• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第4 財務省
  • 不当事項
  • 租税

租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[60税務署](56)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
(項)各税受入金
部局等
60税務署
納税者
106人
徴収過不足額
徴収不足額 379,723,152円(平成30年度~令和6年度)
徴収過大額 631,200円(令和5年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

令和6年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は103兆3331億余円となっている。このうち源泉所得税及復興特別所得税(注1)(以下「源泉所得税」という。)は19兆9270億余円、申告所得税及復興特別所得税(以下「申告所得税」という。)は4兆8771億余円、法人税は20兆0997億余円、相続税・贈与税は3兆7347億余円、消費税及地方消費税は44兆1664億余円となっていて、これら各税の合計額は92兆8052億余円となり、全体の89.8%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から令和19年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で課税するもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、全国の12国税局等及び524税務署のうち12国税局等及び65税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行うとともに、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき、上記の524税務署から提出された証拠書類等により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 徴収過不足の事態

検査の結果、60税務署において、納税者106人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、113事項計379,723,152円(平成30年度から令和6年度まで)不足しており、また、1事項631,200円(5年度)過大になっていて、不当と認められる。

これを、税目別に示すとのとおりである。

表 税目別の徴収過不足額等

税 目
事項数
徴収不足額
事項数
徴収過大額(△)
源泉所得税
2 19,189,652
申告所得税
21 84,538,800
法人税
57 188,530,600
相続税・贈与税
6 14,925,700
消費税
19 65,023,500 1 △631,200
地方法人税
8 7,514,900
113 379,723,152 1 △631,200
  • (注) 地方法人税  地方法人税法(平成26年法律第11号)に基づく税目であり、地方交付税の財源を確保するために、法人税額の10.3%相当額を課税するもの

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、60税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、これを見過ごし、法令等の適用の検討が十分でなく、又は課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この114事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関する事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が2事項あった。これらは、退職手当及び配当に関する事態である。

退職手当及び配当の支払者は、支払の際に、源泉所得税を徴収して法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっており、法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。また、自己株式の取得(市場取引による取得等を除く。以下同じ。)に際して、その対価として金銭等を交付した場合、当該株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額は、配当とみなされることとなっている。

この退職手当及び配当に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計19,189,652円あった。その内容は、退職手当に対する税額の計算に当たり適用すべき税率等に誤りがあり納付した源泉所得税額が過小となっているのに、これを見過ごしたため、また、自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税額が納付されていないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、退職手当に係る納付すべき税額との差額及び配当に係る納付すべき税額について、納税の告知をしておらず、納付されないままとなっていたものである。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が21事項あった。この内訳は、譲渡所得に関する事態が7事項、事業所得に関する事態が5事項及びその他に関する事態が9事項である。

(ア) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち譲渡した資産ごとに所定の方法により計算した金額について、当該資産ごとに譲渡所得に係る収入金額(以下「譲渡収入金額」という。)から取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額(以下「取得費等の合計額」という。)を控除した残額に相当する金額を限度として取得費に加算できることとなっている。また、譲渡収入金額が取得費等の合計額に満たない場合には、取得費に加算できる相続税額はないものとすることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計16,872,000円あった。その主な内容は、譲渡した建物について、譲渡収入金額が取得費等の合計額に満たないことから、取得費に加算できる相続税額はないこととなるのに、これを見過ごし又は法令等の適用の検討が十分でなかったため、取得費に加算できない相続税額を加算し、取得費を過大に計上して譲渡所得の金額を過小のままとしていたものである。

(イ) 事業所得に関する事態

個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が有する減価償却資産の償却費として事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する金額は、当該資産について取得日等に応じて定められた償却方法に基づいて計算した金額(以下「普通償却額」という。)とすることとなっているが、一定の条件を満たす場合に、特別な償却方法で計算した償却費を必要経費とする各種の特別償却の規定が設けられている。これらの特別償却の規定の一つとして、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出して承認を受けて青色申告書を提出する中小事業者(注2)で、中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)の規定に基づき経営力向上に関する計画の認定を受けた特定事業者等(以下「特定中小事業者」という。)が、特定の機械装置等(以下「特定経営力向上設備等」という。)を取得するなどして特定中小事業者の営む一定の事業の用に供した場合、その事業の用に供した日の属する年の年分の事業所得の金額の計算上、特定経営力向上設備等の取得価額から普通償却額を控除した金額に相当する金額を限度として計算した金額を必要経費に算入できることとなっている。

(注2)
中小事業者  常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人

この事業所得に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計32,043,400円あった。その内容は、上記特別償却の規定を誤って適用するなどして必要経費の金額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものなどである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却の規定を誤って適用していたため、必要経費の金額が過大となっていた事態

納税者Aは、令和3年分の申告に当たり、特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却の規定を適用して、事業所得の金額の計算上、当該規定に基づく特定経営力向上設備等の償却費として61,623,632円を必要経費に算入していた。

しかし、納税者Aは、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出しておらず、青色申告の承認を受けていないことから、特定中小事業者には該当せず、上記特別償却の規定を適用することはできない。したがって、納税者Aが必要経費に算入できるのは当該特定経営力向上設備等の普通償却額910,931円となり、上記の61,623,632円との差額60,712,701円は必要経費に算入できず、必要経費の金額が過大となっているなどしているのに、これを見過ごしたため、申告所得税額28,036,500円が徴収不足になっていた。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、不動産所得等に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計35,623,400円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足になっていた事態が57事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関する事態が40事項、交際費等の損金不算入に関する事態が8事項及びその他に関する事態が9事項である。

(ア) 法人税額の特別控除に関する事態

法人税額の算定に当たり、法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。これらの特別控除の一つとして、青色申告書を提出する法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「雇用者給与等支給額」という。)が前事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「比較雇用者給与等支給額」という。)を上回ることなどの要件を満たすときは、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額又は雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(以下「雇用者給与等支給増加額」という。)の100分の15相当額のいずれか少ない金額を法人税額から控除できることなどとなっている。

そして、国内雇用者に対する給与等の支給額に他の者から支払を受ける金額がある場合には、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の計算に当たり、国内雇用者に対する給与等の支給額から他の者から支払を受ける金額を控除することとなっている。ただし、雇用安定助成金額(注3)については、他の者から支払を受ける金額から除くこととなっている。

(注3)
雇用安定助成金額  国又は地方公共団体から受ける雇用保険法(昭和49年法律第116号)第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額をいい、雇用調整助成金等の額が該当する。

この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が40事項計98,513,100円あった。その内容は、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の計算に当たり、他の者から支払を受ける金額から雇用調整助成金の受給額を除いていなかったことから、雇用者給与等支給増加額が適正でなく、法人税額の特別控除額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていたものなどである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除額の算定を誤ったため、法人税額から控除する金額が過大となっていた事態

B会社は、令和4年1月から12月までの事業年度分の申告に当たり、雇用者給与等支給額469,482,419円が比較雇用者給与等支給額325,571,819円を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額143,910,600円の100分の15相当額の21,586,590円を法人税額から控除していた。

しかし、B会社の当該事業年度分及び前事業年度分の申告書に添付された雑益、雑損失等の内訳書等によれば、B会社は、当該事業年度分に30,810,000円、前事業年度分に111,825,000円の雇用調整助成金を受給しており、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の計算に当たり、他の者から支払を受ける金額から当該雇用調整助成金の受給額を除いていなかった。このため、当該雇用調整助成金の受給額を除いた適正な雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額は、それぞれ500,292,419円及び437,396,819円であり、適正な雇用者給与等支給増加額は62,895,600円であった。したがって、適正な法人税額の特別控除額は雇用者給与等支給増加額62,895,600円の100分の15相当額の9,434,340円となり、12,152,250円過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額12,152,200円が徴収不足になっていた。

(イ) 交際費等の損金不算入に関する事態

事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人等にあっては所定の方法で計算した金額(以下「資本相当額」という。))が100億円以下の法人が支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の100分の50に相当する金額(以下「接待飲食費損金算入基準額」という。)を超える部分の金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととなっている。ただし、投資法人等を除く法人のうち事業年度終了の日における資本相当額が1億円以下であるもの(一定の法人を除く。)については、接待飲食費損金算入基準額に代えて、交際費等の額のうち年当たり800万円の定額控除限度額までの金額を損金の額に算入するとともに、これを超える部分の金額を損金の額に算入しないことができることとなっている。

そして、資本相当額については、資本又は出資を有しない法人の場合、事業年度終了の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除するなどした金額の100分の60に相当する金額等とすることとなっている。

この交際費等の損金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が8事項計17,275,600円あった。その内容は、資本又は出資を有しない法人が、資本相当額が1億円以下である場合の規定を適用して、交際費等の額のうち定額控除限度額までの金額を損金の額に算入していたが、資本相当額を計算すると1億円を超えるため、交際費等の額のうち接待飲食費損金算入基準額を超える部分の金額が損金に算入しない額となって、損金に算入する額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、受取配当等の益金不算入等に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計72,741,900円あった。

その内容は、その他株式等(注4)に係る配当等の額を関連法人株式等(注5)に係る配当等の額としていて受取配当等の益金不算入額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものなどである。

(注4)
その他株式等  法人が他の内国法人の発行済株式総数等(その有する自己の株式等を除く。以下同じ。)の原則として100分の5を超え3分の1以下に相当する数の株式等を有する場合の当該株式等
(注5)
関連法人株式等  法人が他の内国法人の発行済株式総数等の原則として3分の1超に相当する数の株式等を配当等の額の支払に係る計算期間の初日から当該計算期間の末日まで継続して有する場合の当該株式等(他の内国法人の発行済株式総数等の原則として全部の株式等を配当等の額の支払に係る計算期間の初日から当該計算期間の末日まで継続して有する場合の当該株式等を除く。)

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> その他株式等に係る配当等の額を関連法人株式等に係る配当等の額としていたため、受取配当等の益金不算入額を過大に計上していた事態

法人が他の内国法人から受ける配当等の金額等については、原則として、その全額を基に所定の方法により計算した金額を所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととなっている。ただし、法人が有する当該他の内国法人の株式等が関連法人株式等に該当する場合においては、配当等の額の全額から利子相当額として一定の金額を控除した金額を、その他株式等に該当する場合においては、配当等の額の100分の50相当額をそれぞれ益金不算入の対象とすることとなっている。

C会社は、令和4年5月から5年4月までの事業年度分の申告に当たり、その有する他の内国法人4法人の株式等が関連法人株式等に該当するとして、関連法人株式等に係る受取配当等の額から利子相当額を控除した256,937,467円を受取配当等の益金不算入額としていた。

しかし、C会社の申告書に添付された明細書によれば、上記4法人のうち1法人の株式等は、その他株式等に該当していたことから、益金不算入の対象となるのは、当該受取配当等の額の100分の50相当額である。このため、受取配当等の益金不算入額は196,937,467円となり、上記の金額との差額60,000,000円が過大となっているのに、これを見過ごしたため、当該事業年度分の所得金額が過小のままとなっており、法人税額13,833,000円が徴収不足になっていた。

エ 相続税・贈与税

相続税・贈与税に関して徴収不足になっていた事態が6事項あった。この内訳は、相続税については、法定相続分に関する事態が3事項及びその他に関する事態が2事項、贈与税については、有価証券の価額に関する事態が1事項である。

(ア) 相続税
a 法定相続分に関する事態

相続又は遺贈により財産を取得した者の相続税額は、①相続又は遺贈により財産を取得した者に係る財産の価額の合計額から相続税の非課税財産の価額を除くなどし(以下、この額を「課税価格」という。)、②更に財産を取得した全ての者の課税価格の合計額から基礎控除額を控除した残額を民法(明治29年法律第89号)所定の各相続人(以下「法定相続人」という。)が同法所定の相続分(以下「法定相続分」という。)に応じて取得したものとして案分して得られた各金額(以下「取得金額」という。)に相続税率(注6)を乗ずるなどして算出した金額を合計し(以下、この合計額を「相続税の総額」という。)、③相続税の総額を財産を取得した者の課税価格に応じて案分した金額とすることとなっている。

(注6)
相続税率  取得金額の区分ごとに適用する10%から55%までの累進税率

民法において、法定相続分は、法定相続人の順位等ごとに割合が定められている。同順位の兄弟姉妹等が複数いる場合は、これらの法定相続分は相等しいものとすることとなっている。そして、被相続人の子又は兄弟姉妹が相続の開始以前に死亡したときは、これらの者の子である被相続人の孫又は甥姪がこれを代襲して相続人(以下、この相続人を「代襲相続人」という。)となり、代襲相続人の法定相続分は、代襲相続人の親が受けるべきであったものと同じであり、被相続人に代襲相続人である複数の甥姪がいるときは、その親である被相続人の兄弟姉妹が受けるべきであった部分について、当該親の子である甥姪の法定相続分は相等しいものとすることとなっている。

この法定相続分に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計6,235,300円あった。その内容は、相続税の総額の計算において、被相続人の妹及び代襲相続人である複数の甥姪の法定相続分を民法で定められた法定相続分ではなく、誤って全員同一の割合として算出したことから、被相続人の妹の取得金額に適用される相続税率が適正な法定相続分で算出する取得金額に適用される相続税率より低くなっているのに、これを見過ごしたため、相続税の総額が過小となり、その結果、各相続人の相続税額を過小のままとしていたものである。

b その他に関する事態

aのほか、有価証券の価額及び土地建物等の価額に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計5,227,300円あった。

(イ) 贈与税

個人が贈与により有価証券を取得した場合には、その取得した有価証券に対して贈与税を課することとなっており、取得した有価証券の価額は、贈与により取得した時の時価とすることとなっている。そして、取得した有価証券のうち取引相場のない株式の価額については、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)の総資産価額、従業員数等によって評価会社を大会社、中会社又は小会社に区分し、この区分に応じて定められた方式により計算した金額によって評価することとなっている。このうち、中会社に該当する評価会社の株式については、類似業種比準価額(注7)と純資産価額(注8)を用いた算式により計算した金額によって評価することなどとなっている。

(注7)
類似業種比準価額  類似業種の株価に、評価会社と類似業種の1株当たりの配当金額、年利益金額及び帳簿価額によって計算した純資産価額を比較して求めた比準割合を乗じた額の一定割合(中会社0.6)に相当する額
(注8)
純資産価額  評価会社の各資産の相続税評価額の合計額から各負債の相続税評価額の合計額を差し引くなどして計算した額

この有価証券の価額に関して、徴収不足になっていた事態が1事項3,463,100円あった。その内容は、取引相場のない株式の価額について、中会社に該当する評価会社の株式の評価に当たり、類似業種比準価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものである。

オ 消費税

消費税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が20事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が17事項、課税売上高の計上に関する事態が2事項及びその他に関する事態が1事項である。

(ア) 課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間(注9)における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。ただし、居住用賃貸建物に係る消費税額については、課税仕入れに係る消費税額として控除できないこととなっている。

(注9)
課税期間  納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が17事項計60,195,500円あった。その内容は、居住用賃貸建物に係る消費税額を課税仕入れに係る消費税額として課税売上高に対する消費税額から控除しているのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものなどである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4> 課税仕入れに係る消費税額の控除額の計算を誤っていたため、控除額が過大となっていた事態

納税者Dは、令和3年1月から12月までの課税期間分の申告に当たり、事業用建物の取得等に係る消費税額の全額を含む課税仕入れに係る消費税額27,912,725円を課税売上高に対する消費税額から控除していた。

しかし、納税者Dの申告所得税の申告書に添付された書類によれば、上記の事業用建物には、居住用賃貸建物が含まれており、当該建物に係る消費税額は課税仕入れに係る消費税額として控除できないものであった。このため、当該建物に係る消費税額を除くなどして課税仕入れに係る消費税額の控除額を適正に計算すると16,754,437円となるのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額が過大となり、消費税額11,158,300円が徴収不足になっていた。

(イ) 課税売上高の計上に関する事態

事業者は、課税の対象となる国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額を課税売上高に計上することとなっている。

この課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計4,828,000円あった。その内容は、事業者が事業用建物の譲渡に係る収入金額を課税売上高に計上していないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、課税売上高を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、簡易課税制度の適用に関して、徴収過大になっていた事態が1事項631,200円あった。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

源泉所得税 申告所得税
法人税
相続税
贈与税
消費税
地方法人税
国税局
税務署


徴収不足
徴収過大
(△)


徴収不足
徴収過大
(△)


徴収不足
徴収過大
(△)


徴収不足
徴収過大
(△)


徴収不足
徴収過大
(△)


徴収不足
徴収過大
(△)


徴収不足
徴収過大
(△)
千円 千円 千円 千円 千円 千円 千円
札幌国税局 4 5 39,251 2 1,798 7 41,049
仙台国税局 4 1 634 2 3,081 1
1
2,842
△631
4
1
6,558
△631
関東信越国税局 6 4 5,941 6 11,369 5 35,220 15 52,530
東京国税局 32 2 19,189 12 72,340 32 101,800 6 14,925 12 23,925 5 5,138 69 237,319
金沢国税局 1 1 3,234 1 3,234
名古屋国税局 1 1 1,021 1 3,036 2 4,057
大阪国税局 6 2 3,553 5 10,848 7 14,401
広島国税局 1 1 2,014 1 2,014
高松国税局 1 1 5,616 1 578 2 6,194
福岡国税局 2 1 1,048 2 8,646 3 9,694
熊本国税局 1 1 2,083 1 2,083
沖縄国税事務所 1 1 585 1 585
60 2 19,189 21 84,538 57 188,530 6 14,925 19
1
65,023
△631
8 7,514 113
1
379,723
△631