• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第8 経済産業省
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) 東日本大震災復興緊急保証に係る経営安定関連保証等特別基金について、必要額を超えて保有していると認められる額について速やかに国庫に納付させるとともに、保有規模について点検・検証等を適切に行うこととするよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)中小企業庁
(項)中小企業事業環境整備費
(項)東日本大震災復旧・復興中小企業事業環境整備費
部局等
中小企業庁
補助の根拠
予算補助
補助事業者
(事業主体)
一般社団法人全国信用保証協会連合会
補助事業
経営安定関連保証等対策費補助事業
補助事業の概要
中小企業者等が金融機関から受ける融資について債務の保証を行って代位弁済した信用保証協会に対して損失補償金を出えんするための経営安定関連保証等特別基金を造成するために必要な経費を補助するもの
東日本大震災復興緊急保証の概要
東日本大震災により著しい被害を受けた中小企業者等が金融機関から受ける融資について債務の保証を行うもの
経安基金(震災緊急保証分)を造成するために交付した国庫補助金の額
697億円(平成23年度)
上記のうち経安基金(震災緊急保証分)の残高
319億0695万余円(令和6年度末)
上記のうち今後の使用見込みが極めて低く資金が有効に活用されていないと認められる金額(試算額)
203億6589万円(令和6年度末)

【改善の処置を要求したものの全文】

一般社団法人全国信用保証協会連合会の東日本大震災復興緊急保証に係る経営安定関連保証等特別基金の保有規模について

(令和7年10月15日付け 経済産業大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 経安基金(震災緊急保証分)の概要等

(1) 震災緊急保証制度の概要

ア 経安補助金の概要

中小企業庁は、経営安定関連保証等対策費補助金交付要綱(平成13・01・26財中第2号。以下「経安要綱」という。)に基づき、一般社団法人全国信用保証協会連合会(以下「連合会」という。)に対して経営安定関連保証等対策費補助金(以下「経安補助金」という。)を交付している。そして、連合会は、経安補助金を基に経営安定関連保証等特別基金(以下「経安基金」という。)を造成している。

イ 経安基金(出えん分)の概要

各都道府県等に設立された51の信用保証協会(以下「協会」という。)は、信用保証協会法(昭和28年法律第196号)に基づき、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るため、中小企業者等が金融機関から受ける融資について、その債務の保証(以下「信用保証」という。)を行っている。そして、信用保証付融資を受けた中小企業者等が債務不履行に陥った場合、協会は、当該中小企業者等に代わって金融機関に債務の弁済(以下「代位弁済」という。)を行っている。

連合会は、協会との間で損失補償契約を締結していて、当該契約に基づき協会に対して損失補償金を支払う(注1)場合に、経安基金を取り崩して出えんしている(以下、経安基金のうち損失補償金を出えんするために造成されている分を「経安基金(出えん分)」という。)。

経安基金(出えん分)の出えんの対象になる信用保証は、自然災害等の突発的な事由の発生等により経営の安定に支障が生じている中小企業者等に対して円滑な資金供給を実現するなどのためのものであり、後述ウ(ア)の震災緊急保証等がある。

(注1)
協会が代位弁済した額から、信用保険(協会が行った信用保証について包括保証保険契約の金額の範囲内で株式会社日本政策金融公庫が引き受ける保険)により同公庫から支払を受けた保険金の額を控除した額に対して、一定の損失補償割合を上限として損失補償金が支払われる。

経安基金(出えん分)の出えん及びその対象となる信用保証の概要を示すと図表1のとおりである。

図表1 経安基金(出えん分)の出えん及びその対象となる信用保証の概要

図表1 経安基金(出えん分)の出えん及びその対象となる信用保証の概要画像

ウ 震災緊急保証の概要等

(ア) 震災緊急保証の概要

中小企業庁は、東日本大震災(平成23年東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。以下同じ。)により著しい被害を受けた中小企業者等に係る経営の安定に必要な資金について特別の助成に関する措置を講ずるために、23年5月に東日本大震災復興緊急保証制度要綱(平成23・05・06中庁第3号。以下「震災緊急保証要綱」という。)を制定して、信用保証等の既存の制度を活用した全国一律の東日本大震災復興緊急保証制度(以下「震災緊急保証制度」といい、震災緊急保証制度の対象となる信用保証を「震災緊急保証」という。)を創設した。

震災緊急保証制度の概要は図表2のとおりであり、特定被災区域(注2)に事業所を有することなどから、東日本大震災により損害を受けたことについて市区町村長等の証明を受けた中小企業者等に対して、協会が震災緊急保証を実施している。そして、協会が金融機関に支払った代位弁済額の6%を上限として、連合会から協会に対して損失補償金が出えんされることになっている。

(注2)
特定被災区域  「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)第2条第3項及び「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)第2条で定められた市町村をいう。

図表2 震災緊急保証制度の概要

対象者
・特定被災区域に事業所を有し、地震・津波等により直接被害を受けたことについて市区町村長等から罹災証明書等の発行を受けた中小企業者等
・警戒区域等の公示の際に、当該区域に事業所を有していた中小企業者等 注(1)
・特定被災区域に事業所を有し、震災の影響により業況が悪化していることについて市区町村長等の認定を受けた中小企業者等 注(2)
保証限度額 2億8000万円
(中小企業者等が組合の場合は4億8000万円)
保証割合 100%
保証期間 10年以内(うち据置期間2年以内)
損失補償金の上限額 代位弁済額の6% 注(3)
取扱期間 令和8年3月まで 注(4)
  • 注(1) 警戒区域等は、東日本大震災に際し、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)第15条第2項第1号の緊急事態応急対策を実施すべき地域として公示された区域をいう。
  • 注(2) 平成25年3月までは特定被災区域外に事業所を有する中小企業者等を含む。
  • 注(3) 協会が金融機関に支払った代位弁済額から、協会が株式会社日本政策金融公庫より支払を受けた保険金の額(代位弁済額の90%)を控除した額の60%を上限とするとされている。
  • 注(4) 取扱期間は、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の経済産業省関係規定の施行に関する政令」(平成23年政令第133号)において定められていて、制度創設時は平成24年3月までとされていたが、当該政令が毎年度改正されることにより1年ずつ延長されている。

中小企業庁は、23年度に、連合会に対して、震災緊急保証制度に係る損失補償金の出えんに充てさせるために、経安補助金697億円を交付している。そして、連合会は、これを経安基金(出えん分)の造成に充てて管理している(注3)(以下、経安基金(出えん分)のうち、震災緊急保証制度に係る出えんに充てるために造成された分を「経安基金(震災緊急保証分)」という。)。

(注3)
中小企業庁は、経安基金(震災緊急保証分)について、東日本大震災の復興施策に要する費用に関する権利義務は東日本大震災復興特別会計に帰属することとされていることなどから、連合会に対して、経安基金(出えん分)の他の部分と区分して管理させている。
(イ) 震災緊急保証の対象の変遷

中小企業庁は、震災緊急保証を被災地の復旧・復興等に重点化して実施するために、25年3月に震災緊急保証要綱を改正して、図表3のとおり、25年度以降の震災緊急保証の対象を、特定被災区域に事業所を有する中小企業者等に限定した。さらに、中小企業庁は、地域ごとの復興状況等を踏まえて、令和3年3月に震災緊急保証要綱を再度改正し、3年度以降の震災緊急保証の対象を、特定被災区域のうち福島県下の全市町村及び岩手、宮城両県下の一部の市町村に事業所を有する中小企業者等に限定するなどした。このように、中小企業庁は、震災緊急保証の対象を段階的に限定してきている。

図表3 震災緊急保証の対象の変遷

期間

対象者
平成23年3月11日
~25年3月31日
25年4月1日~
令和3年3月31日
3年4月1日~
(8年3月31日)注(1)
特定被災区域のうち、岩手、宮城及び福島の3県下の市町村に事業所を有する中小企業者等 対象 対象 対象 注(2)
特定被災区域のうち、青森、茨城、栃木、埼玉、千葉、新潟及び長野の7県下の市町村に事業所を有する中小企業者等 対象 対象 資金使途が既往の震災緊急保証に係る資金を借り換えるなどの者は対象
特定被災区域外の市区町村のみに事業所を有する中小企業者等 対象 対象外 対象外
  • 注(1) 「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の経済産業省関係規定の施行に関する政令」により、令和7年9月末時点において、震災緊急保証の取扱期間は8年3月31日までとなっている。
  • 注(2) 岩手、宮城両県については、事業所が所在する市町村によっては、資金使途が既往の震災緊急保証に係る資金の借換えなどである中小企業者等のみが対象となる場合がある。

(2) 基金の保有規模の見直しの概要等

ア 基金の保有規模の見直しの概要

経安要綱によれば、経済産業大臣は、経安基金の事業について、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定。以下「基金基準」という。)に適合するよう指導監督することとされている。そして、基金基準によれば、使用見込みの低い基金等を保有する基金法人は、定期的な見直しの際に、基金の財源となっている国庫補助金等を国庫に納付するなどの取扱いを検討することとされている。また、「基金の点検・見直しの横断的な方針について」(令和5年12月行政改革推進会議)等によれば、基金について執行状況を踏まえた合理的な事業見込みを算定して保有規模が適正なものとなるよう点検を行うなど、不断に点検・検証を行うこととされている。

イ 元年度国庫納付

貴省は、2年2月に、東日本大震災から8年が経過し、これまでの出えん額等の状況に鑑みると経安基金(震災緊急保証分)の残高が必要額以上の水準にあるとして、連合会に対して、経安要綱に基づき、経安基金(震災緊急保証分)の保有規模の見直しを指示している。そして、連合会から同年3月に経安基金(震災緊急保証分)に係る使用見込みのない額が300億円であるとの報告を受けるとともに、同月に同額を国庫納付させている(以下、当該経安基金(震災緊急保証分)の保有規模の見直し及び国庫納付を「元年度国庫納付」という。)。

なお、経安基金(震災緊急保証分)については、7年9月末時点で更なる国庫納付は行われていない。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

経安基金(震災緊急保証分)は、元年度国庫納付の後、5年以上国庫納付が行われていないことから、本院は、効率性、有効性等の観点から、経安基金(震災緊急保証分)について、貴省による保有規模の見直しは保証承諾(注4)の状況等に応じて適切に行われているか、保有規模は適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、中小企業庁及び連合会において震災緊急保証の実施状況等について、9協会(注5)において震災緊急保証に対する需要等について説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。また、連合会から、経安基金(震災緊急保証分)の残高等の状況、51協会の震災緊急保証に係る保証承諾の状況等に係る調書等の提出を受けて、その内容を分析するなどの方法により検査した。

(注4)
保証承諾  中小企業者等からの保証申込を受けて協会が応諾すること
(注5)
9協会  岩手県、福島県、群馬県、東京、愛知県、島根県、徳島県、高知県、大分県各協会

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 経安基金(震災緊急保証分)の残高等の状況

震災緊急保証制度が創設された平成23年度から令和6年度までの間の経安基金(震災緊急保証分)の残高等の状況についてみると、平成23年度末の残高は697億円であったのに対して、令和6年度末の残高は319億余円となっていて、残高の減少額は377億余円となっていた。そして、当該減少額377億余円のうち300億円は元年度国庫納付によるものである。

一方で、平成23年度から令和6年度までの間の損失補償金の出えんなどによる経安基金(震災緊急保証分)の取崩額をみると、図表4のとおり、計77億余円であり、特に元年度国庫納付の後の2年度から6年度までの5年間では計14億余円にとどまっていた。

図表4 経安基金(震災緊急保証分)の取崩額の推移

(単位:億円)

年度 平成23 24 25 26 27 28 29 30 令和元
取崩額 1 9 13 11 9 6 6 5
                   
年度 2 3 4 5 6 平成23年度から令和6年度までの計
  うち2年度から
6年度までの計
取崩額 4 3 1 1 2 77 14

(2) 震災緊急保証の実施状況

ア 震災緊急保証に係る保証債務残高の推移

平成23年度から令和6年度までの間の震災緊急保証に係る保証債務残高の推移をみると、図表5のとおり、平成23年度末には76,265件1兆6473億余円あったものが、令和6年度末には13,314件2210億余円(平成23年度末の件数の17.4%及び金額の13.4%)と大きく減少していた。

図表5 震災緊急保証に係る保証債務残高の推移

図表5 震災緊急保証に係る保証債務残高の推移画像

イ 震災緊急保証に係る保証承諾の推移

23年度から令和6年度までの間の震災緊急保証に係る保証承諾の推移をみると、図表6のとおり、東日本大震災直後の平成23年度には79,404件1兆8157億余円あったものが、令和6年度には2,135件591億余円(平成23年度の件数の2.6%及び金額の3.2%)と大きく減少していた。

図表6 震災緊急保証に係る保証承諾の推移

図表6 震災緊急保証に係る保証承諾の推移画像

このように震災緊急保証に係る保証承諾が減少してきている理由は、東日本大震災から14年が経過している中で、1(1)ウ(イ)のとおり、震災緊急保証制度の改正により震災緊急保証の対象が段階的に限定されてきていることなどから、管轄する都道府県等によって保証承諾が大きく減少している協会があることなどであると思料される。

そこで、震災緊急保証制度の改正段階に沿って、51協会を図表7の①から③までに分類して、2年度から6年度までの間の保証承諾の状況を確認した(以下、①に該当する3協会を合わせて「被災3協会」、②に該当する7協会を合わせて「被災7協会」、③に該当する41協会を合わせて「その他41協会」という。)。

図表7 震災緊急保証制度の改正段階に沿った各協会の分類

分類 該当する協会
①特定被災区域を有する県のうち、②の対象資金の限定等がない各県を管轄する協会 被災3協会(岩手県、宮城県、福島県各協会)
②特定被災区域を有する県のうち、対象資金が借換資金に限定されるなどしている各県を管轄する協会 被災7協会(青森県、新潟県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、長野県各協会)
③特定被災区域を有していない都道府県等を管轄する協会 その他41協会(北海道、秋田県、山形県、群馬県、東京、神奈川県、横浜市、川崎市、山梨県、静岡県、愛知県、名古屋市、岐阜県、岐阜市、三重県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都、大阪、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、徳島県、高知県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県各協会)

その結果、図表8のとおり、被災3協会は、2年度における51協会の保証承諾額の97%以上を、3年度以降はその99%以上を占めており、特に福島県協会はいまだに保証承諾が多い状況が継続している。一方、被災7協会及びその他41協会は、保証承諾が皆無である年度があるなど、保証承諾がほとんどなかった。また、平成23年度の保証承諾額に対する令和6年度の割合をみると、被災3協会は15.1%(うち福島県協会は26.2%)である一方で、被災7協会は0.1%未満、その他41協会は皆無となっていた。

図表8 協会の分類別の保証承諾の状況

年度

分類
平成23 令和2 3 4 5 6 平成23年度
に対する
令和6年度
の割合
a b b/a
被災3協会 件数 19,581 1,546 1,406 1,626 1,600 2,130 10.8%
金額(億円) 3897
(21.4)
380
(97.6)
379
(99.8)
449
(100.0)
426
(99.7)
590
(99.8)
15.1%
うち福島県協会 件数 10,639 492 1,198 1,463 1,384 1,740 16.3%
金額(億円) 1873
(10.3)
124
(32.0)
342
(90.2)
414
(92.3)
374
(87.5)
490
(82.9)
26.2%
被災7協会 件数 20,376 39 6 5 0.0%
金額(億円) 3537
(19.4)
9
(2.3)


0
(0.2)
0
(0.1)
0.0%
その他41協会 件数 39,447 1 2
金額(億円) 1兆0722
(59.0)

0
(0.1)

0
(0.0)

件数 79,404 1,585 1,407 1,626 1,608 2,135 2.6%
金額(億円) 1兆8157
(100.0)
389
(100.0)
379
(100.0)
449
(100.0)
427
(100.0)
591
(100.0)
3.2%

注(1) 括弧書きは計に対する割合(%)を示しており、小数点第2位以下を切り捨てている。

注(2) 図表中の金額は単位(億円)未満を切り捨てており、「0」は単位未満あり、「―」は皆無を示している。

したがって、少なくとも被災7協会及びその他41協会が管轄する都道府県等のみに事業所を有している中小企業者等については、震災緊急保証に対する需要が極めて低い状況が見受けられる。このため、被災7協会及びその他41協会に係る損失補償見込額として、引き続き経安基金(震災緊急保証分)に留保しておく必要がある資金は極めて少額になると認められる。

(3) 経安基金(震災緊急保証分)の保有規模の見直しの状況

経安基金(震災緊急保証分)に係る貴省の連合会に対する指導監督の状況について確認したところ、貴省は、被災7協会及びその他41協会の保証承諾が極めて低調な状況であるにもかかわらず、元年度国庫納付以降5年が経過した6年度末においても、連合会に対して、経安要綱に基づき基金基準に沿った経安基金(震災緊急保証分)の保有規模の見直しを行うよう再度指示するなどしていなかった。そして、連合会は、保証承諾の状況等に応じて損失補償見込額を算定するなどして使用見込みを十分に精査して経安基金(震災緊急保証分)が適切な保有規模となるよう見直しを行っていなかった。そのため、引き続き経安基金(震災緊急保証分)に留保しておく必要がある資金についての点検・検証が行われていない状況となっていた。

(4) 経安基金(震災緊急保証分)の必要額の試算

元年度国庫納付以降、経安基金(震災緊急保証分)の保有規模の見直しが行われていないことを踏まえて、経安基金(震災緊急保証分)に係る今後必要となる損失補償見込額について、本院において、元年度国庫納付の際の算定方法を参考にして試算を行った。

試算に当たり、被災7協会及びその他41協会については、2年度以降ほとんど保証承諾がなく、震災緊急保証に対する需要が極めて低い状況が見受けられる((2)イ参照)ことから、元年度国庫納付以降の直近5年間(2年度から6年度まで)の保証承諾額を基にして、一年度当たりの平均保証承諾額を算定した。

一方、被災3協会については、平成23年度の保証承諾額に対する令和6年度の割合が被災7協会及びその他41協会と比べると高く、かつ、毎年度継続して保証承諾がある状況が認められ、特に福島県協会については、いまだに保証承諾が多い状況が継続している((2)イ参照)ことから、保守的な見積りによることとして、震災緊急保証制度が創設された平成23年度から令和6年度までの全ての年度の保証承諾額を基にして、一年度当たりの平均保証承諾額を算定した。

試算の結果、図表9のとおり、6年度末時点で、7年度以降の損失補償見込額は、被災3協会は111億5580万余円、被災7協会は1億3082万余円、その他41協会は2億5443万余円、計115億4106万余円となった。このため、6年度末の基金残高319億0695万余円との差額203億6589万余円については、今後の使用見込みが極めて低く資金が有効に活用されていないと認められる。

分類 基金残高 損失補償見込額 基金残高と
損失補償見
込額との差
保証
債務残高
今後の保証承諾見込額 想定
事故率
想定非
回収率
損失
補償
割合
平均
保証承諾額
制度
継続見込
期間
②=
(a+b)×
e×f×g
注(1)
a
b=c×d 注(2)
c
注(3)
d
注(4)
e
注(4)
f
注(5)
g
①-②
被災3協会 111億5580 1821億6209 1兆0121億3541 1012億1354 10年 17.35% 89.73% 6.00%
被災7協会 1億3082 118億0071 22億0500 2億2050
その他41協会 2億5443 270億9862 1億4000 1400
319億0695 115億4106 2210億6143 1兆0144億8041 1014億4804 203億6589
                     
(参考)

元年度国庫納付
の際の算定
方法
基金残高 損失補償見込額 使用見込み
のない額
保証
債務残高
今後の保証承諾見込額 想定
事故率
想定非
回収率
損失
補償
割合
平均
保証承諾額
制度
継続見込
期間
②=
(a+b)×
e×f×g
注(1)
a
b=c×d 注(2)
c
注(3)
d
注(4)
e
注(4)
f
注(5)
g
注(6)
①-②
639億4078 340億0085 4400億0000 3兆2000億0000 3200億0000 10年 17.35% 89.73% 6.00% 300億0000
  • 注(1) 「保証債務残高」は、元年度国庫納付では令和元年度末の推計値を用いており、試算では6年度末の実績値を用いている。
  • 注(2) 「平均保証承諾額」は、元年度国庫納付では百億円未満を切り捨てており、試算では円単位の計数を用いて算定している。
  • 注(3) 「制度継続見込期間」は、元年度国庫納付では「第2期復興・創生期間(令和3年度~7年度)」を含む10年間としており、試算でも「第3期復興・創生期間(令和8年度~12年度)」を含む10年間としている。
  • 注(4) 「想定事故率」及び「想定非回収率」は、元年度国庫納付では予算の積算時に用いた率を用いており、試算でも同じ率を用いている。
  • 注(5) 「損失補償割合」は、元年度国庫納付では損失補償金として出えんされる上限の率を用いており、試算でも同じ率を用いている。
  • 注(6) 「使用見込みのない額」は、算定に当たり端数が調整されている。
  • 注(7) 項目ごとに万円未満を切り捨てている。

(改善を必要とする事態)

経安基金(震災緊急保証分)の保有規模について、被災7協会及びその他41協会において保証承諾が極めて低調な状況が続いているにもかかわらず、元年度国庫納付以降、見直しが行われておらず、使用見込みが極めて低い資金が有効に活用されないままとなっている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、経安基金(震災緊急保証分)の保有規模について点検・検証を適切に行うことの重要性に対する理解が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

震災緊急保証については、東日本大震災から14年が経過している中で、保証債務残高は年々減少しているとともに、51協会のうち被災7協会及びその他41協会においては保証承諾が極めて低調な状況が継続している。

ついては、貴省において、経安基金(震災緊急保証分)の保有規模について点検・検証等が適切に行われるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 連合会に対して、保証承諾の状況等に応じて損失補償見込額を算定するなどして使用見込みを十分に精査して、経安基金(震災緊急保証分)が適切な保有規模となるよう見直しを指示するとともに、連合会における見直しの結果、必要額を超えて保有していると認められる額については、速やかに国庫に納付させること

イ 経安基金(震災緊急保証分)の保有規模について、連合会に対して適時適切に見直しを行わせるとともに、連合会における見直しの結果を踏まえて点検・検証等を適切に行うこととすること