廃棄物処理計画に基づき、再生利用可能なものは、可能な限り再生利用されるものであり、元年度末までの対策地域内廃棄物の再生利用量は、上記のとおり1,621,164tとなっている。そして、環境省が発注する処分等の業務において再生利用のために処理業者等へ引き渡される廃棄物については、放射線量の測定を行った上で、処理業者等の受入れが可能であると確認されたものを処理業者等に引き渡している。具体的には、コンクリートくず、瓦くず及び津波堆積物については、福島県及び県内市町村による公共事業の資材として利用されており、金属くずについては売払いを経て、木くずについては処理業者によるチップ化等を経て、また、家電や自動車については既存のリサイクルルートを経て、それぞれ再生利用されている。

また、環境省は、平成27年度に、飯舘村蕨平地区に仮設資材化施設を設置して、29年度までに対策地域内廃棄物等に由来する焼却灰等及び除去土壌から放射性セシウムを分離して再生利用可能なレベルまで放射能濃度を低減するための新技術を実証する調査事業を実施している。そして、上記の調査事業において、再生利用可能なレベルまで放射能濃度を低減させた生成物を安定的に得ることに成功したとして、焼却灰等241.8t及び除去土壌230.7tに反応促進剤668.6tを加えて放射性セシウムを分離して除去し、コンクリート骨材、路盤材等計924.4tを生成し、29年度に9.9tをコンクリートブロック等として再生利用していた。そして、残りの914.5tについては、蕨平地区仮設焼却施設での焼却処理が終了した後に行う原状回復のための資材として活用する予定としている。また、上記の調査事業で発生した副産物である放射性セシウム固化物44.3tについて、環境省は、仮設資材化施設の敷地内にある遮蔽措置を講じた保管庫内で保管している。

環境省は、帰還困難区域の復興・再生及び資源循環・産業創成を推進するために、官民連携による不燃性廃棄物のリサイクル事業への支援として、令和元年度に、民間企業の共同出資により設立された株式会社相双スマートエコカンパニーに対して、「廃棄物処理施設整備事業費補助金(廃棄物リサイクル施設整備事業)」を62億余円交付している。この補助事業においては、特定復興再生拠点区域の整備事業の実施に伴い発生する不燃性廃棄物を中間処理(破砕・選別等)するための施設として「不燃性廃棄物の再資源化処理施設」が建設され、2年10月にしゅん功して、同年11月に稼働を開始した。

b 10万㏃/kg超の特定廃棄物に係る最終処分の状況

3(1)のとおり、福島県内の特定廃棄物のうち放射能濃度が10万㏃/㎏超のものは、中間貯蔵施設に搬入されることとされており、2年4月末現在では、図表4-12のとおり、中間貯蔵施設内の廃棄物貯蔵施設に溶融処理済ばいじん330㎥が貯蔵されている。これら廃棄物貯蔵施設に貯蔵されたものについて、国は、「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」とされているが、元年度末現在でその最終処分方法等は未定となっている。

c 10万㏃/kg以下の特定廃棄物に係る最終処分の状況

3(1)のとおり、福島県内の特定廃棄物のうち放射能濃度が10万㏃/kg以下のものは、管理型最終処分場で埋立処分することとされており、元年度末現在で、図表5-1のとおり、125,928㎥の特定廃棄物等が埋め立てられていて、その埋立ての状況は次のとおりとなっている。

(a) フクシマエコテッククリーンセンターにおける埋立て

環境省は、福島県内で発生した対策地域内廃棄物等及び指定廃棄物並びに双葉郡8町村の一般廃棄物で放射能濃度が10万㏃/kg以下のものに係る処分について、平成26年5月に、民有の管理型最終処分場であったフクシマエコテッククリーンセンターを活用して、埋立処分事業(以下「特定廃棄物埋立処分事業」という。)を実施するとして、埋立対象廃棄物量等に係る計画を策定した。

同計画によれば、埋立ての対象となる廃棄物は、10万Bq/kg以下の焼却灰等や再生利用できない不燃物とされ、放射性セシウムが比較的溶出しやすいばいじん又はばいじんと焼却灰の混合物で放射能濃度が10万Bq/kg以下のものは、あらかじめセメント固型化してから埋め立てることとされている。そして、フクシマエコテッククリーンセンターの残容量は、セメント固型化した廃棄物を埋め立てる上流側区域は21.6万㎥、セメント固型化していない廃棄物を埋め立てる下流側区域は43.5万㎥、計約65.1万㎥であり、図表5-2のとおり、対策地域内廃棄物等29.1万t(埋立見込量26.3万㎥)、福島県内の指定廃棄物14.8万t(同13.6万㎥)、双葉郡8町村の一般廃棄物3.0万t(同2.7万㎥)、計46.9万t(同42.6万㎥)を埋め立てることとされ、埋立完了後も施設管理、モニタリング等を継続して実施していくこととされている。

h5-2図表5-2 特定廃棄物埋立処分事業における埋立ての対象となる廃棄物量、埋立見込量等

図表5-2 特定廃棄物埋立処分事業における埋立ての対象となる廃棄物量、埋立見込量等

区分 埋立期間
(年)
廃棄物量
(万t)
埋立見込量
(万㎥)
注(2)
①対策地域内廃棄物等 注(1) 6 29.1 26.3
②福島県内の指定廃棄物 注(1) 6 14.8 13.6
③双葉郡8町村の一般廃棄物 10 3.0 2.7
  46.9 42.6
(参考)残容量(万㎥) 65.1
  • 注(1) ①対策地域内廃棄物等及び②福島県内の指定廃棄物には、除染廃棄物は含まれない。
  • 注(2) 平成26年5月の計画においては、推計容量(埋立見込量)に、当時埋立ての対象と予定されていた除染廃棄物が含まれていたため、計画における推計容量を各廃棄物の重量を用いて案分し、埋立見込量を算出した。

そして、環境省は、28年4月にフクシマエコテッククリーンセンターの土地及び物件を取得して国有化し、29年11月から廃棄物の搬入を開始しており、また、楢葉町波倉地区に設置されたセメント固型化施設において、31年3月から約5年間を期間としてセメント固型化を開始した。

国有化後のフクシマエコテッククリーンセンターにおける令和元年度末までの廃棄物埋立量は、図表5-3のとおり、特定廃棄物等が計12.5万㎥、双葉郡8町村分の一般廃棄物が計0.7万㎥、合計13.3万㎥となっている。

h5-3図表5-3 国有化後のフクシマエコテッククリーンセンターにおける埋立量(平成29年度~令和元年度)

図表5-3 国有化後のフクシマエコテッククリーンセンターにおける埋立量(平成29年度~令和元年度)

(単位:万㎥)
区域 上流側区域
(セメント固型化した廃棄物を埋立て)
下流側区域
(セメント固型化しない廃棄物を埋立て)
残容量
(平成26年5月計画)
21.6 43.5 65.1
年度 特定
廃棄物等
注(3)
双葉郡
8町村分
一般廃棄物
特定
廃棄物等
注(3)
双葉郡
8町村分
一般廃棄物
特定
廃棄物等
注(3)
双葉郡
8町村分
一般廃棄物
合計
平成29年度 0.2 0.2 1.1 1.1 1.3 1.3
30年度 0.5 0.1 0.6 5.2 5.2 5.8 0.1 5.9
令和元年度 0.0 0.5 0.6 5.3 0.0 5.3 5.4 0.6 6.0
0.8 0.7 1.5 11.7 0.0 11.7 12.5 0.7 13.3
令和元年9月25日
残容量
注(4)
45.1
  • 注(1) 環境省では搬入量を袋単位で管理しているため、袋の種類に応じて、上流側では1袋=1.21㎥、下流側では1袋=1.125㎥として体積に換算して埋立量を算出している。
  • 注(2) 埋立量には、廃棄物と互層にして埋め立てる土壌層等は含まれない。
  • 注(3) 埋立量には、対策地域内廃棄物、指定廃棄物及びその他の廃棄物を焼却処理して発生した焼却灰等が混合されたものが含まれており、焼却灰等の由来となる廃棄物の種類別の埋立量は算出できない。
  • 注(4) 令和元年9月25日残容量は、環境省が実際に測量を行い確認した残容量である。

特定廃棄物埋立処分事業に係る元年度までの総事業費は、図表5-4のとおり、計532億余円となっている。このうち、廃棄物の保管場所において放射能濃度が10万Bq/kg以下であることを確認し、埋立処分用の収納容器に詰め替えて搬出する作業に係る事業費が計278億余円と総事業費の過半を占めている。

h5-4図表5-4 特定廃棄物埋立処分事業に係る年度別事業費(平成28年度~令和元年度)

図表5-4 特定廃棄物埋立処分事業に係る年度別事業費(平成28年度~令和元年度)

(単位:百万円)
年度 国有化費用 詰替・搬出 セメント固型化 埋立処分 モニタリング 情報発信拠点 その他
平成28年度 6,951 2,070 71 60 111 9,265
29年度 5,754 49 4,164 44 8 149 10,170
30年度 12,980 250 2,682 31 815 571 17,331
令和元年度 7,029 5,098 3,672 27 127 542 16,499
6,951 27,835 5,398 10,590 164 951 1,374 53,267
  • (注) 事業費には、環境本省が発注している広報経費は含まれない。

(b) クリーンセンターふたばにおける埋立て

環境省は、国有化後のフクシマエコテッククリーンセンターにおける特定廃棄物埋立処分事業のほかに、双葉郡の住民の生活や、特定復興再生拠点区域の整備事業から生ずる廃棄物等の処分先の確保が課題となっていることから、双葉地方広域市町村圏組合が所有する管理型最終処分場であるクリーンセンターふたばを、①双葉郡内の住民の日常生活に伴って生じたごみその他の一般廃棄物、②双葉郡内において実施されるインフラ整備等の各種事業活動に伴って生じた産業廃棄物及び事業系一般廃棄物及び③復興再生計画に従って行う被災建物等解体撤去等に伴って生じた特定廃棄物であって放射能濃度が10万㏃/kg以下のものの最終処分場として活用することなどについて、元年8月に同組合及び福島県との三者で基本協定を締結しており、環境省は、今後活用に係る詳細な埋立処分計画を作成するとしている。

なお、元年度末現在、クリーンセンターふたばの埋立残容量は約28万㎥であり、環境省は、2年8月に同組合との間で実施協定を締結しており、当該協定によれば、埋立想定量は、①及び②が計約10万㎥、③が約18万㎥、合計約28万㎥となっている。

(イ) 福島県外における状況

a 検討の進捗状況

3(1)のとおり、福島県以外の都県については、各都県の区域内において既存の管理型処分場の活用等により指定廃棄物の処分を進めることとされている。

環境省は、指定廃棄物が発生する市町村内の既存の廃棄物処理施設の活用を最優先する方針に基づき、関係地方公共団体との協議を実施していたが、既存の廃棄物処理施設での処分が進まなかったため、平成24年3月に「指定廃棄物の今後の処理の方針」を公表している。同方針によれば、「既存の廃棄物処理施設の活用について引き続き検討を行いつつ、今後3年程度(平成26年度末)を目途として、指定廃棄物に相当する8,000㏃/㎏を超過する廃棄物が多量に発生し、施設において保管状況がひっ迫している都道府県において、必要な最終処分場等を確保することを目指す」とされている。そして、指定廃棄物の最終処分場を新たに設置する必要がある場合には、当該都県内に集約して設置し、その設置場所は国有地の活用を含めて候補地を複数抽出し、その後複数の候補地の中から現地調査等により立地特性を把握した上で国が立地場所を決定するとされている。

環境省は、24年4月及び5月に、8,000㏃/kg超の廃棄物の発生量が特に多く保管状況がひっ迫している宮城県等5県(注39参照)に対して最終処分場の候補地選定の協力を要請し、候補地の選定作業を開始したものの、同省が25年2月に作成した「指定廃棄物の最終処分場候補地の選定に係る経緯の検証及び今後の方針」(以下「候補地選定方針」という。)において、指定廃棄物の最終処分場候補地において「強い反対を受け、地元への説明ができない状況に陥っている。その結果、県や市町村と今後の進め方を相談するところから始めなければならない状況となっており、スケジュールに遅延が生じている」としている。このため、環境省は、それまでの最終処分場の選定プロセスを見直すこととして、市町村長会議の開催を通じた共通理解の醸成、専門家による評価の実施及び候補地の安全性に関する詳細調査の実施をするとの方針を示した。

その後、環境省は、従来「最終処分場」と表現していた施設について、指定廃棄物を長期保管し、放射能濃度が十分に下がった場合には、指定廃棄物の再生利用や施設の跡地利用等の可能性があることを踏まえて、「長期管理施設」と位置付けている。

候補地選定方針に基づく取組の実施状況をみると、市町村長会議の開催を通じた共通理解の醸成については、宮城県等5県において指定廃棄物処理促進市町村長会議が開催されており、専門家による評価については、25年から28年にかけて計9回の指定廃棄物処分等有識者会議が開催されているが、候補地の安全性等に関する詳細調査については、いずれの県においても依然として実施されていない。

環境省によれば、令和2年9月現在、指定廃棄物の処理方針等の検討状況は、宮城、栃木、千葉各県においては、長期管理施設の設置に向けた取組を実施しているものの、設置のめどは立っておらず、茨城、群馬両県においては、現地保管を継続し、8,000㏃/㎏以下に自然減衰した後、段階的に既存の処分場等で処理するとの方針になっている(別図表5-1参照)。

b 指定廃棄物の指定の取消し

環境省は、自然減衰により放射能濃度が8,000㏃/㎏以下となった廃棄物については、通常の処理方法でも技術的に安全に処理することが可能であること及び8,000㏃/㎏以下の廃棄物については、廃掃法の下で処理が進められてきていることを踏まえて、平成28年4月に、放射性物質汚染対処特措法施行規則を改正して、それまで規定されていなかった指定取消しの要件や手続を整備した。

上記の改正により、指定廃棄物の放射能濃度が8,000㏃/㎏以下となっている場合、環境大臣は、一時保管者及び取消し後の処理責任者に協議した上で指定取消しができること、一時保管者も指定廃棄物の放射能濃度が8,000㏃/㎏以下となっている場合、環境大臣に対して、指定取消しを申し出ることができ、環境大臣は処理責任者と協議した上で指定取消しができることとされた。

指定廃棄物の指定取消しの状況をみると、図表5-5のとおり、令和元年度末までに、岩手県等5県に保管されていた指定廃棄物のうち、計419.6tについて指定取消しが行われ、このうち2年9月末までに411.9tが処理済みとなっている。環境省は、これらの指定取消しは全て一時保管者からの申出に基づくものであるとしている。

なお、aのとおり、放射能濃度が8,000㏃/㎏以下に自然減衰した後、これを段階的に既存の処分場等で処理する方針としている茨城、群馬両県においては、指定取消しが行われた廃棄物は既存の処分場等で処理されることになるものの、元年度末現在では指定取消しの実績がなく、処理が進んでいない状況となっている。

h5-5図表5-5 指定取消しの状況(平成28年度~令和元年度)

図表5-5 指定取消しの状況(平成28年度~令和元年度)

県名 平成28年度 29年度 30年度 令和元年度  
うち処理済み量
(令和2年9月末現在)
件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 件数(件) 数量(t) 数量(t)
岩手県 2 275.8 2 275.8 275.8
宮城県 11 55.3 11 69.2 3 0.3 25 124.8 124.8
山形県 3 2.7 3 2.7 2.7
千葉県 2 7.7 2 7.7
静岡県 1 8.6 1 8.6 8.6
5 10.4 11 55.3 11 69.2 6 284.7 33 419.6 411.9

環境省は、宮城県等5県について、平成27、28両年に行った放射能濃度の再測定の結果を踏まえるなどして、28年に指定廃棄物等の放射能濃度に関する将来推計(以下「28年推計」という。)を示している。28年推計によれば、28年1月1日現在で放射能濃度が8,000㏃/㎏以下になっていると推定される指定廃棄物の量は、宮城県で約2,300t、茨城県で約2,600t、栃木県で約3,900t、群馬県で約600t、千葉県で約1,200t、計約10,600tとされており、放射能濃度が8,000㏃/㎏以下となっていながら、指定取消しが行われていない指定廃棄物が相当量存在すると思料される。指定取消しが行われていない理由について、環境省は、一時保管者等が慎重になっていたり、処分先等の確保が困難な場合が多かったりすることなどがあるとしている。

また、指定取消し後は、廃掃法の処理基準等に基づいて、一般廃棄物については市町村の処理責任、産業廃棄物については排出事業者の処理責任の下でそれぞれ必要な保管及び処分が行われることになるが、環境省によれば、指定取消しに当たっては、各地域における処分先等が調整できていることが望ましいとされている。

指定取消し後の廃棄物の処理に対する国の支援についてみると、指定取消し後の廃棄物について、環境省は、指定廃棄物として指定されていた経緯に鑑み、処分等の処理を円滑に進めるために、市町村等に対して放射性物質汚染廃棄物処理事業費補助金(指定解除後の廃棄物の処理促進事業)を28年度から令和元年度までの間に計1億1956万余円交付しており、これにより上記の411.9tのうち322.9tが処理されている(同補助金の交付状況については別図表5-2参照)。

c 放射能濃度の状況

元年度末現在、福島県外で保管されている指定廃棄物は、図表3-10のとおり計27,576tとなっていて、指定廃棄物の保管が行われている都県では、長期管理施設の設置のめどが立っていないことなどから、一時保管が継続している状況が見受けられる。そこで、会計検査院において、これらの指定廃棄物について、放射能濃度の調査単位ごとに、保管開始日から元年度末までの間で環境省が把握している最新の放射能濃度、放射性セシウム134及び同137の物理的半減期、放射能濃度の測定日から元年度末までの年数等に基づき、図表5-6のとおり、元年度末現在における放射能濃度を試算したところ、指定取消しの対象となり得る8,000Bq/kg以下になっている指定廃棄物の保管量は、20,133t(元年度末現在の指定廃棄物の保管量全体の73.0%)と推定される結果となった。

図表5-6 福島県外の指定廃棄物のうち放射能濃度が8,000㏃/kg以下のものの試算

図表5-6 福島県外の指定廃棄物のうち放射能濃度が8,000㏃/kg以下のものの試算画像

そして、放射能濃度の自然減衰により、指定取消しの対象となり得る放射能濃度が8,000㏃/㎏以下の指定廃棄物は今後更に増加することが見込まれる。

したがって、環境省は、長期管理施設の設置のめどが立っていないことも踏まえて、福島県外における指定廃棄物の放射能濃度を適時適切に確認した上で、指定取消しなどにより指定廃棄物の処理を促進し廃棄物の量の縮減を図ることが可能となるよう、放射能濃度が8,000㏃/kg以下の廃棄物は通常の処理方法でも技術的に安全に処理することが可能であるとされていることについて、一時保管者、指定取消し後の処理責任者等に対する説明や情報発信を更に進める必要がある。

イ 特定一般廃棄物及び特定産業廃棄物

環境省が実施している最終処分場アンケート(3(1)ウ(ウ)参照)の結果によれば、図表5-7のとおり、特定一般廃棄物又は特定産業廃棄物である焼却灰、汚泥等の埋立処分による最終処分量は、平成23年3月から同年12月までの期間が1か月当たり15万tと最高であり、24年1月から25年9月までの期間に同8万tと大幅に減少した後、若干の減少傾向で推移している。また、廃棄物の種類別にみると、23年3月から同年12月までの期間における焼却灰の最終処分量は、特定一般廃棄物であるものが63万t、特定産業廃棄物であるものが37万tとなっていて、これらは最終処分量計157万tの6割程度を占めていたが、25年10月以降は、2割から3割程度となっている。これは、24年11月に放射性物質汚染対処特措法施行規則が改正され、特定一般廃棄物及び特定産業廃棄物の要件が見直され、都県によっては新たに生ずる焼却灰が特定一般廃棄物に該当しなくなったことなどにより、焼却灰の特定一般廃棄物又は特定産業廃棄物が減少したことが影響していると思料される。

図表5-7 放射性物質に汚染されるなどした焼却灰、汚泥等の最終処分場における最終処分量の推移(平成23年3月~令和元年9月)

図表5-7 放射性物質に汚染されるなどした焼却灰、汚泥等の最終処分場における最終処分量の推移(平成23年3月~令和元年9月)画像

(2) 除去土壌等

ア 福島県内の除染により発生した除去土壌等
(ア) 開発戦略の中間評価及び見直しの状況

第1の2(4)のとおり、環境省は、開発戦略について、中間年度において中間評価を行い、開発戦略の見直しを行うこととしており、開発戦略の中間評価及び見直しの状況は次のとおりとなっていた。

a 開発戦略の中間評価

環境省は、変更戦略において、中間目標の達成に向けた具体的な取組として、減容・再生利用技術の開発のための技術実証試験、再生利用の推進のための「再生利用の手引き(案)」の作成、最終処分の方向性の検討のための施設構造等の要件の整理、全国民的な理解の醸成等のための情報発信等を行ったとしており(別図表5-3参照)、これらの取組をもって中間目標は全て達成できたとしている。

b 開発戦略の見直し

変更戦略における戦略目標については、おおむね開発戦略と同一となっている(別図表5-4参照)。変更戦略の検討対象とする除去土壌等の発生見込量については、30年10月時点の推計値に基づいた見直しが行われ、図表5-8のとおり、開発戦略では約2200万㎥とされていたものが約1330万㎥とされた。また、特定復興再生拠点区域を含めて帰還困難区域の除染で発生した(発生することが見込まれる)除去土壌等については、定量的な推計が困難であるとして発生見込量に含まれていないことが明記された。

h5-8図表5-8 開発戦略及び変更戦略における検討対象となる除去土壌等の発生見込量

図表5-8 開発戦略及び変更戦略における検討対象となる除去土壌等の発生見込量

(単位:万㎥)
戦略名 発生見込量  
除去土壌 焼却灰
開発戦略 約2200 約2000 放射能濃度(㏃/㎏) 約160
8,000以下 8,000超10万以下 10万超
約1000 約1000 約1
変更戦略 約1330 約1300 約1070 約230 約30
  • (注) 開発戦略及び変更戦略は端数処理後の発生見込量等が記載されており、変更戦略の発生見込量である約1330万㎥を端数処理する前の量は約1335万㎥である。

除去土壌については、開発戦略検討会において、図表5-9のとおり、放射能濃度に応じて土壌Aから土壌Dまでの4区分に分類して定義され、それぞれの放射 能濃度区分ごとの量が推計されている。

h5-9図表5-9 除去土壌等の放射能濃度区分及び量の推計

図表5-9 除去土壌等の放射能濃度区分及び量の推計

対象物 放射能濃度(㏃/㎏)区分 平成30年10月末時点での物量の推計
放射能濃度評価時
種類 分類 定義 平成27年3月 30年10月 令和6年3月 物量(万㎥) 割合(%)
土壌 土壌A 放射能濃度評価時点で8,000㏃/㎏以下であり、再生利用可能な土壌 ≦8,000 ≦8,000 ≦8,000 1071.1 80.2
土壌B 中間貯蔵施設への搬入開始30年後(2045年)までに8,000㏃/㎏以下までに物理減衰し、再生利用可能な土壌 8,000<~≦20,000 8,000<~≦15,000 8,000<~≦12,000 85.3 6.4
土壌C 中間貯蔵施設への搬入開始30年後(2045年)までの物理減衰に加え、現時点(2019年3月)の高度分級技術(分級+摩砕等)等により再生利用可能な8,000㏃/㎏以下の砂質土を得ることが可能な土壌 20,000<~≦80,000 15,000<~≦62,000 12,000<~≦51,000 133.7 10.0
土壌D 土壌Cよりも高濃度である土壌 >80,000 >62,000 >51,000 10.6 0.8
焼却灰 - 34.4 2.6
1335.0 100.0
  • 注(1) 出典:中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略戦略目標の達成に向けた見直し別添資料(開発戦略検討会(第10回))
  • 注(2) 「物理減衰」は「自然減衰」と同じ意味である。
  • 注(3) 「物量」は「量」と同じ意味である。

第1の2(4)のとおり、開発戦略によれば、再生利用の対象となる土壌等の量を可能な限り増やすことにより、最終処分量の低減を図ることとされている。そして、開発戦略検討会において、最終処分の方向性の検討の一環として、最終処分量について、図表5-10のとおり、除去土壌の再生利用を見込まないケースゼロから、洗浄処理まで実施してできるだけ再生利用するケースⅣまでの五つのケースを想定した上で、最大で1291.9万㎥、最小で3.4万㎥と推計されている。

h5-10図表5-10 ケースごとの最終処分量の推計

図表5-10 ケースごとの最終処分量の推計

分類 平成30年10月末時点での物量の推計(万㎥) ケースごとの減容・再生利用技術と最終処分量の推計
上段:減容・再生利用技術
下段:最終処分量(万㎥)
ケースゼロ ケースI ケースII ケースIII ケースIV
土壌A 1071.1 異物除去して全量最終処分 異物除去して再生利用
1056.1 -
土壌B 85.3 異物除去して全量最終処分 異物除去して再生利用
84.1 -
土壌C 133.7 異物除去して全量最終処分 異物除去
+分級処理
+高度分級処理
の上で再生利用
異物除去
+分級処理
+高度分級処理
+高度処理
の上で再生利用
異物除去
+分級処理
+高度分級処理
+高度処理
+洗浄処理
の上で再生利用
131.8 64.5 16.1 1.9
土壌D 10.6 異物除去して全量最終処分 異物除去
+高度処理
の上で再生利用
異物除去
+高度処理
+洗浄処理
の上で再生利用
10.4 2.6 0.3
焼却灰 34.4 熱処理の上で再生利用 熱処理
+洗浄処理
の上で再生利用
9.5 1.1
1335.0 1291.9 151.7 84.4 28.2 3.4
  • (注) 開発戦略検討会(第10回)資料を基に会計検査院が作成した。
(イ) 特定復興再生拠点区域において発生することが見込まれる除去土壌等の量及び放射能濃度

環境省は、特定復興再生拠点区域における除染で発生が見込まれる除去土壌等の量について、30年に実施した委託事業において、特定復興再生拠点区域ごとに、地表面から削り取る土壌の厚さを各町村における除染の実績等を踏まえて5㎝から10㎝までの複数のパターンを設定するなどした上で、図表5-11のとおり、最小でも1,612,981㎥、最大では1,988,257㎥と推計している。

h5-11図表5-11 特定復興再生拠点区域において発生が見込まれる除去土壌等の量

図表5-11 特定復興再生拠点区域において発生が見込まれる除去土壌等の量

(単位:㎥)
町村名 最小 最大
除去土壌 除染廃棄物 除去土壌 除染廃棄物
富岡町 130,670 49,825 180,495 134,197 49,825 184,022
大熊町 280,969 110,630 391,599 385,728 110,630 496,358
双葉町 350,450 70,057 420,507 369,977 70,057 440,034
浪江町 244,991 200,396 445,387 472,423 200,396 672,819
葛尾村 39,289 34,289 73,578 55,789 34,289 90,078
飯舘村 63,521 37,894 101,415 67,052 37,894 104,946
1,109,890 503,091 1,612,981 1,485,166 503,091 1,988,257

そして、特定復興再生拠点区域における除染により発生した除去土壌のうち、令和元年度末までに中間貯蔵施設に搬入された除去土壌176,781㎥の放射能濃度をみると、図表5-12のとおり、再生利用可能な8,000㏃/㎏以下の土壌を得るためには中間貯蔵施設への搬入を開始してから30年後までの自然減衰に加えて高度分級技術(分級+摩砕等)による処理等が必要となる土壌C又は土壌D(平成27年3月時点で放射能濃度が20,000㏃/㎏超)に該当するものが36,823㎥(搬入済みの除去土壌の量の20.8%)となっていて、比較的高濃度の除去土壌が一定割合含まれていた。

h5-12図表5-12 特定復興再生拠点区域の除染により発生して中間貯蔵施設に搬入された除去土壌の放射能濃度別の量(令和元年度末現在)

図表5-12 特定復興再生拠点区域の除染により発生して中間貯蔵施設に搬入された除去土壌の放射能濃度別の量(令和元年度末現在)

放射能濃度(Bq/kg) 除去土壌(㎥) 全体に占める割合(%)
1,000以下 50 0.0
1,000超3,000以下 17,876 10.1
3,000超5,000以下 27,899 15.8
5,000超8,000以下 15,851 9.0
8,000超20,000以下 78,282 44.3
20,000超 36,823 20.8
176,781 100.0
  • (注) 1袋を1㎥として換算している。

上記のとおり、特定復興再生拠点区域において、最大で約198万㎥の除去土壌等の発生が見込まれており、再生利用するためには高度分級技術による処理等を要する比較的高濃度の除去土壌が一定割合発生しているが、(ア)bのとおり、変更戦略の検討対象となる除去土壌等の発生見込量には特定復興再生拠点区域を含めて帰還困難区域で発生することが見込まれる除去土壌等の量は含まれていない。また、再生資材(注46)の発生見込量や最終処分量の見通しを立てるためには、変更戦略の検討対象となる除去土壌等の量や放射能濃度を適切に推計することが重要と考えられる。

したがって、環境省においては、まず特定復興再生拠点区域で今後発生する除去土壌等の量や放射能濃度を速やかに推計し、その結果を踏まえて、最終処分に向けた取組を行う必要がある。

(注46)
再生資材  除去土壌を適切な前処理や汚染の程度を低減させる分級等の物理処理をした後、用途先で用いられる部材の条件に適合するよう品質調整等の工程を経て利用可能となったもの
(ウ) 除去土壌の再生利用に関する基本的考え方

環境省は、周辺住民や作業員に対する放射線に関する安全性を確保することを前提として、減容処理等を行った上で除去土壌を再生資材化し、適切な管理の下での利用を実現するための基本的考え方として「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的な考え方について」(平成28年6月環境省策定。29年4月及び30年6月一部追加。以下「再生資材の安全利用に係る基本的考え方」という。)を示している。再生資材の安全利用に係る基本的考え方においては、周辺住民等に対する追加被ばく線量が1mSv/年を超えないよう、再生資材として利用可能な放射能濃度を原則として8,000㏃/㎏以下に制限することとされている。そして、用途先、遮蔽条件、年間の再生資材利用作業期間に応じた再生資材として利用可能な放射能濃度及び追加被ばく線量の更なる低減のために必要な覆土等の厚さが定められている。

環境省は、可能な限り早期の再生利用(注47)の本格化を目指して、再生資材の安全利用に係る基本的考え方で示した追加被ばく線量を制限するための放射能濃度の設定等の管理の妥当性を検証することなどを目的として、各種実証事業を実施すること、また、事業実施者や地域住民等関係者の理解を醸成することや社会的受容性を向上させることなどを目的として各種モデル事業を実施して、放射線に関する安全性及び具体的な管理の方法を検証することとした。

(注47)
再生利用  除去土壌の再生利用については、再生資材の安全利用に係る基本的考え方において、利用先を管理主体や責任体制が明確となっている公共事業等における人為的な形質変更が想定されない盛土材等の構造基盤の部材に限定した上で、追加被ばく線量を制限するための放射能濃度の設定、覆土等の遮蔽、飛散・流出の防止、記録の作成・保管等の適切な管理の下で、再生資材を限定的に利用することとされている。
(エ) 実証事業の実施状況等

環境省は、再生資材の安全利用に係る基本的考え方等を踏まえて、28年度から、除去土壌の再生利用を目的として、図表5-13のとおり実証事業を実施している。

h5-13図表5-13 実証事業の実施状況等

図表5-13 実証事業の実施状況等

内容・目的 実施場所 開始年度~
終了年度
事業費 結果等
再生資材化の方法や再生資材を用いて施工した盛土の安全性等の確認 南相馬市
(東部仮置場)
平成28年度

(終了時期未定)
16億7962万円
(28年度~令和元年度分)
環境省は、元年度末現在においては、盛土の施工前後で空間線量率等に大きな変動は見られず、盛土の浸透水中の放射能濃度は検出下限値未満であり安全性が確認されているとしている。
園芸作物及び資源作物による再生資材からの放射性セシウムの移行状況等の確認 飯舘村
(長泥地区)
平成30年度

令和5年度
(予定)
24億6865万円
(平成30年度及び令和元年度分)
環境省は、実証ヤードにおいて元年度に栽培した資源作物について、再生資材等からの放射性セシウムの移行状況を確認した結果、「これまで得られているデータからは、安全評価での想定よりも十分安全側の結果が得られた」としている。そして、2年度においては、上記の実証ヤードにおいて食用作物の試験栽培を行うとともに、覆土材の有無による安全性や生育性を比較するため、再生資材に覆土せずに直接食用作物を植える試験栽培も実施している。
再生資材を用いた土木構造物の施工性等の確認 二本松市 平成29年度
及び
30年度
1816万余円
(契約額3億 5208万円のうち執行済分)
環境省は、地元等から風評被害への懸念、事業中止を求める意見が多数寄せられたことから、30年6月に事業を再検討することとし、同年11月に契約相手方との契約を解除している。今後については、地元との協議に至っておらず、環境省内において検討している状況であり、未定となっている。これらのことから、支払済みの1816万余円に係る事業の効果は、令和元年度末現在において発現しないままの状況となっている。
南相馬市(東部仮置場)で実施している実証事業で用いた再生資材を転用して、再生資材の受渡し方法、管理の役割分担、記録の管理方法等に関する確認 南相馬市
(常磐自動車道)
平成30年度から実施予定としていた。 未契約 環境省は、地元等から風評被害への懸念、事業中止を求める意見が多数寄せられたことから、30年度内の実証事業への着手を断念し、今後については、地元との対話を継続中であり、未定としている。
(オ) 再生利用に関する基準

放射性物質汚染対処特措法第41条第1項においては、除去土壌の処分を行う者は、環境省令で定める基準に従い除去土壌の処分を行わなければならないと規定されているが、再生利用や埋立処分に関する基準について定められた環境省令はない。

このことから、環境省は、福島県外での最終処分に向けた再生利用の取組を安全かつ適正に進めるために、除去土壌の処分の基準のうち、除去土壌の再生利用の基準として、再生資材化を行った除去土壌を用いること、放射線の量を定期的に測定して記録すること、再生資材化を行った除去土壌の量及び放射能濃度等を記録して管理が終了するまでの間保存することなどを定める「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(案)」及び「環境大臣が定める者の告示(案)」(以下「省令案等」という。)を公表した。そして、省令案等の施行期日等を令和2年4月1日とし、意見募集(パブリックコメント)を同年1月8日から2月7日にかけて実施したところ、安全性に関する懸念等多数の意見が寄せられた。環境省は、省令案等について、実証事業を行っている地元の意見、実証事業の結果等を踏まえて、引き続き検討を行うこととしたため、除去土壌の福島県外での最終処分に向けた再生利用の具体的な基準はいまだ定められていない。

イ 福島県外の除染により発生した除去土壌

環境省は、平成29年に環境回復検討会の下に「除去土壌の処分に関する検討チーム」(以下「検討チーム」という。)を設置して、福島県外の除染により生じた除去土壌の埋立処分の方法の考え方について検討を続けている。

環境省が、福島県外に保管されている30年度末現在の除去土壌328,828㎥の放射能濃度について、放射性セシウムの土壌沈着マップを基に各市町村における放射性セシウムの沈着量を算出し、放射性セシウムの沈着量と地表面から削り取る土壌の厚さを用いるなどして推計した結果、図表5-14のとおり、放射能濃度の平均値は約950㏃/㎏、8,000㏃/㎏超の除去土壌の量は1,131㎥となっており、変更戦略における福島県内での除去土壌の発生見込量約1300万㎥(うち8,000㏃/㎏超約230万㎥。図表5-8参照)と比較すると、除去土壌の全体量及び8,000㏃/㎏超の量のいずれも少なくなっていた。

図表5-14 福島県外における除去土壌の放射能濃度分布(平成30年度末現在)

図表5-14 福島県外における除去土壌の放射能濃度分布(平成30年度末現在)画像

そして、環境省は、検討チームにおける検討結果等を踏まえて、福島県外での除去土壌の埋立処分に伴う作業者や周辺環境への影響等を確認するための実証事業を、茨城県那珂郡東海村及び栃木県那須郡那須町の2か所で実施している。

この実証事業は、除去土壌を土中に埋設して、覆土を行った上で、空間線量率、浸透水中の放射能濃度等のモニタリングを実施するものであり、環境省は、実証事業の結果、埋立作業中の作業員が受ける被ばく線量は1mSv/年を下回り、空間線量率に変化はなく、浸透水中の放射能濃度は検出下限値未満であったとしている。

環境省は、除去土壌の埋立処分に向けて、環境省令の改正について検討しており、除去土壌の埋立処分の実施に当たっては、23年6月に原子力安全委員会が示した「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」を踏まえて、管理期間中の周辺住民等の受ける追加被ばく線量が1mSv/年を超えないことが望ましいとした。そして、福島県外の除去土壌の埋立処分に係る周辺住民等の追加被ばく線量について推計を行った結果、最大でも0.43mSv/年となったことから、福島県外の除去土壌については安全に埋立処分を行うことが可能と考えられるとしている。