• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第6 厚生労働省
  • 不当事項
  • その他

自立支援給付の訓練等給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[奈良県奈良市](161)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)障害保健福祉費
部局等
奈良県奈良市
国の負担の根拠
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
実施主体
市3、町3、計6実施主体
事業者
1事業者
過大に支払われた訓練等給付費に係る障害福祉サービスの種類
就労移行支援
過大に支払われた訓練等給付費の件数
138件(平成30、令和元両年度)
過大に支払われた訓練等給付費の額
4,735,431円(平成30、令和元両年度)
不当と認める国の負担額
2,367,715円(平成30、令和元両年度)

1 自立支援給付の概要

(1) 自立支援給付

自立支援給付は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づき、障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うものである。

(2) 障害福祉サービス

自立支援給付のうち、障害福祉サービスに係る給付費の支給には、訓練等給付費及び介護給付費(以下、これらを合わせて「訓練等給付費等」という。)がある。訓練等給付費の支給の対象には自立訓練、就労移行支援(注1)等がある。

そして、障害者及び障害児が障害福祉サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

① 障害者又は障害児の保護者は、居住地等の市町村から訓練等給付費等を支給する旨の決定を受ける。

② 支給決定を受けた障害者又は障害児の保護者(以下、これらを合わせて「支給決定障害者等」という。)は、支給決定の有効期間内に都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市等の長(以下「都道府県知事等」という。)の指定を受けた指定障害福祉サービス事業者等(以下「事業者」という。)の事業所において、障害福祉サービスを受ける。

また、都道府県知事等は、法等に基づき、自立支援給付の適正化等を図るために、事業者に対して指導等を行っている。

(注1)
就労移行支援  就労を希望する原則として65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して行う生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援

(3) 障害福祉サービスに要した費用の額の算定

事業者が障害福祉サービスを提供して請求することができる費用の額は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害福祉サービスの種類ごとに定められた基本報酬の単位数に各種加算の単位数を合算し、これに単価(10円から11.60円)を乗じて算定することとなっている。

そして、就労移行支援に要する費用の額は、算定基準等に基づき、事業所において、適正な障害福祉サービスの提供を確保するために、事業所の利用定員を上回る障害者に利用させている場合であって定員超過の程度が一定の範囲を超える場合には、定員超過利用減算として、各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70を乗じて得た単位数等を基に算定することとなっている。具体的には、次の場合等に減算を行うこととなっている。

① 利用定員が所定の数以下の事業所において、1日の利用者の数が、利用定員に100分の150を乗じて得た数(以下「受入可能利用者数」という。)を超える場合、当該1日について利用者全員につき減算を行う。

② 利用定員が所定の数以上の事業所において、直近の過去3月間の利用者の延べ数が、利用定員に開所日数を乗じて得た数に100分の125を乗じて得た数(以下「受入可能延べ利用者数」という。)を超える場合、当該1月間について利用者全員につき減算を行う。

(4) 訓練等給付費等

市町村は、法に基づき、支給決定障害者等が事業者から障害福祉サービスの提供を受けたときは、事業者の請求に基づき、訓練等給付費等を事業者に支払うことなどとなっており、訓練等給付費等は、障害福祉サービスに要した費用の額から当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担額等を控除して得た額となっている。

そして、国は、障害福祉サービスに要した費用について市町村が支弁した訓練等給付費等の100分の50を負担している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、訓練等給付費等の算定が適正に行われているかに着眼して、23都道府県及び56市(15政令指定都市、41中核市等)において、障害福祉サービスを提供する事業所を設置する727事業者に対する訓練等給付費等の支払について会計実地検査を行うとともに、1市(注2)から、障害福祉サービスを提供する事業所を設置する1事業者に対する訓練等給付費等の支払について、訓練等給付費等の請求に係る関係資料の提出を受けるなどして検査した。そして、訓練等給付費等の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注2)
1市は、会計実地検査を行った56市のうち1市と重複している。

検査したところ、奈良県奈良市に所在する1事業者は、平成30年4月及び同年5月における計37日において、就労移行支援に係る1日の利用者の数が受入可能利用者数を超えており、また、同年6月から31年4月までの間の各月において、就労移行支援に係る直近の過去3月間の利用者の延べ数が受入可能延べ利用者数を超えていた。しかし、同事業者は、就労移行支援に係る訓練等給付費の算定に当たり、定員超過利用減算として各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70を乗じていないなどしていた。

このため、138件の請求に対して、30、令和元両年度に6市町が支払った訓練等給付費が計4,735,431円過大となっていて、これに対する国の負担額計2,367,715円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、奈良市において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。