• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第7 農林水産省
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 収穫調査の効率化等を図るために調達された3Dレーザスキャナについて、森林管理局に対して職員の習熟度の向上を図るための研修をより一層行うよう指導するなどして、有効に活用されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)林野庁
(項)森林整備・保全費
(項)国有林野産物等売払及管理処分業務費
(項)森林整備事業費
(項)森林整備事業工事諸費
部局等
林野庁本庁、7森林管理局
3Dレーザスキャナの概要
レーザ光を用いて立木に接触せずに立木の三次元データを取得できる機器
令和6年度末時点の3Dレーザスキャナの台数
47台
上記3Dレーザスキャナの取得価格
2億5062万円(背景金額)(平成28年度~令和6年度)

1 収穫調査及び3Dレーザスキャナの概要等

(1) 収穫調査及び3Dレーザスキャナの概要

林野庁は、立木の状態で販売する立木販売、立木を伐倒するなどして丸太を生産する製品生産事業等を行っており、これらに係る予定価格を算定するために、「国有林野の産物売払手続」(昭和25年農林省訓令第102号)等に基づき、立木の樹種、樹高、胸高直径、品質等の調査(以下「収穫調査」という。)を実施している。

そして、林野庁は、収穫調査に係る人員確保が年々困難になっていることなどから、人力で実施していた収穫調査の効率化等を図るために、平成28年度から令和6年度までの間に、レーザ光を用いて立木に接触せずに立木の三次元データを取得できる3Dレーザスキャナ計47台を各森林管理局管内に配備している。なお、3Dレーザスキャナについては、全ての森林管理署等に1台以上が配備されているわけではないため、必要に応じて、3Dレーザスキャナが配備された各森林管理局等から各森林管理署等に貸し出すことになっている。

(2) 収穫調査の効率化等に向けた3Dレーザスキャナの活用の取組

林野庁は、3Dレーザスキャナを活用した収穫調査の実証の結果等を踏まえて、各森林管理局に対して、4年2月に収穫調査の省力化に向けたロードマップを示すとともに、4年度以降毎年度、事務連絡を発出して、3Dレーザスキャナを活用した収穫調査の実施について、次の①から③までの目標(以下「ロードマップ目標」という。)等を周知している。

① 4年度は、製品生産事業において、職員の習熟度を高めることを目的として、各森林管理署等で1か所以上試行する(3Dレーザスキャナを活用した収穫調査を実施するが、その結果を実際の契約手続に用いない)こと

② 5年度は、製品生産事業において、各森林管理署等で1か所以上実行する(3Dレーザスキャナを活用した収穫調査の結果を実際の契約手続に用いる)こと

③ 6年度は、製品生産事業において引き続き実行するとともに、立木販売においても、各森林管理署等で1か所以上実行すること

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、有効性等の観点から、3Dレーザスキャナは有効に活用されているかなどに着眼して、林野庁が平成28年度から令和6年度までの間に調達した3Dレーザスキャナ47台(取得価格計2億5062万余円)を対象として、林野庁本庁、7森林管理局(注1)及び40森林管理署等において、契約書、物品管理簿等を確認し、ロードマップ目標の期間である4年度から6年度までの間の3Dレーザスキャナの活用状況等を聴取するなどして会計実地検査を行うとともに、40森林管理署等を含む119森林管理署等から、3Dレーザスキャナの活用状況等に係る調書の提出を受けて、これを分析するなどして検査した。

(注1)
7森林管理局  北海道、東北、関東、中部、近畿中国、四国、九州各森林管理局

(検査の結果)

各森林管理署等においては、収穫調査を実施した場合には、収穫調査復命書(注2)(以下「復命書」という。)を作成することとなっている。そこで、各森林管理局管内において作成された4年度から6年度までの全ての復命書の件数に占める3Dレーザスキャナを活用した収穫調査の復命書の件数の割合(以下「活用率」という。)をみたところ、表1のとおり、製品生産事業においては4年度0%から8.8%、5年度0.4%から5.6%、6年度0%から4.4%、また、立木販売においては6年度0%から23.8%となっていた。各森林管理局の復命書の件数の中には、下層植生が繁茂しているなど3Dレーザスキャナの活用に適さない現地条件の箇所の収穫調査に係るものが含まれていることなどから、活用率のみをもって3Dレーザスキャナの収穫調査への活用状況を評価することは難しいものの、収穫調査への3Dレーザスキャナの活用が余り進んでいない状況であることがうかがえた。

(注2)
収穫調査復命書  調査方法、収穫区域の位置及び面積、立木の種類、品質及び数量等を記載して、各種野帳、図面及び計算書を添付した復命書。備考欄に3Dレーザスキャナの活用の有無を記載することとなっている。

表1 各森林管理局管内における活用率

森林管
理局名
令和4年度 5年度 6年度
製品生産事業 製品生産事業 製品生産事業 立木販売
復命書
の件数
(A)
活用率
(B/A)
復命書
の件数
(C)
活用率
(D/C)
復命書
の件数
(E)
活用率
(F/E)
復命書
の件数
(G)
活用率
(H/G)
活用
件数
(B)
活用
件数
(D)
活用
件数
(F)
活用
件数
(H)
(件) (件) (%) (件) (件) (%) (件) (件) (%) (件) (件) (%)
北海道
森林管理局
591 4 0.7 1,136 6 0.5 1,171 25 2.1 682 0 0.0
東北
森林管理局
84 1 1.2 214 10 4.7 311 8 2.6 56 2 3.6
関東
森林管理局
361 0 0.0 353 10 2.8 453 4 0.9 42 10 23.8
中部
森林管理局
89 0 0.0 59 1 1.7 152 0 0.0 6 0 0.0
近畿中国
森林管理局
102 9 8.8 178 10 5.6 160 7 4.4 18 2 11.1
四国
森林管理局
255 0 0.0 264 1 0.4 294 0 0.0 17 0 0.0
九州
森林管理局
1,487 40 2.7 1,525 65 4.3 1,188 49 4.1 174 7 4.0
  • 注(1) 復命書の件数は、森林管理署等が自ら実施する直営の収穫調査により作成された復命書のみを集計している。また、復命書の件数については、森林管理局ごとに1件当たりの調査対象範囲や作成方法が異なっていることなどから、森林管理局間で単純に比較することはできない。
  • 注(2) 活用件数は、復命書の件数のうち、3Dレーザスキャナを活用した収穫調査の復命書の件数である。
  • 注(3) 活用率は小数点第2位を四捨五入している。

また、119森林管理署等におけるロードマップ目標の達成率をみると、表2のとおり、製品生産事業は4年度37.8%、5年度18.5%、6年度21.8%、また、立木販売は3.4%となっており、いずれも低調となっていた。

表2 119森林管理署等におけるロードマップ目標の達成率

ロード
マップ
目標
令和4年度 5年度 6年度
製品生産事業で各署
等1か所以上試行
製品生産事業で各署
等1か所以上実行
製品生産事業で各署
等引き続き実行
注⑵
立木販売で各署等1
か所以上実行
森林管理
署等数
(A)
注⑴
達成でき
た森林管
理署等数
(B)
達成率
(B/A)
達成でき
た森林管
理署等数
(C)
達成率
(C/A)
達成でき
た森林管
理署等数
(D)
達成率
(D/A)
達成でき
た森林管
理署等数
(E)
達成率
(E/A)
(%) (%) (%) (%)
119 45 37.8 22 18.5 26 21.8 4 3.4
  • 注(1) 森林管理署等数には、令和4年度から6年度までのいずれかの年度において、製品生産事業又は立木販売の事業箇所が1か所もなかった森林管理署等が含まれている。
  • 注(2) 製品生産事業で1か所以上実行した森林管理署等について、ロードマップ目標を達成できたとしている。
  • 注(3) 達成率は小数点第2位を四捨五入している。

ロードマップ目標を達成していない主な理由について、森林管理署等に確認するなどしたところ、①活用できる現地条件を満たす箇所がなかったため(7森林管理局92森林管理署等)、②3Dレーザスキャナに係る操作技術を習得した職員が少ないなど職員の習熟度が十分でないため(5森林管理局51森林管理署等)、③森林管理局において職員の習熟度が十分でないと判断したことなどから試行又は実行の指示をしていなかったため(3森林管理局40森林管理署等)などとしていた(注3)。

(注3)
これらの森林管理署等の中には、複数の理由を回答した森林管理署等がある。

このうち①について、林野庁は、森林管理署等の職員の中には、収穫調査の対象箇所に3Dレーザスキャナを活用できるかどうかを判断する技術の習熟度が十分ではなく、活用可能な箇所についても活用に適さないと判断しているおそれがあるとしており、現に、会計実地検査において、森林管理署等が3Dレーザスキャナの活用に適さないとして人力で収穫調査を実施していた箇所について、3Dレーザスキャナで適切に計測できることを確認できたものもあった。また、②及び③の職員の習熟度に関連して、119森林管理署等の3Dレーザスキャナに係る研修の実施状況を確認したところ、47森林管理署等が、4年度以降、研修を実施していなかった。したがって、ロードマップ目標の達成率が低調である主な理由に共通した要因は、職員の3Dレーザスキャナの習熟度が十分でないことと認められた。なお、研修等における活用も含めて、6年度における3Dレーザスキャナ47台の機器ごとの活用日数をみると、いずれも30日以下で、1日以上10日以下の機器が35台と全体の7割を占めていたほか、同年度中は1日も活用されなかった機器が2台となっており、3Dレーザスキャナを活用した研修をより一層行うことが可能な状況となっていた。

このように、ロードマップ目標の達成率が低調となるなどしていて、収穫調査の効率化等を図るために調達された3Dレーザスキャナが十分に活用されているとはいえない状況となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、林野庁において、次のことなどによると認められた。

ア 森林管理局に対して、職員の3Dレーザスキャナの習熟度の向上を図るための研修等を実施することについての指導を十分に行っていなかったこと

イ 森林管理局に対して、3Dレーザスキャナを効率的かつ効果的に活用することについての指導を十分に行っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、林野庁は、7年8月に各森林管理局に対して事務連絡を発して、収穫調査の効率化等を図るために調達された3Dレーザスキャナが有効に活用されるよう、次のような処置を講じた。

ア 3Dレーザスキャナが活用可能な現地条件を判断する能力を養うことに重点を置き、参加する全ての職員が操作を体験できるように配慮するなどした研修を各森林管理署等において1年に1回以上開催するなどして、職員の3Dレーザスキャナの習熟度の向上を図るための研修をより一層行うよう指導した。

イ 森林管理局から毎年度末に当該年度の3Dレーザスキャナの活用状況を報告させて収穫調査への活用の進捗状況を確認するなどして、3Dレーザスキャナが効率的かつ効果的に活用されるよう指導していくこととした。