• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第7 農林水産省
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

水田活用の直接支払交付金事業の実施に当たり、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種(はしゅ)する交付対象農業者に播種有り単価を適用する場合には協議会において自然災害等による収量低下等の合理的な理由があることを確認することなどを実施要綱等に明記するなどするよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)国産農産物生産基盤強化等対策費
部局等
農林水産本省、2農政局等
交付の根拠
予算補助
補助事業者
(事業主体)
4,049交付対象農業者(令和4、5両年度)
交付金事業
水田活用の直接支払交付金事業
交付金事業の概要
米の安定供給のほか、食料自給率等の向上、水田の持つ多面的機能の維持強化等に資するよう、水田を最大限に有効活用するために、水田において麦、大豆、飼料作物等の戦略作物等を生産する交付対象農業者に対して、作付面積に応じて交付金を交付するもの
検査の対象とした交付対象農業者数及び多年生牧草に係る交付金交付額
4,049交付対象農業者 92億6850万余円(令和4、5両年度)
上記のうち、播種の妥当性の確認を全く行うことなく同一ほ場に対して2年連続で播種有り単価を適用された交付対象農業者数及び令和5年度の交付金交付額
471交付対象農業者 11億8363万余円(令和5年度)
上記交付金交付額と、上記交付金交付額のうち同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種した面積に播種無し単価を適用して試算した交付金交付額との開差額
6億8228万円(令和5年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

水田活用の直接支払交付金事業において2年連続で多年生牧草を播種(はしゅ)する場合の妥当性の確認について

(令和7年10月27日付け 農林水産大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 水田活用の直接支払交付金の概要等

(1) 水田活用の直接支払交付金の概要

貴省は、経営所得安定対策等実施要綱(平成23年22経営第7133号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要綱」という。)に基づき、米の安定供給のほか、食料自給率等の向上、水田の持つ多面的機能の維持強化等に資するよう、水田を最大限に有効活用することを目的として、水田活用の直接支払交付金(以下「水活交付金」という。)事業を実施している。

水活交付金は、水田において、麦、大豆、飼料作物等の戦略作物等の対象作物を生産する農業者(以下「交付対象農業者」という。)に対して、当該対象作物の作付面積に交付単価を乗ずるなどして算出した額を国が直接交付するものである。

(2) 水活交付金の交付までの流れ

実施要綱によれば、水活交付金の交付手続の流れは、おおむね次のとおりとされている(図表1参照)。

① 交付対象農業者は、交付申請に係る書類として、生産年の6月30日までに経営所得安定対策等交付金交付申請書(以下「交付申請書」という。)及び水稲生産実施計画書兼営農計画書(以下「営農計画書」という。)を地域農業再生協議会(注1)(以下「協議会」という。)に提出する。

② 協議会は、交付対象農業者ごとの営農計画書等に基づき、対象作物に係る作付面積等を確認する。特に、飼料作物のうち、牧草に対する戦略作物助成については、播種(注2)が行われたことを確認するために、交付対象農業者から播種記録(種子購入伝票や作業日誌等)の提出を受ける。

③ 交付対象農業者は、対象作物の生産実績に係る書類として、原則として生産年の12月20日までに「水田活用直接支払交付金の対象作物に係る出荷・販売等実績報告書兼誓約書」(以下「実績報告書」という。)を作成し、その確認書類として、対象作物ごとの販売伝票の写しなどを添付して協議会に提出する。

④ 協議会は、これらの書類を確認した上で、地方農政局等に提出し、地方農政局等は、交付申請内容の審査、交付金額の算定等を行い、交付対象農業者に対して水活交付金を交付する。

水活交付金の交付申請から交付までの流れを図表で示すと、次のとおりとなる。

図表1 水活交付金の交付申請から交付までの流れ

図表1 水活交付金の交付申請から交付までの流れ画像

(3) 飼料作物のうち牧草の区分等

飼料作物である牧草について、貴省は、我が国では主に寒冷地で栽培されており、一般的に、生育期間がおおむね1年のものは単年生牧草、複数年に及ぶものは多年生牧草と区分されるとしている。そして、このうち多年生牧草は、一度播種すれば5年から10年、長い場合には10年以上にわたって収穫できるものであり、適切な生産を行うことによって2年目以降も一定程度の収量が得られるとしている。

(4) 牧草の交付単価

実施要綱によれば、牧草の交付単価は、当年産において播種から収穫までを行うものに係る単価35,000円/10a(以下「播種有り単価」という。)と、播種を行わずに収穫を行うものに係る単価10,000円/10a(以下「播種無し単価」という。)とに区分されている。このうち、播種無し単価は、収穫のみを行う年は、播種から収穫までを行う年と比べて生産コストが低いことを踏まえて、令和4年度に新たに設けられたものである。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性、効率性等の観点から、飼料作物である牧草について、一度播種すれば5年から10年は一定程度の収量が得られるという多年生牧草の性質を踏まえて水活交付金事業が効率的に運営されているかなどに着眼して、播種無し単価が設けられた4年度に多年生牧草を生産した2農政局等(注3)管内における242協議会の4,049交付対象農業者に対して4、5両年度に交付された多年生牧草に係る水活交付金交付額計92億6850万余円を対象として検査した。

検査に当たっては、貴省本省及び2農政局等において、交付申請書、営農計画書、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、多年生牧草を生産している交付対象農業者等に係る水活交付金事業の実施状況に関する調書等の提出を受けて、その内容を分析するなどして検査した。

(注3)
2農政局等  東北農政局、北海道農政事務所

(検査の結果)

検査したところ、2農政局等管内における242協議会の4,049交付対象農業者のうち、105協議会の549交付対象農業者は、同一ほ場(注4)に対して2年連続で多年生牧草を播種し、2年目も播種有り単価を適用されて、多年生牧草に係る水活交付金計30億0628万余円の交付を受けていた。そして、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種することについて、242協議会の認識を聴取したところ、211協議会は自然災害等の場合を除き原則として不要、31協議会は原則として必要としており、上記の105協議会についてみると、原則として不要としていたのは86協議会、原則として必要としていたのは19協議会となっていた。

しかし、原則として不要と認識していた86協議会の中には、所属する50交付対象農業者のうち31交付対象農業者(50交付対象農業者の62.0%)に、自然災害等の理由を確認せずに同一ほ場に対して2年連続で播種有り単価を適用している協議会がある一方で、原則として必要と認識していた19協議会の中には、所属する27交付対象農業者のうち26交付対象農業者(27交付対象農業者の96.2%)に、自然災害等の理由を確認しなかったものの同一ほ場に対して2年連続では播種有り単価を適用していない協議会があった。

(注4)
ほ場  田畑、樹園地、牧草地等の作物を栽培している農地

このように、協議会における同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種することについての認識と同一ほ場に対する2年連続での播種有り単価の適用の状況は区々となっていた。

このような状況になっていたことから、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種することについて見解を徴したところ、貴省は、飼料作物のうち多年生牧草は、一度播種すれば5年から10年、長い場合には10年以上にわたって収穫できるものであり、適切な生産を行うことによって2年目以降も一定程度の収量が得られるとしている。一方、貴省は、自然災害等の交付対象農業者にとって不可抗力の要因による収量低下等により、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種する必要がある状況も考えられるとしている。これを踏まえて、貴省は、実施要綱等に特段規定していないものの、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種する際に播種有り単価を適用する場合には、自然災害等の交付対象農業者にとって不可抗力の要因による収量低下等の合理的な理由があること(以下「播種の妥当性」という。)について、協議会において交付申請書を確認する際等に確認すべきものとしている。

そこで、協議会における播種の妥当性の確認状況をみたところ、105協議会の549交付対象農業者(5年度に交付された多年生牧草に係る水活交付金交付額計14億1590万余円)のうち、90協議会の471交付対象農業者(同水活交付金交付額計11億8363万余円)については、協議会において播種の妥当性の確認を全く行っていなかった(図表2参照)。

図表2 播種の妥当性の確認を全く行っていなかった協議会数等

(単位:千円)

農政局等 同一ほ場に対して2年連続で播種有り単価を適用していた協議会数等
協議会数
交付対象農業者数
令和5年度に交付された多年生牧草に係る水活交付金交付額計
うち、播種の妥当性の確認を全く行って
いなかった協議会数等
 
協議会数
交付対象農業者数
5年度に交付された多年生牧草に係る水活交付金交付額計
東北農政局 71 305 702,053   68 290 670,962
北海道農政事務所 34 244 713,847   22 181 512,668
105 549 1,415,901   90 471 1,183,630

また、2農政局等における播種の妥当性の確認に係る指導等の状況について聴取したところ、2農政局等は、協議会から相談を受けた場合には、播種の妥当性を協議会において十分に確認するよう指導するなどしていたものの、実施要綱等において播種の妥当性を確認することについて明記されておらず、その具体的な方法等が定められていないことから、協議会から相談がない場合には、播種の妥当性の確認に係る指導等は実施していなかった。

このように、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種する際に播種有り単価を適用する場合には、播種の妥当性を確認すべきものとしているが、その旨が実施要綱において明記されていないことなどから、協議会において播種の妥当性の確認を全く行うことなく播種有り単価を適用していた事態が見受けられた。

そして、播種の妥当性の確認を全く行っていなかった90協議会の471交付対象農業者に対して5年度に交付された多年生牧草に係る水活交付金交付額計11億8363万余円について、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種し、播種有り単価(35,000円/10a)を適用していた面積272,913aに播種無し単価(10,000円/10a)を適用して試算すると計5億0134万余円となり、計6億8228万余円の開差が生ずることとなる。

(改善を必要とする事態)

水活交付金事業について、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種する際に、協議会において播種の妥当性の確認を全く行うことなく播種有り単価を適用している事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、多年生牧草の性質を踏まえて、同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種するとする交付申請書を協議会が確認する際等に、播種の妥当性について確認させるために、その旨を実施要綱に明記し、確認の具体的な方法等を実施要綱等において定めることの必要性についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

水活交付金事業には、毎年度、多額の予算が計上されており、今後も適切な事業実施が求められる。

ついては、貴省において、水活交付金事業が効率的に運営されるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 同一ほ場に対して2年連続で多年生牧草を播種する交付対象農業者に播種有り単価を適用する場合には、協議会において交付申請書を確認する際等に播種の妥当性を確認することを実施要綱に明記すること。また、播種の妥当性を協議会において確認できるようにするための具体的な方法等を実施要綱等において定めること

イ アを踏まえて、播種の妥当性の確認に必要となる具体的な方法等を協議会に対して検討して定めるよう指導するとともに、その具体的な方法等の整備状況を確認し、その結果を踏まえて協議会に対して改善に向けた指導等を行うこととすること