【適宜の処置及び改善の処置を要求したものの全文】
国立公園における公園施設の管理について
(令和7年10月23日付け 環境大臣宛て)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。
記
貴省は、自然公園法(昭和32年法律第161号)等に基づき、国立公園の管理等を行っている。国立公園は、我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地であって、環境大臣が同法等に基づき区域を定めて指定したもので、その数は令和5年度末において34国立公園となっている。そして、その総面積は計約219万haと広大なもので、国有地のほか、公有地、私有地等が含まれている。
貴省は、国立公園内の国有地、公有地等に管理事務所、ビジターセンター等の建物や、橋りょう、転落防止柵等の工作物を設置しており、また、地方公共団体等は、環境大臣に協議するなどして、国立公園内の国有地、公有地等に建物、工作物等を設置していて、広大な国立公園内には、貴省が設置した建物、工作物等や、地方公共団体等が設置した建物、工作物等が多数設置されている。
貴省は、自らが国立公園内に設置するなどした建物、工作物等について、国有財産法(昭和23年法律第73号)、環境省所管国有財産取扱規則(平成13年環境省訓令第30号)等に基づき、国立公園を所掌する各地方環境事務所の長(以下「所長」という。)に国有財産として管理させている。
国有財産法等によれば、所長は、国有財産の現状を常に把握し、管理等を適正に行わなければならないこととされており、国有財産の区分及び種目、所在、数量等を記載した台帳(以下「国有財産台帳」という。)を備えなければならないこととされている。そして、土地、建物等については、国有財産台帳に図面を附属させなければならないこととされている。一方で、工作物等については、必要と認める図面を附属させることができるとされていて、必ずしも図面を附属させることにはなっていない。
地方環境事務所は、国立公園内の自らが管理する国有財産について、建物(官庁施設として管理されているものを除く。)及び工作物(以下、これらを合わせて「公園施設」という。)のうち建物、橋りょう等の利用者の安全等に関わる重要な公園施設(以下「重要施設」という。)を対象として、施設の劣化や損傷の進行を未然に防止するなどの管理を行うために、施設の健全性等を調査した上で、点検、修繕、更新等の具体的な実施時期等を定める個別施設計画を重要施設ごとに策定することにしている。そして、個別施設計画を策定した重要施設については、同計画に基づくなどして、重点的かつ計画的に管理を実施することにしている。
地方環境事務所は、個別施設計画を策定するに当たり、重要施設を含む公園施設の数量、規模、劣化等の状況を確認するための現地調査(以下「現地調査」という。)を民間事業者に委託するなどして実施している。現地調査を実施するに当たっては、地方環境事務所がそれぞれの判断により国有財産台帳や公園施設を設置するなどした際の工事図面等(以下「工事図面等」という。)に基づくなどして、現地調査の対象とする公園施設を決定している。また、現地調査を実施する過程において、公園施設の周辺に存在する建物及び工作物のうち、設置場所、使用材料等から国有財産である蓋然性が高いものが見受けられた場合には、現地調査の対象に追加して、所有者の確認等を行うことにしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、正確性、合規性、効率性等の観点から、公園施設は国有財産台帳に正確に記載されているか、国有財産台帳に記載されている公園施設は適切に管理されているか、特に重要施設については個別施設計画に基づくなどして利用者が安全に利用できるよう適切に管理されているかなどに着眼して、5年度末時点において7地方環境事務所(注1)が所掌する34国立公園に設置されている公園施設(国有財産台帳に記載されている公園施設計19,150件、当該公園施設の5年度末時点の国有財産台帳価格計200億1051万余円)を対象として、貴省本省及び7地方環境事務所において、公園施設の国有財産台帳への記載状況、公園施設の管理状況、個別施設計画の策定状況等を確認するとともに、国立公園内を踏査することにより公園施設の設置状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
7地方環境事務所は、平成30年度から令和2年度までの間に、34国立公園において現地調査を実施していたことから、その結果等を確認したところ、次のような状況が見受けられた。
5地方環境事務所(注2)は、23国立公園において現地調査を実施するに当たり、対象とする公園施設を国有財産台帳に基づくなどして決定した後、公園施設の規模、劣化等の状況を現地で確認することにしていたが、国有財産台帳に記載されている情報だけでは所在を特定できない公園施設があった。そして、これらの公園施設については、国有財産台帳に附属されている図面で位置を確認することになるが、建物については国有財産台帳に図面を附属させなければならないこととされているものの、構造図しか附属されていなかった建物については所在を特定することが困難な場合があり、また、工作物については国有財産台帳に図面を附属させておくことが任意とされていることから、図面が附属されていなかった工作物については所在を特定することが困難な場合があった。
このため、5地方環境事務所が実施した現地調査により、最終的に、国有財産台帳に記載されているのに所在を特定できない公園施設が10国立公園で計558件あることが判明していた。また、これらの公園施設の中には、重要施設に該当するものが22件(建物16件、橋りょう6件)含まれていた。
しかし、5地方環境事務所は、現地調査により、国有財産台帳に記載されている公園施設の中に所在を特定できない公園施設が多数あることが判明していたのに、これらの公園施設について所在を特定する作業等を行っておらず、所在が不明のままとなっていた。
2地方環境事務所(注3)は、11国立公園において現地調査を実施するに当たり、対象とする公園施設を工事図面等に基づくなどして決定した後、公園施設を現地で確認することにしていたため、工事図面等が備えられている公園施設以外の公園施設は、国有財産台帳に記載されていても、現地調査の対象となっていなかった。
そこで、本院が、工事図面等が備えられている公園施設以外の公園施設のうち重要施設に該当するものを抽出するなどして、地方環境事務所が点検等のために使用していた資料に基づき、会計実地検査において国立公園内を踏査するなどして、所在を確認することとした。その結果、所在を特定できなかった公園施設が2国立公園で計5件あり、これらの中には、重要施設に該当するものが4件(建物2件、橋りょう2件)含まれていた。
このように、7地方環境事務所が管理する12国立公園に係る公園施設計563件(アの558件及びイの5件、5年度末時点の国有財産台帳価格計1億2954万余円)については、国有財産台帳に記載されているのに、所在が不明のままとなっていた。
このため、公園施設563件については、利用者の安全を確保するために必要な点検を行うなどの管理を行うことができず、特に重要施設については、個別施設計画が策定されず、同計画に基づく施設の劣化や損傷の進行を未然に防止するなどの管理を行うことができない状況となっており、中には既に撤去されるなどしていて、国有財産台帳の記載内容の見直しが必要となるものもあるおそれがある状況となっていた。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
九州地方環境事務所は、平成30年度に、雲仙天草国立公園において、国有財産台帳に基づくなどして現地調査の対象とする公園施設を決定し、現地調査を実施していた。そして、同事務所が実施した現地調査において、国有財産台帳に記載されているが図面が附属されていないなどのため、所在を特定できない公園施設が141件(令和5年度末時点の国有財産台帳価格計2947万余円)あることが判明していた。また、これらの公園施設の中には、重要施設に該当する橋りょう2件が含まれていた。
しかし、同事務所は、平成30年度に実施した現地調査後、令和6年1月の会計実地検査時点まで、141件の公園施設について、所在を特定する作業等を行っておらず、所在が不明のままとなっていた。
このため、公園施設141件については、利用者の安全を確保するために必要な点検を行うなどの管理を行うことができず、特に重要施設については個別施設計画が策定されず、同計画に基づく施設の劣化や損傷の進行を未然に防止するなどの管理を行うことができないなどの状況となっていた。
なお、会計実地検査において、重要施設に該当する橋りょう2件のうち1件の所在を現地で特定することができた。そして、当該橋りょうは、同公園内を通過する道路の一部を構成するものであり、利用者の車両等が通過する橋りょう(延長10.4m、幅員7.0mの鉄筋コンクリート造。5年度末時点の国有財産台帳価格79万余円)であった。
7地方環境事務所のうち3地方環境事務所(注4)は、平成30年度から令和2年度までの間に、18国立公園において現地調査を実施するに当たり、対象とする公園施設の周辺に存在する建物及び工作物のうち、現地調査の対象にはしていないが、設置場所、使用材料等から国有財産である蓋然性が高いものが見受けられた場合には、国有財産として管理する公園施設に漏れが生じないようにするなどのために、現地調査の対象に追加して、所有者の確認等を行うことにしていた。
その結果、3地方環境事務所が実施した現地調査では、国有財産である蓋然性が高いことは確認できたが、最終的に所有者を特定できない建物及び工作物が6国立公園で計123件あることが判明し、これらの建物等の中には、公園施設であることが確認できれば重要施設に該当するものが7件(建物3件、橋りょう4件)含まれていた。
しかし、3地方環境事務所は、国有財産である蓋然性が高いものの所有者を特定できない建物及び工作物が多数あることが現地調査により判明していたのに、これらの建物及び工作物について、地方公共団体等との協議記録の確認を行うなど、国有財産であるか否かを確認する作業等を行っておらず、所有者が不明のままとなっていた。
このため、3地方環境事務所が管理する6国立公園に存在し、所有者が不明のままとなっている建物及び工作物123件については、国有財産である蓋然性が高いのに、国有財産であるか否かの確認が行われていないため、国有財産であるのに国有財産としての管理が行われていないおそれがある状況となっていた。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
中国四国地方環境事務所は、平成30年度に、瀬戸内海国立公園において、国有財産台帳に基づくなどして現地調査の対象とする公園施設を決定していた。そして、現地調査の過程において、現地調査の対象とはしていないが、国有財産である蓋然性の高い建物及び工作物が見受けられたことから、国有財産として管理する公園施設に漏れが生じないようにするなどのために、現地調査の対象に追加して、所有者の確認を行っていた。
その結果、最終的に所有者を特定できない建物及び工作物が44件あることが判明し、これらの建物等の中には、公園施設であることが確認できれば重要施設に該当するものが2件(建物1件、橋りょう1件)含まれていた。
しかし、同事務所は、令和6年6月の会計実地検査時点においても、これら44件の建物及び工作物について、地方公共団体等との協議記録の確認を行うなど、国有財産であるか否かを確認する作業等を行っておらず、所有者が不明のままとなっていた。
このため、これらの建物及び工作物については、国有財産であるのに国有財産としての管理が行われていないおそれがある状況となっていた。
なお、会計実地検査を受けて、同事務所が、これら44件の建物及び工作物について、地方公共団体等との協議記録を確認し、周辺を踏査するなどしたところ、7年7月末現在において、重要施設1件を含む10件については、国有財産であることが確認された。
(是正及び改善を必要とする事態)
地方環境事務所において、国有財産台帳に記載されている情報等では所在を特定することが困難となっていて、国有財産台帳に記載があるにもかかわらず所在が不明のままとなっている公園施設について、利用者の安全を確保するために必要な点検を行うなどの管理を行うことができず、特に重要施設については個別施設計画に基づく管理を行うことができないなどの状況となっている事態、並びに国有財産である蓋然性が高いのに、所有者が不明のままとなっている建物及び工作物について、国有財産であるのに国有財産としての管理が行われていないおそれがある状況となっている事態は適切ではなく、是正及び改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、国立公園の広大な敷地内に設置されている多数の建物、工作物等の中から公園施設を特定するためには相当の労力を要することなどにもよるが、地方環境事務所において、国有財産を適切に管理することの重要性についての理解が十分でないこと、広大な敷地内に設置されている多数の公園施設の効率的な管理を行うためには、所在を容易に特定することができる図面等を整備することの必要性についての理解が十分でないことなどによると認められる。
貴省は、平成28年3月に政府が取りまとめた「明日の日本を支える観光ビジョン」の柱の一つとして国立公園が位置づけられたことを受けて、「国立公園満喫プロジェクト」として各種施策を進めてきており、今後も国立公園への国内外からの来訪の促進を図るなどとしていることから、利用者が公園施設を安全安心に利用できることが求められる。
ついては、貴省において、公園施設の管理が適切かつ効率的に行われるよう、次のとおり是正及び改善の処置を要求する。
ア 7地方環境事務所において、国有財産台帳に記載があるにもかかわらず所在が不明のままとなっている公園施設について、①重要度等を勘案した優先順位を定めるなどして順次所在を特定するとともに、②必要に応じて国有財産台帳の記載内容を見直すこととして、①及び②を実施するための計画を策定すること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)
イ 貴省本省において、7地方環境事務所に対して、アにより所在を特定できた公園施設のうち重要施設について、健全性等を調査した上で個別施設計画を策定するよう指示すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
ウ 3地方環境事務所において、国有財産である蓋然性が高いものの所有者が不明のままとなっている建物及び工作物について、①重要度等を勘案した優先順位を定めるなどして順次国有財産であるか否かを特定するとともに、②必要に応じて国有財産台帳の記載を追加し、又は記載内容を見直すこととして、①及び②を実施するための計画を策定すること(同法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)
エ 貴省本省において、7地方環境事務所に対して、既存の公園施設については、重要度等を勘案した優先順位を定めるなどして所在を確認するなどした上で、原則として、所在を容易に特定することができる図面を国有財産台帳に添付することなどを指示すること、及び今後設置する公園施設については、設置時に、所在を容易に特定することができる図面を国有財産台帳に添付することなどを指示すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)