(3件 不当と認める国庫補助金 44,249,175円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費 国庫補助対象事業費 |
左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費 国庫補助対象事業費 |
不当と認める国庫補助金等相当額 |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
| (192) | 広島県 |
広島県 |
防災・安全交付金(砂防) |
元~4 | 202,532 (197,635) |
98,334 | 4,259 (4,259) |
2,119 |
| (193) | 福岡県 |
福岡県 |
社会資本整備総合交付金(広域連携)等 |
3~5 | 114,929 (75,185) |
34,060 | 16,654 (16,336) |
7,386 |
| (192)(193)の計 | 317,461 (272,821) |
132,394 | 20,913 (20,595) |
9,505 | ||||
2県は、道路を拡幅するために取り壊した水路の復旧、林道に隣接する地山を掘削して土砂で埋め戻した法面の保護等のために、柳川市三橋町江曲(えまがり)地内、府中市木野山町地内等において、コンクリートブロック積工、コンクリートえん堤工等を実施している。
このうちコンクリートブロック積工について、福岡県は水路の護岸としてブロック積擁壁を、広島県は下段のブロック積擁壁と上段のブロック積擁壁とで構成される二段の多段ブロック積擁壁をそれぞれ築造している(参考図1及び2参照)。
2県は、本件擁壁の設計を「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づいて行うこととしている。そして、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図書、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。
指針等によれば、擁壁の設計に当たっては、自重、載荷重、土圧等の荷重を考慮して、滑動、転倒及び基礎地盤の支持力に対する安定計算等を行うこととされている。このうち、滑動に対する安定については、擁壁に作用する滑動力と滑動に対する抵抗力とを比べ所定の安全率を有することを、転倒に対する安定については、擁壁底面に作用する荷重の合力の作用位置が許容範囲内にあることを、基礎地盤の支持力に対する安定については、擁壁底面における鉛直地盤反力度(注1)が基礎地盤の許容鉛直支持力度を超えないことをそれぞれ照査することとされている。
また、滑動に対する安定計算等においては、擁壁の前面地盤が埋め戻される部分となり、流水による洗掘等により取り除かれるおそれがあることなどから、通常、滑動に対する抵抗力として擁壁の前面地盤の受働土圧(注2)を考慮しないことなどとされている。
さらに、多段ブロック積擁壁は、上段のブロック積擁壁からの荷重が下段のブロック積擁壁に作用するなどの悪影響が及ぶため全体の安定に問題があることから、原則として、避けなければならないが、やむを得ず用いる場合は、上段のブロック積擁壁からの荷重の影響を考慮して下段のブロック積擁壁を設計することなどとされている。
ただし、ブロック積擁壁については、指針に示された擁壁の直高と背面勾配の関係表(注3)(以下「関係表」という。)に基づく設計とするのであれば、前記の安定計算等は行わなくてもよいこととされている。
福岡県は、ブロック積擁壁の設計に当たり、擁壁の背面勾配を緩やかにできないなどの現地状況により関係表に示された設計とすることができないことから、滑動、転倒及び基礎地盤の支持力に対する安定計算等を行っていた。しかし、同県は、擁壁の前面地盤が埋め戻される部分となり、洗掘等により取り除かれるおそれがあるのに、滑動に対する抵抗力として前面地盤の受働土圧を考慮するなどして設計していた。
また、広島県は、多段ブロック積擁壁の設計に当たり、上段及び下段それぞれのブロック積擁壁の直高と背面勾配が、関係表に示された設計となることから、安全であるとしていた。しかし、同県は、下段のブロック積擁壁に対して上段のブロック積擁壁からの荷重が及ぶ状況となっていたのに、その影響を考慮して下段のブロック積擁壁の設計を行うなどしていなかった。
そこで、2県が築造したブロック積擁壁について、現地の状況を踏まえて、指針等に基づき安定計算を行ったところ、福岡県のブロック積擁壁及び広島県の多段ブロック積擁壁において、滑動に対する安定についての安全率が許容値を大幅に下回るなどしていた。
したがって、本件ブロック積擁壁等(工事費相当額計20,913,265円、交付対象事業費計20,595,839円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これらに係る交付金相当額計9,505,614円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、福岡県において委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、広島県において指針等の理解が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
福岡県は、令和3年度から5年度までの間に、一般県道高田柳川線の拡幅に伴って、道路に隣接した水路の既設護岸を取り壊し、護岸として新たにブロック積擁壁(右岸及び左岸の上下流部4か所、高さ2.51m~3.56m、延長計33.5m)等を築造する工事を実施していた。
同県は、右岸上流部及び左岸下流部におけるブロック積擁壁の安定計算等に当たり、滑動、転倒及び基礎地盤の支持力に対する安定性について、前面地盤の受働土圧を考慮するなどして設計した成果品に基づき、施工していた。
しかし、現地の状況を確認するなどしたところ、ブロック積擁壁の前面地盤は埋め戻されており、洗掘等のおそれがある状況となっていることから、ブロック積擁壁の安定計算等において、滑動に対する抵抗力として受働土圧を考慮して設計するのは適切とは認められない状況となっていた。また、ブロック積擁壁に生ずる浮力について、水路内の水位2.07mにより計算すべきところ、誤ってブロック積擁壁の前面地盤の高さ0.85mにより計算するなどしていた。
そこで、指針等に基づき、受働土圧を考慮せず、また、水位2.07mにより浮力を計算するなどして、改めてブロック積擁壁の安定計算等を行ったところ、滑動、転倒及び基礎地盤の支持力について、次のとおり安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった(参考図3参照)。
① 滑動に対する安定については、安全率が0.83から1.42までとなって、許容値である1.50を大幅に下回るなどしていた。
② 転倒に対する安定については、ブロック積擁壁に作用する荷重の合力の作用位置が、ブロック積擁壁底面の中心から前面側に0.14mから0.35mまでの位置となり、安全とされる範囲(前面側0.12m~背面側0.12m)を大幅に逸脱するなどしていた。
③ 支持力に対する安定については、ブロック積擁壁の底面における鉛直地盤反力度が40.84kN/m2から43.00kN/m2までとなり、基礎地盤の許容鉛直支持力度31.91kN/m2から32.79kN/m2までを大幅に上回っていた。
したがって、本件ブロック積擁壁(右岸側上流延長14.0m、左岸側下流3.0m、計17.0m)等(工事費相当額16,654,000円、交付対象事業費16,336,574円、交付金相当額7,386,404円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっていた。
護岸としてのブロック積擁壁の概念図(右岸上流部)
多段ブロック積擁壁の概念図
ブロック積擁壁の安定計算等についての概念図(右岸上流部)
| (194) | 福岡県 |
福岡県 |
防災・安全交付金(急傾斜地崩壊対策) |
3~5 | 102,822 (86,990) |
43,495 | 81,867 (69,487) |
34,743 |
|---|
福岡県は、急傾斜地で発生する崩壊土砂から人家等を保全するために、京都郡苅田町大字二崎地内において、擁壁工、落石防護柵工等を実施している。
このうち、擁壁工は、重力式コンクリート擁壁(延長計145.6m、高さ3.5m~4.8m)を築造するものであり、落石防護柵工は、この重力式コンクリート擁壁の上部に支柱を設置し、各支柱間にワイヤーロープ及び金網を取り付けた落石防護柵(延長計144.4m、高さ2.0m)を築造するもので、いずれも急傾斜地からの崩壊土砂を待ち受けて捕捉することを目的としている(以下、重力式コンクリート擁壁、落石防護柵等を合わせて「待受式擁壁」という。)。
同県は、本件待受式擁壁の設計を「崩壊土砂による衝撃力と崩壊土砂量を考慮した待受け擁壁の設計計算事例」(全国地すべりがけ崩れ対策協議会編。以下「基準」という。)等に基づいて行うこととしている。
基準等によれば、待受式擁壁の設計に当たっては、斜面からの崩壊土砂があふれることがないよう、崩壊土砂を十分に捕捉できる空間(以下「ポケット」という。)を擁壁背面に確保することとされている(参考図4参照)。また、崩壊土砂の量について、現地の地質調査等による推定が困難な場合には、基準等において示されている斜面高ごとの崩壊土量と崩壊幅(注4)を参考にして擁壁の単位長さ当たりの崩壊土砂の量(m3/m)(以下「崩壊土砂量」という。)を算出することができるとされている。
同県は、ポケットの容量(以下「土砂捕捉容量」という。)が、崩壊土砂量を上回るよう、斜面下端から待受式擁壁までの必要な距離等を設計図書に明示していたが、着工前に地元住民から要望があったことを踏まえて、待受式擁壁の設置位置を当初の設計時の位置よりも最大1.5m斜面側に移動させる設計変更を行い、これにより請負人に施工させることとしていた。
しかし、同県は、当該設計変更に当たり、当初の設計時に設定した崩壊土砂量を、変更した位置での待受式擁壁の土砂捕捉容量で捕捉できるかどうか検討していなかった。
そこで、本件待受式擁壁について、基準等に基づき設計変更後の土砂捕捉容量を8か所の測点において改めて算定したところ、11.97m3/mから15.82m3/mまでとなっており、7か所の測点で、土砂捕捉容量が当初の設計時に設定した崩壊土砂量15.70m3/mを最大3.73m3/m下回っていた(参考図5参照)。
したがって、本件待受式擁壁(工事費相当額81,867,487円、交付対象事業費69,487,124円)は、設計が適切でなかったため、崩壊土砂量を十分に捕捉できる土砂捕捉容量が確保されておらず、これに係る交付金相当額34,743,561円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、基準等の理解が十分でなかったことなどによると認められる。
待受式擁壁とポケットの概念図
本件待受式擁壁の概念図
| (192)―(194)の計 | 420,283 (359,812) |
175,890 | 102,780 (90,082) |
44,249 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|