国土交通省は、「港湾機能高度化施設整備費補助交付要綱」(平成17年国港管第1号。以下「補助要綱」という。)に基づき、港湾の機能の高度化を図るために、LNGバンカリング拠点形成支援施設の整備事業(以下「LNGバンカリング整備事業」という。)等を実施する民間事業者等に対して、港湾機能高度化施設整備費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
LNGバンカリング整備事業は、船舶の排出ガス規制強化に伴い、LNGを燃料とする船舶の導入が世界的に進む中、これらの船舶の寄港の増加による我が国港湾の国際競争力の強化を目的として、国際戦略港湾、国際拠点港湾等において、LNGを燃料とする船舶への燃料供給の用に供する船舶(以下「LNGバンカリング船」という。)及びLNGバンカリング船にLNGを供給するための施設(以下「LNG供給施設」といい、LNGバンカリング船と合わせて「LNGバンカリング船等」という。)の整備を行うものである。
補助要綱によれば、LNGバンカリング整備事業の補助対象経費は、LNGバンカリング船等の整備に係る本工事費、附帯設備費、附帯工事費、測量設計費、用地費及び補償費とされており、補助金の額は、補助対象経費の3分の1以内とされている。
国土交通省は、LNGバンカリング船等を整備する民間事業者等を対象に公募の都度、港湾機能高度化施設整備事業(LNGバンカリング拠点形成支援施設)募集要領(以下「募集要領」という。)を示している。そして、募集要領によれば、LNGバンカリング船の整備に係る補助対象経費は、契約船価(注1)を含む総船価(注2)とし、会計基準及び税法上資産計上の対象と認められる経費であって、実際に資産計上するものに限ること、新たに船舶を建造する場合、本事業のために必要のない船舶の設備等の整備に係る経費は除くこと、LNG供給施設の整備に係る補助対象経費は、本工事費、附帯工事費及び測量設計費とすることなどとされている。
また、事業主体は、補助事業が完了したときは、実績報告書等を地方整備局等に提出すること、地方整備局等は、実績報告書等の内容を審査するなどし、補助金の額の確定を行うこととなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、LNGバンカリング整備事業に係る補助金の交付が補助要綱等に基づき適切に行われているかなどに着眼して、3事業主体(注3)が実施し、令和2年度から5年度までの間に完了したLNGバンカリング船の整備3件(補助対象事業費計122億6273万余円、補助金交付額計40億8757万余円)及び株式会社JERA(平成31年4月1日に中部電力株式会社から当該事業を承継)が実施し、令和2年度に完了したLNG供給施設の整備1件(補助対象事業費6億6170万円、補助金交付額2億2056万余円)の計4件(補助対象事業費計129億2443万余円、補助金交付額計43億0814万余円)を対象に検査した。検査に当たっては、国土交通本省、3地方整備局(注4)及び4事業主体において、実績報告書、補助対象経費の内訳に係る書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、LNGバンカリング船の整備を実施した3事業主体のうち2事業主体(注5)は、船舶建造契約に係る工事費、船舶建造に関係するその他追加工事費等のほか、交換用のLNG移送管等の予備品の購入費、乗組員のユニフォーム等の消耗品の購入費、洗濯機等の備品の購入費、船員のトレーニング費等を補助対象経費に含めて、国土交通省から補助金の交付を受けていた。
また、LNG供給施設の整備を実施した株式会社JERAは、LNG供給施設の整備に係る工事費等のほか、交換用の安全弁等の予備品の購入費を補助対象経費に含めて、国土交通省から補助金の交付を受けていた。
補助要綱によれば、LNGバンカリング整備事業の補助対象経費は、LNGバンカリング船等の整備に係る本工事費、附帯設備費、附帯工事費、測量設計費、用地費及び補償費とされており、これらの費目は、船舶建造等に係る工事等に要する費用である。
一方、2事業主体が補助対象経費に計上していた経費のうち、予備品の購入費、乗組員のユニフォーム等の船舶の整備で費消されない消耗品の購入費、洗濯機等の船舶と一体不可分的な機能を有していない備品の購入費、船員のトレーニング費、船舶建造中の支払利息、船舶の登記費等計9252万余円(補助金相当額計3084万余円)及び株式会社JERAが補助対象経費に計上していた予備品の購入費計281万余円(補助金相当額計93万余円)、合計9533万余円(補助金相当額合計3177万余円)は、船舶建造等に係る工事等に要する費用ではないと思料された(以下、これらの経費を「予備品等に係る経費」という。)。
2事業主体に対して、予備品等に係る経費を補助対象経費に含めた理由を確認したところ、募集要領において、LNGバンカリング船の整備に係る補助対象経費は、契約船価を含む総船価とし、会計基準及び税法上資産計上の対象と認められる経費であって、実際に資産計上するものに限る旨が記載されていて、予備品等に係る経費を総船価として資産計上していることから、2地方整備局(注6)と協議した上で、補助対象経費に含めたとのことであった。
また、株式会社JERAに対して、予備品等に係る経費を補助対象経費に含めた理由を確認したところ、交換用の安全弁等はLNG供給施設を安定的に供用するためにあらかじめ備えておく必要があると考えたことなどから、補助対象経費に含めたとのことであった。
そこで、国土交通本省に対して、予備品等に係る経費が補助対象経費に含まれるか確認したところ、当該経費は、船舶建造等に係る工事等に要する費用に当たらず、補助要綱に定める本工事費等に該当しないことから、補助対象経費として認められないとしていた。また、同省は、募集要領において、LNGバンカリング船の整備に係る補助対象経費は、契約船価を含む総船価とし、会計基準及び税法上資産計上の対象と認められる経費であって、実際に資産計上するものに限る旨を記載していることについて、事業主体に対して補助要綱における補助対象経費の理解に資するために記載しているとしていたが、当該記載は、総船価に含めて資産計上する経費の全てが補助対象経費に該当するとの誤解を生じさせるものであった。
したがって、LNGバンカリング整備事業において、補助対象経費として認められない予備品等に係る経費を補助対象経費に含めて補助金が交付されていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、2地方整備局においてLNGバンカリング整備事業の補助対象経費についての理解が十分でなかったことにもよるが、国土交通本省において補助要綱等にLNGバンカリング整備事業の補助対象経費として認められない経費を明確に示していなかったこと、募集要領に総船価に含めて資産計上する経費の全てがLNGバンカリング船の整備に係る補助対象経費に該当するとの誤解を生じさせる記載をしていたことなどによると認められた。
本院の指摘に基づき、国土交通本省は、7年7月に次のような処置を講じた。
ア 補助要綱を改正して、LNGバンカリング整備事業の補助対象経費として認められない経費を明確に示した。また、今後実施する公募の募集要領において、誤解を生じさせる記載を削除した上で、補助対象経費として認められない予備品等に係る経費を明確に示すこととするなどした。
イ 地方整備局等に対して事務連絡を発し、事業主体にLNGバンカリング整備事業の補助対象経費を明確に示すこと、アの改正後の補助要綱に基づいて補助対象経費の審査を適切に行うことなどを周知徹底した。