• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第9 国土交通省
  • 不当事項
  • 補助金
  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

ボックスカルバートの設計が適切でなかったもの[宮城県](199)


(1件 不当と認める国庫補助金 30,830,894円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(199)
宮城県
宮城県
東日本大震災復興交付金(道路)
元~4 2,247,934
(2,247,934)
1,742,149 39,781
(39,781)
30,830

宮城県は、石巻市大原浜地内において、東日本大震災により被災した主要地方道石巻鮎川線の復旧のために、地盤改良工、ボックスカルバート(以下「カルバート」という。)の築造、盛土工、舗装工等を実施している。

このうち、準用河川中田川が道路下を横断する箇所に築造するカルバートは、全延長43.8m、高さ3.1m、外幅5.9m(内空断面の高さ1.6m、幅4.5m)の現場打ち鉄筋コンクリート構造物として設計し、全延長を第1から第4までのブロックに分けて施工するものである(参考図1及び2参照)。

同県は、本件カルバートの設計を「道路土工 カルバート工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づいて行うこととしている。指針等によれば、基礎工として地盤をセメントにより固結して安定させるセメント安定処理のような剛性の高い地盤改良をカルバートの外幅程度に行い、土被り厚をカルバートの外幅で除した値が1以上となる場合には、鉛直土圧係数(注1)を1.0から割増しして鉛直土圧を計算し、カルバートを構成する部材の応力計算を行うことなどとされている。

(注1)
鉛直土圧係数  カルバートを設計する際に、その上にある盛土の重量を算定するのに用いる係数。カルバート上の盛土とカルバート周辺の盛土には相対変位が生ずることから、カルバート上部の盛土に作用する下向きのせん断力(材を切断しようとする力)を考慮して求められる。

同県は、本件カルバートの設置予定箇所が河川内であったため、近傍でボーリング調査を実施し、施工時に設置予定箇所で平板載荷試験(注2)を行うこととした。そして、本件カルバートのうち第2、第3両ブロック(延長各12.0m、計24.0m)の設計について、ボーリング調査の結果を踏まえて地盤改良を行わないこととし、当該条件の下で、最大土被り厚を8.87m、鉛直土圧係数を1.0として当該両ブロックに作用する鉛直土圧を計算するなどし、本件カルバートを構成する部材の応力計算等を行っていた。その結果、同県は、次のことから、応力計算上安全であるとしていた。

① 頂版下面側及び底版上面側の主鉄筋に生ずる常時(注3)の引張応力度(注4)が、鉄筋の許容引張応力度(注4)を下回った。

② 頂版及び底版において、コンクリートのみにせん断力を負担させると、コンクリートに生ずる常時のせん断応力度(注5)が、コンクリートの許容せん断応力度(注5)を上回った。そこで、斜引張鉄筋(注6)を配置し、コンクリートと斜引張鉄筋に協働してせん断力を負担させることとすると、斜引張鉄筋の断面積が必要斜引張鉄筋断面積(注7)を上回った。

(注2)
平板載荷試験  地盤に設置した直径30cmの平らな載荷板に荷重を加え、この荷重と沈下量の関係から地盤の許容支持力度を求める土質試験
(注3)
常時  地震時等に対応する表現で、土圧等常に作用している荷重及び輪荷重等作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
(注4)
引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注5)
せん断応力度・許容せん断応力度  「せん断応力度」とは、外力が材に作用し、これを切断しようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される条件を「許容せん断応力度」という。
(注6)
斜引張鉄筋  せん断力により材に斜めに生ずる引張力に抵抗するための鉄筋
(注7)
必要斜引張鉄筋断面積  コンクリートと斜引張鉄筋に協働してせん断力を負担させる場合に、斜引張鉄筋に設計上必要とされる断面積

同県は、その後、本件カルバートの築造に当たり設置予定箇所で行った平板載荷試験の結果、地盤反力度(注8)が地盤の許容支持力度を大幅に上回ったことから、基礎工としてセメント安定処理による地盤改良(幅8.1m、深さ2.0m)を行うよう設計を変更し、これにより施工していた(参考図2参照)。

(注8)
地盤反力度  構造物を介して地盤に力を加えたとき、地盤に発生する単位面積当たりの抵抗力をいう。この地盤反力度がその地盤の許容支持力度を下回っていれば、構造物は基礎地盤の支持力に対して安定した状態にあるとされる。

しかし、同県は、設計変更の際に、地盤改良の幅が本件カルバートの外幅程度となっていたのに、鉛直土圧係数の割増しが必要であるか確認していなかった。

そこで、鉛直土圧係数の割増しが必要であるか確認したところ、第2ブロックの最大土被り厚8.84m及び第3ブロックの最大土被り厚8.86mを、本件カルバートの外幅5.9mで除した値は、いずれも1以上となっており、鉛直土圧係数の割増しが必要となっていた。

そして、指針等に基づき割増しを行った鉛直土圧係数1.2により鉛直土圧を求めるなどして、第2、第3両ブロックについて改めて応力計算等を行ったところ、次のとおり、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

① 底版上面側の主鉄筋に生ずる常時の引張応力度が、鉄筋の許容引張応力度を上回っていた(表1参照)。

② 頂版及び底版に配置された斜引張鉄筋の断面積が、いずれも必要斜引張鉄筋断面積を大幅に下回るなどしていた(表2参照)。

表1 主鉄筋に生ずる常時の引張応力度の計算結果

(単位:N/mm2
ブロック 照査位置 主鉄筋に生ずる
常時の引張応力度
鉄筋の
許容引張応力度
第2 底版上面側 178.06 160
第3 底版上面側 178.52 160
  • (注)主鉄筋に生ずる常時の引張応力度が最大であった位置の計算結果を記載している。

表2 斜引張鉄筋の断面積の計算結果

(単位:cm2
ブロック 照査位置 斜引張鉄筋の
断面積
必要斜引張鉄筋
断面積
第2 頂版 2.53 2.96
底版 2.53 4.04
第3 頂版 2.53 2.99
底版 2.53 4.07

したがって、本件カルバートのうち第2、第3両ブロックは、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、第2、第3両ブロック、当該両ブロック上部の盛土工等(工事費相当額39,781,801円(交付対象事業費同額))は、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額30,830,894円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、本件カルバートの基礎に係る地盤改良の設計変更に当たり、鉛直土圧への影響に対する検討が必要であることの認識が欠けていたことなどによると認められる。

(参考図1)

本件カルバートの縦断面図

参考図1 本件カルバートの縦断面図画像

(参考図2)

本件カルバートの横断面図

参考図2 本件カルバートの横断面図画像