【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求し及び意見を表示したものの全文】
自立支援医療制度と医療保険の特定疾病制度の併用者に係る更生医療における自立支援医療費の審査及び支給等について
(令和7年10月14日付け 厚生労働大臣宛て)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求し及び意見を表示する。
記
自立支援医療制度は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づき、障害者及び障害児の心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療(以下「自立支援医療」という。)について、障害者及び障害児の保護者(以下「障害者等」という。)の医療費の自己負担額を軽減するために、公費により医療費を負担する公費負担医療制度である。
貴省は、障害者等の居住地等の市町村(特別区を含む。以下同じ。)又は都道府県が、都道府県知事等の指定する病院、薬局等(以下、これらを「指定医療機関」という。)から自立支援医療を受けた障害者又は障害児に係る自立支援医療に要した費用(以下「自立支援医療費」という。)を障害者等に対して支給した場合に、その支給に要する費用の100分の50を障害者医療費国庫負担金(以下「負担金」という。)として交付している。
法等によれば、自立支援医療費の支給に当たり、医療保険により同等の給付を受けることが可能な部分については、自立支援医療費の支給の対象とならないこととされている(以下、この取扱いを「併給調整」という。)。すなわち、図表1のとおり、自立支援医療費(公費負担分)(図表1の(A))は、同一月に受けた自立支援医療につき健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額(同(B))から、医療保険による給付(医療保険負担分)(同(C))及び当該障害者等の家計の負担能力、障害の状態等をしんしゃくして政令で定める額(以下「自立支援医療制度の自己負担限度額」という。)等(同(D))を控除して得た額等とすることとなっている。
(注) 自立支援医療費が支給されることで、障害者等の自己負担額が軽減されることになる(図表3参照)。
そして、法等によれば、都道府県は、市町村が行う自立支援医療費の支給等が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対して必要な助言、情報の提供その他の援助を行うなどの責務を有することとされており、また、都道府県知事等は、指定医療機関に対して自立支援医療の実施に関し指導を行うこととされている。
自立支援医療は、育成医療、更生医療又は精神通院医療の3種類とされ、このうち更生医療は、人工透析療法を受ける腎臓の機能の障害等の身体障害者を対象としている。
更生医療における自立支援医療費の支給認定を受けようとする障害者又は支給認定の有効期間が終了して再度の支給認定を受けようとする障害者は、法及び「自立支援医療費の支給認定について」(平成18年障発第0303002号。以下「支給認定通知」という。)に基づき、図表2のとおり、市町村(以下「事業主体」という。)の長に申請して(図表2の①)、支給認定を受けて、自立支援医療受給者証の交付を受けることとなっている(同②)(以下、支給認定を受けた障害者を「支給認定障害者」という。)。そして、法等によれば、自立支援医療を受けようとする支給認定障害者は、自立支援医療受給者証を指定医療機関に提示することとされている(同③)。
図表2 更生医療における自立支援医療費の支給等に係る事務の流れの概念図
事業主体は、支給認定障害者が指定医療機関から更生医療に係る自立支援医療を受けた(図表2の④)ときは、当該支給認定障害者に代わり指定医療機関に自立支援医療費を支払うことができることとなっている。
事業主体から委託を受けた社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会(以下、これらを「支払基金等」という。)は、指定医療機関から毎月提出される診療(調剤)報酬請求書及び診療(調剤)報酬明細書(以下「レセプト」という。)の内容の審査等(同⑥及び⑦)を行った後、受給者別に自立支援医療費(公費負担分)、自己負担額等を記載した連名簿等を作成して、事業主体等に送付している(同⑧)。
そして、事業主体は、毎月支払基金等から送付される連名簿等に基づき、公費負担額に医療保険負担とするべき額が含まれて請求されていないかなどについて支払の前又は後に必要な審査を行い(同⑨又は⑫)、支払基金等を通じて指定医療機関に対して自立支援医療費を支払うことになっている(同⑩及び⑪)。また、審査の結果、請求に誤りがある場合は、指定医療機関に対して支払基金等を通じて過誤調整を行わせる(同⑬)などしている。
医療保険の高額療養費制度のうち特定疾病制度は、被保険者の負担軽減を図る観点から、費用が著しく高額な治療を著しく長期間にわたって継続しなければならない疾病として厚生労働大臣が定めた人工透析療法を受ける慢性腎不全等(以下「特定疾病」という。)に係る療養を受けた場合の医療機関ごとの同一月における自己負担の限度額(以下「特定疾病制度の自己負担限度額」という。)を特例的に1万円等とし、これを超える額全額を保険者が負担するものである。
特定疾病制度の適用を受けようとする被保険者は、保険者に対して申請し、特定疾病の認定を受けて、特定疾病療養受療証の交付を受けることとなっている。そして、特定疾病の認定を受けた者が、特定疾病の療養を受けようとするときは、特定疾病療養受療証を保険医療機関等に提示しなければならないこととなっている(図表2の③)。
特定疾病のうち、人工透析療法を受ける慢性腎不全の患者(以下「人工透析患者」という。)は、保険者から特定疾病の認定を受けると特定疾病制度の対象者になり((4)参照)、さらに、事業主体から更生医療における自立支援医療費の支給認定を受けて支給認定障害者になる((2)参照)ことにより、両制度の対象者となる(以下、両制度の認定を受けた人工透析患者を「特定疾病併用者」という。)。
そして、支給認定通知によれば、人工透析患者の自立支援医療費の支給認定の申請については、特定疾病療養受療証の写しを添付の上、事業主体の長に申請させることとされている。
特定疾病併用者に係る更生医療における自立支援医療費(公費負担分)は、図表3のとおり、併給調整により、特定疾病制度の自己負担限度額のうち、自立支援医療制度の自己負担限度額を超える額を支給することとなる。
本院は、平成26年10月に、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の額の算定について、会計検査院法第34条の規定により、厚生労働大臣に対して是正改善の処置を求めるなどするとともに、これを平成25年度決算検査報告に掲記した。
そして、貴省は、本院の指摘の趣旨に沿い、27年4月に都道府県等に対して「会計検査院の是正改善の処置要求への具体的対応について」(平成27年厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課事務連絡。以下「27年事務連絡」という。)を発するなどして、都道府県を通じて、事業主体に対して、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査の必要性や方法等を示して、公費負担額等が適正か審査を行うよう周知を図るなどしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
自立支援医療費のうち更生医療に係る負担金については、26年の処置要求に係る検査時には741億3338万余円(24年度)であったが、令和5年度には868億8565万余円と増加しており、また、更生医療における自立支援医療費のうち人工透析療法に係るものの占める割合は約80%に上っている。
そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、事業主体における特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査は適正かつ効率的なものとなっているか、公費負担医療制度が制度の趣旨に沿って運用されているかなどに着眼して、15都府県(注1)の153事業主体が5年度に負担金の交付を受けた更生医療に係る事業費計721億2017万余円(負担金相当額計360億6008万余円)を対象として、153事業主体において、自立支援医療費に係る支払関係書類等を確認するとともに、貴省本省において、事業主体に対する指導等の状況について聴取するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
15都府県の153事業主体のうち13府県の111事業主体(注2)において、図表4のとおり、自立支援医療費に、支給の対象とならない医療保険の特定疾病制度による給付対象額が含まれていて、自立支援医療費計1億9527万余円(負担金相当額計9763万余円)が過大に支給されている事態が見受けられた。
| 府県名 | 事業主体数 | 国庫負担対象額 (A) |
国庫負担金 (B)=(A)× 50/100 |
過大に支給されていた自立支援医療費 (C) |
過大となっていた国庫負担金相当額 (D)=(C)× 50/100 |
|---|---|---|---|---|---|
| 福島県 | 2 | 370,636 | 185,318 | 1,661 | 830 |
| 埼玉県 | 16 | 6,661,397 | 3,330,698 | 21,284 | 10,642 |
| 千葉県 | 8 | 4,387,846 | 2,193,923 | 15,551 | 7,775 |
| 神奈川県 | 17 | 10,599,638 | 5,299,819 | 10,872 | 5,436 |
| 岐阜県 | 2 | 427,519 | 213,759 | 1,958 | 979 |
| 京都府 | 11 | 4,257,523 | 2,128,761 | 41,167 | 20,583 |
| 大阪府 | 13 | 13,641,747 | 6,820,873 | 34,083 | 17,041 |
| 奈良県 | 8 | 1,326,885 | 663,442 | 5,467 | 2,733 |
| 愛媛県 | 4 | 1,133,150 | 566,575 | 6,637 | 3,318 |
| 高知県 | 6 | 1,239,618 | 619,809 | 729 | 364 |
| 福岡県 | 14 | 6,347,823 | 3,173,911 | 45,917 | 22,958 |
| 宮崎県 | 7 | 1,732,188 | 866,094 | 9,086 | 4,543 |
| 沖縄県 | 3 | 985,122 | 492,561 | 856 | 428 |
| 計(13府県) | 111 | 53,111,099 | 26,555,549 | 195,273 | 97,636 |
自立支援医療費が過大に支給されている事態を踏まえて、事業主体における特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査の実施状況等について確認したところ、次のような状況となっていた。
貴省は、27年事務連絡において、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査を行う必要性や、自立支援医療費と自己負担額の合計が特定疾病制度の自己負担限度額を超えていないか突合するなどの審査方法を示して、公費負担額等が適正か審査を行うよう周知を図っている。
そこで、事業主体において、27年事務連絡を踏まえた審査が行われているか確認したところ、自立支援医療費が過大に支給されている事態が見受けられた13府県の111事業主体のうち、13府県の85事業主体においては、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査を実施していなかった。このうち、12府県の74事業主体においては、27年事務連絡の内容が担当部署において引き継がれておらず、審査の必要性を認識していなかった。また、貴省においても、27年事務連絡を発して以降、一度も周知を行っていなかった。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
京都市は、指定医療機関からの令和5年度の更生医療における自立支援医療費の請求について、支払基金等から毎月送付される連名簿等に基づき、5年3月診療分から6年2月診療分までの請求額計33億4514万余円を支払基金等を通じて指定医療機関に支払っていた。
当該請求額のうち28億4955万余円は人工透析療法等に係る請求であり、このうち1669万余円(負担金相当額834万余円)は、医療保険の特定疾病制度による給付対象額が誤って自立支援医療費として請求されたものであった。
しかし、同市においては、27年事務連絡の内容が担当部署において引き継がれておらず、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査を行わないまま、請求どおりに自立支援医療費を支給していた。
事業主体における特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査体制をみたところ、ほとんどの事業主体において、特定疾病併用者の人数にかかわらず、1名から2名の職員による審査体制となっていて、適正な審査を行うためには、より効率的な方法により実施する必要があると認められた。
そして、貴省は、27年事務連絡において、効率的に審査を実施するために、連名簿を電子データで入手して、既存のシステムに取込みが可能であれば取り込み、また、受給者データと連名簿等の突合を電子データにより行う方法を審査の好事例として示している。
そこで、13府県の111事業主体における連名簿の状況及び審査体制の状況をみたところ、連名簿の媒体については、事業主体によって紙又は電子データと区々となっており、社会保険診療報酬支払基金から送付される連名簿と、国民健康保険団体連合会から送付される連名簿のいずれか又は両方が紙である事業主体が、12府県の65事業主体と半数以上を占めていた。また、連名簿を電子データで受領していても、電子データを活用した効率的な審査ができていない事業主体が見受けられた。
一方、政府は、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)等に基づき、自立支援医療費の支給に関する業務において使用する障害者福祉に係るシステム等の基幹業務のシステムを標準化することとして、7年度末までに標準化のための基準に適合したシステム(以下「標準化システム」という。)への移行を目指している。
そこで、貴省が標準化システムにおいて求める機能を示した標準仕様書の自立支援医療費の審査に係る機能要件を確認したところ、レセプト情報に関しては、特定疾病の認定を受けているかについての点検項目は含まれているものの、特定疾病併用者に係る公費負担額が適正かについての点検項目は含まれていなかった。
このため、標準化システムの標準仕様書は、事業主体における特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査に十分に資するものとはなっていないと認められ、標準化システムへの移行後においても、効率的な審査ができるものとはなっていないと思料される。
そして、貴省は、これらの状況について把握しておらず、適正かつ効率的な審査ができる体制を整備することについて検討を行っていなかった。
特定疾病併用者に係る自立支援医療費の請求が適正に行われない原因の一つには、特定疾病併用者が指定医療機関に対して自立支援医療受給者証のみを提示し、特定疾病療養受療証を提示していないことがある。そして、特定疾病併用者についての情報を、本人の同意を得た上で事業主体と指定医療機関との間においてあらかじめ共有することができれば、指定医療機関において、自立支援医療受給者証のみを提示した特定疾病併用者に対して特定疾病療養受療証の提示を促し、適正な請求を行うことができると思料される。
そこで、13府県の111事業主体において、自立支援医療費の支給認定を行った際に、指定医療機関である病院及び薬局のいずれに対しても特定疾病療養受療証の有無を含む支給認定に係る情報を共有することとしているか確認したところ、93事業主体では当該情報を共有することとしていなかった。
また、貴省は、このような状況について把握しておらず、情報を共有する仕組みを構築することについて検討を行っていなかった。
支給認定通知によれば、人工透析患者の自立支援医療費の支給認定の申請については、特定疾病療養受療証の写しを添付の上、事業主体の長に申請させることとされている。
そこで、15都府県の153事業主体において特定疾病療養受療証の写しを添付させているか確認したところ、支給認定通知の解釈が事業主体によって区々となっており、15都府県の124事業主体においては、特定疾病療養受療証の写しを必ず添付するよう求めていた。一方、12都府県の29事業主体においては、必ずしも求めておらず、特定疾病の認定の有無等を十分に把握しないまま自立支援医療費の支給認定を行っていた。
しかし、特定疾病の認定の有無等を十分に把握しないまま自立支援医療費の支給認定を行っている場合、事業主体が支給した自立支援医療費に、支給の対象とならない医療保険の特定疾病制度による給付対象額が含まれているおそれがある。
そこで、29事業主体において特定疾病療養受療証の写しが添付されていなかった支給認定障害者について、これらの者の年齢及び自立支援医療費の自己負担限度額を基に、特定疾病併用者であった場合の特定疾病制度における自己負担限度額を仮定して自立支援医療費を算出し、当該自立支援医療費と実際に支給された自立支援医療費との開差額を試算した。その結果、図表5のとおり、9府県の20事業主体が支給認定を行った193人において、特定疾病併用者であった場合の自立支援医療費と実際に支給された自立支援医療費との開差額が計2757万余円(負担金相当額計1378万余円)生じていた。また、20事業主体の193人について特定疾病の認定の有無等を確認したところ、7事業主体の50人は特定疾病の認定を受けていた。一方、11事業主体の76人については特定疾病の認定を受けておらず、11事業主体の67人については、7年7月末時点においても、事業主体が関係機関との調整に時間を要するなどしていて、特定疾病の認定の有無等を確認できなかった。これら193人に係る自立支援医療費には、支給の対象とならない医療保険の特定疾病制度による給付対象額が含まれていると思料される。
| 府県名 | 事業 主体数 |
特定疾病併用者であった場合の自立支援医療費と実際に 支給された自立支援医療費との開差額が生じていたもの (A) |
(A)に係る国庫負担金相当額 (B)=(A)× 50/100 |
|||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
特定疾病の認 定を受けてい た者 |
特定疾病の認 定を受けてい ない者 |
特定疾病の認 定の有無等を 確認できな かった者 |
||||||||
人数 |
金額 |
人数 |
金額 |
人数 |
金額 |
人数 |
金額 |
|||
| 福島県 | 1 | 2 | 1,365 | ― | ― | 2 | 1,365 | ― | ― | 682 |
| 埼玉県 | 3 | 60 | 8,400 | ― | ― | 27 | 3,405 | 33 | 4,994 | 4,200 |
| 千葉県 | 2 | 8 | 1,156 | 3 | 100 | 5 | 1,056 | ― | ― | 578 |
| 神奈川県 | 4 | 12 | 2,609 | 1 | 133 | 6 | 1,214 | 5 | 1,260 | 1,304 |
| 大阪府 | 3 | 47 | 4,764 | 10 | 391 | 26 | 3,005 | 11 | 1,368 | 2,382 |
| 愛媛県 | 1 | 1 | 17 | ― | ― | ― | ― | 1 | 17 | 8 |
| 福岡県 | 3 | 54 | 7,975 | 32 | 3,578 | 8 | 1,775 | 14 | 2,621 | 3,987 |
| 宮崎県 | 1 | 3 | 1,034 | ― | ― | 2 | 174 | 1 | 859 | 517 |
| 沖縄県 | 2 | 6 | 255 | 4 | 183 | ― | ― | 2 | 71 | 127 |
| 計(9府県) | 20 | 193 | 27,578 | 50 | 4,386 | 76 | 11,997 | 67 | 11,193 | 13,789 |
このうち、特定疾病の認定を受けていた者については、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査の対象とするために、事業主体において、特定疾病療養受療証の写しを原則として添付させることにより、特定疾病の認定を受けていることを適切に把握することが求められる。
また、特定疾病の認定を受けていない者については、人工透析患者であれば特定疾病制度の対象となりうる者ではあるが、特定疾病の認定は申請主義に基づくものであるため、申請をしない場合は特定疾病併用者とならない。しかし、医療保険により同等の給付を受けることが可能な部分については、併給調整を行うこととなっている趣旨に鑑みると、特定疾病の認定を受けていない者に対して、特定疾病制度の申請をするよう働きかけることが望ましい。
そして、特定疾病の認定の有無等を確認できなかった者については、自立支援医療費の支給認定の際に、特定疾病の認定の有無等を把握することで、特定疾病療養受療証の写しの添付を求め、又は特定疾病制度の申請をするよう働きかけるなどの対応が可能となる。
以上のように、自立支援医療費を適正に支給するためには、事業主体において、自立支援医療費の支給認定の際に、特定疾病の認定の有無等を適切に把握することで、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査及び併給調整の対象とすることが求められる。
(是正及び是正改善並びに改善を必要とする事態)
事業主体において自立支援医療費が過大に支給されている事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。また、特定疾病併用者に係る自立支援医療費を適正に支給するための効率的な審査ができる体制となっていない事態、及び特定疾病の認定の有無等を十分に把握しないまま自立支援医療費の支給認定を行い、自立支援医療費が支給されている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。さらに、事業主体と指定医療機関との間において、特定疾病療養受療証の有無を含む自立支援医療費の支給認定に係る情報を共有することとしていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、特定疾病併用者が指定医療機関に特定疾病療養受療証を提示していないことや、指定医療機関において自立支援医療制度の理解が十分でないことにもよるが、次のことなどによると認められる。
ア 事業主体において
(ア) 特定疾病併用者に係る自立支援医療費の支給の制度及び審査方法についての理解が十分でないこと
(イ) 特定疾病併用者に係る自立支援医療費の適正かつ効率的な審査ができる体制となっていないこと
イ 貴省において
(ア) 事業主体に対して、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の支給の制度、審査を行う必要性、審査方法等について、継続的な周知を行っていないこと
(イ) 事業主体の審査体制の状況等を把握しておらず、事業主体において適正かつ効率的な審査ができる体制を整備することについて検討していないこと
(ウ) 事業主体と指定医療機関との間において、特定疾病療養受療証の有無を含む自立支援医療費の支給認定に係る情報を共有する仕組みを構築することについて検討していないこと
(エ) 事業主体に対して、人工透析患者の自立支援医療費の支給認定時における特定疾病の認定の有無等に応じた対応について、明確に周知していないこと
自立支援医療費のうち更生医療に係る医療費は、人工透析療法に係るものが大部分を占めている。また、医療機関においては健康保険証として利用登録されたマイナンバーカード(以下「マイナ保険証」という。)で特定疾病情報を確認できることとなっているが、資格確認書等により特定疾病情報を確認する場合があること、マイナ保険証による確認には開示の同意が必要であることなどから、事業主体において特定疾病併用者に係る自立支援医療費の適正かつ効率的な審査を行うことが引き続き求められる。
ついては、貴省において、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の審査及び支給が適正に行われるよう、次のとおり、是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求し及び意見を表示する。
ア 自立支援医療費が過大に支給されていた111事業主体に対して、過誤調整を行わせるなどすることで、過大に支給されていた自立支援医療費に係る負担金について返還等の措置を講じさせること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)
イ 事業主体に対して、都道府県を通じて、
(ア) 特定疾病併用者に係る自立支援医療費の支給の制度、審査を行う必要性、審査方法等について継続的な周知を行うこととし、適正に審査を行うよう徹底を図ること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)
(イ) 特定疾病併用者に対して、指定医療機関の受診の際に、自立支援医療受給者証と併せて特定疾病療養受療証も提示する必要があることなどを説明すること、人工透析患者の自立支援医療費の支給認定の申請に当たり、特定疾病の認定の有無等の確認のために特定疾病療養受療証の写しを原則として添付させること、及び特定疾病の認定を受けていない者には自立支援医療制度の趣旨を説明し、特定疾病制度の申請をするよう働きかけることについての継続的な周知を行うこととすること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
ウ 事業主体において適正かつ効率的な審査ができるような体制を整備するよう、標準化システムの標準仕様書の機能要件に自立支援医療費の点検項目を追加するなどすること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
エ 指定医療機関が自立支援医療費を適正に請求することができるよう、事業主体において、本人の同意を得た上で特定疾病療養受療証の有無を含む自立支援医療費の支給認定に係る情報を指定医療機関と共有する仕組みを構築するよう助言すること(同法第36条の規定により意見を表示するもの)