陸上自衛隊は、「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」(平成30年12月国家安全保障会議及び閣議決定)に基づき、大規模自然災害等への対処態勢を強化するために災害用ドローンを整備している。災害用ドローンは、電波を用いた遠隔操作等により飛行する無人航空機であり、迅速かつ的確な人命救助活動に資する情報収集を行うなどして災害等に対処するために使用されるものである。そして、災害用ドローンのうちUAV災害用Ⅰ型(注1)(以下「Ⅰ型ドローン」という。)は、陸上幕僚監部(以下「陸幕」という。)の要求に基づき、令和2年3月に、防衛装備庁が20式(1式当たりドローン2機、計40機)を調達する契約を株式会社ミクニ(以下「納入業者」という。)と契約金額7480万円で締結し、同年7月及び8月に5補給処(注2)に納入されている。
自衛隊がⅠ型ドローンのような移動体の無線設備(以下「移動局」という。)を使用する場合、防衛大臣は、自衛隊法(昭和29年法律第165号)に基づき、使用する周波数について総務大臣の承認を受けなければならないこととなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、有効性等の観点から、Ⅰ型ドローンは災害等に対処できるものとなっているかなどに着眼して、防衛装備庁が調達したⅠ型ドローン20式を対象として、防衛省内部部局、防衛装備庁、陸幕及び陸上自衛隊補給統制本部(以下「補給統制本部」という。)において、契約書、仕様書等の関係書類を確認するとともに、方面総監部、補給処、各部隊等が所在する11駐屯地(注4)において、Ⅰ型ドローンの使用状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、Ⅰ型ドローン20式(40機、契約金額7480万円)は、7年1月の会計実地検査時点で、使用する周波数等について総務大臣等の承認を受けておらず、2年7月及び8月に納入されて以降4年以上にわたって使用できない状態となっていた。
そこで、総務大臣等の承認を受けるための手続の実施状況を確認したところ、次のとおりとなっていた。
陸幕は、Ⅰ型ドローン20式の調達に当たり、Ⅰ型ドローンが使用する周波数、空中線電力等の情報(以下「周波数情報」という。)が総務大臣等の承認を受けるために必要となることから、仕様書等において、試験成績書又は試験成績書の代用として品質保証書の提出を納入業者に求めていたが、品質保証書にどのような情報が必要かを具体的に仕様書等に記載していなかった。
そのため、納入業者は、2年7月及び8月にⅠ型ドローンを納入するに当たり、製造会社の社内の製品検査及び試験に合格したとする品質保証書を提出したものの、当該品質保証書には、周波数情報が記載されていなかった。
陸幕は、品質保証書に周波数情報が記載されていなかったことなどから、周波数情報の提供を納入業者に依頼した。これを受けて、納入業者は、周波数の測定を行うなどした上で、3年2月に、使用する可能性がある周波数の上限、中間及び下限の情報を測定結果等として補給統制本部に報告した。
しかし、補給統制本部は、納入業者が報告した上限、中間及び下限の三つの周波数が、Ⅰ型ドローンで使用する可能性がある全ての周波数であると誤って認識し、この認識に基づいて、総務大臣等の承認を受けるための手続が行われていた。そして、使用開始前に、納入業者が報告した三つの周波数以外の周波数をⅠ型ドローンが使用することが判明するなどした結果、Ⅰ型ドローンは使用できない状態となっていた。
このように、Ⅰ型ドローンについて、納入されて以降使用できない状態となっていて、災害等に対処できるものとなっていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、陸幕及び補給統制本部において、災害等に対処するために使用されるⅠ型ドローン20式の調達に当たり、総務大臣等の承認を受けるために必要な周波数情報を適時かつ確実に把握することの重要性についての理解が十分でなく、仕様書等において、周波数情報が記載された書類が確実に提出されるようにしていなかったことなどによると認められた。
本院の指摘に基づき、陸幕は、次のような処置を講じた。
ア Ⅰ型ドローン20式について、周波数情報を把握するなどした上で、7年7月に総務大臣等の承認を受けて使用できる状態にした。
イ 災害等の対処に使用するドローンの調達に当たり、周波数情報を適時かつ確実に把握できるよう、7年7月に、災害等の対処に使用するドローンの調達に係る仕様書の記載要領等を改正し、契約相手方から周波数情報が記載された書類を提出させる時期や周波数情報の内容を具体的に明示して関係部署に対して周知するなどした。