• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第9 国土交通省
  • 不当事項
  • 補助金
  • (7)計画が適切でなかったもの

落石防護柵工の実施に当たり、道路に到達するおそれがある浮石等の全てを対象として計画されていなかったため、車両等を落石の被害から防護できない状態となっていたもの[長崎県](216)


(1件 不当と認める国庫補助金 49,614,247円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(216)
長崎県
雲仙市
社会資本整備総合交付金(道路)
2~4 319,456
(306,337)
171,548 91,776
(88,597)
49,614

雲仙市は、雲仙市小浜町山領地内等において、大規模災害等で一般国道57号が不通となった場合に迂(う)回路として機能する市道を新たに整備するために、道路土工、落石防護柵工等を実施している。

このうち落石防護柵工は、落石対策の一環として、新たに整備する道路を通行する車両、歩行者等を落石の被害から防護することを目的として、当該道路に沿って二つの工区の延長計112.0m(2号―2工区72.0m、3号工区40.0m)のリングネット落石防護柵(以下「防護柵」という。)を設置するものである。

同市は、防護柵の設計を「落石対策便覧」(公益社団法人日本道路協会編。以下「便覧」という。)等に基づいて行うこととしている。

便覧によれば、落石対策を計画する際には、道路への到達範囲等を考慮して適切な対策施設の配置計画等を行う必要があるとされている。落石の到達範囲については、現地の地形や地表面の状況、植生の状況等を十分に把握した上で、落石シミュレーションによる方法や石が斜面を落下していく際の広がりを最大で45度程度とすることなどにより推定することとされていて、一般的には、これを参考にして防護柵の設置延長を設定してよいとされている。そして、落石対策の対象となる落石群を設定し、防護柵は、全ての落石に対して必要な性能を確保するように設計する必要があり、到達範囲については、対象となる落石全てを考慮に入れて設定することとされている。

同市は、落石対策を計画する際に、前記二つの工区において、浮石や転石(以下「浮石等」という。)計26個(径0.8m~2.2m)を落石対策の対象となる落石群として設定していた。そして、これらの浮石等について、便覧で定められている安定度判定を行い、安定度が最も低い「近い将来必ず滑落すると考えられるもの」(当該安定度に該当する個数2個)、2番目に低い「時期は予測できないが、いずれ滑落すると考えられるもの」(同19個)又は3番目に低い「滑落する可能性が大きい」(同5個)に該当するとしていた。また、浮石等が斜面を落下していく際の広がりについては、便覧に基づき45度と想定していた(以下、浮石等が45度の広がりで落下する範囲を「落下想定範囲」という。)。

しかし、設計図面で浮石等の落下想定範囲に防護柵が設置されているか確認したところ、二つの工区の26個の浮石等のうち11個(径1.0m~2.2m)の落下想定範囲においては防護柵が設置されていた(以下、これらの浮石等を「防護柵有浮石等」という。)が、残りの15個(径0.8m~2.0m)の落下想定範囲の全部又は一部においては防護柵が設置されていなかった(以下、これらの浮石等を「防護柵無浮石等」という。)。

同市は、平成24年度に設計コンサルタントに委託して納品を受けた成果品に基づき前記のとおり設計をしていたが、防護柵無浮石等の落下想定範囲に防護柵を設置しないこととした根拠については、資料が残っておらず不明であった。そして、防護柵無浮石等が道路へ到達するおそれがあるかについて、現地の状況を確認したところ、浮石等の状態は成果品の内容と比較して変化は見られなかった。また、防護柵有浮石等と防護柵無浮石等のそれぞれの落下想定範囲において、落石の挙動に影響を与える植生や斜面の勾配の状況等に特に違いはなかった。

そこで、防護柵無浮石等について、本院の会計実地検査後に、同市が実際の植生や斜面の勾配等を考慮した落石シミュレーションを実施したところ、道路に到達するおそれがある結果となった。

以上の結果を踏まえると、浮石等の落下想定範囲の全て(二つの工区の延長計248.2m)に防護柵を設置する必要があり、本件工事で設置した延長112.0mの防護柵は、計136.2m(2号―2工区52.8m、3号工区83.4m(起点側29.2m及び終点側54.2m))不足していると認められ、防護柵無浮石等15個が道路に到達するおそれがある状態(道路範囲2号―2工区63.0m、3号工区93.0m(起点側35.0m及び終点側58.0m)の計156.0m)となっていた(参考図参照)。

したがって、本件工事で設置された防護柵(工事費相当額計91,776,223円、交付対象事業費計88,597,314円)は、道路に到達するおそれがある浮石等の全てを対象として計画されていなかったことから、落石群に対応するための設置延長が確保されていない状態となっていて、当該道路を通行する車両、歩行者等を落石の被害から防護するという工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額計49,614,247円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、便覧等の理解が十分でなく、落石の到達範囲を考慮した適切な落石対策を計画し防護柵の設計を行うことの必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められる。

参考図

2号―2工区の防護柵の概念図

2号―2工区の防護柵の概念図画像

3号工区の防護柵の概念図

3号工区の防護柵の概念図画像