近畿地方環境事務所(以下「事務所」という。)は、令和4年度に、国立公園等整備事業として鳥取砂丘西側地域にビジターセンター(以下「センター」という。)を新設するに当たり、施行委任事業(注)として工事を実施することとして、環境省の支出負担行為を担当する鳥取県に対して、事業内容、事業費の使途等に係る承認を与えている。
鳥取県は、当該承認を受けて、センターの建設に係る工事(以下「建設工事」という。)の一環として、冷暖房設備、給排水設備等の機械設備を整備する工事(以下「機械設備工事」という。)及び電灯設備等の電気設備を整備する工事(以下「電気設備工事」という。)について、それぞれ契約額17,985,000円、16,098,500円、計34,083,500円で契約を締結している。
鳥取県は、環境省から支出の決定に関する事務を委任されており、これらの契約について、契約額と同額を契約の相手方に支出している。また、同県は、機械設備工事及び電気設備工事を含む全ての施行委任事業が完了した後に、事務所に対して完了報告書を提出している。
事務所は、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」(昭和42年閣議決定)、「公共補償基準要綱の運用申し合せ」(昭和42年用地対策連絡会。以下、これらを合わせて「公共補償基準」という。)等に基づき、公共補償を実施することとしている。
公共補償基準によれば、公共補償は、金銭の支払をもってするものとされている。ただし、公共事業に係る工事の施行上、技術的、経済的に合理的と認められる場合等においては、公共事業の起業者が代替の公共施設等を建設して既存公共施設等の機能を回復することなどにより行うことができるとされている。そして、既存公共施設等の機能回復が代替の公共施設等を建設することにより行われる場合においては、当該公共施設等を建設するために必要な費用から、既存公共施設等の機能廃止の時までの財産価値の減耗分(以下「減耗分」という。)を控除するなどした額を補償することとされている。
また、当該公共施設等を建設するために必要な費用は、原則として、既存公共施設等と同等の公共施設等を建設することにより機能回復を行う費用(以下「復成価格」という。)とされ、減耗分については、既存公共施設等の復成価格に基づき、経過年数、残価率等を考慮して算定することとされている。ただし、地方公共団体等が管理する既存公共施設等であって、やむを得ないと認められるときは、その限度において、減耗分の全部又は一部を控除しないことができるとされており、当該やむを得ないと認められるときとは、当該公共施設等に係る決算が継続的に赤字状況にあるなど、減耗分相当額を調達することが極めて困難な場合等とされている。
上記の「当該公共施設等に係る決算」とは特別会計等の個々の決算のことであり、一般会計に属する公共施設等の場合は、当該公共施設自体に収支の概念がないため、原則として減耗分を控除すべきではあるものの、当該地方公共団体の財政状況等個々の事情を総合的に考慮し、減耗分相当額を調達することが極めて困難な場合には、減耗分の全部又は一部を控除しないことができることになっている。
本院は、合規性等の観点から、公共補償を行う場合の減耗分の取扱いは公共補償基準に基づき適切に行われているかなどに着眼して、機械設備工事及び電気設備工事を対象として、鳥取県において契約関係書類等を確認するとともに、事務所において鳥取県との協議や減耗分の取扱いの状況を聴取するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
事務所は、センターの新設に当たり、国立公園の景観を確保するために、鳥取県が平成11年3月に設置した既設の排水ポンプ(以下「既設ポンプ」という。)等が所在する位置にセンターを建設することとしていた。そして、同県に対する公共補償として、既設ポンプ等を代替する新しい排水ポンプ等を設置する工事が必要となったことから、機械設備工事及び電気設備工事の契約額には、既設ポンプ等の復成価格計5,143,959円(機械設備工事分4,913,716円、電気設備工事分230,243円)が含まれていた。
事務所は、建設工事に先立って行われた基本・実施設計業務における打合せの際に、国立公園の景観を確保するという環境省の方針のために既設ポンプ等を取り壊して、その位置にセンターを建設することは、公共補償基準に規定されている減耗分の全部又は一部を控除しないことができるやむを得ないと認められるときに該当するとして、鳥取県に負担が生じないよう、既設ポンプ等の復成価格から減耗分を控除せずに、復成価格の全額を補償することとし、その旨を同県に伝えていた。
これを踏まえて、鳥取県は、機械設備工事及び電気設備工事の実施に当たり、既設ポンプ等の復成価格から減耗分を控除せずに、復成価格の全額を国の負担とした施行承認申請書を事務所に提出して、事務所は、同申請書について承認を与えていた。
しかし、公共補償の対象とした既設ポンプ等は、鳥取県の一般会計に属する公共施設であり当該公共施設自体に収支の概念がない上、同県の財政状況等を考慮しても、本件公共補償は、減耗分相当額を調達することが極めて困難な場合等、減耗分の全部又は一部を控除しないことができるやむを得ないと認められるときに該当せず、事務所は、復成価格から減耗分を控除した額を補償することとする必要があった。なお、景観を確保するという方針のために既設ポンプ等を取り壊して、その位置にセンターを建設することは、本件公共補償が必要となる理由であり、減耗分相当額を調達することが極めて困難な場合等に該当するか否かとは関係がない。
したがって、国の負担額については、既設ポンプ等の復成価格5,143,959円から経過年数、残価率等を考慮して算定した減耗分相当額計3,171,105円(機械設備工事分3,029,167円、電気設備工事分141,938円)を控除した額とする必要があり、これを控除していなかったため減耗分相当額3,171,105円が過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事務所において、公共補償の実施に当たり、公共補償基準における減耗分の取扱いについての理解が十分でなかったことなどによると認められる。