国土交通省は、航空法(昭和27年法律第231号)等に基づき同省が設置して管理している空港(以下「国管理空港」という。)において航空機事故等が発生した際に直ちに必要な措置を講ずるなどすることとしている。そして、東京国際空港等11空港(注1)(以下「11空港」という。)において、航空機事故等が発生した際における人命救助を目的とした迅速かつ円滑な消防活動等を行う消防業務(以下「消防業務」という。)及び救急医療活動等を行う救急医療業務(以下「救急医療業務」という。)並びに同省が管理する区域における保安の維持等を図るための警備業務(以下「警備業務」という。)を実施している。また、国土交通省は、防衛省等が設置して管理している飛行場で、国民が利用するなど公共の用に供するためのものとされた札幌飛行場等7飛行場(注2)(以下「7飛行場」といい、11空港と合わせて「18空港等」という。)において、救急医療業務及び警備業務を実施している。
そして、東京、大阪両航空局(以下「2航空局」という。)は、11空港においては消防業務と救急医療業務又は警備業務の2業務を、7飛行場においては救急医療業務と警備業務の2業務を、それぞれ請負契約を締結した民間事業者に実施させている(以下、これらの業務を「空港消防等業務」といい、空港消防等業務を実施する民間事業者を「請負人」という。)。
空港消防等業務を実施するための要員は、請負契約の履行に関する運営管理を行う現場責任者のほかに、指令卓で空港の運用状況等を常時確認するなどする職員(以下「リーダー」という。)及び事故現場に出動するなどして空港消防等業務を行う職員(以下「作業員」といい、リーダーと合わせて「作業員等」という。)とに区分されている。
国土交通省は、国際民間航空条約(昭和28年条約第21号)の附属書等に準拠して、国管理空港等で発生する航空機事故等に備えて人命救助等を目的とした消火救難機材の配備等の基準となる「空港等における消火救難体制の整備基準」(平成17年国空管第84号。以下「整備基準」という。)を策定している。
国土交通本省は、整備基準に基づくなどして、請負契約標準仕様書(以下「標準仕様書」という。)において、空港消防等業務における作業員等の配置人員、業務提供時間等を定めており、作業員等の配置人員については、いずれも業務提供時間中は常に配置され業務を行う必要があるとしている(図表1参照)。
図表1 標準仕様書で定められている作業員等の配置人員及び業務提供時間
| 項目 | リーダー | 作業員 | ||
|---|---|---|---|---|
| 消防業務 | 救急医療業務 | 警備業務 | ||
| 配置人員 | 1人 | 請負人に使用させる消防車両の台数×2人 | 1人 | 2人 |
| 1日当たりの業務提供時間 | 11.5時間~24時間 (各空港等の運用時間) |
24時間 | ||
標準仕様書等によれば、請負人は、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の関係法令等を遵守することとされており、同法によれば、使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないこととされている。そして、国土交通本省は、業務提供時間中は、常に標準仕様書等で定める配置人員と同数の作業員等を配置して業務を行う必要があることから、配置された作業員等が休憩時間を取得する際は代替要員を配置する必要があるとしている。
2航空局は、空港消防等業務に係る請負契約の予定価格について、空港消防等業務請負積算要領(昭和59年空管第83号)に基づき積算しており、予定価格の基となる積算価格のうち、作業員等の人件費等については、標準仕様書等で定められている配置人員と同数の作業員等が、業務提供時間中に常に配置され業務を実施することとして算出されている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、有効性等の観点から、航空機事故等が発生した際における人命救助を目的とするなどした空港消防等業務の実施体制は整備基準等に基づき適切に執られているかなどに着眼して、令和4年度から6年度までに実施された2航空局の18空港等における空港消防等業務に係る請負契約17件、契約金額計66億2714万余円を対象として、2航空局において、勤務実績表等の書類を確認するとともに、請負人において、空港消防等業務の実施状況を聴取するなどして会計実地検査を行った。また、国土交通本省において、仕様書の基となった標準仕様書の趣旨や整備基準等の内容を聴取するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
2航空局は、18空港等の空港消防等業務に係る請負契約の仕様書において、標準仕様書で示されている配置人員と同数の作業員等を業務提供時間中に配置するなどして請負人に空港消防等業務を実施させることとしていた(図表2参照)。
図表2 仕様書で定められていた作業員等の配置人員及び業務提供時間
| 空港等名 | 作業員等の配置人員 | 1日当たりの業務提供時間 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リーダー | 作業員 | リーダー | 作業員 | ||||
| 消防業務 | 救急医療業務 | 警備業務 | 消防業務、 救急医療 業務 |
警備業務 | |||
| 東京国際空港 | ― | 8 | 1 | ― | 24 | ― | |
| 新潟空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 14 | ― | |
| 松山空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 15 | ― | |
| 高知空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 14 | ― | |
| 北九州空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 24 | ― | |
| 長崎空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 15 | ― | |
| 大分空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 15 | ― | |
| 宮崎空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 14 | ― | |
| 鹿児島空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 15 | ― | |
| 那覇空港 | 1 | 6 | 1 | ― | 24 | ― | |
| 八尾空港 | ― | 2 | ― | 2 | 11.5 | 24 | |
| 札幌飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 13 | 24 | |
| 三沢飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 11.5 | 24 | |
| 百里飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 13.5 | 24 | |
| 小松飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 15 | 24 | |
| 美保飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 15 | 24 | |
| 岩国飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 15 | 24 | |
| 徳島飛行場 | ― | ― | 1 | 2 | 14.5 | 24 | |
そこで、18空港等の請負契約17件における作業員等の業務の実施状況について、勤務実績表を確認したところ、仕様書に示されている配置人員と同数の作業員等を業務提供時間に配置したとされていた。
しかし、各業務の実施状況について、請負人から説明を徴するなどして確認したところ、18空港等の全てにおいて、実際には、作業員等が業務提供時間中に労働基準法に基づく休憩時間を取得していた。そして、標準仕様書で求められている作業員等の配置人員を業務提供時間中に常に満たすためには、作業員等の休憩時間に業務を行う代替要員を配置する必要があるのに、18空港等の全てにおいて、作業員の休憩時間に代替要員は配置されていなかった。また、リーダーの休憩時間については、配置された作業員のうちリーダーの業務を実施する能力を有する者が代わりにリーダーの業務を実施していたが、作業員の数がその分減少する状況となっていた。上記の状況を整理すると、図表3のとおりである。
そして、請負契約17件において、作業員の休憩時間等に代替要員が配置されていなかったため、その間は、実際に勤務している作業員が仕様書に定められている配置人員よりも少ない人数となっていて、航空機事故等が発生した際における人命救助を目的とするなどした空港消防等業務を適切に実施する体制が執られていなかった(空港消防等業務を適切に実施する体制が執られていなかった時間に係る契約金額相当額4年度2億8751万余円、5年度2億9197万余円、6年度3億0434万余円、計8億8384万余円)。
請負人によれば、休憩時間に作業員の代替要員を配置していない理由について、仕様書において休憩時間に業務を行う代替要員を配置する必要があることが明確に記載されていなかったため、代替要員の配置は求められていないと認識していたとのことであった。そして、2航空局によれば、仕様書において作業員等の休憩時間に業務を行う代替要員を配置する必要があることを明確に記載していない理由について、標準仕様書においてその旨が明確に記載されていなかったため、代替要員を配置する必要があることを認識していなかったとのことであった。
このように、2航空局において、国管理空港等における空港消防等業務の実施に当たり、作業員等が業務提供時間中に休憩時間を取得する際は代替要員を配置する必要があることを仕様書に明確に記載していなかったため、休憩時間に代替要員が配置されておらず、空港消防等業務を整備基準等に基づき適切に実施する体制が執られていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、2航空局において、空港消防等業務に係る請負契約の仕様書の基となる標準仕様書について国土交通本省への確認が十分でなかったことにもよるが、同本省において、作業員等が業務提供時間中に休憩時間を取得する際は代替要員を配置する必要があることを標準仕様書に明確に記載する必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められた。
本院の指摘に基づき、国土交通本省は、7年8月に標準仕様書を改正して、配置された作業員等が業務提供時間中に休憩時間を取得する際は代替要員を配置する必要があることを標準仕様書に明確に記載した。そして、8年度以降に請負契約を締結して実施する空港消防等業務が整備基準等に基づき適切に行われるよう、7年8月に2航空局に対して通知を発して、改正された標準仕様書を基に仕様書の作成を行うとともに、入札公告等の際に入札参加者に対して改正された標準仕様書の内容を明確に伝えるよう周知する処置を講じた。