• 令和6年度
  • 第3章 個別の検査結果
  • 第2節 団体別の検査結果
  • 第14 独立行政法人中小企業基盤整備機構
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業に充てるために追加で出資された政府出資金を財源とした貸付金に係る償還金について、使用見込みのない額を不要財産として国庫に納付するとともに、今後発生する償還金についても年度ごとに国庫に納付することとするよう改善させたもの


科目
(一般勘定)現金及び預金
部局等
独立行政法人中小企業基盤整備機構本部
東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業における独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する資金の貸付けの概要
東日本大震災等により被害を受けた中小企業者等に対して施設又は設備の整備に必要な資金を貸し付ける事業を行う6公益財団法人に必要な資金を無利子で貸し付ける6道県に対して、その貸付けに係る資金の一部を無利子で貸し付けるもの
償還された貸付金の額
218億2913万余円(令和6年4月末時点)
上記のうち追加政府出資金を財源とした貸付金に係る額
95億8127万余円
上記のうち使用見込みがないのに保有していた額
95億0746万円

1 東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業の概要等

(1) 東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業の概要

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構法(平成14年法律第147号)等に基づき、一般勘定の政府出資金を財源として、中小企業者その他の事業者の事業活動に必要な資金の貸付け、出資等の様々な事業を行っている。このうち、東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業(以下「支援事業」という。)は、平成23年3月に発生した東日本大震災等(注1)により被害を受けた北海道、青森、岩手、宮城、福島、千葉各県(以下「6道県」という。)の中小企業者等(以下「被災中小企業者等」という。)に対して、6道県がそれぞれ選定した6公益財団法人(注2)(以下「6財団」という。)を通じて、被災した施設又は設備を復旧するなどのために必要な資金を貸し付ける事業である。

支援事業は、同年8月に創設されており、機構は、「東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業に係る都道府県に対する資金の貸付けに関する準則」(平成23年規程23第25号。以下「準則」という。)等に基づき、6財団に事業の実施に必要な資金を無利子で貸し付ける6道県に対して、その貸付けに係る資金の一部(注3)を無利子で貸し付けている(以下、機構の6道県に対する貸付金を「機構貸付金」、6道県の6財団に対する貸付金を「道県貸付金」、6財団の被災中小企業者等に対する貸付金を「財団貸付金」という。)。

機構及び6道県は、準則等に基づき、財団貸付金を貸し付ける事業(以下「貸付事業」という。)に係る資金と、貸付事業の実施に必要な債権管理等の事務を行う事業(以下「管理事業」という。)に係る資金とを区分して、それぞれ機構貸付金又は道県貸付金を交付している。そして、6財団は、貸付事業を実施するとともに、管理事業において事務費充当基金を造成し、その運用収入等を原資として管理事業を実施している(図表1参照)。

(注1)
令和3年2月に発生した令和3年福島県沖地震及び4年3月に発生した令和4年福島県沖地震は、被害地域が東日本大震災と重複していることなどから、これらの地震により被害を受けた中小企業者等も支援事業の貸付対象者とされている。
(注2)
6公益財団法人  公益財団法人北海道中小企業総合支援センター、公益財団法人21あおもり産業総合支援センター(平成24年3月31日以前は「財団法人21あおもり産業総合支援センター」)、公益財団法人いわて産業振興センター(25年3月31日以前は「財団法人いわて産業振興センター」)、公益財団法人みやぎ産業振興機構(23年10月31日以前は「財団法人みやぎ産業振興機構」)、公益財団法人福島県産業振興センター、公益財団法人千葉県産業振興センター
(注3)
6道県が6財団に貸し付ける額は、6道県が交付を受けた機構貸付金の額に、当該額の99分の1に相当する額を加えた額となっている。

図表1 支援事業に係る貸付けの仕組み及び令和5年度末時点における機構貸付金の交付状況等

図表1 支援事業に係る貸付けの仕組み及び令和5年度末時点における機構貸付金の交付状況等画像

準則によれば、6財団が財団貸付金の新たな貸付けを実施することができる期間(以下「貸付実施期間」という。)は、6道県が機構貸付金の交付を受けた日から原則として5年とされ、6道県からの申請に基づき、機構は、1年ごとに貸付実施期間の延長を認めることができるとされている。そして、6道県のうち岩手、宮城、福島各県(以下「3県」という。)は、申請を行って貸付実施期間を延長するなどしており、3県が選定した各公益財団法人は、令和5年度末時点においても貸付事業を実施している(注4)

(注4)
北海道、青森、千葉両県は、貸付事業を終了しており、これらの道県が選定した各公益財団法人は令和5年度末時点において管理事業のみを実施している。

(2) 機構貸付金の財源

機構は、支援事業が創設された当初、一般勘定の既存の政府出資金(以下「既存政府出資金」という。)を財源として機構貸付金を交付していたが、既存政府出資金だけでは機構貸付金の財源が不足すると見込まれたことから、平成24年1月及び同年5月に、支援事業に充てるための政府出資金計500億円の追加出資を国から受けている(以下、当該政府出資金を「追加政府出資金」という。)。そして、機構は、同年8月から25年4月までの間に、追加政府出資金の全額である500億円を貸付事業に係る機構貸付金として青森県を除く5道県に対して交付している。

(3) 機構貸付金の償還

貸付事業に係る機構貸付金の償還方法は、定期償還と繰上償還の2種類となっている。定期償還は、被災中小企業者等から償還された財団貸付金と同額の道県貸付金から道県負担分を除いた額を年度ごとに償還するものであり、繰上償還は、貸付実施期間終了時における道県貸付金の未使用額等から道県負担分を除いた額を償還するものである。令和6年4月まで(注5)に6道県から償還された機構貸付金の累計額は、218億2913万余円(定期償還によるもの199億1735万余円、繰上償還によるもの19億1177万余円)となっている(以下、6道県から償還された機構貸付金を「償還金」という。)。そして、準則等によれば、機構貸付金の償還期限は交付から25年以内(貸付実施期間が延長された場合は、延長された期間を加えた期間以内)とされていることから、今後も6道県から定期償還により機構貸付金が償還されることになっている。

(注5)
各年度に公益財団法人から償還された道県貸付金に係る機構貸付金は、定期償還として当該年度末の翌日から10営業日以内に機構に償還されることとなっているため、令和5年度までに償還された道県貸付金に係る機構貸付金が6年4月までに機構に償還されている。

(4) 不要財産の国庫納付

独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)によれば、独立行政法人は、業務の見直し、社会経済情勢の変化その他の事由により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされている。そして、独立行政法人は、不要財産であって、政府からの出資又は支出に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付することとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

追加政府出資金は、既存政府出資金だけでは機構貸付金の財源が不足すると見込まれたことから支援事業に充てるために追加出資され、貸付事業のみに使用されており、追加政府出資金を財源とした機構貸付金に係る償還金(以下「追加政府出資金に係る償還金」という。)についても、貸付事業に使用する見込みがない場合は国庫に納付されるなど適切に取り扱われる必要がある。

そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、追加政府出資金に係る償還金の取扱いは機構貸付金の償還の状況や財団貸付金の需要等を踏まえた適切なものとなっているかなどに着眼して、償還金の累計額218億2913万余円を対象として検査した。検査に当たっては、機構本部において、機構貸付金の償還の状況、6財団による財団貸付金の貸付実績や貸付見込みなどについて、事業実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、償還金の累計額218億2913万余円のうち、既存政府出資金を財源とした機構貸付金に係る償還金(以下「既存政府出資金に係る償還金」という。)が122億4785万余円、追加政府出資金に係る償還金が95億8127万余円となっていた。

そして、機構が追加政府出資金に係る償還金を機構貸付金として再度交付していたのは、平成26、27両年度分の定期償還による償還金のうち計7381万余円を29年3月に交付した1回のみであった(以下、償還金を機構貸付金として再度交付することを「再使用」という。)。また、追加政府出資金に係る償還金のうち再使用されていない償還金の額(以下「追加政府出資金に係る償還金の保有額」という。)は、図表2のとおり、年々増加していて、令和5年度分が償還された6年4月末時点において95億0746万余円となっていた。

項目 平成
26年度分
27年度分 28年度分 29年度分 30年度分 令和
元年度分
2年度分 3年度分 4年度分 5年度分
定期償還による
償還金の額 ⒜
1371 6009 1億3291 2億1807 6億6959 8億3028 13億0192 17億2361 20億3041 19億2550 89億0615
繰上償還による
償還金の額 ⒝
5億3735 6186 15 7574 6億7512
計 ⒜+⒝ 1371 6009 1億3291 7億5543 7億3146 8億3044 13億0192 17億2361 21億0616 19億2550 95億8127
再使用した額 7381 7381
各年度末の翌年
度の4月末時点
における追加政
府出資金に係る
償還金の保有額
1371 7381 1億3291 8億8835 16億1981 24億5025 37億5218 54億7580 75億8196 95億0746
  • 注(1) 各年度分の金額は、6道県に道県貸付金が償還された年度に基づいて集計している。
  • 注(2) 各年度分の金額は表示単位未満を切り捨てているため、各欄を集計しても計欄とは一致しない。

しかし、機構は、平成29年5月に、追加政府出資金に係る償還金について、再使用する可能性があるため不要財産に該当しないと整理して以降、不要財産に該当するか否かの検討を行っていなかった。

そこで、令和元年度から5年度までの5年間における財団貸付金の交付額及び償還額の推移についてみたところ、図表3のとおり、交付額は元、4、5各年度にいずれも10億円を下回っている一方、償還額は毎年度30億円前後となっていた。そして、元年度から5年度までの償還額の累計159億5989万余円は、交付額の累計81億0635万余円の約2倍となっていた。

図表3 財団貸付金の交付額及び償還額の推移(令和元年度~5年度)

(単位:万円)

図表3 財団貸付金の交付額及び償還額の推移(令和元年度~5年度)画像

また、貸付事業を継続している3県に対して、今後見込まれる財団貸付金の需要等を踏まえた上で機構貸付金の交付を追加で受ける必要があるかについて、機構を通じて確認したところ、3県は、いずれも、既に交付された道県貸付金により、当面の間は財団貸付金の必要額が賄えると見込まれるとしていた。

これらのことから、当面の間、機構貸付金を交付する必要はない状況となっていた。

さらに、定期償還による償還金のうち既存政府出資金に係る償還金は、図表4のとおり、平成30年度分の償還以降、毎年度10億円を超えており、仮に新たに機構貸付金を交付する必要が生じたとしても、既存政府出資金に係る償還金を再使用することで対応が可能であると見込まれた。

項目 平成25年度分
~29年度分
30年度分 令和
元年度分
2年度分 3年度分 4年度分 5年度分
既存政府出資金
に係る償還金
14億0930 12億5932 22億9309 14億6285 17億4187 14億4346 14億0127
追加政府出資金
に係る償還金
4億2480 6億6959 8億3028 13億0192 17億2361 20億3041 19億2550

したがって、機構貸付金の償還の状況や財団貸付金の需要等を踏まえれば、追加政府出資金に係る償還金の保有額95億0746万余円は、再使用する見込みがない状況となっていた。

このように、機構において、追加政府出資金に係る償還金の保有額95億0746万余円について、再使用する見込みがないのに保有していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、追加政府出資金に係る償還金について、不要財産に該当するか否かの検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、機構は、令和6年4月末時点における追加政府出資金に係る償還金の保有額95億0746万余円について、同年11月に不要財産として国庫に納付するとともに、第5期中期計画(6年4月から11年3月まで)を7年3月に変更して、同計画において、今後発生する追加政府出資金に係る償還金について、年度ごとに国庫に納付することとする処置を講じた。