• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第9 国土交通省
  • 不当事項
  • 補助金
  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

落石対策工の設計が適切でなかったもの[兵庫県](200)


(1件 不当と認める国庫補助金 9,654,572円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(200)
兵庫県
兵庫県
防災・安全交付金
(道路)
3 116,539
(104,008)
52,004 21,635
(19,309)
9,654

兵庫県は、美方郡香美町香住区訓谷地内において、県道香美久美浜線の防災対策のために、落石対策工等を実施している。

このうち落石対策工は、斜面上方からの落石により道路等に被害が生じないよう、落石を取り込むための開口部(ポケット)を設けたポケット式落石防護網のうち、形状寸法がほぼ定型化している従来型ポケット式落石防護網(以下「防護網」という。)を網高20.0mで延長79.6mにわたり設置するなどしたものである。そして、防護網は、金網に衝突する落石の運動エネルギー(以下「落石エネルギー」という。)を吸収したのち、落石を金網と地山との間に誘導して網裾まで導く構造となっている(参考図参照)。

同県は、落石対策工の設計を「落石対策便覧」(公益社団法人日本道路協会編。以下「便覧」という。)に基づいて行うこととしている。便覧によれば、落石対策工には、斜面内の浮石や転石(以下「浮石等」という。)を除去するなどの対策を行う落石予防工と、落石を斜面の途中等に設置した防護網等の施設で防護する落石防護工の2種類の工法があり、斜面の状況によってはこれらの工法を組み合わせて実施することとされている。そして、落石防護工の一つである防護網は、想定される落石の大きさなどから求められる落石エネルギーを吸収できるように設計することとされており、防護網の安全性の照査は、防護網の可能吸収エネルギー(注1)が落石エネルギーを上回ることを確認することにより行うことなどとされている。

(注1)
可能吸収エネルギー  防護網の金網、横ロープ、支柱及び吊ロープの各部材がそれぞれ吸収するエネルギーと、落石が防護網に衝突した際に両者が一体となって運動することにより減じられるエネルギーを全て足し合わせたもの

同県は、防災対策を要する複数の区間の落石対策工に係る設計業務を一括して設計コンサルタントに委託し、平成25年3月に成果品を検査して受領している。この成果品によれば、複数の区間のうち本件工事区間においては、便覧で定められている浮石等の安定度判定のうち、安定度が最も低い「近い将来必ず滑落すると考えられるもの」又は安定度が2番目に低い「時期は予測できないが、いずれ滑落すると考えられるもの」に該当する浮石等は計14個あるとされていた。そして、これらの浮石等に対する落石対策工として、落石エネルギーが50kJを超える浮石等3個(129kJ、109kJ及び52kJ)を小さく割って除去する落石予防工と、それ以外の落石エネルギーが50kJ以下の浮石等11個を捕捉するための防護網を設置する落石防護工を一体で行うことにより、道路交通の安全を確保する目的が達成できるものとされていた。

同県は、令和3年度に本件工事を発注するに当たり、上記の成果品に基づき、本件工事区間における設計図書を自ら作成していた。そして、設計図書には、落石防護工として、可能吸収エネルギーが72.6kJとなる防護網(注2)を設置することを記載し、これに基づき施工していた。

(注2)
可能吸収エネルギーが72.6kJの防護網は、現場条件に合う最小の規格であり、当該防護網を用いれば、落石エネルギーが50kJを超える浮石等3個のうち、52kJのものについては捕捉可能となる。

しかし、成果品には、落石防護工と一体で行うこととされていた落石予防工として、落石エネルギーが50kJを超える浮石等3個の除去について記載されていたのに、同県は設計図書に当該落石予防工を記載していなかった。このため、現地に除去されずに残された浮石等3個のうち2個の落石エネルギー(129kJ及び109kJ)が、本件工事で設置した防護網の可能吸収エネルギー(72.6kJ)を大幅に上回っていることから、当該浮石等がそれぞれ落下した場合、防護網が落石エネルギーを吸収できない状態となっていた。

したがって、本件落石対策工(工事費相当額21,635,542円、交付対象事業費19,309,145円)は、設計が適切でなかったため、落石防護工と一体として行う必要がある落石予防工が行われていないことから、防護網が落石エネルギーを吸収できずに破壊され、道路等に被害が生ずるおそれがある状態となっていて、これに係る交付金相当額9,654,572円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、本件工事の設計図書を作成する際に、落石防護工と落石予防工を一体として行うものとされている設計業務の成果品の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

参考図

落石対策工の概念図

参考図 落石対策工の概念図画像