• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第9 国土交通省
  • 不当事項
  • 補助金
  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

側壁護岸の設計が適切でなかったもの[東京都](201)


(1件 不当と認める国庫補助金 6,826,678円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(201)
東京都
東京都
防災・安全交付金
(砂防)
3、4 74,534
(74,534)
27,900 18,237
(18,237)
6,826

東京都は、西多摩郡奥多摩町棚澤地内において、土砂災害警戒区域内にある道路、鉄道等を保全する砂防事業として、コンクリート工、ブロック積工等を実施している。

このうちコンクリート工は、砂防えん堤本体からの落下水、落下砂れきによる基礎地盤の洗掘及び下流の河床低下の防止のために、左岸側及び右岸側にそれぞれ側壁護岸(高さ3.25m~7.0m、延長計26.47m)等を、地山を掘削して土砂で埋め戻すなどして築造するものである。また、ブロック積工は、地山を掘削して土砂で埋め戻した後の法面を保護するために、左岸側及び右岸側の側壁護岸背面の上段にそれぞれブロック積擁壁(高さ0.8m~4.99m、延長計14.81m)を築造するものである(参考図1参照)。

東京都は、本件工事の設計を「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編)、「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編。以下、これらを合わせて「基準」という。)等に基づいて行うこととしている。

基準等によれば、側壁護岸は、側壁護岸が受け持つ土圧に対して安全な構造とするなどとされており、安全な構造であるかの照査に用いる土圧については、側壁護岸背面に生ずる土圧(以下「主働土圧」という。)を用いることなどとされている。主働土圧については、土の単位体積重量、粘着力、せん断抵抗角等の土の設計諸定数を設定して算定することとされており、土の単位体積重量が大きくなると、また、粘着力やせん断抵抗角が小さくなると、算定される主働土圧は大きくなる(参考図2参照)。そして、滑動及び転倒に対する側壁護岸の安定性の照査については、算定された主働土圧を用いるなどして行うこととされている。東京都は、側壁護岸の設計に当たって、側壁護岸及びブロック積擁壁を施工する際に使用する埋戻し土(以下「埋戻し土」という。)について、当初、セメント等で改良した改良土の購入を想定し、土の設計諸定数については、東京都が過去に使用した改良土の実績値等を参考に設定していた。そして、設定した土の設計諸定数を用いて主働土圧を算定するなどして滑動及び転倒に対する側壁護岸の安定性について照査したところ、安定計算上安全であるとし、これにより請負人に側壁護岸を施工させることにしていた。

本件工事の特記仕様書によれば、埋戻し土に係る土の設計諸定数については、土質試験を実施した上で設定することなどとされている。請負人は、本件工事の着工後に、埋戻し土について、東京都が当初設計で想定していた改良土ではなく、本件工事で発生した建設発生土(以下「建設発生土」という。)を使用することの可否を確認するために、建設発生土について土質試験を実施した。その上で、請負人は、その試験結果を東京都へ通知したところ、東京都は、せん断抵抗角が当初設計より大きいことなどから安全であるとして、建設発生土を使用して側壁護岸及びブロック積擁壁を施工するなどの設計変更を行い、これにより請負人に施工させていた。

しかし、請負人が東京都へ通知した土質試験結果の土の設計諸定数には、せん断抵抗角以外に土の単位体積重量や粘着力等も示されていた。そして、これらの数値を当初設計で想定されていた改良土の設計諸定数と比較すると、せん断抵抗角は大きくなっているものの、土の単位体積重量が大きくなり、粘着力が小さくなっていた。そのため、側壁護岸が受け持つ主働土圧は、当初設計よりも当該土質試験結果に基づく土の設計諸定数を用いて算定する方が大きくなる可能性があった。

そこで、改めて、側壁護岸について、建設発生土の土質試験結果に基づく土の設計諸定数を用いて算定した主働土圧を用いるなどして滑動及び転倒に対する安定性について照査したところ、次のとおり、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった(参考図3参照)。

① 滑動に対する安定については、左岸側及び右岸側の側壁護岸において、安全率が1.08及び1.18となり、許容値である1.5を大幅に下回っていた。

② 転倒に対する安定については、左岸側の側壁護岸において、側壁護岸に作用する主働土圧による水平荷重及び側壁護岸の自重等による鉛直荷重の合力の作用位置が、側壁護岸底面(幅1.88m)中央の位置から側壁護岸前面側に0.12mの位置となり、転倒に対して安全とされる範囲を逸脱していた。

したがって、側壁護岸等(工事費相当額18,237,484円、交付対象事業費同額)については、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る交付金相当額6,826,678円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、東京都において、改良土に代えて建設発生土を使用することとする設計変更を行うに当たり、土の設計諸定数の変更による主働土圧への影響に対する検討が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1)

工事の概念図

参考図1 工事の概念図画像

(参考図2)

主働土圧の概念図

参考図2 主働土圧の概念図画像

(参考図3)

左岸側の側壁護岸の安定計算結果

参考図3 左岸側の側壁護岸の安定計算結果画像