• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第9 国土交通省
  • 不当事項
  • 補助金
  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

橋りょうの横変位拘束構造の設計が適切でなかったもの[群馬県](195)(196)


(2件 不当と認める国庫補助金 322,585,038円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(195)
群馬県
群馬県
社会資本整備総合交付金(広域連携)等
平成29~
令和5
659,334
(657,687)
332,928 611,776
(610,276)
310,866
(196)
道路メンテナンス
3、4 44,913
(44,913)
24,702 21,307
(21,307)
11,718
(195)(196)の計 704,247
(702,600)
357,631 633,083
(631,583)
322,585

群馬県は、一般国道299号のバイパス整備に伴い橋りょうを新設するなどのために、多野郡神流町大字神ヶ原(かがはら)地内において、立処橋(たとろはし)の下部構造として橋台2基の築造、上部構造として鋼製箱桁の製作、架設等を実施するとともに、吾妻郡長野原町大字古森地内において、浜岩橋の下部構造として橋台1基の築造を実施している。そして、本件橋りょうは、地震発生時に支承部が破壊された際、上部構造が橋軸直角方向に回転することにより落橋する可能性がある曲線橋である。

同県は、本件橋りょうの設計を「道路橋示方書・同解説」(平成24年版。社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行うこととしている。そして、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。

ア 曲線橋の落橋防止対策

示方書によれば、橋りょうの設計においては、橋りょうの複雑な地震応答等により、上部構造と下部構造との接合部である支承部が破壊された場合でも、上部構造の落下を防止できるように適切な対策を講じなければならないこととされている。そして、橋りょうが曲線橋であって、地震発生時に支承部が破壊された際、上部構造が橋軸直角方向に回転することにより落橋する可能性があると判定される場合には、これを防止するために横変位拘束構造(注1)を設置することとされている。

イ 片持ばりに配置する鉄筋の定着長等

示方書等によれば、コンクリートの中に配置する鉄筋の端部は、鉄筋とコンクリートが一体となって働くように、確実に定着しなければならないこととされている。そして、鉄筋とコンクリートの付着により定着する場合、鉄筋の定着に必要な付着の長さ(以下「定着長」という。)は、鉄筋の径等に基づき算出した長さ(以下「基本定着長」という。)以上とすることとされている。

また、片持ばりと片持ばりを支持する部材(以下「支持部材」という。)との接合部に配置する鉄筋の定着長については、接合部の断面における有効高等に基づき算出した長さだけ支持部材に入った位置から基本定着長を確保するために、これらを合わせた定着長(以下「必要定着長」という。)を確保する必要があるとされている。そして、先端付近に荷重を受けるコーベル(注2)に配置され、引張力を主に受ける鉄筋(以下「引張主鉄筋」という。)の端部は、定着が不十分であるとコーベルの先端付近に荷重がかかった際に破壊が生ずるため、コンクリートとの付着のみにより定着するのではなく、折り曲げて支持部材に定着するなどしなければならないとされている。

同県は、本件橋りょうが、いずれも横変位拘束構造を設置する必要がある曲線橋であることから、橋台の橋座部に、コーベルの構造となっている横変位拘束構造を橋台ごとに1個ずつ設置することとして設計し、これにより施工していた。

しかし、同県がコーベルの構造となっている横変位拘束構造と支持部材との接合部に配置していた鉄筋の定着長(1,000mm~1,120mm)は、必要定着長(1,476mm~2,100mm)に比べて大幅に不足しており、引張主鉄筋の端部が支持部材と確実に定着していない状態になっていた。また、同県は、コーベルの構造となっている横変位拘束構造の引張主鉄筋の端部について、折り曲げて支持部材に定着するなどせずに、横変位拘束構造の先端付近にコンクリートとの付着のみにより定着していた。

したがって、本件橋りょうの橋台に設置した横変位拘束構造は設計が適切でなかったため、橋台、鋼製箱桁等(工事費相当額計633,083,210円、交付等対象事業費計631,583,384円)は、地震発生時において所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金等相当額計322,585,038円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

群馬県は、多野郡神流町大字神ヶ原地内において、平成29年度から令和5年度までの間に、一般国道299号のバイパスの立処橋(橋長146.0m、幅員7.7m~8.2m、2径間)を新設するために、下部構造として橋台2基の築造、上部構造として鋼製箱桁の製作、架設等を実施していた。そして、同県は、立処橋が、横変位拘束構造を設置する必要がある曲線橋であることから、橋台の橋座部に、コーベルの構造となっている横変位拘束構造(橋軸方向650mm、橋軸直角方向1,200mm、高さ800mm)を1個ずつ設置することとして設計し、これにより施工していた(参考図1及び2参照)。

しかし、コーベルの構造となっている横変位拘束構造と支持部材との接合部に配置していた鉄筋の定着長は、のとおり必要定着長に比べて大幅に不足しており、引張主鉄筋の端部が支持部材と確実に定着していない状態になっていた。また、同県は、コーベルの構造となっている横変位拘束構造の引張主鉄筋の端部について、折り曲げて支持部材に定着するなどせずに、横変位拘束構造の先端付近にコンクリートとの付着のみにより定着していた(参考図3参照)。

表 横変位拘束構造と支持部材との接合部に配置していた鉄筋の定着長等

(単位:mm)

鉄筋(注) 定着長(当局設計)
a
基本定着長
b
接合部の断面の
有効高等に基づ
き算出した長さ
c
必要定着長
d=b+c
不足していた定着長
d-a
鉄筋① 1,000 1,000 550 1,550 550
鉄筋② 1,000 1,000 550 1,550 550
鉄筋③ 1,000 1,000 1,100 2,100 1,100
鉄筋④ 1,120 1,000 1,100 2,100 980
  • (注) 「鉄筋①」等は参考図3の各鉄筋に対応している。

したがって、本件橋りょうの橋台に設置した横変位拘束構造は設計が適切でなかったため、橋台2基、鋼製箱桁等(工事費相当額計611,776,210円、交付対象事業費計610,276,384円、交付金相当額計310,866,188円)は、地震発生時において所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

(注1)
横変位拘束構造  支承部が破壊されたときに、橋りょうの構造的要因等によって上部構造が橋軸直角方向に変位することを拘束する構造
(注2)
コーベル  次図のように、はりの高さがはりの長さに比較して大きい片持ばり

コーベルの概念図画像

(参考図1)

立処橋の概念図

(参考図1)立処橋の概念図画像

(参考図2)

横変位拘束構造(立処橋)の概念図

(参考図2)横変位拘束構造(立処橋)の概念図画像

(参考図3)

横変位拘束構造(立処橋)の断面の概念図

(参考図3)横変位拘束構造(立処橋)の断面の概念図画像