• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第6 厚生労働省
  • 不当事項
  • 補助金

(1) インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業及びインフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業実施医療機関支援事業)が過大に交付されていたもの[厚生労働本省](86)(87)


2件 不当と認める国庫補助金 208,581,000円

ア 確保補助金

インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業)(以下「確保補助金」という。)は、インフルエンザ流行期に備えて、インフルエンザ流行の規模が予測できない中で、多数の発熱患者等が地域の医療機関において適切に診療・検査を受けられる体制を確保することにより、感染症対策の強化を図ることを目的として、都道府県の指定を受けた診療・検査医療機関が、発熱患者等専用の診察室(時間的・空間的分離を行い、プレハブ、簡易テント、駐車場等で診療する場合を含む。)を設けるなどして発熱患者等を受け入れる体制を確保した場合に、その外来診療・検査体制確保に要する経費を国が補助するものである。

確保補助金は、発熱患者等専用の診察室を設けたにもかかわらず、診察室で受け入れる発熱患者等の想定受診患者数より、実際に診察室で診療を行った発熱患者等の受診患者数(以下「実際の発熱患者数」という。)が少なかった場合に、外来診療・検査体制確保に要した経費の不足分を補塡する性格のものである。「令和2年度インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業)の交付について」(令和2年厚生労働省発健0915第8号)等によれば、確保補助金の交付額は、次の算定式により算出した額(以下「事業費」という。)を基にするなどして算定することとされている。

  • 事業費
  • 想定受診患者数
  • 実際の発熱患者数
  • ×
  • 補助単価(13,447円)

上記算定式のうち、補助単価は、発熱患者等1人当たりに想定される診療報酬点数を踏まえたものである。また、想定受診患者数及び実際の発熱患者数は、いずれも、診療・検査医療機関が事業実施期間中に診察室を開設している各日の患者数を合計した延べ人数を指しており、交付額の算定に当たっては、次の①及び②によるなどして計上することとなっている(図1参照)。

① 想定受診患者数は、診察室1室につき、1日当たり20人を上限として、20人を7時間で除した数値に、診療・検査医療機関が発熱患者等専用の診察室を設けて発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間数を乗じた人数とする。ただし、実際の発熱患者数が想定受診患者数以上となった日がある場合は、交付額の算出上、当該日の想定受診患者数及び実際の発熱患者数を除外する。

② 発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間帯に、発熱患者等専用の診察室とは別の診察室で、同一の医師が他の疾患等の患者の診療を行った場合は、発熱患者等を受け入れる体制が縮小していると考えられることから、実際の発熱患者数に、他の疾患等の受診患者数に2分の1を乗じた人数を含める。

図1 確保補助金の算定対象の概念図

図1 確保補助金の算定対象の概念図画像

そして、厚生労働省は、同一の診療・検査医療機関が複数の発熱患者等専用の診察室を設ける場合、空間的な分離を行った診察室が複数確保できており、かつ、複数の発熱患者等を同時に診療できる人員体制(医師、看護師等を含めて、一人の発熱患者等の診療に必要な職員体制が複数あること)が確保できていることが必要であるとしており、具体例として、「三つの診察室の場合は、3人の医師が診療できる体制」であることを挙げている。

イ 支援補助金

インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業実施医療機関支援事業)(以下「支援補助金」という。)は、既に確保補助金の交付決定を受けた診療・検査医療機関において、実際の発熱患者数が交付申請時の想定よりも下回るなどしたことにより、確保補助金の交付決定額だけでは体制確保に要する費用が不足した場合に限り、不足分を支援するために、確保補助金の実績報告書の事業費が確保補助金の交付決定額を上回る場合の経費を国が補助するものである。

「令和3年度(令和2年度からの繰越分)インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業実施医療機関支援事業)の交付について」(令和3年厚生労働省発健0408第3号)によれば、支援補助金の交付額は、確保補助金の実績報告書の事業費から確保補助金の交付決定額を差し引いた額を基にするなどして算定することとされている(図2参照)。

図2 支援補助金の交付額の概念図

図2 支援補助金の交付額の概念図画像

ウ 確保補助金及び支援補助金の交付手続

確保補助金の交付手続については、交付を受けようとする事業主体は、厚生労働本省(以下「本省」という。)に交付申請書を提出し、提出を受けた本省は、その内容を添付書類により審査した上で、交付決定を行うこととなっている。事業主体は、事業完了後に本省に実績報告書を提出し、提出を受けた本省は、その内容を審査した上で、交付額の確定を行い、確保補助金を交付することとなっている。

そして、確保補助金の実績報告書の事業費が確保補助金の交付決定額を上回った場合において、事業主体が支援補助金の交付を受けようとする場合、事業主体は、本省に精算交付申請書を提出し、提出を受けた本省は、その内容を審査した上で、交付額の確定を行い、支援補助金を交付することとなっている。

本院が、本省及び2事業主体において会計実地検査を行ったところ、2事業主体において、複数の発熱患者等を同時に診療できる人員体制が確保できていなかったなどのため、想定受診患者数を誤っていた事態、及び実際の発熱患者数に、他の疾患等の受診患者数に2分の1を乗じた人数を含めていなかったなどのため、実際の発熱患者数を誤っていた事態が見受けられた。

このため、2事業主体において確保補助金計191,269,000円が過大に交付されていた。また、この結果、支援補助金の交付を受けている2事業主体において、適正な確保補助金の事業費が確保補助金の交付決定額を上回らなくなることから、支援補助金計17,312,000円は交付の必要がなかった。

したがって、確保補助金191,269,000円と支援補助金17,312,000円の計208,581,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、本省において実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

医療法人ひまわり会神奈川ひまわりクリニック(以下「ひまわりクリニック」という。)は、令和2年度に、確保補助金について、開設する診察室数を7室、開設予定日数延べ790日に係る想定受診患者数を14,160人、実際の発熱患者数の想定を561人とそれぞれ見込み、交付申請額を183,874,000円とする交付申請書を本省に提出しており、本省は、3年度に、同額を交付決定額としていた。その後、ひまわりクリニックは、診察室7室を開設し、これら診察室の開設日数延べ840日(1室当たり各120日)に係る想定受診患者数は15,360人、実際の発熱患者数は578人であったとして、事業費を199,142,386円とする実績報告書を本省に提出しており、本省は、交付決定額が183,874,000円であったことから、これと同額の183,874,000円を確保補助金の交付額としていた。

また、ひまわりクリニックは、確保補助金に係る実績報告書の事業費199,142,386円が確保補助金の交付決定額183,874,000円を上回ったことから、3年度に、その差額に基づき支援補助金の申請額を15,268,000円とする精算交付申請書を本省に提出しており、本省は、これと同額の15,268,000円を支援補助金の交付額としていた。

しかし、ひまわりクリニックにおける事業実施期間中の医師の勤務状況及び発熱外来の診療・検査体制を確認したところ、①神奈川県から診療・検査医療機関としての指定を受けた日以降、発熱患者等の診療を行っていたのは108日であり、これらの日に診察に当たっていた医師は1名のみとなっていたことから、実績報告書において、診察室として7室を開設したとされている延べ840日のうちの延べ732日については、複数の発熱患者等を同時に診療できる人員体制が確保できていないなどしており、想定受診患者数が過大となっていた。また、ひまわりクリニックにおける発熱患者等を含む外来患者に係る記録等を確認したところ、②発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間帯に、発熱患者等専用の診察室とは別の診察室で、上記1名の医師と同一の医師が他の疾患等の患者の診療を行っていたことがあったのに、実際の発熱患者数に、他の疾患等の受診患者数に2分の1を乗じた人数を含めていなかった。

したがって、上記の①及び②を踏まえると、実際の開設日数延べ108日に係る想定受診患者数は1,980人、実際の発熱患者数は6,849.5人となり、診察室を開設した延べ108日全てにおいて、実際の発熱患者数が想定受診患者数を上回ることから、確保補助金の交付額183,874,000円は交付の必要がなかった。また、この結果、支援補助金の交付額15,268,000円は交付の必要がなかった。

以上を事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
年度
国庫補助金交付額
不当と認める国庫補助金交付額
摘要
       
千円
千円
 
(86)
厚生労働本省
医療法人ひまわり会神奈川ひまわりクリニック
3
199,142
199,142
想定受診患者数及び実際の発熱患者数を誤っていたもの
(87)
医療法人社団苑田会苑田第一病院
2、4
101,282
9,439
(86)(87)の計
300,424
208,581
 

(注) 国庫補助金交付額欄及び不当と認める国庫補助金交付額欄は、確保補助金と支援補助金の合計額を、それぞれ記載している。