航空自衛隊は、現下の厳しい安全保障環境に対応し、敵の航空機や弾道ミサイル等から我が国を防衛するために、地対空誘導弾ペトリオット(以下「ペトリオット」という。)を全国の高射部隊等に配備している。ペトリオットは、レーダー装置、射撃管制装置、発射機等の複数の地上装置及びミサイル本体で構成されており、各地上装置は、複数の車両にそれぞれ搭載して展開されるものとなっている。そして、一部の車両には地上装置と併せて無線機が搭載されており、高射部隊等は、各地上装置を必要な陣地に迅速に展開して運用する際に複数の車両間で的確な情報の伝達を行うために使用している。
航空自衛隊では、各車両に搭載されていた無線機が老朽化するなどして更新する必要が生じたことから、航空幕僚監部(以下「空幕」という。)において、平成22年度から令和2年度末までの間に、高射部隊用無線機2型(以下「2型無線機」という。)を調達している。
そして、配備を受けた37高射部隊(注1)及び2術科学校(注2)では、6年度末時点で計236台(物品管理簿価格計7億5048万円)の2型無線機を管理しており、2型無線機の取扱いなどについて定めた技術指令書に基づき、2型無線機の整備等の内容を記録する地上通信電子機器等機器履歴簿(以下「履歴簿」という。)を作成している。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、有効性等の観点から、2型無線機の配備を必要とする高射部隊等に対して任務に必要な数量が配備され有効に活用されているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、2年度末までに配備された前記の236台(物品管理簿価格計7億5048万円)を対象として、空幕、防衛装備庁、航空自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)、航空自衛隊第3補給処、26高射部隊(注3)及び第1術科学校において物品管理簿、履歴簿等の関係書類を確認し、また、配備後の活用状況等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、37高射部隊及び2術科学校における2型無線機の任務での活用状況等に関する調書の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。
(検査の結果)
2型無線機の活用状況を履歴簿等により確認したところ、北部高射群第1指揮所運用隊及び第2指揮所運用隊(以下「北部高射群第1指揮所運用隊等」という。)に配備された2型無線機計6台(物品管理簿価格計1908万円)が、3年2月又は3月の配備以降、7年2月の会計実地検査時点まで、任務に一度も活用されておらず、約4年間、倉庫に保管されている状況となっていた。
一方、37高射部隊及び2術科学校において任務に必要な数量の2型無線機が配備されているか確認したところ、中部高射群第1高射隊及び高射教導群並びに2術科学校(以下「中部高射群第1高射隊等」という。)においては、任務に必要な2型無線機計6台が配備されていない状態のまま、任務を遂行しなければならない状況となっていた。
そこで、このような状況となっている経緯を確認したところ、次のとおりとなっていた。
空幕は、平成29年度に締結した調達契約において、123台の2型無線機を令和3年3月末までに仕様書に記載した高射部隊の車両に搭載させることとしていた。しかし、このうち22台については、2型無線機を配備することとなっていた高射部隊において、2型無線機を搭載する予定となっていた車両が契約期間中に任務又は整備の都合で仕様書と異なる場所に移動していて、納期までに車両への搭載等の作業が完了できない状態となっていることが判明したため、空幕は、2年12月に調達契約を変更して、前記の22台について車両への搭載を取りやめるとともに、納入先の高射部隊に対して保管して管理するよう指示していた。その後、空幕は、22台のうち16台の2型無線機について、補給本部や高射部隊等との調整の結果、搭載を必要とする車両を特定して、該当する高射部隊に、2型無線機を配備し直して、3年12月及び4年8月に車両への搭載等を行わせていた。
しかし、空幕は、高射部隊等における2型無線機の配備状況や車両への搭載状況等を適時に把握していなかったことから、前記のとおり、中部高射群第1高射隊等において任務に必要な2型無線機6台が配備されていない状況等であるのに、北部高射群第1指揮所運用隊等に保管させたままとなっていて、中部高射群第1高射隊等に配備し直して車両への搭載等を行っていなかった。
したがって、計6台の2型無線機が納入先の高射部隊に保管されたままとなっていて、2型無線機の配備を必要とする高射部隊等に配備されることなく、有効に活用されていない状況となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、空幕において、高射部隊等における2型無線機の配備状況や車両への搭載状況等について、航空自衛隊の関係部署間で適時に情報を共有して把握していなかったことによると認められた。
本院の指摘に基づき、空幕は、7年5月に、北部高射群第1指揮所運用隊等において保管していた2型無線機6台を中部高射群第1高射隊等に配備し直すとともに、同年8月に関係部署に事務連絡を発するなどして、航空自衛隊の関係部署間で2型無線機を含む車載用無線機の配備状況等に係る情報を適時に共有する体制を整備して、2型無線機等の配備を必要とする高射部隊等に対して任務に必要な数量が適時適切に配備され、有効に活用されるよう処置を講じた。