• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第7 農林水産省
  • 不当事項
  • 補助金
  • (3) 工事の設計が適切でなかったもの

洪水吐の設計が適切でなかったもの[九州農政局](171)


(1件 不当と認める国庫補助金 4,956,972円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(171)
九州農政局
福岡県
朝倉市
(事業主体)
農業用施設災害復旧
3~5 24,935
(24,934)
24,884 4,966
(4,966)
4,956

朝倉市は、令和3年8月の豪雨により被災した大堤ため池の洪水吐(注1)及び取付水路を復旧するために、朝倉市日向石地区において、洪水吐工、取付水路工等を実施している。このうち洪水吐工は、現場打ち鉄筋コンクリート造の水路を築造するもので、この水路は越流堰が設置された流入部、整流部等の区間に分けられている。そして、流入部には、L型の水路部分及びU型の水路部分(高さ1.95m、幅6.40m。以下「U型部分」という。)がある(参考図参照)。

同市は、洪水吐の設計を「土地改良事業設計指針「ため池整備」」(平成27年5月農林水産省農村振興局整備部監修。以下「ため池指針」という。)等に基づき行うこととしている。そして、同市は、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。

ため池指針によれば、洪水吐を構成する流入部等が偏土圧(注2)を受ける場合等は、側壁に作用する土圧等を考慮して滑動等に対する安定計算を行う必要があるとされている。

しかし、同市が設計コンサルタントから成果品として受領した設計計算書において、L型の水路部分については、背面に偏土圧を受ける場合に該当するとして安定計算が行われており、転倒、滑動等に対して安全であるとされていた一方、U型部分については、側壁背面に偏土圧を受ける場合に該当するか確認されておらず、安定計算が行われていなかった。

そこで、U型部分の側壁背面の盛土高を確認したところ、右側側壁の背面の盛土高は1.95m、左側側壁の背面の盛土高は0mとなっており、側壁背面の盛土高が左右で著しく異なっていることから、右側側壁に偏土圧を受ける場合に該当しており、安定計算を行う必要があったにもかかわらず、同市は、成果品の検査に際し、設計計算書においてU型部分の安定計算が行われていなかったことを見落としていた。このため、側壁に作用する土圧等を考慮してU型部分の安定計算を行ったところ、地震時における滑動に対する安定について、安全率が0.758となり、許容値である安全率1.2を大幅に下回っていた。

したがって、本件洪水吐のうち流入部(工事費相当額4,966,907円)は、設計が適切でなかったため、地震時における所要の安全度が確保されていない状態になっていて、これに係る国庫補助金相当額4,956,972円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
洪水吐  ため池等で貯水位が異常に上昇したとき、堤体等の安全を確保するために過剰な水をため池等の外へ放流する施設
(注2)
偏土圧  水路等に対する土圧が左右対称ではなく、著しく偏って作用する場合の土圧

参考図

洪水吐の概念図

参考図 洪水吐の概念図画像