四国地方整備局松山河川国道事務所(以下「事務所」という。)は、一般国道56号、196号及び317号において、道路の機能を良好に保つことなどを目的として、令和元、2両年度に「平成31―32年度 松二維持工事」を、3、4両年度に「令和3―4年度 松二維持工事」を、株式会社愛亀(以下「請負人」という。)にそれぞれ工事費554,429,700円、499,213,000円、計1,053,642,700円で請け負わせて実施している(以下、これらの工事を合わせて「本件工事」という。)。
本件工事は、道路巡回工、欠損部補修工等を行うものであり、このうち、欠損部補修工は、車道等の舗装に生じた小規模なひび割れなどの欠損部を加熱アスファルト合材(以下「加熱合材」という。)で補修するものである。契約書等によると、本件工事における欠損部補修工の実施手順は、次のとおりとなっている。
① 請負人は、道路巡回を行い、その状況等についてパトロール日誌を事務所に提出して報告する。
② 事務所は、パトロール日誌により道路に欠損部が生じていることが報告された場合、請負人に対して、欠損部の補修を行う期間、箇所、補修に使用する加熱合材の概算数量等を記載した指示書を発出する。
③ 請負人は、指示書に基づいて欠損部の補修を行い、欠損部の補修に使用した加熱合材について、施工日ごとの施工量が確認できる合材数量集計表を作成して事務所に提出する。
総価契約単価合意方式実施要領(平成28年国地契第79号、国官技第360号、国北予第33号。以下「実施要領」という。)等によると、総価契約単価合意方式は、請負代金額を変更することになった際に変更金額等の算定に用いる単価等について、受発注者間であらかじめ協議し、単価合意書を作成して合意しておくことにより、設計変更等に伴う協議の円滑化に資することを目的としている。総価契約単価合意方式には、単価個別合意方式と包括的単価個別合意方式(以下「包括的方式」という。)とがあり、本件工事は包括的方式となっている。
また、実施要領等によると、包括的方式は、発注者が積算した各工種等の単価に、予定価格に対する工事費の比率(以下「請負比率」という。)を乗じて得た単価について合意するものとなっている(以下、合意した単価を「合意単価」という。)。そして、請負代金額の変更については、単価合意書の記載事項を基礎として発注者と受注者とが協議して定めることが原則となっているが、単価合意書に記載の合意単価を用いることが不適当である場合等は、発注者と受注者とが協議して新たに定めること、協議が整わない場合には、発注者が定めて受注者に通知することとなっている。
事務所は、本件工事の工事費の積算を国土交通省制定の土木工事標準積算基準書(以下「積算基準」という。)等に基づき行っている。そして、積算基準において、欠損部補修工の加熱合材の施工量1t当たりの単価を算定する際に用いる歩掛かりは、一日当たりの施工量により「1t未満」「1t以上2t未満」「2t以上5t未満」及び「5t以上20t未満」の四つに区分されている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、工事の実態を踏まえて単価が適切に定められているかなどに着眼して、本件工事を対象として、事務所において、契約書、合材数量集計表等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
事務所は、当初、欠損部補修工の一日当たりの施工量について、積算基準の区分のうち「1t以上2t未満」と想定して、当該区分の歩掛かりを適用して算定した単価に請負比率を乗じて得た単価を65,898円から104,307円と算定していた(以下、これらの単価を「本件合意単価」という。)。
その後、事務所は、欠損部補修工の実際の施工量に基づくなどして契約変更を行って契約額を変更しており、本件合意単価に年度ごとの実際の施工量(20t~88t)を乗ずるなどして算出した欠損部補修工の費用(以下「欠損部補修費用」という。)計21,975,721円に道路巡回工等の費用や諸経費等を加えた計1,053,642,700円を本件工事の工事費として請負人に支払っていた。
しかし、欠損部補修工の施工日ごとに、実際の一日当たりの施工量が積算基準のどの区分に該当するか確認したところ、表のとおり、全施工日106日のうち、本件合意単価を算定する際に事務所が想定していた「1t以上2t未満」に該当する施工日は25日(106日の23.5%)にすぎず、「2t以上5t未満」に該当する施工日が68日(106日の64.1%)と最も多くなっていた。そして、「2t以上5t未満」の単価は、当該区分の歩掛かりを適用するなどして算定すると42,200円から65,930円となり、本件合意単価の65,898円から104,307円よりも安価となっていた(注)。
| 工事名 | 年度 | 積算基準における区分 | 計 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1t未満 | 1t以上 2t未満 |
2t以上 5t未満 |
5t以上 20t未満 |
|||
| 平成31―32年度 松二維持工事 |
令和元年度 | 4 | 9 | 8 | ― | 21 |
| 2年度 | 2 | 9 | 30 | ― | 41 | |
| 令和3―4年度 松二維持工事 |
3年度 | 2 | 2 | 25 | 1 | 30 |
| 4年度 | 4 | 5 | 5 | ― | 14 | |
| 計(注) | 12 (11.3%) |
25 (23.5%) |
68 (64.1%) |
1 (0.9%) |
106 (100.0%) |
|
したがって、実際の一日当たりの施工量については、事務所が当初想定していた区分の施工量とは異なっているものもあり、これらの施工量については、本件合意単価を用いることが不適当である場合に該当することから、事務所は、実際の一日当たりの施工量に対応する区分の単価を新たに算定して、契約変更を行う必要があったと認められた。
そこで、欠損部補修工の施工日ごとに、実際の一日当たりの施工量に対応する区分の単価を用いるなどして、欠損部補修費用を算出すると計14,648,403円となり、これに道路巡回工等の費用や諸経費等を加えた本件工事の工事費は計1,040,249,229円となることから、事務所が請負人に支払った工事費1,053,642,700円はこれに比べて13,393,471円が過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事務所において、総価契約単価合意方式で契約を締結することにより実施した本件工事について、本件合意単価を用いることが適当かどうか工事の実態を踏まえて確認し、新たに算定した単価を用いるなどして契約変更を行う必要があることについての認識が欠けていたことなどによると認められる。