農林水産本省、林野庁及び水産庁(以下「本省等」という。)は、「国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律」(昭和45年法律第117号。以下「国際機関派遣法」という。)に基づいて、我が国が加盟している国際機関等に職員を派遣している。
国際機関派遣法、「人事院規則18―0(職員の国際機関等への派遣)」及び「派遣職員の給与の支給割合の決定等について(通知)」(昭和50年4月人事院事務総長通知。以下「通知」という。)に基づき、国は、国際機関等に派遣する職員(以下「派遣職員」という。)に対して派遣先から支給される報酬の年額(以下「派遣先給与年額」という。)が外務公務員給与年額(注1)に満たない場合等に、派遣職員に対して、その差額分について、派遣期間中に俸給、扶養手当等(以下、これらを合わせて「国内給与」という。)の範囲内で給与(以下「派遣職員給与」という。)を支給している。
そして、本省等は、国際機関派遣法等に基づき、次の算定式により支給割合を決定した上で、毎月の派遣職員給与を算定している。
通知によれば、支給割合を決定する際に用いる派遣先給与年額については、報酬、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、派遣先の勤務の対償として受ける全てのものを対象とすることとされている。ただし、俸給関係質疑応答集(一般財団法人公務人材開発協会人事行政研究所編)によれば、派遣先から支給される子女教育手当(注3)に相当する手当については、外務公務員に支給される子女教育手当と同じ性質のものであれば、通知において外務公務員給与年額の算定に子女教育手当を含めていないこととの均衡から、派遣先給与年額に含めないこととされている。したがって、派遣先から支給される手当が子女教育手当に相当せず、配偶者、子等を扶養している派遣職員に対して支給される扶養手当に相当するものであるなどの場合には、派遣先給与年額に含めることになる。
また、外務公務員給与年額のうち住居手当については、「在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」(昭和27年法律第93号)、「在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の額、住居手当に係る控除額及び限度額並びに子女教育手当に係る自己負担額を定める政令」(昭和49年政令第179号。以下「政令」という。)等によれば、次の①及び②のうちいずれか低い方の額を用いることとされている。
① 政令で定める限度額(以下「限度額」という。)
② 在外職員が居住する住宅の家賃(以下「家賃」という。)から政令で定める率を家賃に乗じた額を控除した額(以下「家賃相当額」という。)
本院は、合規性等の観点から、国際機関派遣法等に基づく派遣職員給与の支給が適正に行われているかなどに着眼して、本省等において、令和元年度から5年度までの間に支給割合を決定した派遣職員に対して同期間中に支給された派遣職員給与を対象として、派遣前に国際機関等から示される報酬に係る資料(以下「派遣先給与資料」という。)、不動産賃貸借契約書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
本省等は、派遣職員13名の支給割合の決定に当たり、派遣先給与資料に記載されている「Dependent child supplement」(扶養児童手当)、「Spouse allowance」(配偶者手当)等の手当が派遣先の勤務の対償として支給されることを把握していたが、これらの手当が子女教育手当に相当するなどとして、派遣先給与年額に含めていなかった。
しかし、これらの手当の内容を確認したところ、「Dependent child supplement」(扶養児童手当)は子を扶養している派遣職員に対して支給される手当であり、また、「Spouse allowance」(配偶者手当)は配偶者の年間総所得が一定額を超えない派遣職員に対して支給される手当であるなどしていた。このため、これらの手当はいずれも、教育を受けるのに必要な経費に充当するために支給される子女教育手当に相当する手当に該当せず、扶養手当に相当するものであることなどから、派遣先給与年額に含めるべきであった。
本省等は、派遣職員30名の支給割合の決定に当たり、外務公務員給与年額のうち住居手当を算定する際に、限度額と家賃とを比較していずれか低い方の額を用いていた。
しかし、住居手当については、限度額と、家賃ではなく家賃相当額のいずれか低い方の額を用いることとなっており、上記の派遣職員30名について、限度額と家賃相当額とを比較すると、いずれも家賃相当額の方が低くなることから、家賃相当額を住居手当として用いるべきであった。
(1)及び(2)の事態を踏まえるなどして派遣職員36名(注4)の支給割合を派遣職員別に修正計算すると、正しい支給割合(0%~99%)は本省等が決定していた支給割合(5%~100%)に比べて、いずれの派遣職員についても小さくなり、その差は1ポイントから26ポイントまでとなっていた。
したがって、派遣職員36名について、正しい支給割合に基づいて派遣期間中の派遣職員給与を算定すると計193,928,300円となることから、派遣職員給与支給額計223,925,897円との差額29,997,597円が過大に支給されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、本省等において、支給割合の決定に当たり、通知等に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。