• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第1節 省庁別の検査結果
  • 第6 厚生労働省、第10 環境省
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)(2) 国際機関等に派遣する職員に対して支給する給与の支給割合の決定に当たり、派遣先給与資料に支給の有無、金額等が決まっていない諸手当に関する事項が記載されている場合には、支給割合の再決定の要否を検討するために、派遣後に当該諸手当の支給の有無、金額等を確認することにより、派遣職員給与の支給が適切に行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
(1) 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)厚生労働本省共通費
(2) 一般会計 (組織)環境本省 (項)環境本省共通費
部局等
(1) 厚生労働本省
(2) 環境本省
派遣職員給与の概要
国際機関等に派遣する職員に対して派遣先から支給される報酬の年額が外務公務員給与年額に満たない場合等に支給する給与
検査の対象とした派遣職員数及び派遣職員給与の支給額
(1) 73名 4億6029万余円(令和元年度~5年度)
(2) 21名 2億0132万余円(令和元年度~5年度)
上記のうち未定手当の支給の有無、金額等を確認していなかった派遣職員数及びこれらの派遣職員に対して支給していた派遣職員給与の支給額
(1) 17名 7292万円
(2) 8名 6526万円

1 派遣職員給与の概要等

(1) 派遣職員給与の概要

厚生労働、環境両省は、「国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律」(昭和45年法律第117号。以下「国際機関派遣法」という。)に基づいて、我が国が加盟している国際機関等に職員を派遣している。

国際機関派遣法、「人事院規則18―0(職員の国際機関等への派遣)」(以下「規則」という。)及び「派遣職員の給与の支給割合の決定等について(通知)」(昭和50年4月人事院事務総長通知。以下「通知」という。)に基づき、国は、国際機関等に派遣する職員(以下「派遣職員」という。)に対して派遣先から支給される報酬の年額(以下「派遣先給与年額」という。)が外務公務員給与年額(注1)に満たない場合等に、派遣職員に対して、その差額分について、派遣期間中に俸給、扶養手当等(以下、これらを合わせて「国内給与」という。)の範囲内で給与(以下「派遣職員給与」という。)を支給している。

(注1)
外務公務員給与年額  派遣職員が派遣日の属する月の初日から在外公館に勤務する外務公務員であるとした場合に支給されることとなる俸給及び扶養手当の月額を基礎として算定した俸給、扶養手当、在勤基本手当、住居手当等の年額

通知によれば、派遣先給与年額については、報酬、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、派遣先の勤務の対償として受ける全てのものを対象とすることとされている。

両省は、国際機関派遣法等に基づき、次の算定式により支給割合を決定した上で、毎月の派遣職員給与を算定している。

(算定式)

(注2)支給割合
外務公務員給与年額 派遣先給与年額
国内給与の年額
毎月の派遣職員給与 毎月の国内給与 × (注2)支給割合
(注2)
派遣職員給与は国内給与の範囲内で支給されることから、支給割合は100分の100が上限となる。

規則、通知等によれば、支給割合は、派遣時に任命権者が交付する人事異動通知書において派遣職員に通知する必要があることとされており、決定された支給割合は、派遣の期間中は変更しないものとされている。ただし、派遣先給与年額等が著しく変動した場合において、特に必要があると認められるときは、その日を派遣日とみなし、支給割合を再決定するものとされている。

また、規則によれば、派遣職員は、任命権者から求められたときは、派遣先の国際機関等における勤務条件等について報告しなければならないこととされている。

(2) 派遣先給与年額の算定

両省は、派遣先給与年額について、派遣前に国際機関等から示される報酬に係る資料(以下「派遣先給与資料」という。)に記載されている基本給、手当等を用いるなどして算定している。派遣先給与資料には、国際機関等から支給される基本給、手当等の金額が記載されているほか、派遣先給与資料の作成時点において支給の有無、金額等が決まっていない住居手当、扶養手当等の諸手当であって、派遣後の派遣職員の居住等の状況に基づき支給される可能性があるもの(以下「未定手当」という。)に関する事項が記載されていることがある。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、国際機関派遣法等に基づく派遣職員給与の支給が適切に行われているかなどに着眼して、厚生労働本省及び環境本省において、令和元年度から5年度までの間に支給割合を決定した派遣職員(厚生労働省計73名、環境省計21名)に対して同期間中に支給された派遣職員給与(厚生労働省における支給額計4億6029万余円、環境省における支給額計2億0132万余円)を対象として、派遣先給与資料等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

厚生労働省は派遣職員73名のうち17名(派遣職員給与の支給額計7292万余円)に係る支給割合の決定に当たり、また、環境省は派遣職員21名のうち8名(派遣職員給与の支給額計6526万余円)に係る支給割合の決定に当たり、それぞれ派遣先給与資料に未定手当に関する事項が記載されていたものの、派遣時までに実際の支給の有無、金額等を確認できないことから、支給される金額等が派遣先給与資料に明記されていた基本給等の金額のみを用いて派遣先給与年額を算定していた。

支給割合は派遣時に任命権者から通知する必要があるため、未定手当について実際の支給の有無、金額等を派遣時までに確認できない場合は派遣先給与年額に含めることなく支給割合を決定することになる。一方、未定手当の支給の有無、金額等については、派遣後に、派遣職員が居住する住宅の家賃や扶養親族の有無を派遣先の国際機関等に届け出ることなどにより確定する。そして、未定手当が実際に支給されることとなった場合、為替相場等の状況にもよるが、派遣先給与年額が支給割合決定時よりも増加することとなり、のとおり、派遣先給与年額と派遣職員給与の年額との合計が外務公務員給与年額を上回ることが想定される。

図 未定手当が実際に支給されることとなった場合の概念図

図 未定手当が実際に支給されることとなった場合の概念図画像

しかし、両省は、派遣先給与資料に未定手当に関する事項が記載されていたにもかかわらず、派遣後に国際機関等からの給与明細等を提出させるなどして未定手当の支給の有無、金額等を確認しておらず、支給割合の再決定の要否を検討していなかった。

そこで、派遣先給与資料に未定手当に関する事項が記載されていた厚生労働省の派遣職員17名及び環境省の派遣職員8名のうち、両省を通じて国際機関等からの給与明細を入手できた14名及び5名について確認したところ、厚生労働省の11名及び環境省の5名全員が派遣後に未定手当の支給を受けていた。そして、為替相場等について一定の仮定を置いて試算したところ、実際に支給されていた未定手当を含めることにより派遣先給与年額は支給割合決定時よりも増加することとなり、厚生労働省の派遣職員11名については69万余円から286万余円、環境省の派遣職員5名については51万余円から207万余円増加していて、いずれの派遣職員についても派遣先給与年額と派遣職員給与の年額との合計が外務公務員給与年額を上回ることとなった。したがって、仮に、上記の増加額を考慮して支給割合の再決定が行われていれば、支給割合は派遣時に決定した割合より減少することになったと認められた。

このように、両省において、派遣職員給与の支給に当たり、派遣先給与資料に未定手当に関する事項が記載されていたにもかかわらず、派遣後に給与明細等を提出させるなどして未定手当の支給の有無、金額等を確認していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、両省において、国際機関派遣法等に対する理解が十分でなく、支給割合の再決定の要否を検討するために、派遣後に未定手当の支給の有無、金額等を確認する必要があることについての認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、派遣職員給与の支給が適切に行われるよう、厚生労働省は7年7月に関係部局に対して支給割合の決定に係る留意事項について定めた事務連絡を発出し、また、環境省は同年3月に支給割合の再決定の手順等について定めたマニュアルを策定するなどした。これにより、両省は、派遣先給与資料に未定手当に関する事項が記載されている場合、派遣後に派遣職員から給与明細を提出させて、未定手当の支給の有無、金額等を確認し、その結果、未定手当が実際に支給されている場合には、支給割合の再決定の要否を検討し、必要に応じて支給割合を再決定することとする処置を講じた。