• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第2節 団体別の検査結果
  • 第11 独立行政法人水資源機構
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

浸水した場合の影響等を調査した上で、浸水対策の必要性及び優先度の判断基準等を記載した指針を策定し、これに基づき、浸水対策を順次実施していくための浸水対策計画を策定することにより、揚排水機場等における浸水対策が適切に実施されるよう意見を表示したもの


科目
固定資産
部局等
独立行政法人水資源機構
揚排水機場等の概要
利水者に供給するために河川等の幹線水路の水を汲み上げる施設である揚水機場、内水等をポンプにより排水するための施設である排水機場、揚水機場と排水機場の両方の機能を備えた揚排水機場等の施設
検査の対象とした揚排水機場等に設置されているポンプ設備及び電源設備の令和6事業年度末現在の設備数及び帳簿価額
ポンプ設備 273式 58億6076万余円
電源設備 126式 18億1261万余円
計 399式 76億7337万余円
上記のうち想定浸水深よりも低い位置に設置されているのに浸水対策が実施されていないもの
ポンプ設備 72式 26億4228万円
電源設備 36式 9億8119万円
計 108式 36億2347万円(背景金額)
検査の対象とした令和6年度末現在で翌年度に継続して工事が実施されているポンプ設備及び電源設備の改築等に係る契約件数及び契約額
3件 17億0347万円(令和4〜11年度)
(うち、6事業年度末までの支出額 10億5618万円)
上記のうち浸水対策が実施されていないものに係る契約件数及び契約金額
3件 17億0347万円(背景金額)
(うち、6事業年度末までの支出額 10億5618万円)

【意見を表示したものの全文】

揚排水機場等における浸水対策について

(令和7年10月1日付け 独立行政法人水資源機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 揚排水機場等の概要等

(1) 揚排水機場等の概要

貴機構は、独立行政法人水資源機構法(平成14年法律第182号)等に基づき、産業の発展及び人口の集中に伴い用水を必要とする地域に対する水の安定的な供給の確保を図るために、水資源開発施設等の新築、改築又は更新(以下「改築等」という。)や、維持、修繕その他の管理(以下「維持管理等」という。)を行っている。

水資源開発施設等は、農業用水、水道用水又は工業用水の供給(以下「利水」という。)や、洪水調節、河川の流水の正常な機能の維持等(以下「治水」という。)を目的として設置されるなどしている。そして、水資源開発施設等には、利水者に供給するために河川等の幹線水路の水を汲み上げる施設である揚水機場、内水等をポンプにより排水するための施設である排水機場、揚水機場と排水機場の両方の機能を備えた揚排水機場等(以下、これらを合わせて「揚排水機場等」という。)がある。

揚排水機場等の改築等及び維持管理等は、貴機構本社が定めた規程等に基づき、貴機構の総合管理所等が実施しており、その費用は、国庫補助金、利水者からの負担金等により賄われている。

(2) ポンプ設備及び電源設備に係る浸水対策

総合管理所等は、揚排水機場等に、主ポンプ設備及び主ポンプ駆動設備(以下、これらを合わせて「ポンプ設備」という。)を設置している。また、ポンプ設備等を稼働させるために必要な電力を供給する受変電設備及び常用電源が停電した場合に電力を供給する予備発電設備等の非常用電源設備(以下、これらを合わせて「電源設備」という。)を設置している。

貴機構本社は、ポンプ設備及び電源設備の改築等を行う際に適用する共通仕様書及び維持管理等を行う際に適用する管理指針(以下、共通仕様書と合わせて「管理指針等」という。)をそれぞれ定めて、総合管理所等に通知している。しかし、管理指針等においては、ポンプ設備及び電源設備の設置に当たり特に浸水等に注意することなどと記載されているものの、浸水対策の具体的な方法についての記載はない。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

近年、我が国では、気候変動の影響により、極端な大雨の頻度が増加し、洪水等による浸水被害が各地で発生している。一方、洪水等により揚排水機場等が浸水した場合には、ポンプ設備や電源設備が損傷して停止し、揚排水機場等の利水及び治水の機能が発揮できなくなるおそれがある。

そこで、本院は、有効性等の観点から、貴機構が管理する揚排水機場等に設置されているポンプ設備及び電源設備について、地方公共団体が公表しているハザードマップ(注1)に基づき浸水対策が適切に実施されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、5総合管理所等(注2)が管理する揚排水機場等101施設に設置されているポンプ設備計273式(令和6事業年度末現在の帳簿価額計58億6076万余円)及び電源設備計126式(6事業年度末現在の帳簿価額計18億1261万余円)並びに6年度末において翌年度に継続して工事が実施されているポンプ設備及び電源設備の改築等に係る契約(3件、契約額計17億0347万余円、6事業年度末までの支出額計10億5618万余円)を対象として、貴機構本社及び5総合管理所等において、図面等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
ハザードマップ  平均して1,000年に1度の割合で発生するような想定し得る最大規模の降雨等を前提として想定される浸水の高さなどが表示された地図
(注2)
5総合管理所等  霞ヶ浦用水管理所(令和7年4月1日以降は利根川下流総合管理所)、利根川下流、千葉用水、木曽川用水(7年4月1日以降は、木曽川中下流用水総合管理所又は揖斐川・長良川総合管理所)各総合管理所、豊川用水総合事業部(7年4月1日以降は豊川用水総合管理所)

(検査の結果)

検査したところ、5総合管理所等が管理する揚排水機場等101施設のうち23施設は、ハザードマップにおいて洪水等による浸水のおそれがあるとされている区域(以下「浸水想定区域」という。)に所在していた。そして、23施設のうち21施設(注3)に設置されているポンプ設備計72式(6事業年度末現在の帳簿価額計26億4228万余円)及び電源設備計36式(6事業年度末現在の帳簿価額計9億8119万余円)は、想定される浸水の高さ(以下「想定浸水深」という。)より低い位置に設置されているにもかかわらず、建物の水密化等の浸水対策が実施されておらず、また、21施設を管理する5総合管理所等は、これらのポンプ設備及び電源設備について、浸水対策を今後実施することに関して具体的な検討を行っていなかった。

このため、洪水等が発生して揚排水機場等が浸水した場合に、これらのポンプ設備や電源設備が損傷して停止し、揚排水機場等の利水及び治水の機能が十分に発揮できなくなるおそれがある状況となっていた。

(注3)
21施設  利根川下流、木曽川用水両総合管理所、利根、印旛、酒直各機場、新利根河口水閘門機場、新附洲、新横利根両閘門機場、霞ヶ浦、船戸、新川、東庄、一之分目、横芝、第一、木曽岬各揚水機場、導水制御工、牟呂松原頭首工、重宝排水機場、長良導水施設、酒直水門

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

霞ヶ浦用水管理所が管理する霞ヶ浦揚水機場は、茨城県の11市2町の農地約19,300haに農業用水を、同県の8市1町の約32万人に水道用水を、同県の約120会社等に工業用水をそれぞれ供給している。

ハザードマップによると、同揚水機場は浸水想定区域に所在しており、想定浸水深は0.5mから3.0mまでとなっていた。そして、同揚水機場に設置されている設備の設置位置を確認したところ、ポンプ設備は地下に設置されているため地盤よりも9.3m低い位置、また、電源設備のうち受変電設備は地盤からの高さが0.2mの位置、予備発電設備は地盤からの高さが0.74mの位置にそれぞれ設置されていて、いずれもハザードマップにおける最大の想定浸水深3.0mより低い位置となっていた。しかし、これらの設備について建物の水密化等の浸水対策が実施されておらず、また、霞ヶ浦用水管理所は、浸水対策を今後実施することに関して具体的な検討を行っていなかった。

このため、洪水等が発生して同揚水機場が浸水した場合に、ポンプ設備及び電源設備が損傷して停止し、同揚水機場の利水の機能が発揮できなくなって、利水者に対する水の供給に影響を及ぼすおそれがある状況となっていた。

また、21施設のうち2施設(注4)においては、6年度末時点でポンプ設備及び電源設備の改築等に係る工事計3件(契約額計17億0347万余円、6事業年度末までの支出額計10億5618万余円)が実施中であった。そして、当該工事の内容について確認したところ、いずれの工事も浸水対策を実施することなく、ポンプ設備及び電源設備の改築等を行うものとなっていた。

(注4)
2施設  新利根河口水閘門機場、新川揚水機場

このように、ポンプ設備や電源設備が想定浸水深よりも低い位置に設置されているにもかかわらず浸水対策が実施されていないことについて、その理由を確認したところ、総合管理所等は、管理指針等において、浸水対策の具体的な実施方法等が示されておらず、どのように対策を実施すべきか判断できなかったためなどとしていた。

(改善を必要とする事態)

浸水想定区域に所在する揚排水機場等において、ポンプ設備及び電源設備が想定浸水深より低い位置に設置されているのに浸水対策が実施されておらず、浸水対策を今後実施することに関して具体的な検討が行われていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴機構本社において、揚排水機場等の浸水対策を実施することの重要性に対する理解が十分でなく、揚排水機場等の浸水対策に関する具体的な実施方法等を示した指針を策定し、総合管理所等に対して示していないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

近年、我が国では水害が激甚化、頻発化しており、今後も気候変動の影響により降水量が増大することなどが懸念されている。

ついては、貴機構本社において、揚排水機場等における浸水対策が適切に実施されるよう、次のとおり意見を表示する。

ア 各揚排水機場等が洪水等により浸水した場合の影響等についての調査を総合管理所に実施させて、その結果を報告させること

イ 想定される浸水被害、利水者に与える影響の程度、応急復旧の難易度等を踏まえた浸水対策の必要性及び優先度の判断基準、設置場所等に応じた具体的な浸水対策の参考例等を記載した指針を策定して総合管理所に通知すること

ウ イの指針に基づき、改築等に係る工事を実施中の揚排水機場等も含めて、各揚排水機場等において浸水対策を順次実施していくための浸水対策計画を期限を定めて総合管理所に策定させること