• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第10 環境省
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

除去土壌再生利用技術等実証事業において一度も使用されることなく保管されたままとなっていた機器の有効活用が図られるよう、また、今後実施する除去土壌の再生利用に係る事業において事業の実施に関する調整の見通し等を勘案して、機器等の購入手続の開始時期について十分に検討を行うなどの体制を整備するよう改善させたもの


会計名及び科目
東日本大震災復興特別会計 (組織)地方環境事務所
(項)環境保全復興政策費
部局等
環境本省
契約名
令和4年度除去土壌再生利用技術等実証事業
契約の概要
再生資材を活用するための技術開発を進めることを目的として、実証業務等を実施するもの
契約の相手方
除去土壌等減容化・再生利用技術研究組合
契約
令和4年11月 公募実施後の随意契約
契約額
2億1230万円(令和6年3月変更後)
本件事業で一度も使用されることなく保管されたままとなっていた3機器の取得価格
3075万円(令和5年度)

1 除去土壌再生利用技術等実証事業の概要等

(1) 本件事業の概要

国は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(平成15年法律第44号)に基づき、福島県内で生じた除去土壌(注1)等の最終処分が行われるまでの間、除去土壌等の保管等を行う中間貯蔵施設(福島県双葉郡大熊、双葉両町所在)を整備している。同法によれば、国は、中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で除去土壌等の最終処分を完了するために必要な措置を講ずることとされている。また、「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」(平成28年4月環境省策定。以下「戦略」という。)によれば、環境省は、除去土壌等の再生利用等に対する全国民的な理解の醸成等のために、実証試験等や除去土壌等の本格的な再生利用が円滑に進むよう、地元自治体、地域住民等による除去土壌等の再生利用等に関する社会的受容性の段階的な拡大や深化を図ることなどとされている。

福島地方環境事務所(以下「事務所」という。)は、「令和4年度除去土壌再生利用技術等実証事業」を、公募実施後の随意契約により、令和4年11月18日から5年3月28日までを契約期間として、契約額5億4120万円で除去土壌等減容化・再生利用技術研究組合(以下「組合」という。)に請け負わせて実施している。

本件事業は、再生資材(注2)を活用するための技術開発を進めることを目的として、①新宿御苑(東京都新宿区所在)、環境調査研修所(埼玉県所沢市所在)、国立環境研究所(茨城県つくば市所在)(以下、これらを合わせて「3施設」という。)及び中間貯蔵施設における測量及び周辺環境の調査業務、②中間貯蔵施設から3施設への再生資材の輸送業務(以下「輸送業務」という。)、③3施設において、再生資材を用いた花壇、芝生広場等を施工し、空間線量率等の監視、維持管理等を行う実証業務(以下「実証業務」といい、輸送業務と合わせて「実証業務等」という。)等を実施することとなっている。

本件事業の実施に当たり、環境本省は3施設が所在する地元自治体との調整、地域住民への説明等の本件事業の実施に関する調整を、事務所は本件事業に係る契約手続等をそれぞれ行うことになっており、環境本省と事務所は相互に進捗状況等の情報を共有することになっている。そして、事務所と組合は、定期的に又は必要に応じて協議を実施することになっている。

(注1)
除去土壌  環境大臣が指定した地域等に係る土壌等において、放射性物質の除染等の措置を行ったことに伴い生じた土壌
(注2)
再生資材  福島県内における除去土壌を、適切な前処理や汚染の程度を低減させる物理処理をした後、用務先で用いられる部材の条件に適合するよう品質調整等の工程を経て利用が可能となるようにしたもの。再生資材として利用が可能な放射能濃度は原則8,000Bq/kg以下となっている。

(2) 3機器の概要

本件事業に係る契約において、組合は、表1の①から③までの機器(以下「3機器」という。)を購入して設置することとなっている。そして、3機器については、本件事業が終了した際に、組合から事務所へ引き渡され、事務所が国の物品として管理することになっている。

表1 本件事業で購入して設置することとなっている3機器

番号 業務 機器 用途
輸送業務 トラックゲート1基 中間貯蔵施設から再生資材を搬出する際にトラックの荷台に積載した再生資材の放射能濃度を測定する。
実証業務 モニタリングポスト6基 3施設において施工する花壇等における空間放射線量を常時測定する。
実証業務 漏水検知システム1基 環境調査研修所に施工する芝生広場の底面に敷設する遮水シートからの水漏れを検知する。

(3) 実証業務等が中止されるまでの経緯

環境本省は、4年12月16日及び同月21日に、環境調査研修所及び新宿御苑の近隣住民に対して本件事業に関する説明会をそれぞれ実施したが、実証業務の内容、安全性等に関する問題提起がなされて、本件事業の実施に関する調整に相当な時間を要することが見込まれたことから、事務所に対して、実証業務等の開始時期が遅れる旨を伝達していた。これを受けて、事務所は、本件事業に係る予算を5年度へ繰り越す手続を行った上で、契約変更を2回行って履行期限を6年3月29日に延期するなどしていた。

その後、事務所は、本件事業のうち一部の業務については履行期限までの完了を見込めなくなったとして、同月28日に、3回目の契約変更を行い、実証業務等を中止することなどを内容とする仕様書の変更を行うとともに、契約額を2億1230万円に減額していた。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性、有効性等の観点から、本件事業における機器の購入手続は適切な時期に行われているか、購入した機器は事業の目的に沿って使用されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、本件事業(契約変更後の契約額2億1230万円)を対象として、環境本省及び事務所において、契約書、仕様書等の関係資料や3機器の調達状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

6年11月の会計実地検査時点において、購入された3機器は中間貯蔵施設に保管されていたことから、3機器が購入されるに至るまでの環境本省と事務所との情報共有の状況、購入後の使用状況等について確認したところ、次のとおりとなっていた。

環境本省は、本件事業の実施に関する調整の状況によっては事業内容を変更することがあり得ることを想定していたとしており、また、半導体の供給不足に関する報道を受けて、3機器の納期に通常より多くの時間を要するおそれがあることを認識していたとしていた。しかし、環境本省は、3機器の購入手続を開始する時期についての検討を十分に行っておらず、事務所に対して具体的にいつの時点で3機器の購入手続を開始するかについての伝達を行っていなかった。また、事務所は、3機器の購入手続の開始時期について組合との協議を行っていなかった。この結果、組合は、環境本省が初めて説明会を開催した4年12月16日より前の同月1日から5日までの間に、3機器の購入手続を開始していた。そして、3機器については、5年7月7日から同年12月4日までの間に、販売業者等から組合へ納入されていたものの、実証業務等が中止されたことから、本件事業で一度も使用されることなく6年3月29日に組合から事務所へ引き渡されて、引渡しが行われてから7年6月の会計実地検査時点までの間、中間貯蔵施設に保管されたまま一度も使用されていなかった(表2参照、3機器の取得価格計3075万余円)。

表2 本件事業の契約変更、3機器の購入等の経緯

表2 本件事業の契約変更、3機器の購入等の経緯画像

3機器については、購入手続の開始時期の検討が十分に行われることなく購入され、一度も使用されることなく保管されたままとなっていたが、1(1)のとおり、戦略によれば、実証試験等が円滑に進むよう、地域住民等による除去土壌等の再生利用等に関する社会的受容性の段階的な拡大や深化を図ることなどとされていることなどに鑑みると、本件事業の実施に関する調整は、実証業務等の実施の可否や時期を左右する重要な要素である。したがって、環境本省は、3機器の購入に当たり、当該調整の見通しを勘案した購入手続の開始時期について十分に検討して事務所に伝達し、適切な時期に購入手続が開始されるようにする必要があったと認められた。

このように、環境本省において、購入手続を開始する時期について十分な検討が行われないまま3機器の購入が行われ、3機器が組合に納入されてから1年半以上にわたり事業の目的に沿って一度も使用されることなく保管されたままとなっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、環境本省において、本件事業の実施に関する調整が実証業務の実施の可否や時期を左右する重要な要素であり、3機器の購入手続を開始する時期については当該調整の見通しを十分に踏まえる必要があることについての理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、環境本省は、購入した機器等が除去土壌の再生利用に係る事業の目的に沿って使用されるよう、次のような処置を講じた。

 中間貯蔵施設に保管されたままとなっていた3機器について、除去土壌の再生利用に係る事業等に使用することにより有効活用を図ることとする計画を7年8月に策定した。

 今後実施する除去土壌の再生利用に係る事業において、事業の実施に関する調整の見通し等を勘案して、機器等の購入手続を開始する時期について十分に検討を行い、その結果を事務所に伝達するなどの体制を7年7月に整備した。