航空自衛隊第3補給処(以下「第3補給処」という。)は、航空自衛隊クラウドシステム(以下「システム」という。)で提供される後方支援サービスを維持するために、同サービスに発生した事象への対応や技術的支援等を行い、システムの運用を支援する業務を外部の民間業者に請け負わせて実施している。
当該業務について、第3補給処は、令和5年4月に、納期を7年2月とする役務請負契約を随意契約により富士通株式会社と契約額961,950,000円で締結しており、本件契約は、2か年度の国庫債務負担行為による契約(以下「2年国債契約」という。)となっている。
本件契約については、5年12月までの2回の変更契約により、契約条項に基づいて経費率の見直しなどを行い、契約額を30,063,000円増額した後、6年9月に、部隊等がシステム外で保有する情報等をシステムに投入するための支援作業を追加して、契約額を396,847,000円増額する変更契約を行っているが、納期は当初契約から変更されておらず、最終的な契約額は1,388,860,000円となっている。
第3補給処は、本件契約の締結に当たり、「調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令」(昭和37年防衛庁訓令第35号。以下「訓令」という。)に基づき、仕様が特殊で市場価格が形成されていないなどの場合に用いることとされている原価計算方式により予定価格を算定している。そして、訓令によれば、製造原価を直接材料費、加工費等の構成要素ごとに積み上げ、一般管理及び販売費並びに販売直接費を加えて総原価を計算して、これに一定の適正利益等を付加した計算価格を基準として予定価格を算定することとされている。
防衛装備庁は、防衛事業における適正な利益の確保に係る措置として、5年3月に、企業努力の及ばない将来の労務費や物価高騰等のコスト上昇のリスクを吸収することを目的として、訓令を改正している。
改正後の訓令によると、同年4月以降に予定価格を原価計算方式により算定する契約については、計算価格の計算に当たり、総原価に、生産期間(注1)中における変動の見込みを考慮したコスト変動調整率(以下「調整率」という。)を乗じた額を計上することとなっている。また、調整率については、毎年度、幕僚長等があらかじめ防衛大臣の承認を得て定めるものとされ、5、6両年度の調整率は、歳出予算による契約(以下「歳出契約」という。)は1%、2年国債契約は2%と定められている。
また、防衛装備庁は、5年9月に、「調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令の解釈及び運用のための細部事項について(通知)」(平成27年装管原第83号。以下「細部事項」という。)を改正し、5年度以降に調整率を適用する契約に係る変更契約についての規定を定めている。細部事項によれば、契約担当官等は、履行内容の追加に伴う変更契約の増額分の計算については、変更契約時に追加された履行内容に係る残りの契約期間に対する年限(注2)に応じた調整率を適用するものとするとされている。
本院は、経済性等の観点から、変更契約の予定価格の算定が適切に行われているかなどに着眼して、本件契約を対象として、第3補給処において、契約書、予定価格調書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
本件契約の予定価格調書等を確認したところ、第3補給処は、6年9月の変更契約に係る予定価格の算定に当たり、作業の追加に伴う総原価の増額分に2年国債契約の調整率2%を適用していた。
しかし、6年9月の変更契約に係る総原価の増額については、履行内容の追加によるものであるため、これに適用する調整率は、契約変更時における残りの契約期間に対する年限に応じたものとなる。そして、本件契約において納期は変更されていないため、追加された履行内容に係る残りの契約期間は同月から7年2月までであり、これに対する年限は1か年度となる。このことから、6年9月の変更契約に係る予定価格の算定に当たっては、当該残りの契約期間に対する年限に応じて、歳出契約の調整率1%を適用する必要があると認められた。
したがって、6年9月の変更契約に係る増額分の予定価格について、細部事項に基づき、総原価の増額分325,512,755円に調整率1%を適用するなどして修正計算すると、予定価格は393,394,313円となり、同月の変更契約の契約額396,847,000円はこれに比べて約340万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、第3補給処において、変更契約に係る調整率の適用についての理解が十分でなかったことによると認められる。